境目に

2020年05月25日 04時56分06秒 | マーロックの日記

                         クォ ~~

                           ザザァァ      ン

               

海が赤い・・・

太陽がもう沈む。

その近くの海は、帯状に赤くキラキラしてる。

「クゥゥン」

ドーベルマンがいる。

耳もシッポもカットされていないから、長い。

ペタっとしている。

孤児院は昨日よりは少し落ち着いていて、町の人も夕食の準備を手伝ってくれている様。

この後、街からのバスが学校に来る予定。

明日には、希望者や体調を崩している人は避難する。

自分の車で親族の所に避難する事を決めた人たちも、いる。

スーパーにはラジオもあったので、たくさん持ってきた。

雑音が入ることもあるけど、ちゃんと聞ける。

大雨による被害の事も伝えているけど、新型のウイルスによる感染症のニュースが多い。

ヨーロッパのいくつかの国では、すでに数千人の感染がそれぞれ確認されているらしい。

かなり感染力が強いみたい。

そのこともあって、遠くに引っ越している子供たちが、ここに住む親に避難するように促しているみたい。

孤児院から少し坂を上ると、灯台がある。

避難している高齢の人たちが、入れ代わるように散歩に行く。

ここに残る人と、去ることを決めた人が昔の話でもしているのかもしれない。

以前あった川の氾濫の時は、多くの人は町に残ったそう。

              ソョョ  ――

雨上がりで、草も夕陽でキラキラしてる。

                      

木と木の間から、ロッドさんと孤児院の子供たちが見える。

スーパーで手に入れた新しい釣り竿で、魚釣りに行っていた。

         タ  ――

「ここにいた」

「ガゥ♪」

コニの声。

ドーベルマンのシッポが動く。

「お魚とれた?」

こにが、走って孤児院に向かっている子供に聞いた。

「ううん」

首を横に振る。

「釣り竿が高級でも釣れるわけじゃないのね」

「うふふ♪」

コニも孤児院の方に去った。

港にあった大型の発電機を運んだので、電気の心配は無くなった。

節約はするけど。

           

歩く。

昨日とは、トレーラーの場所が違う。

少し前に、マッチョさんたちに連絡をした。

街は混乱しているので、しばらく戻ってこない方がいいと言っている。

ブラウ達は残るだろうし、私たちもすぐに帰るつもりはなかった。

スーパーにはまだいろいろ残っているし、車の出入りが多い。

なので、教会よりも少し奥に移動させてある。

ブラウ達が乗ってきたキャンピングカーも。

外に出れば、すぐ海が見える。

大バスは、昨日とそう変わらない位置にある。

       

右側、バスケットゴールがある近くにフォークリフトがある。

港から持ってきたもので、3台ある。

重たい箱でも、あれで運べる。

                               ヒュゥゥ ―――

シャワーをあびたばかりで、髪は完全には乾いていない。

冷たい風で、ひんやりする。

孤児院の中では、運んできたパイプベッドをみんなで組み立てていると思う。

たくさん持ってきたから、組み立てるのも大変。

カーテンもあって、うまく仕切りの様に出来たらいいと思う。

でも、それは後で考える。

孤児院の古い建物で、今は倉庫に使われていた場所に、運んできた食べ物などを置くことになった。

ごみの場所が、まだ決まっていない。

孤児院の裏側、灯台のある方に古い焼却炉があった。

レンガとコンクリートの焼却炉で、有害なガスを除去する装置はない。

ごみをしっかり分けて集める事で、可能なものは燃やすことになる。

それ以外は、グランドシートやタープを使って屋外に集めて置ける場所を作るのがいいと思う。

倉庫の建物をゴミを置く場所にするのもいいと思うけど。

食べ物などは、孤児院の中の部屋を使う。

でも、今は無理。

人が多い。

         クゥ ♪

チワワがいた。

黒猫と遊んでいたみたい。

            ピョ ♪

  パタ パタ

近づいてきたので手を伸ばすと、シッポを振ってせわしく動く。

だいたい動きは予測できるけど、たまに連続で同じ方にステップをすることもある。

   グィ

持ち上げると、シッポだけが揺れる。

「ニャ~」

黒猫が鳴いたけど、抗議している様ではない。

      

このまま、ノロマさんたちの所に連れて行こう。

キッチンにいると思う。

チワワは、背中を私に向けたまま上向きにこっち見てる。

ベロが出てるな。

「♪」

掴んだ手を少し動かすと、うれしそう。

しらない場所は怖がっていたチワワだけど、黒猫たちと遊んでいるうちに、平気になっている。

        ト  ト

黒猫も歩いて付いてくる。

「ピョ」

お腹の黄色い小鳥もいる。

   パタ パタ

チワワのシッポはフサフサしている。

いいほうきなのだけど、空を切るだけ。

正面の入口ではなく、キッチンのある方のドアに行く。

         

地面はまだ水っぽい・・・・

                   クゥ

                           ザヮヮヮヮ  ・・・・

            ――― 


大きいのと小さいの

2020年05月18日 07時52分01秒 | 黒猫のひとりごと

                       ザァァァ    ン

                                  ゥゥゥゥ ―――

          ピョ

海が見える・・・

ここからは少し離れていて、下の方。

孤児院に向かう坂の途中にいるのだ。

お日様はそっちにいて、そろそろ帰る頃。

雲が少し減って、いるのが見える。

照らされてキラキラした海の上に、鳥がたくさん飛んでる。

スーパーで集めた荷物は、たぶん孤児院にある。

僕が選んだゼリーも、少し運んであるはずなのだ。

でも、まだまだスーパーには食べ物があった。

野菜とか果物を、先に運んだみたい。

男は帰りのミニトラックには乗らず、港に行った。

僕も付いて行ったから知ってる。

「ピョ」

そこでフォーク付きのカートを見つけて、ここまで乗ってきたのだ。

フォークは上下に動いて、大きな箱でも持ち上げる事ができるのだ。

僕はそこにのってる。

「ピョ」

小鳥もいる。

自分で飛ばずに、楽して移動しようとしているのだ。

                      ソョョ

この辺りは、昨日の溢れた水も来なかったみたい。

草も元気にそよそよしてる。

「・・・」

まだカートが動かないから、僕は後ろ見る。

「・・・・」

男は横向きに座っていて、まだ動かすつもりはなさそう。

お日様か、鳥か空か海を見ているみたい。

僕らが来た港も、ここから見える。

いろんなものが散らばっていて、片づけられていなかった。

もっと向こうには、海の近くにカラフルな屋根の家がある。

           カタ

男が前向いて座った。

動かすみたい。

                ウィィィ   ン

静かに走るカートなのだ。

道は舗装されているから、あんまりガタガタしない。

                                  クォ ~~

カートのフォークは2つあって、小鳥は海から遠い方にのってる。

「♪」

たまにブルブルしてる。

               ニャニャニャニャニャ~~  ♪

        ニャ  ニャ~~  ニャ~~  ニャ~~  ♪

                          ピョ ピョ ピョ  ♪

             ニャニャ ♪

                     ニャニャニャ~  ニャニャ~~ ♪

                          ピョ ピョ ピョ  ♪

           ニャニャ~ ニャ~ ニャニャ~~  ♪

       ニャニャ ニャ~ ニャ~ ♪

                     ニャニャ~~ ♪  ニャニャ~~  ♪

            ピョ ♪

「・・・・」

僕に合わせて一緒に歌ったのだ――

                                  ザァァァ   ン

「ニャ~」

これは、孤児院の人にも披露できそうである。

「ピョ♪」

僕らの行く道が、森の中に入る。

孤児院までもう少し・・・・

               ウィィィィ   ン

                                 ザヮヮヮ  ―――

                  ピピピ  ♪


ロッド

2020年05月05日 03時15分14秒 | マーロックの日記

                      クォ ~~

                               ――― ァァァ

        ピョ ♪

小鳥がいる・・・

スーパーの屋上には手すりはなく、床が一段高くなっているだけ。

そこで、海からの風にあたって気持ちよさそうに休んでいる。

お昼ごろに雨は止んで、雲の間から明るい空が見える。

「ピョ」

ここは、町にひとつだけあるスーパー。

2階建てで、私はその屋上に出てきた。

昨日寄ったガスステーションも見える。

高い建物は無く、ここから町の遠くまで見える。

高齢の人が多いけど、子供も少しいる。

町の真ん中あたりに、やや高くなった場所がある。

そこに学校があって、町長を含む100人くらいがそこに避難しているそう。

孤児院より狭く、発電機なしで寒かった昨日の夜を過ごしたらしい。

体調を崩した人もいる様。

一番近くの街には、連絡してある。

そっちも昨日の雨で被害が出ていて、大変な様。

でも、バスを送ってくれるそう。

必要な人や希望者は、街まで避難させてくれる。

病院もあるし、物資もこの町よりも豊富だろう。

近いと言っても遠いので、バスの到着は日没後になるそう。

出発は明日になるだろう。

                                 ヒュルル

海と風の音は、絶えない。

               

歩きながら、陸側を見る。

まだ昨日の水があちこちに残ってる。

学校や孤児院の丘を含む町のほとんどは、川と海の間にある。

広いけど、建物はまばら。

2階に戻る階段の所は、屋根がある。

あの上なら、もっと見晴らしが良さそう。

昨日のような濃い霧は無く、町のざっくりとした位置や距離感は分かった。

                 パタン

中に戻る。

暗いので、腕ライトを点ける。

店内には、漁師が10人いる。

私たちはそれを手伝いに来ている。

まず、パンなどのすぐ食べれるものを学校に送る。

町の漁師は35人いるそうで、15人は道の掃除に行ってる。

残り10人は、発電機を学校に運んだりしてる。

港にから持ってきた大型のは、孤児院に置く。

孤児院にある発電機を、学校に持って行く。

         

階段を下りると、2階の売り場に行ける。

広い建物だから、通路は広い。

オートスロープもあって、カートを押して2階にも来れる。

ただ、停電で止まっている。

カートはスロープを移動中固定されるように補助輪が付いている。

今はそれがあると移動の妨げになるので、外した。

                カラ カラ

カートの音。

リフがいた。

「電池集めたよ」

「うん」

町でひとつだけのスーパーなので、衣料品や日用品も豊富にある。

1階はガードさんや斧さんが手伝っているし、私は2階を見てみる。

毛布や布団もたくさんあるから、運べば役立ちそう。

パイプやフレームを組み立ててつくるベッドも、あるらしい。

スーパーの従業員も1人来てくれている。

今日必要な分の食料を確保したら、ベッドなども運びたい。

「ニャ~」

黒猫の声。

              ―――

辺りを照らすと、目が光った。

このくらいの暗さなら、あいつは自由に動き回る。

窓の近くは明るい。

その近くに、ライトの光。

私たちの乗ってきた、ピックアップトラックの持ち主だろう。

漁師はやや若い人が多いけど、彼はその中でも少ない若者。

何か見ている。

釣り竿か。

            

私が2階まで押してきたカートを、代わりに移動させていた様。

「それ持って行くの?」

話しかけると、こっち見た。

「いえ・・・こんなに高価なのは必要ないでしょう」

残念そうに答えた。

私は、それが置いてあったと思われる棚を見た。

「・・・・」

釣り竿の平均的な値段は知らないけど、たしかに高い。

マッチョさんたちと連絡した時に、老紳士からの伝言もあった。

必要なものはすべて使わせてもらえというもので、代金は後で老紳士がすべて支払ってくれるそう。

スーパーとガスステーションのオーナーにも、それは伝えてある。

もともとすべて提供するつもりだった様だけど、老紳士がすごいお金持ちであることを説明したら感謝していた。

従業員たちの給料も払える。

「全部買ってくれるみたいだから、持って行きなよ」

彼にも、老紳士の事は話してある。

何をどれだけ使ったかを把握するのは難しいから、老紳士はお店ごと買うくらいの金額を支払うつもりだと思う。

「・・・・」

「いいのかい?」という表情でこっち見てる。

「いいよ」

「♪」

返事したら、喜んでる。

明るいクルクルとした髪で、そこに直接ヘッドライトのバンドを着けてる。

       ガタ

カート乗せた。

はみ出してる。

うれしそうにカートを押して去った。

ロッドさんだな。

「ニャ~」

黒猫が見ていた。

私も手伝おう。

カートはロッドさんに奪われたから、また持ってこよう。

ゼリーはあるかな・・・・

              

                              ―――――

       ニャ~


荷台から

2020年05月03日 05時31分23秒 | 黒猫のひとりごと

                     クォ ~~

                               ァァァ  ン

       ブロロロ

しっとりした風・・・

海の方から。

        ガタ ――

荷台が揺れた。

ミニトラックの、屋根のない荷台に乗っているのだ。

僕らの後ろにも、同じようなのが走ってる。

孤児院の倉庫にあった木箱を少し載せていて、男はそこに座ってる。

リフとグリもいる。

ガードさんとノッポさんも、別の荷台に乗ってるはずである。

                             クァ ~~

雨が止んで、キラキラしている空に鳥。

雲は多くて、その隙間からお日様の光。

雨が落ちてこないから、雲の上のマグロは平気かな。

落ちてきたら、お刺身にするのだ。

「ニャ~」

「・・・・」

僕が体を伸ばしたら、リフが両手でつかんだ。

荷台から落ちるかもしれないと思っている様である。

チワワじゃないから、僕は落ちない。

            ガタン

ーーまたゆれた。

「枝・・・ここまで流れて来たんだね」

「うん」

            パチ

シッポで腕をたたく。

「あそこだよ」

・・・リフたちが同じ方を見た。

町は水っぽい。

いろんな色の屋根の家が見える。

そこよりも少し手前の奥に、スーパーみたいな大きな建物。

「・・・・」

目的地はそこみたい。

食べ物を集めるつもりなのだ。

孤児院にはたくさん人がいるから。

「・・・」

僕は男を見る。

「・・・・」

そしたら、男もこっち見た。

おいしそうなゼリーがあったら、こっそり食べたら?

声にはださず、提案する。

僕も分けてもらうのだ。

・・・しばらく僕を見ていた男は、また海の方を見た。

伝わったはずである。

僕は反対を見る。

スーパーは、そっちに見えるのである。

風は、つめたくない・・・・

           ロロロロ

                               ザァァ   ン

                                   クォ ~~