カタン
――― ァァァァ
ミャ~
しまネコがみてる・・・
手袋を外す。
孤児院に避難している人たちは、だいたい食事を終えた。
プレートとスープの器と、トレイを洗っていた。
つめたい水だったけど、手袋していたから平気。
ノロマさんや先生たちがキッチンにはいて、洗ったのを拭いて片づけてくれている。
エレガントさんは、さっき衛星電話でマッチョさんにこっちの状況を伝えた。
老紳士が買い取った大型のトラックは屋敷にあって、あれに食べ物などを積んで明日にもこっちに向けて出発してくれるということになった。
コックさんやウェーブさんも来てくれる。
孤児院にはそれなりに食料はあるのだけど、避難している人が多いからそう長くは持たない。
「マロックさんありがとう」
「うん」
あとは任せて、私はキッチンを去る。
トコ
「・・・」
「♪」
しまネコを見ると、ノロマさんに捕まって持ち上げられている。
「・・・・」
もう、付いてはこれないな。
トコ
廊下に出る。
左に行くとすぐ、外に出るドア。
カチャ
ァァァァァ ・・・
外に出る。
屋根付きのコンクリートの通路があって、他の建物まで傘なしで移動できる。
横からくる雨にはあたるけど。
「・・・」
ドーベルマンがいた。
見張りかな。
カチ
腕ライトをつける。
新しいタイプのもので、ひとつ前のよりも1.5倍の明るさになっている。
前のはリフにあげた。
見た目はほぼ一緒。
「♪」
ドーベルマンの近くを照らしてあげると、シッポが動いた。
ふふん。
私はコートのポケットから、ハンディライトを出す。
手で握ると、レンズ部分がはみ出るくらいのサイズで、軽い。
―――――
点ける。
「クゥゥン」
強い光で地面が照らされて、ドーベルマンもうれしそう。
腕ライトの3倍以上の光量がある。
集光レンズなので、より遠くまで照らすことができる。
「・・・・」
庭にある、バスケットのゴールを照らしてみる。
パタ パタ
ドーベルマンを見ると、長いシッポをパタパタさせてこっち見てる。
光の先は見ていない様である。
航空機用のアルミ合金でできていて、とても頑丈なライトである。
3v電池2個を直列で入れる。
点けているだけで、ライトは結構暖かくなる。
奥の方の雨粒も見える。
ト
歩く。
「・・・」
ドーベルマンも一緒に来る。
パチャ
屋根から落ちてくる水で、通路の横の土はぬかるんでいる。
水たまりに光があたると、強く反射する。
カチ
ライトを切る。
腕ライトで十分。
ゴソ
温かくなったハンディライトをポケットにしまう。
「クゥゥン」
鳴いた。
少し暗くなったから、がっかりしているのかな。
ブラウやグリたちが、避難している人たちの寝るためのベッドを用意した。
空の箱やテーブルを使ったもので、毛布だけは十分な量がある。
孤児院の子供たちは自分の部屋があるけど、そこは暖房が付いてないから寒いだろう。
でも、しっかりとした布団があるので寝るだけなら問題ないと思う。
キッチンとは反対側の端っこの部屋には、漁師や町の人が何人かあつまって、明日の事を相談していた。
ガードさんとハットさんも、加わっている。
この丘の一番高いところには、灯台がある。
孤児院はそこに向かう途中にあって、水がここまで来ることはなさそう。
地面が大きく崩れたりしなければ、ここは安全だろう。
暖房も付いて、今夜は無事に過ごせそう。
私は少し遅くまで、様子を見ていることにするつもり。
「・・・」
ドーベルマンは、私の横で座ってる。
見張りするのが、自分の仕事だと思っているのかもしれない。
コニの所に連れて行こう。
人間が何人か起きていれば十分だろう。
―――
「・・・・」
孤児院のドアが開いた。
ト
ブラウが出てきた。
倉庫に行くのかな。
ト
「・・・・」
チラッとこっちを見たけど、何も言わずに通り過ぎていく。
ブラウ達が何度も出入りするから、ドーベルマンもそのタイミングで外に出たんだと思う。
「♪」
頭を撫でる。
「戻ろう」
ト
孤児院のドアに向かう。
出て来たばかりだけど、ドーベルマンを休憩させに行く。
ト
・・・後ろ見る。
「・・・」
付いてこない。
シッポはゆれている。
「・・・中に戻るのはいやなのか」
「クゥゥン」
返事した。
外がいいらしい。
トコ
私はドアの近くに置かれた傘立てから、傘を1本とる。
「発電機を見に行こう」
―― バサ
傘を開いて通路から出ると、ドーベルマンがこっち来る。
散歩したいのかな・・・・
ト
ザァァァ ・・・・
ポチャ