孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ドイツ・中国の「特別な関係」 欧州の中国への期待と警戒感

2012-09-04 23:14:39 | 欧州情勢

(これまで何回も顔を合わせているメルケル首相と温家宝首相ですが、写真は08年10月北京でのもの。メルケル首相は今よりスリムなような感じもしますが・・・ “flickr”より By emailtoqq http://www.flickr.com/photos/31031559@N07/3137460320/

【「特別な関係」と「共存の罠」】
今朝のTVニュースで、フランス2はドイツ・メルケル首相の訪中を取り上げていました。
メルケル首相は6回目、今年だけでも2回目の訪中です。これまたドイツを6回訪問している温家宝首相や胡錦濤国家主席との会談の他、閣僚の半数を今回訪中に伴い、中国側との合同閣議を開催しています。

また、シーメンスとフォルクスワーゲンのトップを含め、100人以上の独企業幹部も同行し、エアバスなどの大型契約を取りまとめていますが、チベット問題とか人権問題に関する発言は殆んどなかったとか。

こうした蜜月ぶりからも窺われるように、ドイツ・中国の経済関係は拡大の一途をたどり、こまかい数字は忘れましたが、ドイツ・中国の貿易額はフランス・中国の貿易額の数倍に膨らみ、しかもフランスが大幅な対中赤字なのに比べ、ドイツは僅かではあるが黒字だとか。フランス2が取り上げていたのは、同じ時期にスタートした対中関係が、どうしてこんなに差がついてしまったのか?ということでした。

フランスなどとは違い、ドイツは相手国のニーズにあった製品を提供する。進出企業間のネットワークがしっかりしており、猟犬のように共同で狩りをする。対応も後先を考慮して計画的に行う。東ドイツ出身のメルケル首相は中国と雰囲気的にマッチするところがある・・・そういったことを挙げていたように思います。

一方で、独中両国の「特別な関係」(独政府高官)の進展で、欧州の対中政策の歩調に乱れが出かねないとの懸念を指摘する向きもあるようです。

****独中蜜月を欧州憂慮 債務危機で協力、航空機50機納入 協調乱れ「危険****
ドイツが中国との関係を一段と強化している。メルケル首相は今年2度目となる8月末の訪中で、欧州債務危機対応への協力を得ただけでなく、大型商談もまとめた。中国重視には債務危機打開や輸出拡大の狙いがあるが、両国の「特別な関係」(独政府高官)の進展で、欧州の対中政策の歩調に乱れが出かねないとの懸念も浮上している。

 ◆「特別な関係」
8月30、31日に訪中したメルケル首相は胡錦濤国家主席や温家宝首相と会談。温首相からはユーロ圏諸国の国債購入による資金調達支援を継続するとの約束を取り付けた。さらに、欧州航空機大手エアバスの旅客機50機納入など、総額60億ユーロ(約5900億円)超の取引も成立させた。

首相は30日の記者会見で、「中国はアジアの最重要パートナーだ」と明言。中国で活動するドイツ人記者が抱える「報道の自由」の問題やシリア情勢など、見解を異にするテーマへの深入りは避けた。

メルケル首相の訪中は2005年の就任後、計6回に上る。チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談するなど、当初見せた人権問題への厳しい姿勢も最近は控え気味で、関係強化への取り組みが目立つ。

今回の訪中は昨年始まった定期的な政府間協議で、7閣僚と20企業の代表が同行した。協議は来年開催の予定だったが、中国側が定着化のため前倒しを要請、ドイツが応じた。
ドイツにとって中国は欧州連合(EU)域外最大の貿易相手。EUの対中輸出の約半分、輸入の約4分の1を占めており、独中間の貿易総額は09~11年で1・5倍に急増した。危機で他のユーロ圏への輸出が伸び悩む中、今年も対中輸出を伸ばす。独政府高官は「EU域外でこれほどの関係を持つ国は他にない。特別な関係だ」と言い切る。

 ◆“共存”には罠
ドイツの対中重視の背景には、人民元の国際的地位向上を目指す中国がドルとの対抗上、ユーロ存続を望んでいるとの計算もある。

ただ、深まる対独関係をてこに中国が影響力を行使するのでは-との懸念もEUにはある。実際、メルケル首相は30日、欧州企業が中国製太陽電池のダンピング(不当廉売)調査をEUに求めた問題で「対話による解決」を促し、中国に配慮する姿勢をみせた。

シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)のハンス・クンドナニ氏は独中関係について、「ドイツと欧州全体にとり危険な状況だ」と指摘。独有力紙、南ドイツ新聞も「独中経済の“共存”には罠(わな)がある」と警鐘を鳴らしている。【9月2日 産経】
*******************

メルケル首相・温家宝首相ともに両国の良好な関係を称賛しています。
メルケル首相「ドイツと中国の経済関係は多くの点で好調であることは、今回の代表団そして私自身そして同行している経済界のデレゲーション(代表団)も2日の滞在中に確信することができました。」
温家宝首相「2つの国の協力関係はどのような力が加わろうと壊れることはありません。」

また、会談後にメルケル首相の紫禁城を見学した際には、温家宝首相がガイド役をつとめたとか。

経済パートナーとして最重要な立場にある点では、日中関係も同様ですが、最近の緊張をはらんだギクシャクした状況は周知のところです。
隣国という関係にあると、経済関係だけでなく、歴史的問題、文化的軋轢、更には政治的問題あるいは領土・国境や安全保障上の観点など、いろんな要素が絡み合ってきます。
そうは言っても、メルケル・温家宝両首脳の打ち解けた感じは、少し羨ましくも思えました。

温家宝首相「(欧州経済危機を)内心は心配している」】
なお、メルケル首相はエアバスやドイツ製品などの経済的売り込みだけをやっていた訳ではなく、欧州各国の国債購入などでの、欧州経済危機に対する中国の協力を要請しています。

****中国、欧州の国債購入継続 温首相、条件付きで****
中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相は31日まで北京を訪れていたドイツのメルケル首相に対して、「リスクがコントロールされている」ことを条件に、欧州各国の国債を買い続けることを約束した。
同時に、独仏など欧州連合(EU)の大国が、財政危機に直面するギリシャやスペイン、イタリアを支援するよう注文をつけた。

中国にとって最大の貿易相手であるEU向けの輸出額は7月、前年同月比で16.2%減。これが響いて全世界向けでも1.0%増と2年8カ月ぶりの低水準にとどまり、景気の減速感が強まっている。
欧州経済の悪化が自国の経済に大きな影響を与えるだけに、市場に安心感を与える発言をしたもの、とみられる。欧州各国は世界一の規模の外貨準備高を持つ中国から国債や企業への投資を期待している。

温首相は30日の会談後の共同会見で、欧州の政府債務(借金)危機に対して「内心は心配している」と述べ、メルケル首相から説明を受けても「正直に言えば(対策は)順風満帆には進まないだろう」と牽制(けんせい)し欧州に結束を促した。また両国は電気自動車、高速鉄道、再生可能エネルギーなど中国が求める先端技術分野での協力にも合意した。

メルケル首相は7人の閣僚とともに訪中した。胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席や温首相のほか次期政権トップと目される習近平(シー・チンピン)副主席、李克強(リー・コーチアン)副首相とも会談し、関係の構築に努めた。人権やシリア問題などで立場の差はあるものの、エアバス50機35億ドル(約2800億円)の商談をまとめるなど、経済面で成果を得た。

メルケル首相の訪中は就任以来6度目、今年に入って2度目と、欧州が危機に見舞われるなかで中国重視を強めている。(北京=吉岡桂子) 【9月1日 朝日】
***********************

温家宝首相は「欧州の債務問題は引き続き悪化しており、私も心配している。欧州が緊縮財政と経済刺激策のバランスを見つけることを希望する」と語っています。
ギリシャやスペイン、イタリアなどの将来は、ドイツがどこまで支援するかに大きく依存しています。
欧州経済が混乱すれば、欧州を最大の取引先とする中国経済が怪しくなり、ひいては中国を最大の取引先とする日本経済にも影響します。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イラン  「非同盟諸国会議... | トップ | カナダ  ケベック州議会選... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

欧州情勢」カテゴリの最新記事