孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラク  ISから奪還したシンジャル ヤジディ教徒の悲劇 報復行為の懸念も

2015-11-16 22:29:42 | 中東情勢

(昨年8月 ISの攻撃からシリア側に逃れるヤジディ教徒 【2014年8月14日 The Huffington Post 】)

「イスラム国(IS)」との戦いを続けるイラク軍は、今春以降、ユーフラテス川沿いの要衝ラマディの奪還作戦を続けていますが、ISの抵抗にあって大きな前進は見られていません。

そうした中で、ISを追い詰めつつあるのがクルド人勢力で、米軍主導の有志国連合による空爆の援護を受けながら要衝シンジャルをIS支配から奪還したことは、一昨日のパリ同時テロを扱ったブログでも取り上げたところです。

****<イラク>要衝をISから奪還 クルド治安部隊****
イラクのクルド自治政府の治安部隊ペシュメルガは13日、シリア国境に近い町シンジャルを過激派組織「イスラム国」(IS)から奪還した。シンジャルはISが実効支配するイラク北部モスルとシリア側をつなぐ幹線道路上にある要衝で、自治政府はモスルを孤立化させ、攻略に弾みをつけたい考えだ。(後略)【11月14日 毎日】
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イラク北部シンジャルは“ISは、この地域で暮らす少数派のヤジディ教徒に対し、「悪魔を崇拝している」として迫害を加え、多くの女性を連れ去ったほか、数千人を殺害したとみられています。これがきっかけで、アメリカは去年8月にイラクでISに対する空爆に踏み切ったほか、国連も「宗教や民族を理由にした虐殺だ」と非難しています。”【11月16日 NHK】と、ISとの戦いの転換点ともなった場所です。

奪還されたシンジャルでは、ISによって殺害された見られるクルド系少数宗派ヤジディ教徒の遺体が多数見つかっています。

****集団墓地で130遺体発見=「イスラム国」が虐殺―イラク北部****
イラク北部シンジャルで、過激派組織「イスラム国」が虐殺したとみられる地元のヤジディ教徒の集団墓地が確認され、イラクのクルド系メディア「ルダウ」によると、16日までに130遺体が発見された。

シンジャルは13日、クルド人部隊が「イスラム国」から奪還した。その後の捜索で、14日に女性80人、15日に男性50人が埋められているのが分かったという。

「イスラム国」はヤジディ教を邪教扱いし、信者に迫害を加えてきた。治安当局者はルダウに「罪のない人々の殺害だ」と語った。イラクではヤジディ教徒以外でも「イスラム国」から解放された地域で集団墓地が相次いで見つかっており、大規模殺害の実態が改めて浮き彫りとなった。(後略)【11月16日 時事】
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“地元議員の一人はAFPに、墓穴は町はずれにあり、まだ遺体の発掘は行われていないが、40~80歳くらいの女性78人の遺体が埋まっているとみられると述べ、さらに、ISは女性を性奴隷として売買しており、「(ISの)戦闘員らは若い女性だけを奴隷にしたかったようだ」と語った。”【11月15日 AFP】とのことで、殺害された女性は中高年で、若い女性は性奴隷として連行されたとも思われます。

ISは「悪魔を崇拝している」としてヤジディ教徒を迫害していますが、その女性を性奴隷として拉致・売買していることはかねてから報じられているところです。その実態は悲惨なものです。

****イスラム国、性奴隷の凄惨な実態。元奴隷女性の告白(イラク****
イラク北部でその信仰から虐殺の危機にあるクルド系少数宗派ヤジディ教をご存知であろうか。

昨年8月にイラク北部のシンジャー地区から数百人の女性や少女が誘拐され、5000人以上の男たちが殺害された。捕らわれの身となった彼女たちはISIS戦闘員たちの性奴隷として苦難の日々を送っている。

ヤジディ教はイスラム教の教えにゾロアスター教や古代ペルシャの宗教、ミトラ教が入りまじった豊かな伝統を持った宗教である。その教徒は60万人とも言われるが、ISIS(自称イスラム国)からは悪魔を崇拝する信仰としてこれまで何度も迫害を受けてきた。

普通の幸せな生活をしていたというBushraさん(21)、Noorさん(22)、Muniraさん(16)の3人の女性(いずれも仮名)。ISISに突然村を襲われ、家族からも引き離され、性奴隷として過ごしてきた。

幸運にもISISから逃げ出すことに成功した彼女たちが、その真実を知ってもらいたいと苦渋に満ちた自らの体験を『CNN』のインタビューで語った。

Bushraさんによると、誘拐された少女たちはまずISIS内の産婦人科医のもとに連れて行かれ、処女であるかどうか、妊娠していないかどうか調べられるという。

妊娠3か月だった友人はすぐさま別の部屋に連れて行かれ、2人の医師によって堕胎処置がとられた。出血がひどく話すことも歩くこともできない状態だったにもかかわらず、彼女は残酷にもレイプされた。

Bushraさん自身も、レイプされるなら死んだほうがましと殺鼠剤を飲んだが死にきれず、病院で胃の洗浄を受け「そう簡単には死なせない」と脅されたそうだ。

若い女性や少女は動物のように扱われ、武器売買の交換要員、勇敢に闘った戦士への贈り物にもなる。Bushraさんは家族もヤジディ教も捨て、イスラム教徒に改宗し戦闘員と結婚することを強要された。そこには選択肢はなく絶望だけがあったという。

年老いて太った醜い男に選ばれそうになったNoorさんは恐ろしくなり、なりふり構わず他の戦闘員に自分と結婚してくれるように懇願して結婚した。

だがその後も「10人の戦闘員にレイプされればイスラム教徒に改宗できる」という考えを強制され、結局11人の男に次々とレイプされることになった。

イスラム過激派はコーランによってこれらの行為は正当化されていると主張している。NoorさんもBushraさんと同様に自殺をはかったが死にきれず、回復するやいなや再びレイプされたという。…

MuniraさんはISIS戦闘員に「ほうび」として2度売られ、3度目は他の少女とトレードされた。少女たちは一列に並ばされ、腹、歯、胸が念入りにチェックされる。男が気に入ると有無を言わさずレイプされた。

現在、この3人の女性は保護され新しい生活が約束されているが、いまだに捕らわれの身となった数百人の女性たちがいる。捕らわれた中には、絶望して自殺を図る女性が後をたたないという。

彼女たちが勇気をもって語ったISISの現状。誘拐された女性たちの一刻も早い救出を願ってやまない。【10月16日 TechinsightJapan 】
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9歳のヤジディ教徒の少女がISの戦闘員10人以上に強姦され妊娠したケースなど、このような話は昨年から繰り返し報じられています。

こうした経験をした女性が解放されても、再び村の中で生きるのは難しいものがあります。妊娠していると夫は受け入れないとも・・・

悪魔の所業と言わざるを得ませんが、当然のごとく迫害されたヤジディ教徒の憎しみは、ISと同じ宗派でISに協力した者もいるイスラム教多数派のスンニ派住民へ向けられます。

****ISから奪還の街、ヤジディー教徒がイスラム教徒の家に放火か*****
クルド人武装組織がイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から奪還したイラク北部シンジャルで、ISに迫害されてきた少数派ヤジディー教徒がイスラム教徒の家を標的として放火や略奪を行っていると、複数の目撃者が15日、明らかにした。

シンジャルでは13日、米軍主導の空爆に援護されたイラク・クルド人自治区の治安部隊がISに総攻撃をかけ、街を奪還した。

だが、匿名を条件に取材に応じた目撃者の1人は「イスラム教徒たちの家が略奪され、放火されている」と話した。特に、街がISに制圧された後で壁などに「スンニ(Sunni)」と印を書き込んだ家々が狙われているという。

この「スンニ」の文字は、ISに対し攻撃対象の家ではないことを知らせる目的で書き込まれたとみられる。

別の目撃者も、ヤジディー教徒らがイスラム教徒の家を略奪し放火したのを見たと語った。また、モスクの1つが放火されたとの証言もある。

これに対し、クルド人治安部隊はシンジャルで放火や略奪が起きているとの情報を否定。個々の目撃証言についても、事実関係は確認できていないとしている。

昨年8月、ISから逃れてきたヤジディー教徒らはAFPに対し、イスラム教徒の近隣住民たちがISに誰がヤジディー教徒かを教え、襲撃に加担していたと話していた。【11月16日 AFP】
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憎しみ・復讐の心情は当然ではありますが、憎しみと報復からは何も生まれないのも事実です。憎しみの連鎖が続くだけです。

パレスチナ・イスラエルでも、イラクの宗派対立でも、世界各地の民族・宗教対立でも、憎しみの連鎖を断ち切れないのが現実ではありますが・・・・。

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