世の中、まちがってる、根拠なき反日キャンペーン。

相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。

ALPS処理水放出と習近平の凋落(72)

2024-02-29 00:00:00 | Weblog

 例えば、昨年の春晩では、文工団の歌手やダンサーが、赤や白、金色の衣装で、プロとしての歌や踊りを披露していた。背景の大画面には空母など勇ましい映像が映し出され、国威発揚がテーマにはなっているものの、さほどきな臭い印象はなかった。 

 

 だが、今年の春晩の解放軍プログラムに出演したのは実際に戦闘を行う本物の兵士たちだった。具体的には北京に駐在する装甲部隊66477部隊だ。こうした実戦部隊の兵士による春晩でパフォーマンス、現実の上陸作戦を連想させるような出し物が行われるのは初めてという。しかも兵士たちは舞台衣装ではなく、作戦行動用の迷彩服と装備をまとっている。 

 

 兵士たちが謳う軍歌「決勝」は「使命を肩に、忠誠は私の告白」「強い志を胸に抱き、永遠に負けたとはいわない」などという、祖国のために命を懸けて忠誠を誓うという内容の歌詞。さらに「戦場で夢を追い、絶対に未来を勝ちとる」という歌詞もあり、これは戦争を非常に肯定的にとらえたフレーズで、兵士や人民を戦争へと鼓舞する内容にもなっている。新華社は「兵士子弟が祖国を守ってくれるので、安心して春節を過ごせる」とポジティブにこの春晩プログラムを報じていたが、外国人から見れば、なんともきな臭いメッセージを受け取ってしまうだろう。 

 

 海外の一部華人の間でも血腥い殺戮を連想させる大変不評で、新年を祝う娯楽番組でここまで戦争を想起させる出し物は初めて、という声が相次いだ。 

 

解放軍が習近平への「忠誠」を演出 

 

 今年の春晩に文工団が出演しなかったのは、近年の軍制改革によって、文工団が大幅に縮小されたからだと思われる。現在、一般の解放軍兵士にも手当が削減されたり、支払いが遅延したりして、その予算不足が表面化している。このため、直接戦力にならない文工団の文職者たちはどんどんリストラされており、今残っている文工団は3つだけらしい。春晩に実戦部隊が登場するようになって、ますます文工団はその存在意義を失ってしまった。 

 

 この春晩の解放軍プログラムについて、米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授はボイスオブアメリカに「台湾を恫喝するだけでなく、同時に米国の顔色を窺って、中国共産党の野心を表明している。中共はある種の微妙なシグナルを発し、台湾、あるいは南シナ海で、西側自由世界と軍事的に衝突する可能性をほのめかしている」とコメントしている。1月の総統選で与党副総統の頼清徳が当選したことに対する、中国側の恫喝行為という見方もある。 

 

 2023年は、すでにこのコラム欄でも紹介したように国防部長やロケット軍幹部十数名が一気に失脚する事件が起きており、解放軍の習近平に対する忠誠と戦闘力に懸念が生じる状況だった。今回の春晩の解放軍によるこのプログラムは、実戦部隊に戦争への意欲と習近平体制への「忠誠」を宣伝する狙いもあったかもしれない。 

 

【関連記事】
中国・習近平の粛清でポンコツ化した解放軍、統制不能で暴走懸念は最高潮 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78872  2024.1.12(金)福島 香織 

 

 中国メディアによれば、今年の春晩の視聴率は最近の6年間で最も高く、平均視聴率は30%を超えたという。だが、ボイスオブアメリカがSNSのXを通じて中国人ユーザーにアンケートをとったところでは、春晩を見ない、という回答は例年よりも多く69.2%で、24.9%は今年の春晩の出し物は好きではない、と回答。今年の春晩のプログラムを好きだ、と答えたのは6%にとどまった、という。 

 

「春晩を見るのは、春晩を嘲笑するため」「春晩に対して、最も良いのは見ないこと、話題にしないこと、視聴率を上げないこと」「春晩は指導者に見せるためのもので、庶民の娯楽のためではない」などといったコメントが集まったとか。 

 

ウイグル人が春節を祝う様子を放映した理由 

 

 もう一つ、春晩の不穏なムードを濃くしたのは、春晩開始以来、初めて新彊南部のカシュガルに分設会場が設置され、ウイグル人のダンサーや歌手たちの出し物がふんだんに出されたことだろう。イスラム教徒のウイグル人に春節を祝う習慣はない。春節は漢人の習慣だ。だが、ウイグル人が春節を祝って見せる様子を、カシュガルからライブで全国に放送したのだ。 

 

 カシュガル地域は、ながらく新疆独立派が多い地域として中国当局からの警戒が強いところであったが、春晩分設会場が設けられて、除夕(中国の大晦日)に全国で生放送できるということは、中国メディアの立場からいえば、「この地域の安全が大幅に改善されたことのアピール」ということになる。だが、ウイグル側、人権派にとっては「ウイグル人の漢族化に成功したこと、エスニッククレンジング成功のアピール」と言えるだろう。これも、ウイグル人に対するジェノサイドを非難する西側国家に対する、中国なりの一つのメッセージともいえる。 

 

中国の観光地の賑わいも例年より少なめ?(写真:CFoto/アフロ)ギャラリーページへ 

 

 こうして竜の年の春節は、中国の西側社会に対する恫喝を含む、なんとも不穏なムードの中で幕があけた。春節休みに日本にくる中国人旅行者もずいぶん減った印象だ。一部報道によると、2019年比の4割くらいに減っているようだ。 

 

 今年の春節はなんか暗いねぇ、と知り合いの中国人や、中国とかかわりの日本人の友人たちに言うと、だいたい似たような返答がきた。 

 

「まあ、今はじっとがまんですよ。習近平体制が永遠に続くわけじゃないから」。そうして、また「除夕快楽!」というのだった。 

 

 そこではたと気付いた。「除夕快楽!」は大晦日を楽しく過ごそう!という意味ではなく、「除習快楽!」(習近平がいなくなったら楽しいのに!=「夕」と「習」の中国語の発音は同じ)という意味が込められているのだ。 

 

福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。 

 

■その他の著者の記事
台湾立法院長にケンカ上等の親中派・韓国瑜、議員外交も警察権も掌握(2024.2.9)
中国株が大暴落!習近平も誰も経済を救えず、共産党の特権階級も逃げ出す準備(2024.2.2)
中国が台湾への恫喝を開始、習近平の代弁者が語った「最悪の心づもり」の中身(2024.1.26)
台湾総統選が「世界の民主主義のための勝利」と言える理由、中国は恫喝を強化(2024.1.19)
中国・習近平の粛清でポンコツ化した解放軍、統制不能で暴走懸念は最高潮(2024.1.12)
能登半島地震を「処理水放出の報い」と喜ぶ中国人、習近平の思想統制の影響か(2024.1.5)
中国・習近平が目論む「個人崇拝」、毛沢東の夢は「オレが実現」?(2023.12.29)
中国が「世界の頭脳」なのは今だけ、習近平の「反知性主義」で凋落が始まる(2023.12.29)
ベトナムは中国のバラマキ外交に魂を売った?米国と天秤にかけるしたたかさ(2023.12.15)
「民主の女神」周庭氏が語る亡命の真意「香港は大好きだけど恐怖でいっぱい」(2023.12.9)
なぜこうなった?三つ巴の台湾総統選、「一つの中国」めぐり中国当局が暗躍か(2023.12.1)

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79439 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(71)

2024-02-28 00:00:00 | Weblog

大不況の真っただ中である中国の大晦日の紅白歌合戦では、本物の人民解放軍の兵士たちが「作戦用の迷彩服と装備」をまとって、「台湾上陸作戦」をモチーフにした演技を披露した、というではないか。 

 

 

 

株大暴落で春節を祝う気になれない中国人、中国版紅白は「台湾上陸作戦」を連想させるヤバい演出で不穏なムード満載 

中国人が大晦日を祝う「除夕快楽」というメッセージに秘めた「危ない」意味とは? 

2024.2.16(金)福島 香織 

 

今年の中国・春節は不穏なムードに包まれた(写真:VCG/アフロ)ギャラリーページへ 

 

例年ならお祝いムードの中国の春節(旧正月)だが、今年は不穏なムードに包まれている 

 

1月末から2月頭の中国株の大暴落で、多くの中国人は祝う気になれない。中国版の紅白歌合戦では「台湾上陸作戦」を連想させる演出があり、地方のある村では無差別殺人が起きたという噂も。 

 

多くの中国人は旧暦の大晦日に「除夕快楽」(大晦日を楽しくすごしてね)というメッセージを送りあったが、そこには口には出して言えない、危ない意味が込められていた。 

 

(福島 香織:ジャーナリスト) 

 

 今年の中国の春節はどうも不穏なムードに包まれている。中国人の知り合いからも、あまり「新年快楽」「春節快楽」(あけましておめでとう)といった挨拶が送られてこない。その代わり、旧暦の大晦日に「除夕快楽」(大晦日を楽しくすごしてね)というショートメッセージをいくつか受け取った。 

 

 そもそも中国経済があまりに悪いものだから、「おめでとう」という気分ではないのだろう。対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の電子マネー・ウィチャットペイの紅包(お年玉)をチャットグループ内で配りまくるという風景も例年より少ない気がする。 

 

 1月末から2月頭の株の大暴落は「新年株災」と呼ばれるほど激烈なものだった。国有企業チームに国内外資金をかき集めて株を買い支えさせることで、なんとか春節休みに入る直前は反発したものの、多くの中国の小金持ちは、春節どころの気分ではなかっただろう。これは中国の経済政策に対する信用の絶対的欠落が原因にあるので、春節明けにまた一波乱くるのは必至と言われている。 

 

【関連記事】
中国株が大暴落!習近平も誰も経済を救えず、共産党の特権階級も逃げ出す準備 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79209 

 

1月末から2月頭にかけて中国株は大幅に下落した(写真:CFoto/アフロ)ギャラリーページへ    

 

 さらに、不穏な社会事件も続いている。たとえば旧暦の大晦日の2月9日に山東省日照市莒県のある村で、一人の男が村民数十人をナイフや銃で襲い死傷させるという凄惨な大量殺人事件が発生。ただし、その事件は徹底的な情報統制が発動されて一切報道がなく、ネット上で都市伝説のように噂だけが拡散されている。 

 

 どうやら、いわゆる「報復無差別殺人」、つまり自分に降りかかった不条理に対し、社会を無差別に攻撃して恨みを晴らすタイプの事件らしい。そういう事件は中国では決して珍しくなく、どうしてここまで情報統制されているのか、それが逆に中国社会の不穏さを伝えている。 

 

 一説によると、解雇された武装警察の警官が、逆恨みして上官の家族を皆殺しにし、近所の家も巻き込み、救援に駆け付けた救急車の救急隊員も殺害した、という噂だ。あるいは、冤罪で投獄されていた男が釈放後に、自分を陥れた人の家を襲い皆殺しにした、という説もある。いずれにしろ、その村に通じる道路が完全に封鎖されているらしい。 

 

 そしてさらに不気味なのが、毎年恒例のCCTVの春節特番、中国版紅白歌合戦呼ばれる春節聯歓晩会(春晩)だ。春晩は日本でもYouTubeのCCTVチャンネルで見ることができるのでご覧になった日本人読者もいるだろう。どのように感じただろうか。私は何とも言えないきな臭いものを感じた。 

 

中国版紅白歌合戦の演出は「きな臭さ」満載 

 

 まず、5時間に及ぶ春晩のプログラムの中で、一番話題になったのは解放軍作戦部隊による上陸作戦をモチーフにしたパフォーマンスだった。 

 

 軍用ヘリの爆音とともに兵士たちがロープを伝って舞台に滑り降り、高い壁を乗り越えてみせて、「どこか」に上陸する様子から始まる。そして小銃を掲げた隊列が現れて、軍歌「決勝」を歌いながら、さまざまな陣形を見せるのだ。背景のスクリーンにはミサイルや戦闘機、揚陸艦やタンク、軍用ヘリなど最新の猛々しい兵器が次々と映し出されている。明らかに台湾上陸作戦をモチーフにしたような演出のプログラムだった。 

 

CCTVの春節特番「春節聯歓晩会(春晩)」での人民解放軍のパフォーマンス(出所:YouTube)ギャラリーページへ    

 

 確かに春晩では、解放軍がほぼ毎年、なにがしかのプログラムで出演している。だが、これまでは文工団文藝工作団、解放軍のうち、戦場にいかない文職者の軍団。宣伝や慰問のためのパフォーマンスを行うダンサーや歌手、俳優、監督、作家などが所属。少将などの階級はあるが、戦場で戦う軍人とは徽章が異なる)に所属する歌手ダンサー、あるいは儀仗隊などの出演で、しかも新年の晴れ舞台にふさわしい華やかな衣装、軍服正装で登場、祝賀ムードのプログラムが普通だった。 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(70)

2024-02-27 00:00:00 | Weblog

習近平は、毛沢東生誕130年の'23.12.26に、「台湾統一を必ず実現する。」と述べている。 

 

 

習氏、台湾統一「必ず実現」 毛沢東生誕130年で演説 

習政権2023年12月26日 18:22 (2023年12月26日 21:09更新) [会員限定記事] 

 

演説する習近平氏(26日、中国国営中央テレビから) 

 

【北京=田島如生】新中国建国の指導者、毛沢東の生誕から26日で130年を迎えた。習近平(シー・ジンピン)国家主席は北京市内で演説し、事実上の公約に掲げる台湾統一を「必ず実現するいかなる方法であれ、台湾を中国から分裂させることを断固阻止する」と表明した。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えた。 

 

台湾統一は毛沢東も生前に意欲を示していたものの、当時の国力では達成できなかった。習氏の発言には、統一を実現することで自らを毛沢東を超える位置づけまで高めようとする思惑がにじむ。 

 

習氏ら最高指導部7人は26日、毛沢東の遺体を安置した天安門広場の毛主席記念堂を訪れた。その後、人民大会堂の座談会に出席し、習氏が演説した。毛沢東について「中国の偉大な愛国者であり、民族の英雄だ」と称賛した。 

 

自らが掲げる中国式現代化による強国の建設や民族復興に関し「毛沢東ら古い世代の革命家の未完の仕事だ」と指摘した。改革開放は「今の中国が時代に追いつくための魔法の武器だ」と述べ、深化させると言明した。 

 

毛沢東の生誕130年を巡っては各地で記念行事が開かれた。生まれ故郷である湖南省韶山市には前日25日から左派(保守派)や毛沢東の信奉者が集まり、熱狂的なイベントを繰り広げた。文化大革命時代のシュプレヒコールを連呼する若者の姿もあった。 

 

中国国営新華社によると、江西省の井崗山(せいこうざん)市も25日に記念シンポジウムを開き、およそ200人が出席した。井崗山は毛沢東が1920年代の終わりに農民を組織して初めて武装闘争の根拠地を築いた場所だ。 

 

中国でスパイ摘発を担う国家安全省は26日、対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントで毛沢東について投稿した。「諜報(ちょうほう)活動にたけていた」と評し、抗日戦争や国共内戦の際に活用していたエピソードを紹介した。 

 

毛沢東崇拝は中国共産党の方針に沿ってはいるものの、熱狂的な支持者のなかには中国の急速な発展に取り残され、現状に不満を抱く人も少なくない。 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM263680W3A221C2000000/ 

 

 

だから怖いのである。現在中国は大不況の真っただ中にいるから、習近平としては何をしでかすか分かったものではないのである。 

 

この論考は、毛沢東や習近平の「熱狂的な支持者のなかには中国の急速な発展に取り残され、現状に不満を抱く人も少なくない」と締めくくっている。 

 

この不満をどのように解消するのか、ある意味、習近平も頭を痛めているのではないのかな。共産党一党独裁の中国での社会の有様では、社会保証の制度はそれほど進んではいないようだ、だからこれらの民衆の不満は、強権で抑えざるを得ないのである。 

 

そしてその不満が爆発する前に、外に発散させなければならないことになる。 

そんなことで、習近平の頭の中は一杯になっているのではないかと、心配になるのである。 

 

その不満のはけ口の一つが、日本のALPS処理水の放出問題だったのである。 

 

日本のALPS処理水は問題がないと、 

 

国際原子力機関・IAEA(International Atomic Energy Agency)が、お墨付きを与えているのである。 

 

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/shirou_alps/no4/ によると、 

国連の機関であり、原子力について高い専門性を持つIAEAも、ALPS処理水の海洋放出は「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」と、包括報告書で結論付けています。」と言うことであり、問題はないにもかかわらず、習近平は「問題だ、問題だ!!」と、中国人民の不満を日本に向けるべく、人民の不安を煽ったのである。 

 

もう一つの重要な方策が、台湾侵攻である。習近平は「台湾統一を必ず実現する」と述べており、そのことで毛沢東を超越出来ると考えているようである。 

 

習近平にとっては、毛沢東を超える中国の英雄になることが、至高の目標となっているはずだ。だから習近平にとっては「台湾統一」が必要なのである。 

 

重ねて言うが、これは恐ろしいことである。 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(69)

2024-02-26 00:00:00 | Weblog

 銀座8丁目の寿司屋では、中国人カップルがカウンター席に案内されるや、眼前の板前に、「オ・オ・ト・ロ!」と言って、紙に「15」と書いて見せた。隣席の私がきょとんと見ていると、15貫並んだ壮大な「大トロ艦隊」の端の1貫を、彼氏がニッと歯を見せて私に分け与えてきた。 

 

 彼はその後、「ダサイ!」と言い放った。「何のこっちゃ?」という表情の板前さん。中国でもつとに知られた山口の銘酒「獺祭」(だっさい)を注文したかったのだ。結局、この中国人カップルは、50万円近い勘定を銀聯カードで平然と払った。 

 

 こんな思い出話、書き出したらキリがないのでもう止めるが、中国人観光客の「爆買い」たるや、げに恐るべし! 

 

 それが2024年の春節は、「爆買い」どころか、一気に「爆消え」と化した。すなわち東京各地に、中国人観光客自体が、ほとんど見当たらないのだ。 

 

爆買いが「爆消え」 

 

 ちなみに、国家観光局の統計を確かめると、2023年の外国人訪日客は、コロナ禍前の2019年に比べて78.6%の延べ2506万6100人。つまり約8割まで回復し、今年はコロナ禍前を超えようというところだ。 

 

 中でも、伝統的に多かった韓国の+24.6%、アメリカの+18.7%などばかりか、シンガポール+20.1%、ベトナム+15.9%、メキシコ+32.0%、中東+15.2%など、これまで比較的観光客が少なかった地域からも、着実に増えている。これは、マンガアニメなど、日本のコンテンツ文化の影響が大きいだろう。 

 

 そうした中で、中国だけが2019年の959万4394人から、2023年の242万5000人へと、-74.7%! まさに「爆消え」の状態なのだ。 

 

日本人が想像する以上の不景気ぶり 

 

 別に日本政府が、中国人の観光ビザに特別の規制をかけているわけではない。最大の理由は、やはり中国国内の不景気だ。コロナ前には何度も東京に遊びに来ていた中国の国有企業勤務の友人に聞くと、こう答えた。給料3割カットで、春節に故郷へ帰るのも躊躇(ちゅうちょ)しているのに、日本旅行などできるものか!」 

 

 昨年12月11日と12日、北京で中央経済工作会議が開かれ、2024年の経済運営方針が示された。その中で習近平主席が強調したのが、「中国経済光明論」だった。簡単に言えば、「中国経済をもっと明るく表現せよ」ということだ。 

 

 爾来、ますますCCTV(中国中央広播電視総台)など官製メディアは「バラ色の中国経済」を喧伝するようになり、一部の(良心的な?)経済学者アナリストらは、口を噤(つぐ)むようになった 

 

 それでも、頭隠して尻隠さず。巨大化した中国経済には、覆い切れないものもある。例えば、株価だ。 

 

 上海総合指数は12月12日に、3003ポイントと、何とか3000ポイントの大台をキープしていた。だが、「中国経済光明論」が出されるや暴落を始め、12月20日には2902ポイントまで落ちた。その後、一時持ち直したが、今年2月5日には2702ポイントまで暴落した。 

 

 世界景気が悪いのではない。日本、アメリカ、韓国、台湾など、世界の株価は上昇している。中国の「一人負け」状態なのだ。2月7日には、中国の証券業務を統括する中国証券監督管理委員会(証監会)の易会満(えき・かいまん)主席が突如、クビになってしまった。後任には、呉清(ご・せい)上海市党委副書記が就くという。 

 

売れ残り家屋の総床面積は東京23区以上 

 

 物価も同様だ。周知のように、日本のモノの価格は上がりっぱなしで、それはアメリカもヨーロッパも同様だ。だが中国だけは、今年1月の住民消費価格(CPI)が-0.8%。リーマンショック後以来、14年ぶりの下落率で、すでにデフレスパイラルが懸念され始めている。 

 

 不動産に至っては、惨憺たるものだ。昨年12月の70大中都市新築商品住宅販売価格は、前月比で下落したのが62都市に及んだ。中古住宅販売価格に至っては、70都市すべてが前月比で下落した。 

 

 不動産統計で「プラス成長」なのは、2023年末時点での商品家屋売れ残り面積くらいで、+19.0%の6億7295万m2。これは東京23区の面積(627.53km2=6億2753万m2)よりも広い! 

 

 こうした状況が2024年も続けば、来年の春節には、こんな一句になってしまうだろう。 

 

 めでたさも小くらいなりおらが春 

 

『ふしぎな中国 』(近藤大介著、講談社現代新書)ギャラリーページへ 

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79333?page=1 

 

 

 

そうなると次に中国は何を考えてくるのであろうか。 

 

ただでさえ鬼の首をとたように、ALPS処理水に文句を声高につけている習近平であるからして、この民衆の不満を何らかの形で、外に向けてくることになる筈だ。 

 

それは「台湾統一」に向かわせることではないのか。近々ないとも限らないのではないのかな。 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(68)

2024-02-23 00:00:00 | Weblog

その雄安新区とは、もとはと言えば、「本来河北最大の遊水地であったはずの白洋淀にできた習近平肝煎りの新都市」である。もともとは北京を洪水から守るための河北最大の白洋淀と呼ばれる遊水地であったのだ。 

 

'23年7月末~8月初に襲った台風五号による大洪水は、本来は白洋淀という湿地帯(今は雄安新区)に洪水を流すはずだったのであるが、今回はそこが雄安新区となっているので流すことは出来なくなっている。そのため、涿州(タクシュウ)の遊水地へ流すことになってしまった。しかしながら涿州の遊水地には、それを受け止めるだけの能力はないのて、百万人が暮らす涿州市が犠牲となって大洪水に襲われて水没してしまった、という次第である。 

 

この論考では、「習近平は、本来華北最大の遊水地であるべき白洋淀に「雄安新区」を建設し、そこを「守るべき都市」に変えてしまった。これは他の遊水地がその分、過剰に洪水を引き受けるということで、今回、その犠牲に涿州が選ばれた。」と書かれている。 

 

しかもこの雄安新区の計画には、「移り住むほどのビジネスチャンスや魅力を感じるような仕様にはなっていない」という。だからこの雄安新区プロジェクトも、誰が見ても大失敗であり、習近平が心血を注いだ千年計画と言う割にはずさんなプロジェクトであった。 

 

明らかにこの失敗は習近平の責任であり、彼の為政者としての無能さは隠蔽すらできないとこの論考は結んでいる。 

 

しかも現在中国は深刻な不景気の真っ最中なのである。何が起こってもおかしくはないのである。その証拠に中国人の爆買いが消えてしまっているのだ。と言うことは、中国人民は自己表現のデモすら出来ずに、更には、爆買いすらできなくなってしまったのか。 

 

 

 

春節なのに…中国人の爆買いが蒸発、理由はもちろん中国国内の深刻な不景気 

東アジア「深層取材ノート」(第222回) 

2024.2.9(金)近藤 大介 

 


2016年2月9日、東京・秋葉原電気街で旧正月の休暇中に買い物に歩き回る中国人観光客(写真:アフロ)ギャラリーページへ 

 

 めでたさも中くらいなりおらが春 

 

 江戸時代の三大俳人の一人に数えられる小林一茶(1763年~1828年)が、正月に詠んだ一句である。華やかな正月を迎えたが、カネもなく、どこへ行けるわけでもないので、それほどめでたいわけではないという意味だ。「中くらいなり」という言い回しが、皮肉を込めた心情に響く。 

 

 それで、何が言いたいかといえば、いま多くの中国人も、この一茶のような心情ではないかと推察するのである。 

 

今年の春節は2月10日から 

 

 2月10日土曜日、14億中国人が一年で最も待ち望んでいた春節(旧正月)を迎える。この日から17日まで、中国は8連休! あな羨まし。 

 

 思えば、コロナ禍の前までは、春節を祝わない日本人まで祝っていたものだ。それは、中国から「爆買い」の観光客が大挙して訪れてくれたからである。 

 

 私が初めて、「爆買い」の威力を思い知ったのは、いまから9年前の2015年の春節だった。東京で中国人観光客たちの「爆買いの聖地」と言われていたのが、銀座通りに面した7丁目の「ラオックス」。足を運んでみると、そこは本当に別世界だった。 

 


2016年2月、中国人観光客が秋葉原や銀座で爆買いした商品を大型観光バスに積み込むスタッフたち。今となっては懐かしい光景とも言える(写真:アフロ)ギャラリーページへ   

 

 

日本人が見せつけられた「爆買い」のパワー 

 

 客から店員まで、私以外はほぼ全員、中国人。彼らは一様に、頬を紅潮させていた。「何があったんですか?」と、横に立つ中国人のオバサンに中国語で聞くと、彼女は顎(あご)をしゃくり上げて、前方を指し示した。 

 

 見ると、大きな雛壇の上に「春節福袋」が並べられていた。それぞれ値札が掛かっていたが、中央に「鎮座」する巨大な福袋には、888万8888円」の札 

 

 さらに驚いたのは、その右隣だった。「666万6666円」の札だけが掛かっていて、福袋が消えていたのだ。「もしかして、中国人観光客が買ったんですか?」。再度、横のオバサンに聞くと、今度は顎を上からゆるりと下げて、ポツリと言った。「剛才啊」(ガンツァイア=ついさっきよ)。 

 

 他にも、銀座のそこここで、驚愕の光景を目にした。4丁目の三越デパートでは、1階化粧品売り場で、女性店員の背後に多数立てかけてあった高級化粧水を、中国人女性が指さして「あれ下さい」。そう言いながら、1mくらい指を左から右に動かし、50本以上「爆買い」ていた。 

 


秋葉原では電気製品、銀座ではブランド品や高級化粧品が中国人観光客に人気だった(写真:アフロ)ギャラリーページへ 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(67)

2024-02-22 00:00:00 | Weblog

ずさんな「千年大計」 

 

 さらに、深圳特区を建設した時代とは条件がかなり違った。深圳特区が驚異の発展を遂げ成功したのは、まず自由主義経済が一国二制度で担保されていた当時の香港に隣接していたという地理条件がある。2つ目に全国の資源を深圳に集中できたことだ。 

 

 その深圳への資源の集中は行政命令によるものではなく、深圳ならば金もうけができると信じた企業や人たちが自然に集まってきた結果だった。当局が行ったのは税金や、香港との通関手続きの簡素化、投資の条件に関する特例措置や政策を打ち出しただけだ。
 
 雄安新区が設立された2017年は、全国各地ですでに18の新区が乱立しており、保税区、各種開発区として、雄安ならではの「うまみ」は突出したものではなかった。地理的に北京に近すぎるのは、むしろ欠点だった。北京との違い、差別化がうまくできず、むしろ政治の街、北京のような管理統制の厳しさがコピーされた。 

 

 雄安新区はスマート化をうたい文句にしていたが、それはデジタル・レーニン主義的監視管理を実施するということでもあり、決してそれがビジネスにとって魅力的というわけではない。ビジネスに必要なのは、むしろ自由と法治、公正なルールだ。 

 

鄧小平が主導した深圳の街並み(写真:Top Photo/アフロ、2021年)ギャラリーページへ 

 

 深圳が自由都市・香港のゲートウェーだったのに対し、雄安は北京のデジタル・レーニン主義実験都市であった。一部中央企業や大学、研究機関が行政命令に従ってしぶしぶ雄安に移転したとしても、北京に住む人や企業が北京戸籍を捨ててまで、移り住むほどのビジネスチャンスや魅力を感じるような仕様にはなっていない 

 

 そもそも地理的条件が整っている直轄市の天津の経済開発区や濱海新区ですら、北京に近すぎることが原因で十分に発展できず、ゴーストタウンを抱えている。雄安新区建設よりも、先に解決すべき爛尾プロジェクトは山のようにあった。 

 

 このように、雄安新区プロジェクトは今のところ誰がみても失敗なのだ。習近平が心血傾けた千年大計というわりにはずさんなプロジェクトで、その理由が「習近平が自ら発案、計画、指導」して、専門家の意見に耳を貸さないで決めたのだとしたら、この失敗の責任は習近平が負うべきものだろう 

 

もはや為政者としての能力不足を隠蔽できず 

 

 だが、習近平政権3期目続投で、その個人独裁体制がさらに継続することになったため、誰もその失敗の責任を指摘できず、失敗そのものを隠蔽するしかない状況となった。その隠蔽のために、河北省涿州の多くの部分を水底に沈め、その犠牲者の数を含めて、その災害の大きさを隠蔽した。 

 

 こうした当局者の失敗は、これまでも繰り返しの隠蔽されてきた。だが、現代は農村の都市化が進み、犠牲を強いられる人口も増え、なにより地方の人たちの権利意識の向上とスマートフォンの普及で、このひどい状況を世界に発信できるようになった。失敗を隠蔽するために、より多大な犠牲と被害を出し、国内外に発信されることで、むしろより多くの人たちが雄安新区の失敗の深刻さを認識するに至った。 

 

 河北省当局は11日の段階で直接経済損失を958億元と推計し、水害で被害を受けた町の再建には2年かかるとしている。だが、おそらく雄安新区は2年たってもゴーストタウンのままだろう。そして、習近平独裁体制は続いているかもしれないが、彼の為政者としての無能さは、もはや隠蔽する術すらなくなっているかもしれない。 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76576?page=1 

 

 

雄安新区は、習近平自ら発案した経済特区だという。人口二千万人のスマート・エコシティになる、という計画のようだ。 

 

だが目下企業も人もほとんど住んでいないという。しわゆる爛尾(ランビ?、中断したまま完成していない)と呼ばれる廃墟群しかない経済特区なのだ。 

 

そこを習近平が、多くの部下たちを連れて、視察したという。 

 

視察の目的は、'23年7月末~8月初の「北京の大洪水」災害にも被害がなかったことと雄安新区建設の大失敗を否定するためのものであった。 

 

習近平は、鄧小平の深圳以上の都市を新たに造り中国の国力の象徴にしようとして、雄安新区プロジェクトを考えたわけだが、意図通りには全く進んでいない。 

 

深圳は1979年3月に市に昇格し、翌年の1980年には鄧小平により経済特区に指定され外資導入も積極的に推進されて、中国の「シリコンバレー」とも呼ばれるまでに急速に発展し、国際的にも中国経済を支えるまでの存在となっている。 

 

しかしながら雄安新区は深圳と異なり、「爛尾」と呼ばれる廃墟となっているようだ。 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(66)

2024-02-21 00:00:00 | Weblog

 今年5月10日、習近平が第3期目の総書記、国家主席の座を固めたのち、新首相の李強と、書記処筆頭書記の蔡奇、副首相の丁薛祥、何立峰ら、新指導部をぞろぞろ引き連れて視察した。このときの様子はCCTVが報じていたが、この視察で廃墟群を目の当たりにしても、首相、副首相ら誰一人として、このプロジェクトに問題があるという発言をしなかった 

 

 これは、新指導部として、雄安新区建設の失敗を否定し、新区建設継続を維持するために、改めてプロパガンダを打つための視察だったと言われている。 

 

 雄安新区は北京からおよそ100kmの場所にあり、習近平の「偉大な新時代」を象徴する都市プロジェクトとされた。鄧小平を超える指導者として共産党史に刻まれたい習近平は、鄧小平が創った深圳以上の都市を新たに作り、中国の国力の象徴にしようと考えた。 

 

 初期面積は100km2、中期発展で200km2、長期的には2000km2まで拡大し、現在の深圳以上の大きさを目指している。 

 

建設中の雄安新区(写真下:2021年)と開発後(上:2023年)(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ 

 

 2017年4月、北京・天津・河北共同発展指導チーム組長の張高麗は雄安新区に関する中国官製メディアの取材に、「このプロジェクトは習近平総書記が自ら計画し、自ら政策決定を下して推進している。習近平の大量の心血が注がれ、習近平の強烈な使命を担い、深遠な戦略眼と超越した政治的智慧を体現している」「雄安新区の前期計画、研究論証、計画のステージなどすべては習近平が招集する重要会議で配置を検討し、重要指示、命令を下したものだ」と語っている。 

 

雄安新区の駅の写真(上:2023年)と建設中の写真(下:2019年)(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ 

 

 2018年5月には、外交部は全世界に向けて雄安新区を推奨し、当時の王毅外相は雄安新区を「中国と人類の発展方向に代表するものだ」「大都市が抱える病を解決するための中国式処方箋だ」と持ち上げていた。 

 

 理解しがたいのは、習近平がこれほどまでに雄安新区を重視しているなら、なぜもっと慎重に計画し、準備しなかったのか、ということだ。大宣伝とは裏腹に、計画自体は稚拙きわまりない。 

 

共産党が守るべき地域、人民を「選別」 

 

 そもそも、この計画は市場原理に逆らって、政府の意志と行政指導にのみを頼って強引に進められた。当時、すでに地方では、需要を超える都市建設問題が表面化し、地方都市での不動産バブルの崩壊が始まり、新都市建設に十分な資源を分配できる余裕はなかった。建設途中で資金がショートしたまま野ざらしにされる「爛尾」プロジェクトが山のようにあった 

 

 次に、土地条件が悪かった。雄安が建設される土地の多くは白洋淀という湿地帯で、ここは長年、華北で水害が起きたときに最も水が流れ込む「遊水地」だった。雄安新区の計画が打ち出された当初、社会科学院の地理学者の陸大道院士らが、「あそこは人が住む場所ではない」「必ず大水害が起きる場所に都市をつくるべきではない」「土地を選定しなおすべきだ」と提言したが、習近平はその意見を聞き入れなかった。 

 

中国・河北省涿州は北京を守るために犠牲となった(写真:ロイター/アフロ)ギャラリーページへ 

 

 ちなみに、中国の洪水対策は、ダムや堤防を使って川の水量を調節して、あらかじめ決められた「洪区」と呼ばれる遊水地に水を逃がす「泄洪」という方法で、都市部や重要地域を洪水から守ることが1997年に制定された洪水防止法で決められている。洪区は全国の河川の流域に98カ所、華北最大の河川の海河流域だけで28カ所ある。 

 

 こういう中国式治水の在り方は、豪雨でダムの水量が増大したのち、ダム自体の決壊を守るために緊急に予警なく泄洪で水を遊水地に流すことで、ダム下流域に住む人たちの洪水被害を悪化させるという矛盾が当時から指摘されていた。だが中国では、共産党が洪水から守るべき地域、人民を恣意(しい)的に選別したとして、それに抵抗できるほど昔は人民に発信力もなかった。 

 

 習近平は、本来華北最大の遊水地であるべき白洋淀に「雄安新区」を建設し、そこを「守るべき都市」に変えてしまった。これは他の遊水地がその分、過剰に洪水を引き受けるということで、今回、その犠牲に涿州が選ばれた 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(65)

2024-02-20 00:00:00 | Weblog

福島 香織は、この論考を次の様に締めくくっている。 

 

 風水や天命の話はさておき、習近平は実際、災害時に十分なリーダーシップを発揮できていない。国内の治水事業も口でいうほど成功していない。体制内の人心も掌握しきれておらず、経済回復の処方箋も持たず、米国との外交的緊張も緩和の兆しがみえていない 

 

 

だがこの水害から半年も経過している現在、中国では何も起こってはいない、ようだ。どうなることやら。 

 

上記の「・・国内の治水事業も口でいうほど成功していない。・・」と言うことは、次の論考を読めばよくわかる。習近平の大失敗が述べられている。 

 

 

 

 

北京を守るのに地方100万人を犠牲に、大洪水で露見した中国の非人道的な治水 

習近平肝煎り「スマートシティー」プロジェクトも失敗 

2023.8.18(金)福島 香織 

 

中国・河北省涿州を襲った大洪水は、人為的に引き起こされた(写真:VCG/アフロ)ギャラリーページへ 

 

100万人が暮らす町や農村を飲み込んだ中国・河北省涿州を襲った大洪水は、人為的に引き起こされた 

 

首都北京と、習近平国家主席が主導したスマート・エコシティーを守るために、意図的に遊水池の水門が開かれた 

 

治水やスマート・エコシティー建設の失敗はもはや明らかで、為政者としての能力に疑問符が付き始めている。 

(福島香織:ジャーナリスト) 

 

【関連記事】
◎中国・北京の大洪水は「人災」、治水失敗の皇帝・習近平は天から見放された? 

 

 7月末から8月2日にかけて河北省涿州たくしゅう)を襲った大洪水は、首都北京と雄安新区を守るために人工的に引き起こされたものだった。北京西南部の房山区、門頭溝区で140年以来という記録的集中豪雨により、永定河が氾濫。首都を守るために、河北省の7カ所の洪区(遊水地)に向けて水門が開かれた。そのうちの2つが涿州にあり、100万人が暮らす町や農村の多くに濁流が押し寄せた。 

 

 水深6メートルもの洪水が町をのみ込み、3階建て以上の建物や道路標識、信号などがやっと水面からのぞくほかは、街並みが水の底に沈む状況となった。8月11日の段階で河北省は死者29人、行方不明者16人、被災者は388万人と公式発表されている。だが、ネット上で拡散されている動画では遺体が流れている様子も散見され、多くの人民は公表している十倍、数十倍の犠牲者が出ていることを疑っていない 

 

 河北省の倪岳峰書記は、災害救援任務に際し、「蓄滞洪区(遊水地)を用いることで、北京の洪水圧力を軽減し、断固として首都を守る護城河となれ」と演説。「護城河」とは町を守る堀のことだが、ようは北京を守るために涿州を水に沈める決断をしたということだった。 

 

 首都を守るために地方の100万人クラスの町を犠牲にするという判断は残酷で非人道的である。だが、それ以上に今回の涿州の遊水地に流す水量が異常に増大したのは、本来河北最大の遊水地であったはずの白洋淀にできた習近平肝煎りの新都市「雄安新区」を守るためだった 

 

 そして、河北388万人の人々が被災し苦しんでいる最中、倪書記は雄安新区に水害被害が出ていないことを確認して、「我々は試練に耐えた!」と喜びの声を上げたのだ。だが、果たして、雄安新区は100万人が暮らす涿州を犠牲にしてまで守る価値があったのだろうか 


習近平肝煎りのスマートシティーも大失敗 

 

 雄安新区習近平が自ら発案、計画、指揮した国家級新区。「国家千年の大計」プロジェクトとして2017年4月に設立させた。完成は一応2035年予定で、2050年には先端テクノロジー企業と研究機関を集中させ、北京の非首都機能も移転した人口2000万人規模のスマート・エコシティーになる、という話だった。すでに5000億元(約10兆円)が投じられている。 

 

 だが、今のところは、工事のほとんどが中断し、人も企業も集まっていない空っぽの「爛尾」(ランビ?、中断したまま完成していない)と呼ばれる廃墟群しかない。 

 

 目下、雄安には中央企業4社が登記し、その本社ビルが建設中で、大学、研究施設も4カ所が雄安に移転されている。だが、その移転条件とされている雄安居住は回避できる条項がある。つまり、人はほとんど住んでいない 

 

スマート・エコシティー「雄安新区」を視察する習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(64)

2024-02-19 00:00:00 | Weblog

 さらには中国には「易姓革命思想」という伝統的な考えかたがあり、天は己に成り代わって皇帝に地上を支配させるが、その皇帝が徳もなく悪政を行っていると天が判断すると、皇帝の姓、血統を入れ替え、王朝交代が起きるという。天が為政者に徳や能力がないと判断した場合、疫病や天災、飢饉などが続き、人々は皇帝が天に見放されそうだと知ることになる。 

 

 これは暴力によってしばしば王朝が簒奪(さんだつ)されてきた中国で、簒奪者が自分の正統性を示すための考え方だ。そういう考えに基づくと、習近平の治水は失敗し、近年、疫病、天災などが続いたのは、天の啓示ではないか、というわけだ。 

 

 今回の北京の大水害では、過去600年水没した記録がない故宮紫禁城も冠水した。そのため、迷信を信じる人達や風水師はこれを凶兆だと騒ぎはじめた。 

 

過去600年水没した記録がない故宮紫禁城も冠水した(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ        

 

 ある風水師動画では「この台風5号はもともと台湾を襲うものだったが、意外なことに台湾を迂回し、上海、北京を襲った。台湾と香港の間を通って中国を直撃し、紫禁城を水没させた。これには意味があろう。大凶兆であり、王朝が不安定化する」「天の現象は人間社会の現象を反映している。この数年、異常気象が続き、王権の象徴である紫禁城が600年来初めて、台湾と香港からの風によって水没した」「天が民衆に何かを啓示している」という。 

 

習近平の威信が崩れ始めている 

 

 紫禁城の水系は紫禁城内と太和門前を流れる内金水河が天安門前から外金水河に続き中南海(中海と南海の2つの人口池をもつ紫禁城西側の皇帝の離宮の呼び名。今は共産党中枢の建物群がある場所で、中国共産党政権中枢を指す言葉として使われる)に流れ込むようになっている、という。今回の大雨で、大量の雨水が金水河を通じて中南海に流れこんだが、中南海では水は排水されず、金水河が逆流し、紫禁城が冠水した。 

 

 風水師的には「台湾、香港からの風によって、大雨が降り、中南海で排水できない雨水が王権の象徴の紫禁城を水没させた」ということに何がしかの予感を感じるわけだ。 

 

 新型コロナが辛亥革命発生の地である武昌(武漢)で最初にアウトブレークし、その打撃から中国経済は回復できず、若者失業率の更新が続き、さらには次々と天災、人災が襲われた。政治においても、外相が突然理由も示されずに解任されたり、解放軍ロケット軍幹部が総入れ替えになったり、政権内部の不安定さも露見しつつある。 

 

 風水や天命の話はさておき、習近平は実際、災害時に十分なリーダーシップを発揮できていない。国内の治水事業も口でいうほど成功していない。体制内の人心も掌握しきれておらず、経済回復の処方箋も持たず、米国との外交的緊張も緩和の兆しがみえていない 

 

 こういう状況で、14億の中国人が習近平体制の支配に従順に甘んじ続ける時代が続くのかどうか、という疑問はやはり強まっていくのだ。 

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76356?page=5 

 

 

紫禁城が冠水したということは、習近平などが常駐する中南海も被害にあったということだ。「皇帝」としての習近平の権威は、地に落ちたことになる。 

 

(2023年の)7月19日に「習近平の治水に関する重要論術なる本が出版され水利部、メディアを挙げて、「習近平がこの10年自ら計画し、配置し、推進し、全国の海綿都市(水害に弱い都市)の治水事業を完成させたと大々的に喧伝していたこともあり、関係する機関紙では、長期間解決しがたかった治水問題を(習近平が)解決した」と報じていたなどと更に習近平の業績を煽っていたこともあり、このだが、その1週間後に、福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没したのだ。

という事実は、習近平の治水事業は大失敗であったことを、自ずと証明することになってしまったことになった。 

 

これでは習近平の評判も『がた落ち』ではないのかな。 

 

なんと言っても首都の北京をはじめ、『福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没』てしまったのであり、あの有名な故宮・紫禁城までもが水の中にはまってしまったのであるから。 

 

だから普通では、習近平の評判は「がた落ち」している筈なのである。中国のあの有名な「易姓革命」で習近平は民衆に首をはねられていてもおかしくはない状況なのであるのだが、そこは共産党一党独裁体制なので、何とか習近平は守られているのではないのかな。 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ALPS処理水放出と習近平の凋落(63)

2024-02-16 00:00:00 | Weblog

天災は今回の大雨だけでは終わらない 

 

 北京でこれほどの水害に見舞われたのは2012年7月21日午後から深夜にかけての集中豪雨による大水害以来だ。この時の集中豪雨は10時間以上続き過去60年間で最大の降水量が記録された。当時、79人の死者、直接経済損失100億元と公式発表された。だが今回の豪雨は67時間以上続き、降水量も記録を確認できる1883年以降最大で、2日朝までに744.8mmを記録した。被害の全容はまだ出ていないが、2012年7月を超える規模となるとみられている。
 
 台風5号は北京に来る前に福建省で記録的な被害を引き起こしていた。泉州で体育館の屋根が吹き飛び、数十階の高層アパートが暴風によってゆがみ、倒壊した様子が報じられている。道路の自動車や街路樹が洪水に押し流され、橋などを破壊した。台風は厦門、泉州、福州を破壊し、浙江、江蘇、上海にも甚大な被害を出しながら移動し、亜熱帯低気圧になったのちも河北、北京を襲った。 

 

 今年は台風5号上陸前から中国各地で豪雨災害が発生しており、異様に水害の多い年と言われている。5月下旬は河南を中心に華中を豪雨が襲い、10年に一度の規模の「爛産雨」(小麦の収穫に甚大な被害をもたらす雨)といわれた。 

 

クルマもすっかり水に浸かった(写真:ロイター/アフロ)ギャラリーページへ 

 

 また、異常高温が続く夏でもあり、北西部では気温50度超えがたびたび発生。広西チワン族自治区江蘇省では暑さで養殖の魚や家畜の豚が大量死する事案も報告された。新疆北西部の高温と豪雨、雹に襲われ小麦生産に大規模被害をもたらした。 

 

 今年は世界的な異常気象であり、こうした天災被害は何も中国に限ったことではない。だが昨年の河南省の7月21日の大水害といい近年、中国で大規模水害が頻発していることについては「人災」を指摘する人も多い。 


防災などの都市インフラで「手抜き」か 

 

 今回、北京の洪水のすさまじさが大きく報道されているが、北京市を守ろうと河北省に対して予告なく行われた永定河などの「泄洪」(水門を開いて河水を放出する)の結果南部にある70万人が暮らす河北省涿州市が水没したのはまさしく「人災」だ。 

 

 また過去40年の都市開発の在り方が問題だったという声もある。奇抜な形の高層ビル建設など表面的な繁栄を追うばかりで、防災や排水など目に見えない都市インフラ建設に手抜きをしてきたせいだという批判も起きている。 

 

 門頭溝の水害がここまでひどかったのは、単に予期せぬ長時間の集中豪雨のせいだけでなく、近年、郊外観光地として開発が進められていたこの地域が、表面上の景観ほどには地下インフラが整備されていなかった、という地元民の批判の声もSNSなどであがっていた。 

 

 ドイツ・日本の植民時代にインフラが整備された青島で、これまで水害が発生したことがないことを例にあげて、中国の都市計画、都市開発の未熟さを指摘する声もあった。 

 

習近平は「皇帝」としての力不足 

 

 人々が人災説を強く感じたもう一つの背景は、7月19日に「習近平の治水に関する重要論術」なる本が出版され、水利部、メディアを挙げて、「習近平がこの10年自ら計画し、配置し、推進し、全国の海綿都市(水害に弱い都市)の治水事業を完成させた」と大々的に喧伝していたこともある。水利部機関紙「中国水利報」(7月19日)は、「長期間解決しがたかった治水問題を(習近平が)解決した」と報じていた。 

 

 だが、その1週間後に、福建から海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没したのだ。これは、宣伝と実情がまったく異なるということであり、何も解決できていないのに、解決できたというウソを浸透させたがために、台風上陸前に準備すべき対応策や泄洪計画に手が抜かれたのではないか、と思われた。 

 

 暴れる竜のような黄河、長江の大河ほか無数の河が走る中国はもともと水害が多い国であり、治水で国家指導者の能力が試されてきた国でもあった。中国の皇帝が竜の紋章を使うのは、竜が治水の象徴だからだ。ならば、習近平はその治水に失敗しているのだから、果たして「皇帝」としての能力が足りているといえるかどうか。 

(続く)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする