――― ♪ ♪
コト
グッ グッ ♪
スープのにおい・・・
ガサ ・・・
孤児院のキッチンで、朝ごはんの準備をしてる。
他の部屋には町の人たちがもう集まってきていて、ごはんを待っているのだ。
いつもなら早起きして準備するノロマさんたちが、寝坊したみたい。
「パンがたくさん♪」
パンみたい。
孤児院の先生や子供も手伝ってる。
ジュゥゥゥ ・・・
フライパンで小さくなった野菜が温められている。
かわいそう。
ト
僕は通路を進む。
うっかりフライパンに乗せられたらいやなので、外にいるのだ。
ト
ヒュゥゥゥ ―――
キッチンを出れば、すぐ外にでるドア。
キャン
ボルピノが鳴いてる。
おじいさんとおばあさんも起きていて、屋根付き通路で森を見てる。
僕らが寝ている間に雨は止んでいて、でも雲が多くてまた降りそうな風。
コケ コッコ ~~
ニワトリがうるさい。
飼い主のレッドさんと一緒で、屋根の外に出て散歩している様。
部屋のある建物から通路は長くて、町の人がたくさんいる。
お日様は今日も元気に出てきたけど、雲がいるから隠れてることが多い。
「おはようございます」
「ああ・・おはよう」
ハットさんの声。
「ニャ~」
リフやコニもいる。
「ごはんはまだ時間がかかるわ」
「そう」
「ゆっくりでいいわ」
コニたちはごはんの準備手伝わないのかな。
「・・・」
ひとつ向こうの柱の側に、バングルさんもいた。
ほかの子供たちは手伝ってるのに、さぼってるのだ。
タ
「・・・」
ドーベルマンがいた。
早起きして、朝のパトロールをしているのだ。
カラ カラ
木から落ちて来た葉っぱがカラカラ転がる。
「今日は寒いわねぇ」
「雨、またふりそうね」
コニたちが空見てる。
―――
!
音がする。
ガゥ
ドーベルマンも気づいて、吠えた。
ブロロロ
車が来る。
「誰か来たわね――」
ト
「誰かな?」
ロッドさんが屋根から出て、向かってくる車に手を挙げた。
止まるように促している様。
ブロロロォォ ン
暗い青色の車。
後ろには荷台があって、ロッドさんが運転しているのに似てる。
タ
ドーベルマンがこっちに来る。
ガチャ
エンジンの音が切れて、中に乗っていた人間が出てきた。
1人だけ。
「・・・・」
長袖だけど上着は来ていなくて、寒そう。
ずいぶんひげが伸びていて、疲れている様子。
「どこから来たの?」
一番近くにいたレッドさんが、話しかけた。
―― !
ニャ
手に銃を持ってる――
まぁ!
キャン
! !
「お前は下がれ――」
銃をロッドさんに向けて、もう片方の手でレッドさんを掴んだ。
「ああ――!」
「コケ!」
ひげが銃をレッドさんの頭に向けたのだ――
「何か食うものを持ってこい」
「――落ち着け」
「近寄るな!!」
またロッドさんに向けた。
なに?
―― ガャャ
ガゥゥ
後ろの屋根通路の人たちが、ざわざわしてる。
コ コ
「なんでもいいから持ってこい!」
「――いま食事の準備をしているんだ・・・少し待ってくれ」
ロッドさんが後退しながら、話してる。
レッドさんを人質にして、なにか要求しているのだ。
マロックさんたちはどこかね?
―――
ハットさんたちがこそこそ話してるのが聞こえる。
「ニャ~」
「?」
ひげがこっち見た。
コケ
「うまそうなチキンがいるじゃねえか・・・こいつを揚げてこい――」
「――ああ!!」
「コケ!」
僕じゃなくてニワトリ見てるのだ――
「この子は私の大事な家族なのよ・・・許して」
「うるさい早くしろ」
ひげがニワトリ見て叫んでる。
から揚げにするつもりなのだ!
「ニャ~」
逃げて――
「コケ!」
レッドさんが捕まって、ニワトリは抗議してる。
―――
通路からは悲鳴も聞こえる。
―――
チラッと見ると、おばあさんは通路に座ってしまっている。
銃が怖いのだ。
リフは、コニやハットさんの前にいる。
―――
そろそろ来ると思った男の足音がする――
―― ザッ
僕は大きく左に跳ねる――
「――――」
ひげがこっち見た。
タン ――
「あ!」
後ろ見ると、通路の人の間から男が跳び出した――
!
「なんだお前――」
――― ガァ ァン
―― !!
! ―― !
ドサァァ ――
ひげが地面に倒れた。
ガタン
そして、少し離れた場所に銃が落ちた。
!?
! !
「もう大丈夫ですよ」
男の攻撃と同時に地面にへたり込んだレッドさんに、何か言った。
ヒュルルルル ・・・・
男の手には、木の剣。
たぶん、朝の練習をしていたんだと思う。
ダッ
マロックさん ――
ガードさんと斧さんも出てきた。
タッ
地面に落ちていた銃を、ガードさんが拾った。
「彼は?」
「食べるものを要求してました・・・」
ガゥ
ザヮ ザヮ
―――
通路の人たちが、ざわざわしてる。
みんな驚いている様子。
「・・・・」
ト
男が来た方に去る。
斧さんとガードさんが来たから。
―――
・・・・
たぶん、男が一度に2回攻撃したように見えたので驚いているのだ。
たまに練習しているから、僕は知ってる。
銃を持つ手を下から打った後、すばやく頭を横から打ったのだ。
一振りの様に攻撃するから、通路の人たちにはよくわからなかったみたい。
上から振り下ろしてからあれをやることもある。
レッドさんにあてずに、上手く攻撃したのだ。
「ありがとう」
リフの手を持っておばあさんが立ち上がってる。
「今のはどうやって・・・?」
「やっぱり彼はニンジャなのね」
「――――」
ハットさんが頷いた。
「!」
リフも驚いているみたい。
「まぁ」
「うふふ」
「教授、それは違うよ・・・」
「?」
ハットさんたちが、おじいさんを見た。
「あれは、ブシのワザだよ」
!?
「ブシ?」
「・・・サムライの事ね、おじいさん」
!!
おや。
いつの間にか近くに来ていたバングルさんが、リフたちの後ろで驚いてる。
「しかし・・・もう、彼らはいないと聞いているよ」
「あの剣の速さを見たでしょう」
「・・・・」
「教授、サムライって?」
ハットさんまで驚いてる。
コケ ♪
ニワトリの声。
「ニャ~」
たべられなくてよかったね。
「マロックさんが森に行くよ・・・追ってみよう」
ザッ
ハットさんたちが屋根から出る。
男を追うみたい。
「・・・・」
僕が見ると、バングルさんが気づいた。
ト
何も言わずに、ハットさんたちを追って行く。
「・・・」
僕も行こう。
森がゆれてる。
冷たい風が吹くから。
飛んでいく葉っぱもいる・・・・
ジャリ
ゥゥゥゥ ―――――
キャン
♪