孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「解き放たれたトランプ氏」の時代  “嫌な方向に世界は向かっている”

2018-04-04 21:36:51 | アメリカ

(【4月4日 朝日】)

【「解き放たれたトランプ氏」の時代
人種差別・女性問題・銃規制・移民問題・温暖化問題等々に関する個々の政策・対応、アメリカ第一を掲げて国外の人権無視・非民主的な諸問題への無関心、何よりも、平気で嘘を並べ立てるような品格のなさ・・・・個人的にはアメリカ・トランプ大統領は嫌いです。

アメリカ国内の支持率も低水準にありますが、ひところに比べると上昇しているとか。

****トランプ米大統領の支持率上昇、42%に****
米国で今月実施された2つの世論調査で、ドナルド・トランプ大統領の支持率が前月の35%から42%へと上昇した。経済指標の好調が要因と考えられる。ただ、歴代大統領との比較では依然として低い水準となっている。
 
CNNの月例世論調査と、AP通信が全国世論調査センターセンターと共同実施している調査によると、トランプ大統領の支持率は2月の35%から3月は42%へと上昇した。いずれの調査でも誤差範囲は3.7ポイントから4.2ポイントとされる。
 
元不動産会社経営者のトランプ大統領は、引き続き世界第1位の規模を誇る経済のかじ取りを強みとしている。CNNの調査によれば、同大統領の経済運営のあり方を支持する国民の割合は48%で、支持しない国民の45%を上回った。
 
また、昨年12月に議会で可決された大幅減税も評価を得ており、AP通信とNORCの共同調査によれば、トランプ大統領の財政政策を支持する国民の割合は46%に上った。
 
一方、CNNの調査によると、通商政策とロシアへの姿勢は「甘過ぎる」と見られており、支持する国民の割合が低かった。
 
また、世論調査会社ギャラップが毎週実施している調査では、トランプ大統領の支持率は昨年5月以降40%未満が続き、上昇傾向は表れていない。
 
就任後430日前後の歴代大統領の支持率を比較すると、2010年3月のバラク・オバマ氏が49%、2001年9月11日の米同時多発テロ後、2002年3月のジョージ・W・ブッシュ氏が79%、1994年3月のビル・クリントン氏が51%だった。【3月30日 AFP】
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「うーん・・・・」といった感じですが、恐らくこうした支持率動向も十分に考慮したうえで(就任式の参加人数など、大統領はこうした“評価”を非常に気にかける性格のようですから)、人事面でブレーキ役だった面々を更迭して仲間内で政権を固めたトランプ大統領は、このところ出力全開モードを思わせるような決定を矢継ぎ早に行っています。

甘いとされている通商政策も、中国との貿易戦争も辞さない・・・という構えの施策で、国内的には点数を稼ぐのかも。

*****解き放たれたトランプ氏、「米国第一」の本領発揮****
移民・通商政策も軍事プレゼンスも、2年目は新たな次元へ
 
ドナルド・トランプ米大統領の就任1年目は、その型破りなスタイルはさておき、実際にはかなり伝統的な共和党保守派として国家を統治しているように思える時期が続いた。
 
だがその時期も終わり、次に迎えたのは「解き放たれたトランプ氏」の時代だ。
 
それが顕著に表れたのはトランプ氏が3日に行った3つの衝撃的な宣言だ。この宣言を総合すると、同氏がナショナリズムに基づく米国第一主義をより純粋な形で実行しようとする姿がほぼ完璧に浮かび上がる。
 
トランプ氏はまず、米軍をシリアから撤退させる意向を表明した。2001年9月11日の同時多発テロ発生後、同じ共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が着手した中東安定化策から手を引くことになる措置だ。

トランプ氏は同時に、米軍をメキシコ国境の警備にあたらせる方針を示した。これまで強硬に主張してきた移民政策を後押しする、あからさまな提案だ。

これが実現すれば、大統領選前の選挙運動で訴え続けた不満に、文字通りの対策を講じることになる。オーバルオフィス(大統領執務室)の前任者たちは共和党であれ民主党であれ、米国が自力で自国の国境を守るのではなく、他の国々が自らの国境を守るのを支援することに注力していた。
 
最後にトランプ政権は3日遅く、中国が通商・投資政策を改めない限り、総額500億ドル(約5兆3200億円)相当の中国製品に25%の関税を課すとする追加関税案を発表した。

これは長期的な政策転換というより、中国との交渉材料にするつもりらしい。それでも当面はこうした措置が自由貿易を標ぼうする共和党の伝統的路線を揺るがし、金融市場を混乱させる十分な要因になるだろう。
 
トランプ時代が新たな段階を迎えた兆候は、この3つの動きだけではない。わずか数週間前、幼少期に親に連れられて不法入国した若者(ドリーマー)の救済制度を存続させたがっていると思われた大統領――民主・共和両党の主流派政治家もその点は一致している――がいまやドリーマーを巡る交渉の余地はないと語っている。
 
さらに同氏は明らかに個人的判断で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との首脳会談を行う意志を固めた。

外交政策のエスタブリッシュメント(既成勢力)や政権メンバーの一部は、その考えが無分別であり、恐らく危険だとみている。首脳会談がプーチン氏の暴力的な振る舞いに見返りを与え、非人道的な金体制を正当化する可能性があるからだ。
 
だがトランプ氏は自己の能力を確信しているようだ。面と向かって相手を説得し、思い通りに他人を操縦できると考えている。
 
こうした全ての局面で、トランプ氏は就任1年目にはめられた足かせを振り払って行動しているように見える。

同氏を既定路線に近づけようと試みた側近ら――ゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長、レックス・ティラーソン国務長官、H・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)、ロブ・ポーター秘書官――は全員、ホワイトハウスを去った。その空白を埋めつつあるのが、大統領の直観を否定するのではなく、それを励ますような外部の友人や非公式のブレーンだ。
 
一方、共和党が過半数を占めるとはいえ、米議会が今年、特に大きな成果を上げる見通しは後退しており、トランプ氏が共和党指導部と歩調を合わせることに腐心する理由は見当たらない。
 
共和党指導部は昨年からこぞって、共和党主流派の政策を推進するためにトランプ氏の背中を押してきた。彼らが目指したのは医療保険制度改革法(オバマケア)を撤廃し、減税案を成立させ、規制緩和を推進し、紛争地域とされる場所に米軍を駐留し続けることだ。

その間、貿易や移民問題に対する同氏の衝動にはふたをしてきた。

だが今や周囲を取り巻く状況が変わり、「大統領は白紙の状態を与えられた」。共和党議員やブッシュ政権幹部などの補佐官を務めたロン・ボンジーン氏はこう指摘する。

「この1年間はワシントンを騒がせたが、今度は公約したことを忠実に遂行し、2016年の選挙戦で掲げた哲学、つまり米国第一主義を実現しようとしている」
 
もちろん、トランプ氏にもいくつかの制約はある。米軍の指揮官はシリアの友好的な民兵組織を助けてきた米軍の比較的少人数の部隊を撤退させないよう同氏の説得を試みるだろう。シリアでは過激派組織「イスラム国(IS)」の残党との戦闘が続いており、同国で影響力を拡大するロシアやイランへの重しとしてこの活動が機能している。
 
その一方で、トランプ氏が自分の手柄だとしてきた好調な米株市場がこのところ下落に転じたため、貿易を巡る攻撃の手を緩めざるを得なくなる可能性もある。

同様に、11月の中間選挙で議会の主導権を奪われないため、休暇明けで来週ワシントンに戻る共和党議員たちが、中国に追加の輸入制限を発動しようとするトランプ氏を抑えにかかるだろう。

中国が2日、米国の農産品を対象に報復関税を実施したことで、すでに米中西部の保守州に住むトランプ支持者には不安が広がっている。
 
ただ、ボンジーン氏によると、トランプ氏は引き続き慎重に状況を見極めるはずだという。ここ数日、同氏の支持率が徐々に上昇しており、「米国第一主義の政策推進と、支持率の推移を確実に結びつけるだろう」からだ。【4月4日 WSJ】
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共和党指導部は、自分たちが一体何者をホワイトハウスに迎え入れたのか・・・改めて考えているのではないでしょうか。

上記記事に挙げられた施策(シリア撤退、軍による国境警備、中国との貿易戦争、北朝鮮・ロシア問題)のほか、環境規制でも、オバマ政権時代の自動車の厳しい燃費規制を「間違いだった」として緩和することを発表しています。

同時に、民主党支持勢力の西の牙城でもあるカリフォルニア州の独自の規制を問題にして、その権限をはく奪しようとする動きも見せています。

【「メッセージの読み上げを強いられる戦争捕虜になったようだった」】
大統領は、自分に都合が悪い報道・ニュースを“フェイクニュース”として攻撃してきましたが(その動きはあめりかだけでなく、政府批判を封じ込めたい国おける“流行り”ともなっています)、不気味なのは、そうしたメディア報道の在り方への規制を強めようとして動きです。

トランプ大統領を支持する巨大メディア企業傘下の地方テレビ各局のアナウンサーが統一したメディア批判を読み上げさせられる・・・・という事態に。「メッセージの読み上げを強いられる戦争捕虜になったようだった」との懸念も。

****米巨大メディア、193局を統制 シンクレア「一言一句変えてはならない****
米国の地方テレビ193局を保有する巨大メディア企業「シンクレア」が、傘下局に対する統制を強めている。

内容そのもの以上に、各局のアナウンサーが統一したメディア批判を読み上げさせられる姿に「民主主義の危機」との懸念が広がっている。

 ■大統領に同調か
米国の地方局では、主要局制作のドラマやバラエティー番組の合間に、30分程度の地域密着型のニュースを放送することが多い。メッセージはこうした番組の枠内で読まれている。

表向きはフェイクニュース批判だが、実際には主要メディアと対立するトランプ大統領の言い分に同調しているとの見方が大半だ。
 
3月上旬にこうした動きを報じたCNNによると、シンクレアは各局に対し、メッセージをコマーシャルではなくニュース番組の時間内に読み上げるよう指示。「一言一句変えてはならない」と念も押したという。

アナウンサーの一人は「メッセージの読み上げを強いられる戦争捕虜になったようだった」と話した。
 
シンクレア社は「メッセージはニュースへの市民の不信感に応えたもの。公正で客観的な報道を推進する取り組みが攻撃されるのは皮肉」と反論している。
 
米国ではかつて米連邦通信委員会(FCC)が、放送局に対して、賛否両論がある問題の報道について双方を公平に紹介する「公平原則」を義務づけていた。だがこの原則は1987年に廃止された。
 
米調査機関ピュー・リサーチ・センターの2017年の調査によると、米国民が最も頻繁にニュースを知る手段として、地方テレビ局(37%)はニュースサイト(33%)やケーブルテレビ局(28%)、新聞(18%)より優位に立つ。
 
シンクレアは保守的な立場で知られ、米メディアによると、大統領選の際は民主党候補に批判的な報道をしていた。

傘下の局には、保守派論客のコメントや、イスラム教徒への反感をあおるようなテロ情報など、保守派に歓迎される内容の素材が「絶対放送」の指示で送られるという。地方ニュースとのかかわりが薄い内容で、現場には戸惑いが大きいという。

 ■買収拡大の構え
こうした統制は今後も強まりそうだ。トランプ政権は1社が保有できるテレビ局数の規制を緩和した。90年代以降に買収を重ねて拡大したシンクレアは昨年、約40の地方テレビ局を保有する別の企業を買収すると発表。政府が審査中だ。

買収が認められればニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスの地方局も同社傘下に入り、全米の7割の世帯に放送が届くようになる。
 
日本の総務省の資料によると、米国のテレビ局の総数は1784局(15年9月現在)。ABC、CBS、NBC、FOXの4大ネットワークが多数の系列局を持つほか、各地に独立系の放送局がある。

 ■シンクレアの批判メッセージ要旨
米ニュースサイト「デッドスピン」が報じた、シンクレアによる「フェイクニュース」批判のメッセージの要旨は以下の通り。
     ◇
いま無責任で、一方的なニュース記事が私たちの国を悩ませています。一部メディアはこうしたフェイクニュースを発信しています。真実ではないだけでなく、事実の点検さえもしていないのです。
 
不幸にも、一部の報道関係者はメディアを利用して個人の偏見を押しつけ、「人々の思考」を支配しようとしています。これは民主主義にとって極めて危険なことです。
 
私たちには真実を追求し、報道する責任があります。私たちは真実が政治的に「右でも左でもない」ことを理解しています。
 
私たちは真実を追い求め、公平でバランスがとれた、事実に基づくニュースを発信するために努力します。【4月4日 朝日】
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経済と安全保障の2つをリンクした取引 嫌な方向に世界は向かっている
中国との通商問題は、知的財産の侵害などを理由としたアメリカ側の高率関税措置、それに対抗する中国側の報復措置が連日の話題となっています。

トランプ大統領は“嫌な奴”で“エキセントリック”ですが、馬鹿ではないので、支持者向けのジャブの応酬から、このまま体力勝負の打ち合いにもつれこむことはないのではないでしょうか。

おそらくどこかで、中国側と“取引”、それも北朝鮮問題など安全保障問題も絡めた“取引”に持ち込んで、“ウィン・ウィン”の関係を・・・と考えているのではないでしょうか。

日本としては、米中の“ウィン・ウィン”の関係が生まれれば、そこからはじき出されてしまいますし、米中の“体力勝負の打ち合い”になれば、世界経済は疲弊し、日本もダメージを受ける・・・ということで、どっちに転んでもいい話はなさそうです。

****米国の同盟国は大変なことになる。裏切られる予定の日本に起こること****
米経済外交の方向
トランプ大統領はビジネス取引(ディール)を外交交渉にも持ち込み、経済と安全保障の2つをリンクした取引になり、米国の同盟国は大変なことになる。それを検討しよう。

0. 韓国への要求
トランプ大統領の選挙時の公約を見ると、世界から米軍を引き揚げて、世界とは関わらないようにする方向としていたが、国際派の政権幹部を辞任させたことで、一層鮮明になっている。

北朝鮮との首脳会談を控え、金正恩委員長は、首脳会談失敗に備えて、北京の習近平国家主席と会談を行い、(中略)習近平国家主席は、会談不調時に米軍が北朝鮮に侵攻したら、中国軍が介入することを保障するが、その条件は朝鮮半島の非核化であるとしたのだ。中国が北朝鮮の安全と非核化を取引した。

これで、米朝首脳会談の成功は、ある程度見通すことができることになった。北朝鮮が核を放棄して、その代わりに、米軍は核弾頭とともに韓国から引き上げるということである。(中略)

1. 日本の番がくる
この取引成功で、次に日本の番である。4月中旬に安倍首相がトランプ大統領と首脳会談を行う。

安倍首相と友達であるから、トランプ大統領は、あまり強硬な要求をしないと評論する人がいるが、それは間違いである。トランプ大統領は、始めは様子見をしていて、相手の手の内を知ってから、自分に有利な取引を行う。

安倍首相が安全保障上の問題を重要視していることがわかり、経済問題とのバーターを言い出すに決まっている。今までの外交交渉とは、大きく違うことを念頭に入れるしかない。

交渉で米国の要求は、日米FTAの開始と通貨安防止策として円ドル固定相場か、米国も実施する金利調整の金融量的緩和が許すと思うが、通貨安誘導の金融量的緩和政策の制限を言い出す可能性がある。

それと、日本企業の米国での生産を一段と推進することを求められる。その見返りが日米同盟の維持で、日本が日米FTAを固辞すると、日米同盟破棄を米国は言い出すことになる。米国は一切、身を切らない一方的な要求になる。

トランプ大統領は、自分を支持する人の利益になり、支持者が喜ぶことを行うので、自分の好き嫌いで政策を行っていない。最初、喧嘩した対米貿易赤字国のオーストラリアは、鉄鋼・アルミ高関税の適用除外国にしている。

外交当局や防衛当局の連帯も、トランプ大統領は無視するから、この取引を日本は了承するしかない。

トランプ政権の幹部が、全員ナショナリスト達であり、自由貿易という考え方も自由主義圏を守るという考え方もない。米国の鎖国化を進めると脅して、同盟国に経済的な要求を行うだけである。

同盟国に対して、軍事力と経済をバーターすることをトランプ政権は行うし、対抗する中国に対しては、対米貿易での黒字を失くして経済力を削ぐ方向になる。これが、アメリカ・ファーストの戦略である。

徐々に日本は、米国の代わりにインドやベトナム、インドネシアなどと連携して、中国の拡張を抑えることになる。同様に欧州は米軍なしにロシアの膨張を抑える。そして、米軍のシリア撤退が決まり中東地域は米軍撤退の後、ロシアの覇権が確立する。全体的には日欧は連携して、中ロ膨張をけん制するしかない。

それとともに、日本は、軍事衝突が起きないようにロシアと中国ともに友好関係を築くことになる。

要するに、米国なしの世界軍事バランスを構築し、言い換えると世界秩序を再構成することになり、これで昔も今も国家全体主義国が世界的な隆盛になる。

嫌な方向に世界は向かっている。第2次大戦前夜に似てきている。ドイツのヒットラーが独裁政権を樹立したことと、中国の習近平国家主席が独裁制を確立したことはよく似ている。そして、国家全体主義が世界的に流行る現象も同じになる。

米国との貿易で黒字になる日本や中国に、米国債を買わせる今までのグローバルでリベラルな世界秩序は終了して、ブロック経済の時代になることを意味する。その準備を日本もするべきであったが、現時点は金融量的緩和政策一本やりであり、その準備ができていない。(後略)【4月4日 津田慶治氏 MAG2NEWS】
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個人的には津田氏の予測に賛同している訳ではありませんが、“解き放たれた”トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”のもとではこれまでの常識は通用せず、これまでにない発想の対応も必要とされるという点では同意です。

それと“嫌な方向に世界は向かっている”という点でも。
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