孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

サウジアラビア  初の女性参政権行使 20人ほどが当選 しかし、未だ少ない女性の有権者登録

2015-12-14 21:38:07 | 中東情勢

(サウジアラビアの首都リヤドのショッピングモール前で、女性の運転が禁じられているために、自分が乗る車の運転手を待つ女性たち(2011年9月26日撮影)。【12月12日 AFP】)

イスラム教の戒律が厳しく求められるサウジアラビアは、世界で唯一、女性による車の運転が認められていないなど、女性に権利が著しく制限されている国です。
(女性の権利どころか、人間の生きる権利が保証されていないシリアや一部アフリカ諸国のような国もありますので、女性の権利だけを持ってその国の状況を云々することもできませんが)

ただ、そんなサウジアラビアにあっても、前国王の意向などもあって、若干の改善が認められること、具体的には、女性参政権が認められたことなどは、2011年9月27日ブログ「サウジアラビア 女性の参政権を認めることで「アラブの春」に対応」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110927)でも取り上げました。

それから随分と時間が経過しましたが、ようやくその改革の成果が現実のものとなりました。
(なお、当選者数については、報道時刻や引用情報の違いもあって、各社報道によってバラつきがあります)

****女性が初の立候補と投票、サウジで20人が当選 それでも議席は1%に満たず****
サウジアラビアで初めて女性の立候補と投票が認められた12日の自治評議会選は13日、開票が行われ、AP通信によると20人の女性候補が当選した。

サウジで徐々に進む女性の社会進出を促すものと期待されるが、女性の当選は公選議席の1%未満にとどまっており、社会の保守性を改めて浮き彫りにする結果ともなった。

自治評議会(任期4年)は各州知事の助言機関。権限が非常に限定的ながら、サウジでは唯一、メンバーの大半が公選される機関で、選挙が行われたのは2005年以降、今回で3回目。今回は、国王の承認による任命枠を除く全国約2100議席に男性5千人以上、女性約1千人が立候補した。

サウジでは、今年1月に死去したアブドラ前国王が将来の産業構造の変化などを見据えて女性の就業を促す政策をとるなど、徐々にではあるが女性の社会参加を容認する傾向が出ている。女性への地方参政権付与もその一環だ。

ただサウジは、イスラム教でも特に保守的なワッハーブ派を奉じており、女性の家庭外での活動には宗教界を中心に反発がある。あらゆる場面で男性の保護下にあるべきだとの観念も強く、今回の選挙では女性の有権者登録は全体の10%未満にとどまった。

女性が初参加した今回の評議会選がサウジ社会にとって画期的であることには違いないが、定着するまでにはなお時間がかかりそうだ。【12月14日 産経】
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自治評議会は地方政府の助言機関で、立法権はなく、活動分野はインフラ整備などに限られています。
今回は、全国に284ある評議会の約3000議席のうち、任命枠を除く約2000議席が争われました。

国王の助言機関である諮問評議会(定員150人、任命制)では、アブドラ前国王が2013年1月に女性30人を任命しています。

選管当局によると、今回の自治評議会選挙に立候補した女性は979人、有権者登録をした女性は13万637人。これに対して男性は5938人が立候補し、登録有権者は130万人強でした。

サウジアラビアのような国あっては、なかなか女性の選挙運動は大変です。

“女性候補者は選挙戦中、男性有権者に対面で訴えかけることは禁じられ、仕切り越しに主張を訴えたり、代理人に代弁してもらったりした。ソーシャルメディアの活用も目立った。”【12月14日 毎日】

なお、顔をパンフレットなどに出せないのは男女とも同じのようです。

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サウジアラビアで女性は、公共の場でアバヤと呼ばれる黒い衣装などで全身を隠す必要がありますが、最近では顔を隠さずに行動する女性が増えてきています。

今回の選挙戦では、有権者が容姿などで判断しないよう、男女とも、パンフレットやビラのほか、ソーシャルメディアなどで顔写真を掲載することが禁じられています。

また、選挙運動の集会については、ホテルのホールや臨時のテントなどで男女分かれて行う必要があり、女性の候補は男性に顔を見せることはできません。【12月13日 NHK】
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女性候補のひとり、西部ジッダで立候補した開発コンサルタントのラシャ・ハフジーさん(38)は電話取材に「女性や若者の声が政治に反映される社会にしたい」と語っていました。

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立候補受け付けや有権者登録は今年8月に始まった。ハフジーさんは、以前から災害支援策の助言などを通じて自治評議会の活動に参画していた。友人の勧めもあり、「公共政策により深く貢献したい」との思いから立候補を決めた。

ソーシャルメディアでは、女性候補たちに否定的な声もあるが、ハフジーさんは「応援してくれる女性や若者の声の方が圧倒的に強い」と感じている。内陸部に比べて開放的な紅海沿岸のジッダの土地柄も「私にとっては追い風になった」と語る。

選挙運動は11月下旬に始まった。ハフジーさんはジッダ市内にテントを設け、女性や評議会の役割などをテーマに演説会を開くなどしている。「男女の区別なく、地方自治という考え方を広めたい」と語る。

今回の選挙で、有権者登録の手続きを済ませた女性は約13万人で、女性人口の1%程度。男性は約135万人が有権者登録しており、投票者の多くは男性が占めることになる。ハフジーさんは「結果は分からないが、今回の選挙で踏み出した道を今後も歩み続けたい」と話した。【12月3日 毎日】
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結果は、“女性の当選は公選議席の1%未満にとどまっており、社会の保守性を改めて浮き彫りにする結果ともなった”【前出 産経】とのことですが、「女性候補が当選するのは難しいのでは・・・」といった見方もあった選挙前の予測からすれば、むしろ“20人もの当選者が出た”という感もあります。

いずれにしても、第1歩ですから、これから段々と・・・といったところです。

当選者の数より気になるのは、女性有権者の登録数が未だ少ないということです。「女性候補が当選するのは難しいのでは・・・」という見方も、この女性有権者登録が少ないことから言われていたことです。

有権者登録の手続きを済ませた女性は約13万人で、女性人口の1%程度でした。
女性の登録有権者数は全体の登録者約150万人の10%未満にとどまっています。

この背景には、“制度が周知されていなかったことに加え、保護者の男性親族や夫の理解を得られない人が多かったとみられること”【12月12日 産経】“女性の選挙参加のプロセスや重要性に関する認識が不十分だったり、女性は自分で運転できないために有権者登録に行けなかったりなどし、役所での手続きレベルで女性の有権者登録が妨げられたという声も上がっている。”【12月12日 AFP】といったことが挙げられています。

女性自身の認識の問題と、男性親族や夫など男性側の理解の問題というところです。

今後、今回選ばれた女性評議員の活動を通じて、社会全体の理解が進むことが期待されますが、どうでしょうか・・・。
男性からの反発も強まりでしょうから。

なお、サウジアラビアの女性の置かれている状況については、以下のようにも。

****サウジ女性が今も禁じられている9つの事柄****
12日、公職選挙に女性が初めて参加したサウジアラビア。世界で最も女性の権利が制限されているサウジアラビアでは今も、女性たちには次のようなことが禁じられている。

・運転──世界で唯一、女性の運転が禁じられている国。
・旅行──後見人となっている男性家族の同意なしに旅行はできない。
・結婚──後見人の同意が必要。
・仕事──後見人の同意が必要。
・衣服──頭からつま先までを覆う「アバヤ」と呼ばれる黒い布の衣装を着用しなければ、公の場に出てはならない。
・相続──男性と同額の遺産は受け取れない。
・職種──一定の職種には就けない。
・社交──レストランのような公の場で、親族でない男性と交流してはならない。
・離婚──男性のように簡単に離婚できない。
【12月12日 AFP】
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