孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  広東省烏坎村の地方当局への「反乱」 党側が自治組織を「合法」と認める

2011-12-22 21:05:30 | 中国


(地方当局の腐敗・横暴に抗議する広東省烏坎村の住民 12月15日 “flickr”より By jhh510110@ymail.com http://www.flickr.com/photos/54213354@N04/6519807209/

【「中央政府に問題を処理してもらいたい。腐敗した役人は逮捕してほしい」】
中国では、土地収用、環境汚染、地方役人の横暴などを理由とした住民暴動が頻発していますが、香港にも近い広東省烏坎村のケースは、当局に数十年にわたって土地を接収され続けてきた住民が怒りを爆発させ、地元共産党幹部や警察官を村から追放し、自治組織の代表者を選出するという、住民が公然と共産党当局に反旗を翻した事件として注目されていました。

騒動は、地元当局が不正に村の土地を収用してきたことから起き、9月には村民らが警察署を襲撃し当局との衝突する場面もありました。
事態が拡大したのは、指導者の一人が拘束中に死亡したことからでした。
村民は、役人や警察を村から追い出し、一方、警察側は村を包囲して兵糧攻めにするという対立が続いていました。

****警察が漁村を「兵糧攻め」、地元当局の不正に抗議続ける****
土地をめぐる地元共産党当局の汚職に対して住民らが抗議を続けている中国南部・広東省烏坎村で、8日から警察が村を包囲して「兵糧攻め」にしている。村では水や食糧が底を付きかけているが、村民たちは抵抗を続けると話している。

■逮捕された村民が急死
烏坎村は人口約1万3000人の漁村。村民たちは、地元当局が不正に村の土地を収用し、元の持ち主に賠償もしてこなかったとして抗議を続けてきた。9月には村民らが警察署を襲撃し当局との衝突する事件も起きている。

警察は9日、9月の暴動に関与したとして村民5人を逮捕したが、暴動を主導したとされた村の指導者の1人、薛錦波氏(42)が拘束中に死亡。村民側がいっそう態度を硬化させる事態となった。
警察は、薛氏にはぜんそくと心臓病を患っており心不全を起こしたと説明しているが、村民側は遺体にはあざがあり撲殺されたに違いないと主張している。

封鎖6日目となる14日も、村に通じる道は特殊装備で武装し催涙ガスを携行した警察官たちに封鎖されたままだ。AFPの電話取材に応じた村民たちによると、8日夜から村の入口で検問が実施され、ごく一部の女性と子どもを除いて入村は厳しく制限されている。また、インターネットも遮断されているという。警官の人数は1000人以上で日々増えていると証言する村民もいた。

烏坎村を管轄する陸豊市当局は、村周辺には警察、武装警察、消防の放水車が配備され「村の秩序維持に努めている」と述べた。

■厳しい報道管制、ネット上から消された村
報道関係者の入村は許されていない。AFPの写真記者も14日に入村を試みたが、村から数キロ手前の検問所で武装警官に行く手を阻まれ、警官に付き添われて広東省深センに戻らざるを得なかった。
中国の国営メディアは烏坎村をめぐる一連の抗議行動についてほとんど報道しておらず、インターネットでは村の名前での検索が当局に遮断されている。抗議行動が全国に拡大するのを防ぐためとみられる。

不動産バブルが続いた中国では、地方当局が開発業者と結託して不正な不動産取引で巨額の利益を上げ、当局の収入源とする事例が相次ぎ、非難の的となっている。
地元当局は9日の声明で、9月の暴動の原因となった数件の不服申し立ては既に解決し、村の当局者2人を解雇したと発表したが、村民の怒りは収まっていない。ある住民は、「中央政府に私たちの問題を処理してもらいたいと思っている。われわれはあきらめない。腐敗した役人は逮捕してほしい」と話した。【12月15日 AFP】
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【「党中央や省の指導者に直接声を届ける道を築けたことは、我が村の勝利だ」】
この事件は、村民たちが自主選挙で発足させた自治組織を共産党側が「合法」と認める形で、一応の解決が図られています。

****中国・広東の自治組織「合法」 省幹部が村民争議を容認****
中国広東省で共産党地方幹部の横暴に反発し、村民たちが自主選挙で発足させた自治組織を、省党幹部が21日、「合法」と認めた。暫定的とはいえ、全国を網羅する党の統治機構に生まれた空白を、住民組織が補うという異例の事態となった。地方幹部の腐敗に苦しむ各地の住民に与える影響は大きいとみられる。

広東省烏坎(ウーカン)村を代表した林祖恋さん(65)と、党中央規律検査委員も務める朱明国・省党委副書記が同日面会。林さんによると、副書記は住民が9月に自主選挙で選んだ13人(現在は12人)による村民臨時代表理事会の「合法的な身分」を保証した。代表らを訴追せず、民意をまとめる組織としての活動を容認する意味とみられる。
副書記は住民側の要求に沿い、拘束された村人の早期釈放、拘束後に死亡した理事会幹部の死因の再調査も約束した。副書記の提案を受け、理事会は村民大会を開き、3カ月にわたった争議を収束させることを決めた。

村では40年近く村トップに居座った党の村支部書記らが勝手に農地を切り売りしてきたことに住民が反発し、9月と11月に村を管轄する陸豊市政府前で大規模なデモを行った。市当局は村書記らの不正を認めて免職にする一方、党に代わって村をまとめた理事会を「不法組織」と認定。今月9日に連行された理事会幹部が死亡したことを機に村人は入り口をバリケードで封鎖し、党村委幹部や派出所の警察官が去って村は半ば「自治区化」した。

国内主要メディアは政府側の見解以外は報じなかったが、住民は各地に出稼ぎに出ていた若者を中心にネットなどで情報発信し、国内外の関心と支持を引き寄せた。理事会も村民の暴徒化を慎重に抑えて、当局による弾圧を防いだ。
同省広州や深セン(センは、土へんに川)の若者がネットで村人への支援の集会を呼びかけて拘束されたほか、同省スワトー市上岱美村でも、烏坎村に刺激される形で村幹部の専横への抗議デモが起きた。

林さんは「我々は地方幹部の腐敗と戦っただけで、党の統治に対抗しているつもりは全くない」と強調し、「党中央や省の指導者に直接声を届ける道を築けたことは、我が村の勝利だ」と話した。【12月22日 朝日】
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地方当局は「草の根レベル」で争議を解決せよ 取り締まる場合は「文明的な」手段で
中国国民の党中央に対する信頼感は一定のものがありますが、地方役人・党末端と地域住民と関係は、革命以前の搾取する側と搾取される側のような関係が残存し、地方当局に対する住民の不信感が中国政治システムの大きな欠陥となっています。

事件収束によって報道が解禁され、中国メディアは地方当局への批判を報じています。
また、党中央は地方当局に「草の根レベル」で争議を解決するよう求めており、取り締まる場合は「文明的な」手段で行うよう指示しています。

****中国・烏坎村の抗議、広東省当局が村民に譲歩 包囲解く****
■地元メディア、地元共産党当局を一斉批判
合意から一夜明けた22日の中国メディアは、烏坎村の共産党当局が住民らの訴えを放置したため騒ぎが拡大したと一斉に批判。国内の地方当局に「国民を最優先せよ」と要求した。

中国共産党の機関紙、人民日報は、地方当局が「住民らの正当な要求に注意を払い損ねた」ため、「正当な請願を行き過ぎた住民運動に拡大させてしまった」と報じた。
国営英字紙・環球時報は社説で、「国民のあらゆるもめ事を真剣に受け止め、国民の要求に対して責任ある態度を示す」よう地方当局に呼びかけるとともに、こうした当局と住民の争議は今後も増加するだろうとの見通しを示した。

■「草の根レベル」の「文明的解決」、党治安部門トップが要請
一方、共産党の治安部門トップは同日、各当局に対し、住民らの争議はただちに解決し、取り締まる場合は「文明的な」手段で行うよう強く求めた。

新華社通信によると、党政治局常務委員で治安部門を統括する中央政法委員会トップの周永康書記は、国内でこのところ急増している社会不安に言及し、中央政府が暴動の予防に取り組んでいる中、地方当局は「草の根レベル」で争議を解決するよう努めなければならない、と述べた。(c)AFP
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台頭する中流階級の不満が成長鈍化とネットで社会不安に
こうした住民騒動の背景として、台頭する中流階級の不満が鈍化する経済成長のなかで噴出しやすくなっていること、インターネットによる情報発信が指摘されています。

****中国・烏坎村の「反乱」が象徴するものとは、専門家分析****
中国南部・広東省烏坎村の住民が公然と共産党当局に反旗を翻した事件は、世代交代を控えた中国共産党にとって社会不安が大きな課題であることを如実に知らしめた。
当局に数十年にわたって土地を接収され続けてきた同村の住民は怒りを爆発させ、地元共産党幹部や警察官を村から追放し、自治組織の代表者を選出した。同村の抗議行動は、政治腐敗から格差拡大まで中国にはびこる不公正に対し、市民の怒りが高まっていることを浮き彫りにした。

■経済成長に陰り、中流台頭も影響
専門家らは、経済成長が鈍化する中国で、こうした市民の怒りが党指導部の悩みの種となりつつあると指摘する。「指導部が安定を維持してこれたのは、経済成長のおかげだ。成長が止まれば、社会不安は広がるだろう」と、香港中文大学のウィリー・ラム教授(歴史学)は語る。

烏坎村のある広東省は中国製造業の心臓で、国内でも豊かな地域だ。しかし、輸出減速を背景に工場労働者の賃金カットが進み、この数か月で次々とストライキが起きている。11月には、欧米の靴ブランドの委託工場で従業員7000人以上が人員削減と賃金カットに抗議してストライキに突入し、警官隊と衝突した。

北東部の遼寧省大連でも今年、住民が化学工場の移転を求めて大規模なデモを行い、当局が工場閉鎖を決定する事態となったが、これも中国で台頭する中流階級が当局への抵抗を厭わない傾向を示す一例だと専門家らは言う。

■ネットの威力に警戒
ラム教授は、次のように説明する。「『アラブの春』や1980年代のポーランドの『連帯』運動のような全国規模の運動は、中国ではまだ起きていない。したがって今のところ共産党は全面的な抵抗にさらされているわけではない。
とはいえ、最近の個別の抗議行動もやはり(社会の)不安定さの実態を表す出来事であり、だからこそ北京当局は多数のユーザーを抱える『新浪微博』に実名登録を義務付けたのだ」

中国版ツイッターともいえるマイクロブログ「新浪微博」は、最近の抗議行動の多くで組織化や広報の重要ツールとなってきた。当局は厳しい検閲を化し次々とアカウントを閉鎖する措置を取っているが、ユーザーたちはそれに匹敵するスピードで新アカウントを取得し、発信を続けている。
「指導者交代を控えた当局は、ツイッターやフェイスブックの中国版が持つ組織化力を認識している」とラム教授は述べた。

中国の胡錦濤国家主席は来年2期目を終え、次期指導者――習近平国家副主席と目されている――に権力を委譲する。新体制発足は13年3月で、温家宝首相も辞任し、共産党指導部も10年ぶりに刷新される。
こうした中、共産党は社会の調和と安定を極めて重視しており、党最大の関心事は社会不安を収束させるかどうかにあると、専門家らは指摘している。【12月19日 AFP】
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なお、今回の烏坎村の事件が一定の成果を勝ち得たのは、住民の暴発を防ぎ、抗議行動を組織化した指導者の力量によるところが大きいと思われます。


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