孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イエメンの児童強制結婚 日本女性の社会的地位

2008-11-14 14:24:20 | 世相

(イエメン 結婚式を祝いジャンビア・ダンスを舞う男達 半月刀ジャンビアは男の誇りです。でも、8歳の少女を・・・と言うのでは“男”が泣きます。
“flickr”より By ninjawil
http://www.flickr.com/photos/ninjawil/2205217653/)

【離婚を勝ち取った少女】
“米女性誌「グラマー」は10日、恒例の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」(今年の女性)に、コンドリーザ・ライス米国務長官のほかに、イエメンで歴史的な離婚を勝ち取った10歳の少女Aliちゃんと、離婚訴訟でAliちゃんの弁護を担当した人権派弁護士の2人を選んだと発表した。Aliちゃんは8歳のときに28歳の男性と強制結婚させられたとして今年、裁判所に婚姻無効を申し立て、離婚が認められた。”【11月12日 AFP】

Aliちゃんは18歳までは自宅で両親と一緒に暮らすとの約束でしたが、その1週間後に、男性との同居を両親から強制されたとのことで、この男性は「本人とその両親の合意の上で結婚した」と主張。裁判では「結婚の契り(=性交)」は交わしたが、暴力はふるっていないと証言しています。
また、結婚を強制した父親は、「娘が誘拐されるのがこわかったために(嫁にやった)」と証言しています。

“最貧国の1つであるイエメンでは、結婚最低年齢を規定する法律はない。弁護士によると、Aliちゃんのようなケースはこの国では珍しくなく、その数は数千件にものぼるのではないかという。したがって、複数の市民団体が結婚最低年齢を法律で18歳に規定するよう議会に働きかけているという。”【4月16日 毎日】

このAliちゃん、なかなかにしっかりした子のようです。
“この話で一番すごいのが、このNujoodという女の子(Aliちゃん)だ。伝統的には顔をさらすのもはばかれるであろうこの地で、顔写真とともに話が報道されることに同意し、「結婚はこりごり。学校に戻って勉強を続けて、苦しめられている人を助けるシャダ(自分を助けてくれた弁護士)のような人になりたい。他の女の子たちのお手本になりたい」と言っている。”
【『NGO主義でいこう』10歳で離婚した少女―イエメン― http://www.p2aid.com/perryblog/2008/07/10.html 】

【少女の52.5%が、15歳未満で結婚】
こうした、本人の意思によらない子供の結婚は、イエメンに限らず各地で見られます。
最近目にしたものでは、バングラデシュとパキスタンでの“事件”があります。
これらは、何らかの事情で表沙汰になったので“事件”として扱われていますが、現地ではごく普通の風習のようです。

****11歳少女の結婚式、警察の介入で中止に バングラデシュ****
バングラデシュ西部の村で今週、11歳になったばかりの少女の結婚式が取りやめになった。ようやく思春期に入ったレクハ(Rekha)ちゃんは、両親の決定で嫁に行かされる寸前だったが、うわさを聞いた村の住人が警察に密告したのだ。
警察によると、夫となる予定だったのは17歳の少年。バングラデシュでは男女とも18歳未満での結婚は法律で禁止されている。

しかし、この事件では誰も逮捕されていない。担当した地元警察の警部補は、「レクハちゃんの事件は氷山の一角」と述べ、過去半年に近隣地域だけで50件近くの同様の違法な結婚式が予定され、警察が介入して中止させたと話した。
キリスト教系人道支援団体ワールドビジョン(World Vision)が今週発表した報告書によれば、同国の少女の実に52.5%が、15歳未満で結婚させられている。この割合は、同団体が調査対象としたサハラ以南のアフリカ、南アジア、中米の15か国中で最も高い。

警部補によると、人口の4割が1日1ドル以下で生活するバングラデシュでは、農村部を中心に18歳未満の強制結婚は一般的だという。両親は18歳未満の結婚が違法だということを知っているため、こうした結婚式は密かに行われるのがほとんどだ。
警察はレクハちゃんの両親にカウンセリングを施し、若年結婚は違法であり、適齢を迎えるまで待つよう諭しているという。【9月12日 AFP】
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*****子どもを強制的に結婚させた父親ら逮捕、パキスタン******
パキスタン南部カラチの警察は30日、一族同士の紛争を解決するため、4歳の女児と7歳の男児を強制的に結婚させたとして、それぞれの子どもの父親と結婚登録係の計3人を逮捕した。カラチの裁判所は1日、3人の保釈を認めた。
弁護士によると裁判所は、3人に各自3000ルピー(約6000円)の保釈金の支払と、男児と女児を親の保護下に戻すことを命じた。

女児の父親は、子どもを結婚させたのは両家の間に古くから存在した紛争を解決するためだったと述べ、男児の父親は、子どもたちが結婚最低年齢に達してから結婚式を挙げようと両家で決めていたと語った。
このような児童結婚は「vani」として知られる慣習で、人権侵害と非難され、イスラム教徒の多いパキスタンでは禁止されている。パキスタンの結婚最低年齢は男性が18歳、女性は16歳となっている。【11月2日 AFP】
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バングラデシュにしてもパキスタンにしても法律はあるようですが、全く機能していません。
風習とか伝統にはもちろん尊重すべきものは多々ありますが、基本的な人権を脅かすものはこれをあらためる勇断が望まれます。
また、こうした婚姻風習の背景には経済的な問題が存在していることも多いと推察されますので、単に“禁止”を唱えるだけではない施策が求められます。

【日本女性の社会的地位】
ところで、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」といった女性の話題のついでに、もうひとつ、こんな記事もありました。

****男女格差指数:日本は世界98位に後退 スイスの機関調査*****
ダボス会議で知られるスイスの民間研究機関・世界経済フォーラムは12日、世界130カ国の男女格差に関する指数を発表した。男女平等に最も近いのはノルウェーで、フィンランド、スウェーデンなどの北欧勢が続いた。日本は前年の91位から98位へと後退した。
ビジネスや政治で決定権を持つポストへの進出度や、教育機会の均等、平均寿命などについて、国連統計などを基に算出した。
日本は、教育や保健分野では格差が比較的少なかったが、経済や政治での女性の進出度がいずれも100位を下回った。アジアではフィリピンが6位で最高。中国は57位、韓国は108位だった。 【11月12日 毎日】
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イエメンやパキスタンなどの婚姻風習にしても、日本の女性の社会的地位にしても、その社会にどっぷり浸かっている者には“ごく普通のこと”としてしかとらえられません。
しかし、いったん目を外に転じて他の国々と比較検討すれば、よくよく不思議な社会に自分達が生きていること、それを当然のこととして甘受していることに驚かされます。


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1 コメント

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価値観の見直しが必要でしょう (ステルスニンジャ)
2009-07-02 02:14:02
日本で女性の地位が低いというのは、単純に職場進出が進んでいないということと、職場における管理職の割合が低いということでしょう。ただ、女性の職場進出の程度で男女平等の達成度をはかろうという価値観は間違っています。女性は職場進出よりよりよい消費生活、より安全な生活、より経済的に安定した生活を望むものであり、その価値観からすれば、日本の女性は世界でも極めて不満の少ない状況にあります。

http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=32616
>男性より女性の方が幸せを感じている国は、51か国のうちブラジル、南アフリカ、ベトナムを除いた48か国。
>男女間の差が大きいのは日本で、女性の幸福度は男性より15ポイント高かった。
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