孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

マレーシア・サバ州の帰属をめぐる事件 「スールー王国」再建?

2013-02-21 00:12:45 | 東南アジア

(ボルネオ島サバ州のサンダカンは、かつて日本から貧しい女性たちが「からゆきさん」として渡ったところでもあります。 写真は映画「サンダカン八番娼館 望郷」より)

数日前に、マレーシアのサバ州(ボルネオ島北東部)にフィリピンのイスラム武装勢力数十人が不法上陸したとの報道がありました。

****比の武装集団か マレーシア上陸 政府、国外退去求め交渉****
マレーシア東部サバ州の海岸に、フィリピン南部から来たとみられる80~100人の武装集団が上陸し、発見したマレーシアの軍や警察とにらみあっている。地元の治安当局が14日、明らかにした。周辺住民が人質に取られているとの情報もある。

マレーシア治安当局によると、武装集団は12日、ボルネオ島にあるサバ州東岸タンビサンに複数の小型ボートに分乗して上陸。約60キロ西方のラハダトゥ郊外まで移動したところで、駆けつけた軍や警察が取り囲んだ。
ナジブ首相は14日、「交渉を通じて、平和的に国外に退去させる」と声明を出したが、地元の治安当局者は朝日新聞の電話取材に「上陸の目的や要求もはっきりせず、交渉がまとまる気配はない」と明らかにした。

フィリピン南部では昨年10月、武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)とフィリピン政府が、自治政府の樹立を目指す和平合意に署名した。今回、上陸した武装集団の所属は不明だが、「和平合意に反発するグループ」「武装勢力間の抗争から逃れてきた」などの見方がある。ロイター通信によると、フィリピン外務省報道官は「現在情報の収集中で、マレーシア政府と連絡を取り合っている」と述べた。

サバ州東岸は、フィリピン南部の島々からボートで1時間弱の距離。過去にも越境してきた武装勢力による事件が起きている。ラハダトゥでは1985年に銀行が襲われ、武装勢力が銃を乱射して11人が死亡。2000年には東部沖のシパダン島で、欧米の観光客21人がフィリピンへ連れ去られ、身代金を要求される事件があった。【2月15日 朝日】
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フィリピン南部では上記記事にもある、ミンダナオ島で活動するイスラム武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)のほか、ボルネオ島に近い地域にアルカイダと連携する過激イスラム武装組織アブ・サヤフが存在しています。

アブ・サヤフ相手に「交渉を通じて、平和的に国外に退去させる」というのは難しいのでは・・・と感じたのですが、続報によれば上陸したのは15世紀に成立したとされるイスラム教国「スールー王国」の再建を目指す勢力ということで、どうも事情が異なるようです。

****北ボルネオ領土問題再び フィリピンVSマレーシア*****
王国の末裔”400人不法上陸

マレーシアのボルネオ島北部サバ州に、フィリピン南部ミンダナオ島から、「スールー王国軍」を名乗るイスラム教徒400人が不法上陸した。一部が武装しており、治安部隊に包囲されている。サバ州をめぐり両国は、15世紀に成立したとされるイスラム教国「スールー王国」の歴史に根ざす領有権問題を抱えており、事件は棚上げ状態の争いに再び光をあてている。
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グループは今月中旬、サバ州ラハド・ダトゥの海岸に不法上陸した。リーダーはスールー王国のスルタン(君主)の末裔(まつえい)、ラジャ・ムダ・アジムディン・キラム氏。反政府武装勢力「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)の元メンバーも含まれている。

マレーシアのナジブ首相は、治安部隊と陸・海軍を派遣し「流血の事態を避け、平和裏に彼らを退去させる。軍は事態を掌握している」としている。グループは抵抗せず、警察が交渉に当たっている。一方、フィリピン側は、「身柄の安全と、平和的な解決」(大統領報道官)を求めている。

歴史をひもとくと、15世紀半ばに、フィリピン南西端のスールー諸島を中心に成立したとされるスールー王国の領土は、現在のサバ州にも及んでいた。その後、スペインによる占領時代などを経て1897年、フィリピンが米国に併合されると、王国も終焉(しゅうえん)した。

問題は、北ボルネオが1946年に英国領となり、63年にはマレーシア連邦の成立とともに連邦の1州となって、「分割」されたことにある。フィリピンは北ボルネオを含む王国の領有権を、スルタンと62年に締結した文書により獲得していると主張する。一方、マレーシアは63年以降、スルタンの末裔側に毎年、“租借料”として5300リンギット(約16万円)を支払っており、今日に至っている。

グループを派遣したのはリーダーの兄で、74歳のジャマルール・キラム氏。派遣を「帰国の旅」と形容し、その目的については「戦うことではない。われわれが歴史的に有するサバの領有権の行使だ」と述べている。具体的には、旧スールー王国の承認と、領土(サバ州)の返還などを求めているという。
その背景として、昨年10月にフィリピン政府とMILFが合意し、新自治政府の創設を柱とする和平の枠組みから、サバ州が「除外」されたことに対する不満があると指摘されている。【2月20日 産経】
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スールー王国、及びこの海域一帯の結びつきの強さについては、08年7月20日ブログ「ASEAN  マレーシアの不法移民強制退去問題など」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080720)でも取り上げたことがあります。

産経がこの話題を取り上げたのは、領土問題を“棚上げ状態”などにしておくから、こんな問題がいつまでも続くのだ・・・という主旨でしょうか。
個人的印象としては、サバ州はマレーシアの一部であるという現状は動かし難く、“スルタンと62年に締結した文書”云々といった過去の経緯をもとに現状を否定しようとする行動に滑稽さを感じます。
当事者は真剣なのでしょうが、第三者から見ると争いごとというのはそんなものです。

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