ドアの外

2020年03月24日 11時19分57秒 | マーロックの日記

              カタン

                               ――― ァァァァ

     ミャ~

しまネコがみてる・・・

手袋を外す。

孤児院に避難している人たちは、だいたい食事を終えた。

プレートとスープの器と、トレイを洗っていた。

つめたい水だったけど、手袋していたから平気。

ノロマさんや先生たちがキッチンにはいて、洗ったのを拭いて片づけてくれている。

エレガントさんは、さっき衛星電話でマッチョさんにこっちの状況を伝えた。

老紳士が買い取った大型のトラックは屋敷にあって、あれに食べ物などを積んで明日にもこっちに向けて出発してくれるということになった。

コックさんやウェーブさんも来てくれる。

孤児院にはそれなりに食料はあるのだけど、避難している人が多いからそう長くは持たない。

「マロックさんありがとう」

「うん」

あとは任せて、私はキッチンを去る。

         トコ

「・・・」

「♪」

しまネコを見ると、ノロマさんに捕まって持ち上げられている。

「・・・・」

もう、付いてはこれないな。

        トコ

廊下に出る。

左に行くとすぐ、外に出るドア。

               カチャ

                             ァァァァァ  ・・・

外に出る。

屋根付きのコンクリートの通路があって、他の建物まで傘なしで移動できる。

横からくる雨にはあたるけど。

「・・・」

ドーベルマンがいた。

見張りかな。

        カチ

腕ライトをつける。

新しいタイプのもので、ひとつ前のよりも1.5倍の明るさになっている。

前のはリフにあげた。

見た目はほぼ一緒。

「♪」

ドーベルマンの近くを照らしてあげると、シッポが動いた。

ふふん。

私はコートのポケットから、ハンディライトを出す。

手で握ると、レンズ部分がはみ出るくらいのサイズで、軽い。

                     ―――――

点ける。

「クゥゥン」

強い光で地面が照らされて、ドーベルマンもうれしそう。

腕ライトの3倍以上の光量がある。

集光レンズなので、より遠くまで照らすことができる。

「・・・・」

庭にある、バスケットのゴールを照らしてみる。

            パタ パタ

ドーベルマンを見ると、長いシッポをパタパタさせてこっち見てる。

光の先は見ていない様である。

航空機用のアルミ合金でできていて、とても頑丈なライトである。

3v電池2個を直列で入れる。

点けているだけで、ライトは結構暖かくなる。

奥の方の雨粒も見える。

         

歩く。

「・・・」

ドーベルマンも一緒に来る。

               パチャ

屋根から落ちてくる水で、通路の横の土はぬかるんでいる。

水たまりに光があたると、強く反射する。

        カチ

ライトを切る。

腕ライトで十分。

      ゴソ

温かくなったハンディライトをポケットにしまう。

「クゥゥン」

鳴いた。

少し暗くなったから、がっかりしているのかな。

ブラウやグリたちが、避難している人たちの寝るためのベッドを用意した。

空の箱やテーブルを使ったもので、毛布だけは十分な量がある。

孤児院の子供たちは自分の部屋があるけど、そこは暖房が付いてないから寒いだろう。

でも、しっかりとした布団があるので寝るだけなら問題ないと思う。

キッチンとは反対側の端っこの部屋には、漁師や町の人が何人かあつまって、明日の事を相談していた。

ガードさんとハットさんも、加わっている。

この丘の一番高いところには、灯台がある。

孤児院はそこに向かう途中にあって、水がここまで来ることはなさそう。

地面が大きく崩れたりしなければ、ここは安全だろう。

暖房も付いて、今夜は無事に過ごせそう。

私は少し遅くまで、様子を見ていることにするつもり。

「・・・」

ドーベルマンは、私の横で座ってる。

見張りするのが、自分の仕事だと思っているのかもしれない。

コニの所に連れて行こう。

人間が何人か起きていれば十分だろう。

                      ―――

「・・・・」

孤児院のドアが開いた。

           

ブラウが出てきた。

倉庫に行くのかな。

               

「・・・・」

チラッとこっちを見たけど、何も言わずに通り過ぎていく。

ブラウ達が何度も出入りするから、ドーベルマンもそのタイミングで外に出たんだと思う。

「♪」

頭を撫でる。

「戻ろう」

             

孤児院のドアに向かう。

出て来たばかりだけど、ドーベルマンを休憩させに行く。

           

・・・後ろ見る。

「・・・」

付いてこない。

シッポはゆれている。

「・・・中に戻るのはいやなのか」

「クゥゥン」

返事した。

外がいいらしい。

      トコ

私はドアの近くに置かれた傘立てから、傘を1本とる。

「発電機を見に行こう」

            ――  バサ

傘を開いて通路から出ると、ドーベルマンがこっち来る。

散歩したいのかな・・・・

                   

                            ザァァァ  ・・・・

           ポチャ


洗濯

2020年03月17日 14時59分14秒 | マーロックの日記

                  ィィィ ・・

                                ―――――

    ポチャ

ひんやりする・・・

               ウィィィン

「・・・・」

目をひらく。

              ポチャチャ

洗濯機はまだ動いている。

寝ていたけど、短時間だった様。

              ゴロン

しまネコが足元にいて、ゴロゴロしてる。

ジッとしていたから、少し寒い。

トレーラーの洗濯機の横に座って、本を読んでいた。

発電機の熱を利用して、トレーラーの中は温められている。

ただ、ここは少し寒い。

            ミャ~ォ

膝には電子書籍を読むための端末。

うっかり眠っても、紙の本の様に閉じることはない。

起動すれば、すぐ続きから読める。

今読んでいる本の著者は、本文に出てきた内容を少し詳しく書いたものを、本の後ろ側にまとめている。

紙の本で読んでいた時は、本文と後ろ側をパタパタしながら読む必要があった。

けっこう頻繁にそれがあるので。

だけど電子書籍だと、画面の数字をタッチすると小窓にそれが出てくる。

とても便利。

だけど読んでいる途中でうっかり寝てしまうのは、同じ。

            ポチャ

それが心地よいのも。

        

端末をイスに置いて、立ち上がる。

         パタ

キッチンに行く。

洗濯が終わったら、孤児院い行く。

避難している人たちの食事が終わる事なので、食器を洗う。

食器洗い機は使わない。

発電機の出力がギリギリなので。

暖房を使いながら水を出すことは、できた。

プレートなど、量が多いしつめたい水で洗う必要がある。

なので私が洗う。

防水の手袋をつければ、平気だろう

「ミャ~」

しまネコも付いてくる。

洗濯のためにトレーラーに戻る私に、孤児院から付いてきた。

立派なしま模様のネコになった。

    パタ

               パチ

手を伸ばすと、前足でタッチした。

キッチンに近づくと、暖かい。

                  グッ  グッ

リフがいる。

袋に入ったラーメンを作っている。

スープとおにぎりだけでは、お腹いっぱいにはならなかった様。

私もそうだけど、後で何か食べる。

「ミャ~」

窓を見る。

                             ァァァ ・・・

雨の音。

            パタ

       カタ

カウンターに座る。

窓のすぐそば。

外は暗いけど、近くが見える。

雨粒は多い。

それを見る・・・・

                            ァァァァ  ――――

        ミャ~ ♪

     ―――


古いニス

2020年03月08日 07時40分01秒 | 黒猫のひとりごと

                          ァァァァァ  ・・・・・

     ニャ~~  ニャ ニャ ♪

            ニャ~~  ニャ ニャ ♪

                          ピィ ♪

    ニャニャニャン ♪  ニャン ニャ ニャン ニャ ♪

                               ニャ~~ ♪

        ニャニャ~~ ♪   ニャ  ニャニャニャニャ ♪

               ニャニャ~~ ♪  ニャ  ニャニャニャニャ ♪

       ニャニャ~~   ニャニャ~~    ニャニャ~~~ ♪

                                      ピィ ♪

「クゥ♪」

シッポが動いてる・・・

「うふふ♪」

暖炉部屋で、僕とメジロでソングを披露したのだ。

「バブ♪」

人間たちも喜んでいる。

             バチ バチ  ♪

薪は燃えている。

でも、天井の端っこ辺りから暖かい空気も出てきていて、部屋の中はさっきまでよりも暖かい。

    タッ

小さな子供が僕を捕まえようとしたので、避けた。

「うふふ♪」

単純な動きなので、予想する必要もなく避けれるのである。

キッチンでつくっていたおにぎりやスープも届いていて、まだ食べている人が多い。

テーブルにはランタンライトがいくつか置いてあって、部屋の隅っこは影っぽい。

                       ザァァァァァ   ――――

雨の音はずっと聞こえる。

            

広い部屋の窓際に、イスに座って外を見ている人がいる。

別のイスが横にあって、そこにトレイが置いてある。

ごはんは、まだ食べてないみたい。

「・・・・」

僕の接近に気付いて、こっち見た。

髪は長くて、窓の横に伸びている腕にはバングル。

                ――――

また窓の方を向いた。

さっきから、ここで一人で外を見てる。

                    ―――    

暖炉の近くに行けば、おじいさんが何か話しているのに。

        トン

僕は窓枠にのる。

木の枠は古い。

そんな色。

幅があるから、腕も僕ものるのにちょうどいいのだ。

                        ―――  ァァァァァ

暖炉の音より、雨の音が大きく聞こえる。

ここはランタンライトから遠いから、窓の外は少ししか見えない。

                                 ――――――

空が光って、遠くまで見えた。

「あんなに大きな雲・・・何かいそうだと思わない」

耳の後ろでバングルさんが何か言ったから、後ろ向く。

「・・・」

僕を見てる。

もう片方の手が、動いた。

僕の背中にタッチすると思う。

          ―――

「・・・・」

僕は前を見る。

窓に張り付いたのと、すぐ近くの雨粒しか見えない。

空が光れば、たくさん見える。

ジッと見ていれば、巨大マグロが見えるかも。

               

足音が来るけど、僕は窓の外を見る。

空が光るのは一瞬だから、目を離すわけにはいかないのである。

「ごはん食べないの?」

先生が来たみたい。

「たべるわ」

「そう」

          

足音が去った。

バングルさんのごはんを分けてもらおうとしたのかもしれない。

       ―――

背中の手は、少し動く。

「ニャ~」

僕は雷を呼んでみる・・・・

               バチ バチチ

                           ァァァァァ  ・・・・・

        ―――