クォ ~~
ザザァァ ン
♪ ♪
海が赤い・・・
太陽がもう沈む。
その近くの海は、帯状に赤くキラキラしてる。
「クゥゥン」
ドーベルマンがいる。
耳もシッポもカットされていないから、長い。
ペタっとしている。
孤児院は昨日よりは少し落ち着いていて、町の人も夕食の準備を手伝ってくれている様。
この後、街からのバスが学校に来る予定。
明日には、希望者や体調を崩している人は避難する。
自分の車で親族の所に避難する事を決めた人たちも、いる。
スーパーにはラジオもあったので、たくさん持ってきた。
雑音が入ることもあるけど、ちゃんと聞ける。
大雨による被害の事も伝えているけど、新型のウイルスによる感染症のニュースが多い。
ヨーロッパのいくつかの国では、すでに数千人の感染がそれぞれ確認されているらしい。
かなり感染力が強いみたい。
そのこともあって、遠くに引っ越している子供たちが、ここに住む親に避難するように促しているみたい。
孤児院から少し坂を上ると、灯台がある。
避難している高齢の人たちが、入れ代わるように散歩に行く。
ここに残る人と、去ることを決めた人が昔の話でもしているのかもしれない。
以前あった川の氾濫の時は、多くの人は町に残ったそう。
ソョョ ――
雨上がりで、草も夕陽でキラキラしてる。
♪ ♪
木と木の間から、ロッドさんと孤児院の子供たちが見える。
スーパーで手に入れた新しい釣り竿で、魚釣りに行っていた。
タ ――
「ここにいた」
「ガゥ♪」
コニの声。
ドーベルマンのシッポが動く。
「お魚とれた?」
こにが、走って孤児院に向かっている子供に聞いた。
「ううん」
首を横に振る。
「釣り竿が高級でも釣れるわけじゃないのね」
「うふふ♪」
コニも孤児院の方に去った。
港にあった大型の発電機を運んだので、電気の心配は無くなった。
節約はするけど。
ト
歩く。
昨日とは、トレーラーの場所が違う。
少し前に、マッチョさんたちに連絡をした。
街は混乱しているので、しばらく戻ってこない方がいいと言っている。
ブラウ達は残るだろうし、私たちもすぐに帰るつもりはなかった。
スーパーにはまだいろいろ残っているし、車の出入りが多い。
なので、教会よりも少し奥に移動させてある。
ブラウ達が乗ってきたキャンピングカーも。
外に出れば、すぐ海が見える。
大バスは、昨日とそう変わらない位置にある。
ト
右側、バスケットゴールがある近くにフォークリフトがある。
港から持ってきたもので、3台ある。
重たい箱でも、あれで運べる。
ヒュゥゥ ―――
シャワーをあびたばかりで、髪は完全には乾いていない。
冷たい風で、ひんやりする。
孤児院の中では、運んできたパイプベッドをみんなで組み立てていると思う。
たくさん持ってきたから、組み立てるのも大変。
カーテンもあって、うまく仕切りの様に出来たらいいと思う。
でも、それは後で考える。
孤児院の古い建物で、今は倉庫に使われていた場所に、運んできた食べ物などを置くことになった。
ごみの場所が、まだ決まっていない。
孤児院の裏側、灯台のある方に古い焼却炉があった。
レンガとコンクリートの焼却炉で、有害なガスを除去する装置はない。
ごみをしっかり分けて集める事で、可能なものは燃やすことになる。
それ以外は、グランドシートやタープを使って屋外に集めて置ける場所を作るのがいいと思う。
倉庫の建物をゴミを置く場所にするのもいいと思うけど。
食べ物などは、孤児院の中の部屋を使う。
でも、今は無理。
人が多い。
クゥ ♪
チワワがいた。
黒猫と遊んでいたみたい。
ピョ ♪
パタ パタ
近づいてきたので手を伸ばすと、シッポを振ってせわしく動く。
だいたい動きは予測できるけど、たまに連続で同じ方にステップをすることもある。
グィ
持ち上げると、シッポだけが揺れる。
「ニャ~」
黒猫が鳴いたけど、抗議している様ではない。
ト
このまま、ノロマさんたちの所に連れて行こう。
キッチンにいると思う。
チワワは、背中を私に向けたまま上向きにこっち見てる。
ベロが出てるな。
「♪」
掴んだ手を少し動かすと、うれしそう。
しらない場所は怖がっていたチワワだけど、黒猫たちと遊んでいるうちに、平気になっている。
ト ト
黒猫も歩いて付いてくる。
「ピョ」
お腹の黄色い小鳥もいる。
パタ パタ
チワワのシッポはフサフサしている。
いいほうきなのだけど、空を切るだけ。
正面の入口ではなく、キッチンのある方のドアに行く。
ト
地面はまだ水っぽい・・・・
クゥ
ザヮヮヮヮ ・・・・
――― ♪