孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  中国の進出を警戒(南シナ海・バングラデシュ・国境軍備)

2011-10-03 21:40:18 | 南アジア(インド)

(中国(左)インド(右)国境 “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/5662447341/

【「中国がインド包囲網を強めている」】
中国とインドは新興国の代表として、今後の世界経済・政治で大きな役割を果たすことが期待されていますが、互いに相手を意識したライバル関係にもあり、特に、「真珠の首飾り」とも呼ばれる中国のインド洋沿岸国の港湾建設を積極支援する海外戦略に対し、インドは、中国による「インド包囲網」と警戒を強めています。
また、インド側には、最近の南シナ海での中国の領有権主張に対する懸念もあります。

その中印両国が経済協力について意見交換する初めての「中印戦略経済対話」が9月26日、北京で開かれました。

****中印:北京で初の戦略経済対話 互いの不信感払拭が課題に****
中国とインドが経済協力について意見交換する初めての「中印戦略経済対話」が26日、北京で開かれた。
南シナ海を「核心的利益」と呼び、海洋権益保護を強く主張する中国に対し、インドは懸念を強めており、双方は良好な協力関係をアピールしつつも、互いの不信感をどう払拭(ふっしょく)するかが課題となっている。

両国の外務省によると、経済対話では中国の張平・国家発展改革委員会主任(閣僚)、インドのアフルワリア国家計画委員会副議長が共同議長となり、投資や環境保護、エネルギー分野などで協力を深め、国内経済の安定的成長を目指すことで一致した。南シナ海問題も議論されたとみられるが、公表はされていない。

経済成長著しいインドは、中国と同様にエネルギー確保を迫られており、ベトナム沖の南シナ海の大陸棚で石油・天然ガス開発事業を計画、国営企業など2社がベトナム側と交渉を進めてきた。
これに対し、中国外務省の姜瑜(きょうゆ)副報道局長は15日の定例会見で「中国が管轄する海域で、いかなる国の石油・ガス開発にも反対する」と述べた。インドのクリシュナ外相がベトナムを公式訪問し、ベトナムとの経済関係を推進させようとする矢先だった。

今年7月には、ベトナムに親善寄港しようと南シナ海を航行していたインド海軍の強襲揚陸艦「アイラバット」が、「中国海軍」を名乗る船から「中国の領海に入ろうとしている」との無線警告を受けた。インド外務省は今月1日、「南シナ海を含む公海における航行の自由を支持する。この原則はすべての国が守るべきだ」との声明を出し、中国側をけん制している。

一方、中国外務省の 洪磊(こうらい)副報道局長は26日の定例会見で、経済対話に関連し「双方の関係を絶えず発展させることを望む」と述べて批判は避けたが、インド側の動きを警戒していることは明らかだ。

インドと中国は国境線の一部が未画定で、貿易不均衡(インドの輸入超過)などもあり、インドとしてはこれ以上、関係を悪化させたくないのが本音だ。だが、中国がパキスタンとの軍事関係を推進し、スリランカなどインド洋諸国の港湾整備を進めているため、インドは「中国がインド包囲網を強めている」と神経をとがらせている。南シナ海における最近の「火花」は、「公海の自由航行」を訴える米国も巻き込み、問題が深刻化する可能性がある。【9月26日 毎日】
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ベトナムはバランス外交
インドが南シナ海大陸棚の資源開発で協力関係を目論むベトナムは、インドを巻き込む形で中国と厳しく対立しながらも、他方では、対立が過熱しないように中国との関係改善を模索する動きも行っています。
その際も、インドにも配慮するという、バランス外交を展開しています。

****ベトナム:書記長が初訪中へ 南シナ海問題でトップ会談****
ベトナムの最高指導者であるグエン・フー・チョン共産党書記長が11日から5日間の日程で中国を訪問、胡錦濤国家主席(共産党総書記)とトップ会談をすることが分かった。同党筋が3日、明らかにした。1月の書記長就任後、初めての訪中。中国によるベトナムの資源探査活動の妨害などで対立が強まっている南シナ海の領有権問題も話し合う見通し。

ベトナムは南シナ海問題に米国やインドなど大国を引き込み、対中けん制カードとする戦略を描いている。同筋によると、書記長訪中と同時期にナンバー2のチュオン・タン・サン国家主席がインドを訪問、バランス外交を展開する。

訪中では社会主義国同士の友好を演出、南シナ海問題の平和的解決などをうたうとみられるが、双方とも領有権で譲歩しないのは確実で、実質的な解決策を打ち出すのは難しそうだ。書記長は北京のほか、広東省も訪問する予定。【10月3日 毎日】
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バングラデシュで巻き返し図るインド
インドは、隣国バングラデシュへの中国の影響力拡大を警戒することもあって、9月6日にシン首相がバングラデシュを訪問しています。
隣国でもあり、また、パキスタンからのバングラデシュ独立にインドは大きく関与(インドの介入は第3次印パ戦争に発展し、インドの勝利でバングラデシュが独立)した経緯があるにもかかわらず、“インド首相の公式訪問は12年ぶり”というのは意外な感があります。
領土問題や両国を流れる河川の水資源の利用を巡り、独立後に関係が冷え込んだようですが、今回の首相訪問でこうした問題をクリアして、経済協力関係を進め、中国進出への巻き返しを図ることがインド側の狙いです。

****インド首相、バングラデシュ訪問 12年ぶり、にじむ対中警戒****
インドのシン首相は6日、隣国バングラデシュの首都ダッカを訪問しハシナ首相と会談した。インド首相の公式訪問は12年ぶりで、インドはバングラデシュとの関係改善に本腰を入れる構え。
背景には、名実ともに域内大国を目指すインドにとって隣国との良好な関係が不可欠である上、開発から取り残された同国北東部の経済発展につなげる狙いがある。バングラデシュで影響力を拡大させる中国への警戒感もにじむ。

PTI通信などによると、両首相は国境付近の飛び地約160カ所を交換し、国境線を画定させる議定書に調印した。
バングラデシュの独立を支えたインドだが、両国関係はこれまで、国境、移民、河川の共同利用などの問題で順調に推移してこなかった。バングラデシュ国内の対印感情も良くない。

その流れを変えたのが、2008年12月のバングラデシュ総選挙で首相に返り咲いたハシナ首相の昨年1月の訪印。ハシナ氏は、バングラデシュを、インド北東部の分離独立を求める武装組織やイスラム過激派の隠れ家にしないことなどを約束。見返りとしてインドはインフラ整備中心の10億ドルの借款を表明した。この訪問を機に両国関係は急速に改善に向かう。

しかし、6日の首脳会談では、焦点だったインド貨物にバングラデシュ内の通過を認めるための署名と、バングラデシュが望む河川の共同利用の合意は見送られた。インド・西ベンガル州のバナジー首相が首脳会談直前に河川の共同利用の内容に反発したためだ。
貨物通過はインドにとって同国北東部の経済発展に欠かせないため、インドは早急に国内合意を取り付け署名を目指すとみられる。インドにとってバングラデシュとの関係を後退させる余裕はない。

その大きな理由は、バングラデシュがインドとの関係が疎遠だった間に中国の関係を緊密化させたことにある。インフラ開発では中国に大きく依存しているほか、中国は最大の貿易相手国であるとともに、軍事面でも最大の兵器供給国だ。
インドのバングラデシュ専門家アナンド・クマール氏は、中国が08年、バングラデシュのチッタゴン港近くに建設されたミサイル発射台の技術支援を行ったなどとして、「インドをいらつかせるのに十分な支援を行っている」と指摘している。【9月7日 産経】
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インド・バングラデシュ国境に存在する多数の飛び地は、“ムガール帝国とマハラジャ(王侯)が支配した藩王国による17世紀ごろの領土争奪が発端。インド国内にバングラデシュの飛び地が51カ所、バングラデシュに111カ所のインドの飛び地がある”【9月7日 毎日】とのことです。

160も飛び地があったら、国境も訳がわからない状態でしょう。
両国は、国境付近に散在する約160カ所の飛び地を交換して国境線を画定させたことで、両国の長年の懸案だった領土問題が解決に向かうことになります。飛び地の住民はいずれかの国籍を選べるとのことです。

中国に「効果的な威嚇作用」を与えたい
インドと中国はかなり長い国境線で直接接する国でもありますが、中国側チベットと接するカシミール地方やインド北東部は、直接的な国境紛争の火種を残した状態にあります。
この国境線においても、中国側の軍備増強を警戒して、対抗策を講じる動きがインド側にあるようです。

****中国軍がチベットの軍備を強化、インドは「愚痴をこぼすだけだった」過去を反省―インド紙****
2011年9月28日、中国紙・環球時報(電子版)は、インドの英字紙ザ・タイムズ・オブ・インディアの報道を引用し、中国とインドの国境紛争について、中国がチベット自治区の軍備を増強していることを警戒したインドが対抗措置を取る意向を示したと報じた。

記事によると、インドのA.K.アントニー国防相は27日、今後2~3か月以内に中国と新たな枠組みを作り、国境問題の解決に努力したいと歩み寄りの姿勢を見せた。その上で、「平和と安定」を両国の実効支配線問題の基調とし、紛争はあくまでも「異なる認識」によるものとの見方も示した。

だが、その一方で、中国が「強い侵略性」をもって国境付近の軍備を増強しているのに対し、インドは今まであまりにもおそろかだったと認め、「今後は『愚痴をこぼす』だけでなく、具体的な措置を取っていく」と表明。実効支配線沿線の防衛を強化し、中国に「効果的な威嚇作用」を与えたいとの考えも示した、と記事はインドの二面性を強調した。【10月1日 Record China】
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