孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エボラ出血熱  終息の目途は不透明 ギニアでの封じ込めが難航

2015-04-07 21:02:00 | 疾病・保健衛生

(3月29日時点の状況 ブルーの濃淡はこれまでの患者数 黄色い円の大きさがここ3週間の新規患者数 オレンジの円の大きさがここ1週間の新規患者数を示しています。(WHO資料)【Hazard lab】http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/9/6/9600.html
黄色、オレンジの円はギニア・シエラレオネ国境付近(沿岸部)に集中しています。ただ、ギニアは症例に関する報告体制が行き届いていないとも指摘されています。

WHO「今年半ばまでに感染を止めることはできるはず」】
最近あまり報じられることがなくなった西アフリカのエボラ出血熱ですが、今年1、2月頃は新規感染者も減少して「4月頃には終息・・・」という声も聞かれました。

しかし、完全に封じ込めるのは困難なようで、依然としてくすぶり続けています。
4月からは雨季に入り、支援活動も困難になることも懸念されています。

終息の目途としては、“今年半ば”が想定されていますが、どうでしょうか。

****エボラ熱死者1万人超=勢い鈍化、終息も視野―西アフリカ****
世界保健機関(WHO)は12日、流行が続くエボラ出血熱による西アフリカ3カ国の死者(疑い例含む)が1万人を超えたと発表した。感染者(同)はこれまでに2万4350人に上っている。

死者はリベリアが4162人、シエラレオネが3655人、ギニアが2187人で計1万4人。感染者が最も多いのはシエラレオネで1万1677人。ただ、流行の勢いはこのところかなり鈍化している。

エイルワード事務局長補は11日の記者会見で、十分な対策の継続が条件としながらも、「今年半ばまでに感染を止めることはできるはず」との見通しを示した。【3月13日 時事】
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リベリア ほぼ封じ込め状態へ
改善傾向が顕著なリベリアでは、“エボラウイルスが猛威を振るったリベリアで5日、感染が確認されていた最後の患者が退院した。また世界保健機関(WHO)は4日、リベリアで今月1日までの1週間に報告された新規患者数は、これまでの9か月間で初めてゼロだったと発表した。”【3月6日 AFP】と、4月中の終息宣言も期待されていましたが、新規感染者の発生が報じられています。

****リベリア首都でエボラ熱の新規患者を確認、約1か月ぶり****
リベリア政府は20日、首都モンロビアで、約1か月ぶりに新規のエボラ出血熱患者が確認されたと発表した。

エボラ出血熱のピーク時には最も大きな打撃を受けこれまでに4000人以上がこの病気で死亡したリベリアだが、現在は新規患者がほぼ出なくなる感染終結期にあり、4月中旬にもエボラ出血熱感染終結宣言が出されるとみられていた。

リベリア政府のルイス・ブラウン報道官は、「女性1人が新たにエボラ出血熱に感染したことが確認された。それまでの27日間はただ1人の新規患者も出ていなかった。(エボラ熱をめぐる状況は)後退した」とAFPに述べた。(後略)【3月21日 AFP】
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結局、この女性は死亡しましたが、他にも2人の感染者が新たに報告されてるとも報じられています。【3月30日 AFPより】 日本厚生労働省HP(4月2日)では、3月29日までの1週間に新たに報告されたエボラ出血熱の確定患者はなかったとのことです。

ギニア:減少傾向 外出禁止令や長期間に及んだ学校閉鎖の社会影響も
ギニアとシエラレオネでは、3月29日までの1週間にそれぞれ25人、57人の感染が新たに確認されるなど、予断を許さない状況が続いています。

ただ、シエラレオネは4週連続で減少しています。

そのシエラレオネでは、3月末には3日間の外出禁止令を出して、徹底的に感染者を把握しようという対策がとられました。

****シエラレオネ、エボラ対策で250万人に3日間外出禁止令****
シエラレオネ政府は19日、エボラ出血熱の流行収束のため、首都周辺と北部に住む約250万人に27日から3日間の自宅待機を命じると発表した。

シエラレオネ国立エボラ対策センター(NERC)のパロ・コンテー氏によると、自宅待機は今月27日~29日に実施。対象は首都フリータウンを含む西部と、北部のボンバリ、ポート・ロコの2県で、戸別調査を行って当局が把握していない感染者がいないか確認する。

シエラレオネでは昨年9月にも、エボラ出血熱の感染拡大を阻止するためとして全土に3日間の外出禁止令を出していた。【3月20日 AFP】
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しかし、こうした措置は市民生活にも大きな犠牲を強いるもので、当局側の一方的な措置に対して反発も出ています。

****エボラ出血熱 外出禁止措置で暴動発生****
エボラ出血熱の流行が続く西アフリカのシエラレオネでは、感染を抑え込もうとすべての国民を対象に外出禁止措置が取られたのに対し、一部の住民が、食料が確保できないとして暴動を起こしました。

西アフリカの3か国で流行が続いてきたエボラ出血熱の発生が最初に報告されてから1年がたちましたが、感染や感染の疑いによる死者は1万人を超え、流行は今も収まっていません。

このため、3か国のうち患者が最も多くなっているシエラレオネでは、さらなる感染対策として、27日から3日間、すべての国民を対象に外出禁止の措置を取ったうえで、当局の保健スタッフが各世帯を1軒ずつ訪れて感染者がいないかどうかを確認しています。

この措置を受けて、首都フリータウンでは28日、一部の住民が、食料が確保できないとして配給用の食料を奪ったりするなど暴動を起こし、これに対して警察が催涙弾を使って鎮圧に当たったほか軍も出動する事態となりました。(後略)【3月29日 NHK】
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また、シエラレオネでは全土で約7カ月間閉鎖されていた学校が再開されました。
学校再開自体は歓迎すべきことではありますが、長期に及ぶ学校閉鎖中に子供を働かせ始めたとか、妊娠したとかで、学校に戻って来ない児童も少ないという問題が起きています。

****<エボラ熱>シエラレオネも学校再開へ 教育の立て直し急務****
エボラ出血熱の感染が広がった西アフリカのシエラレオネで、昨夏から全土で約7カ月間続く学校閉鎖が今月中に解除される見通しとなった。
学校の予防体制が整ったのが理由。

これで1、2月に学校を再開したギニア、リベリアを合わせエボラ熱が猛威を振るった3カ国で、教育が元通りになる。

ただ、支援にあたった国連職員からは「(一律的に)全国で学校を長期間閉鎖することは本来はあり得ない。3カ国の教育システムは脆弱(ぜいじゃく)で、立て直しが急務だ」との指摘も出ている。

 ◇国連職員が指摘
国連などによると、3カ国では昨夏に感染者数が急速に拡大し、パニックに陥った。3カ国は7~8月に小学校から大学まで全ての学校の閉鎖を決定。学校に通えなくなった児童、生徒は約500万人に上る。

アフリカ西部セネガルの首都ダカールにある国連児童基金(ユニセフ)西・中部アフリカ地域事務所に3月まで勤務した青木佐代子さん(43)は「政府が今後への影響などを十分考慮しないまま、全国で閉鎖してしまった」と語る。

学校閉鎖は、再開を巡る与野党の対立などもあって長期化し、子供たちへの悪影響が懸念されている。

ユニセフなどが予防体制を整備した後、ギニア、リベリアでは学校を再開したが、戻った子供たちは8~9割にとどまった。閉鎖中に親が子供を働かせ始めた可能性があるという。またシエラレオネでは未成年者の妊娠が前年より3割増加したというデータもある。

3カ国はエボラ熱で計1万人以上の国民を失った。また元々、現地では政府や自治体が学校や生徒の数を正確に把握していないなど、教育システムが機能していなかった。

青木さんは「国連やNGOが政府と協力し、今回の危機を教育などのシステムを立て直す『チャンス』に変えるべきだ」と話している。【4月7日 毎日】
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本来は、一律的に長期にわたって閉鎖するのではなく、閉鎖期間中もなんらかの児童対策のフォローが望まれたところではありますが、“現地では政府や自治体が学校や生徒の数を正確に把握していない”といった状態の当事国に感染パニックの渦中で多くを望むことも非現実的です。

“今回の危機を教育などのシステムを立て直す『チャンス』に変える”という前向きな方向で対応していくことが望まれます。

ギニア:再燃、風土病化の懸念も
一方、ギニアでは再燃が懸念され、「公衆衛生上の緊急事態」措置が取られています。

****エボラ懸念が再燃、ギニアで「非常事態」宣言****
ギニアのアルファ・コンデ大統領は28日、エボラ出血熱の感染拡大阻止のため、西部と南西部の5県に45日間の「公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

全国メディアで声明を発表したコンデ大統領は、緊急事態宣言について、流行地域が「沿岸部に移動した」ためだと説明。「病人を隠したり遺体を別の地域に移動させた者は、他者の命を危険にさらしたとみなし訴追する」と警告した。(後略)【3月30日 AFP】
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新規確定患者数が4週連続で減少しているシエラレオネに対し、ギニアでは前週の45人から3月29日までの1週間では57人に増加し、エボラ出血熱がこのまま風土病として根付いてしまう事態も懸念されています。

****ギニアで「風土病」化も=国連派遣の邦人外交官警鐘―エボラ熱****
国連エボラ緊急対応派遣団(UNMEER)に日本から派遣されていた小沼士郎外務省アフリカ1課交渉官が3日、東京都内の日本記者クラブで会見し、エボラ出血熱の感染者が多い西アフリカ3カ国のうち特にギニアでは「風土病として根付いてしまう可能性がある」と警鐘を鳴らした。

国連の掲げる「感染者ゼロ」の目標を8月までに達成できると期待されるリベリア、シエラレオネ両国に対し、ギニアの感染者数が横ばいで推移していることを注視している。【4月3日 時事】 
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WHOは、ギニア国内における症例に関する報告体制が行き届いていないうえ、感染者の遺体の埋葬についても感染拡大を防止する安全対策が徹底されていないという問題点を指摘してます。

風土病として根付いてしまったウイルスがやがて変異して、空気感染するようになった・・・なんてことにならないことを願います。
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