森の遺跡

2012年11月30日 13時10分29秒 | 黒猫のひとりごと

ト         ト           ト

                                   ピチャ  ――

洞窟の壁に、水が流れてる。

僕らは石かまくらで少し眠った後、来た方へ少し戻った。

だけど、沢山の人間の足音が聞こえたので、僕とレトリバーがブルーさんを反対方向へ誘導している。

ブルーさんも、僕とレトリバーを信じてついて来る。

レトリバーが、ブルーさんが歩きやすい場所を選んで先導している。

ブルーさんもそれに慣れてきたので、ペースは速い。

ごはんの入った袋は、ブルーさんが持ってる。

僕はレトリバーとブルーさんよりも、少し前を歩いている。

                     パタン

「・・・もう3時か」

「クゥン」

・・・時々、ブルーさんは電話を見てる。

僕が注意しておいたから、電話はもう鳴かない。

                ポチャ   ・・          ポチャ  ポチャ

おや。

水たまり。

                      ・・・    ニャー

でこぼこの石を歩いていたけど、平らになった。

・・・段差があるけど、階段みたい。

            ト   ト   ト   ト

人の作ったような場所なのだ・・・

階段は、少し下ってる。

             チャプ        チャプチャプ   ・・・・

池がある。

「・・・・なんだここ」

「クゥン・・・」

ブルーさん達も来た。

「ニャー」

町かな。

「・・・人が作った池だ」

ブルーさんが、階段を下りてきた。

「どこか出口があるんじゃないか」

                タッ           タッ            タッ

足元がでこぼこじゃなくなったから、ブルーさんが僕らを追い越して駆けていく・・・

こけても知らないのだ。

                    ト         ト          ト

僕は追いかける。

池の奥は、ランタンの灯りがぼやけていて見えない。

かなり広い様である。

僕が辺りを伺いながら歩いていると、レトリバーも僕を追い越して行った・・・

「こっち行こう」

「ワン」

上り階段を見つけたブルーさんが、上って行く。

池の奥の方も行けそうだけど、まあいいのだ。

                                       ポチャン

         ・・・・・・・ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ    ・・・・・・・・・・・

・・・空気が流れて音がする。

外に出るのだ・・・・

          サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ    ・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・            ・・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・

明るい・・・

「クゥン」

森の中・・・

「・・・遺跡だ・・・」

「ニャー」

壊れた建物の跡がある。

          ザッ   ・・・          ジャリ  ・・・・

・・・ブルーさんは、ゆっくり歩いて行く。

そろそろご飯の時間かな・・・

    ザヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・

            ・・・・・・・         ・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ  ・・・・・・・・・


畑の上

2012年11月27日 12時34分55秒 | マーロックの日記

「じゃあ、何かあったら連絡ください」

「はい」

          サク              サク

ポールさんは、去った。

警官2人と一緒にいた私服の人は、インターポール捜査官のポールさん。

麻薬などの密売組織の捜査をしているらしく、今回のブローカーが密売に関わっていると見て、やって来たらしい。

前の寄港地で、私たちが巻き込まれた事件の事も知っていた。

それで、私の名前を知っていた。

・・・各地で一斉に予定されているデモの警備で、警察はブルーさんの捜索に人手が回せないらしい。

それで、私たちが手伝うのを感謝された。

ブローカーは銃で武装している可能性があるので、見つけても手を出さずにポールさんに連絡するように言われた。

昨日からの捜査では、農村の人に目撃情報はないそうである。

        サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・                   ・・・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・

ポールさん達3人は、歩いて坂を上って行く・・・

パトカーは、このアンテナの側に置いてくらしい。

昨日の夜、日付が変わる頃に、ブルーさんの携帯電話がこのアンテナと繋がった。

どうやら、ハットさんが掛けたものらしい。

その時に突然つながっていたので、それまで電波の届かない場所にいた可能性が高いと言う。

あるいは、一瞬電源を入れたか。

この前後に、やはりこのアンテナとつながった電話の持ち主も調べているらしい。

このアンテナから数km位が、とりあえずの捜索範囲。

ブローカーが違法な中継アンテナを持っていた場合、距離はもっと遠いかもしれないらしい。

また、他のアンテナの側の可能性もあると言う。

障害物のせいで、本来近くにあるアンテナに繋がらなかっただけかもしれない。

            チュン

アンテナを見上げると、鳥がいた。

木だと思ってるのかな。

「キキ」

リスが鳴いた。

「どこから探すかね」

・・・見当がつかない。

「森の中かな・・・」

「ァゥ」

斧さんも同意した。

・・・ノロマさんの遅さで山を移動するのは、効率が悪い。

山の中は、シャープさんとノッポさんに任せよう。

「道を探しましょう・・・」

「森の中のかね」

「はい」

車で森の中に入れそうな道を探そう・・・

木型アンテナは、見晴らしのいい場所に立ってる。

坂の下の小麦畑を見る。

すごく広くて、少し強めの風で一斉にたなびいてる。

太陽の光がよく届くから、暖かい。

この辺りには食事できる場所もなさそうなので、ちゃんとサンドウィッチを買ってきている。

それは、斧さんが背負っているハットさんのカバンに入れている。

「ミャ~ゥ」

ニャッティラを見ると、ノロマさんがしゃがんで撫でてる・・・

    ・・・・・・サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・・・   ピチュ

・・・・・・・・             ・・・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ・・・・・・・・・・・・・・・・


木の形

2012年11月25日 16時18分22秒 | マーロックの日記

 サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

               ・・・・・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ  ・・・・・・・・・・・・・・

小麦畑がさわさわしてる・・・

風が強いから。

ハットさんと合流した私たちは、バスで農村まで来た。

広い畑の周りは山で、ノッポさんとシャープさんとシャープネコは森の中を探しに行った。

私と斧さんとノロマさんとハットさんは、農村を歩いてる。

ハットさんも大きなケースを持って来ていて、ホテルに部屋を借りた。

背中に背負う長方形のカバンも持って来ていた。

だけど斧さんがカバンを持っていないのを見て、斧さんに渡した。

そして、ハットさんはハットじゃなくてキャスケットを被っている。

ジャケットやコートは来ているけど、昨日よりカジュアルで動きやすそう。

・・・農村にひとつだけあるという、アンテナを目指している。

       サヮサヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・              ・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ・・・・・・・・・・

・・・食べるものがなくて生活に困っている人は沢山いる。

サブサハラアフリカでは、それが特に深刻である――サハラ砂漠以南のアフリカ。

この地域には、農地に適しているけどまだ手が付けられていない土地がたくさんある。

先進国のように化学肥料を沢山使える経済力がないので、森林農業など、その地域や土壌にあった方法を選んで農地を開発する必要がある。

生産量を増やせる可能性は十分にあるけど、収穫後の損失を減らす事でも、飢餓への抵抗力を高めることができる。

収穫後の損失をポストハーベスト・ロスと言う。

先進国では、見た目が悪い作物が捨てられ、食べられる魚も価値が低いものは捨てられる。

パンのミミはたくさん捨てられているし、スーパーなどの過剰発注による売れ残り、家庭でも買いすぎ作りすぎによる廃棄がでる。

だけど先進国では、主要穀物を収穫後、市場に届けるまでに腐敗するなどの理由によるロスは、僅かに0.07%ほどでしかない。

殺菌したり、冷蔵や冷凍による保存施設の利用、乾燥させたり最適な温度と湿度を保てる貯蔵施設の利用、優れた輸送手段、保存性に優れた品種、加工技術など、数十年かけて培われた知識を利用できる。

これに対して、貧困国では収穫から市場に届くまでの間に、多くの作物が腐って食べられなくなっている。

アジア全体では、コメのロスは13%ほどになる――極端なケースでは、8割近いロスもある。

国によっては、野菜や果物の半分前後が腐る――カビなどによって、栄養価も下がる。

サブサハラアフリカの国々では、数字が把握さている場合で、3割前後のロスが出ている様である。

―――食べ物の廃棄量は、支援を引き出すために水増ししたり、非難をかわす為に過少に報告されたりするケースもあるため、データの信頼性に問題がある場合が多く、古い推定に基づいた推計値が公表されている―――

世界全体で見た場合、農作物による1人当たりの供給カロリーの平均は、約4600kcalと推定される。

この内、ポストハーベストロスが600kcal。

加工や流通、家庭でのロスが800kcal。

畜産向けの飼料として1700kcalが使われて、畜産が生産するのが500kcal。

4600-600-800-1700+500=2000で、摂取するのは1人当たり2000kcal/日となる――分配には偏りがあるので、先進国と貧困国では大きな差が出る。

ポストハーベストロスを減らすことで、追加の生産を行わなくても、食糧の供給源にすることができる。

プラスチックや木の箱を使って運ぶとか、日陰を作るとか、収穫の適切な時期を農家に教えると言った基本的な取り組みでも、ロスをかなり減らせると思われており、実際に成果も出ている――一度に収穫せずに、順次必要なだけ収穫すると言った取り組みでも。

ドライフルーツを太陽光で作る事で、不足しがちなビタミンを保持することができる。

高価な貯蔵施設をつくらなくても、煙や清掃機械、殺虫剤などの利用でも効果は出る。

高価な酸化防止剤を使用しないでもいいように、入手しやすい安い保存料の研究も進んでいる。

牛乳は低温殺菌しないと、すぐ腐敗が始まる。

冷蔵や低温殺菌の施設がないために、乳製品が廃棄される場合は多い。

NGOのケア・インターナショナルと、合衆国の国際開発庁と私の祖国の政府が、農村での集乳施設の建設を支援している。

まだ一部の地域だけど、これまで乳を出荷したことのない小さな農家も、この施設を利用できるようになった。

その他、取り組みは多岐に渡っているのだけど、この分野への投資はまだ少ない。

食糧問題の資金援助は、多くが農産物の増産に向けられる。

・・・・・・・・・    サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ  ・・・・・・・・・・・・・・・・

      ・・・・・・・            ・・・・・・・サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・

サブサハラアフリカの多くの国で、女性の地位が低い。

土地を持つ資格が与えられていない国も多い。

だけど女性の農業者は多く、家族の生活を支えている。

農村の女性は孤立している場合が多い。

これを改善するために、携帯電話が大きな力を発揮し始めている。

従来は、ラジオを使って情報を送るしかなかった――ラジオは現在も重要な手段で、多くの農家が同じ情報を得ることが出来る。

携帯電話は双方向でコミュニケーションをとることができる。

貧しい農家は、市場に農作物を運ぶ手段を持たない。

このため運搬をする業者が買いに来るのだけど、農家は立場が弱いので安く買われる。

計算ができないために騙される場合もあるけど、不当な価格だと農家が不満を持っていても、文句を言えば買ってもらえないので黙っている場合も多い。

フェアトレードを行う企業や、支援する団体は増えている。

女性農家が団結してこれらの組織と繋がったり、より大きな市場での取引、適正な価格を知る手段として、携帯電話は力を発揮している。

西アフリカのある地域では、少女の妊娠が珍しくなかった。

学校に行くための交通手段がなかったので、その提供と引き換えに性行為を強要されることが多いのである。

だけど、アラフィアが提供した3000台の自転車によって、状況は改善されつつある。

この自転車を受け取った女性は、ひとりも妊娠していない。

アラフィアはこの地域で生まれた企業で、100人以上の農村女性が働いている。

設立者チャラの母親は、私の祖国で缶ジュースを1本買うお金を得るために、約45時間働いていた。

チャラは合衆国の大学を卒業して、この地域の女性たちがシアバター女性共同組合を立ち上げる支援をした――組合の女性は、チャラの母親が45時間かけて得ていたお金の2.7倍の収入を、1日で得れるようになった。

組合のシアバターは、アラフィアがフェアトレードによって買い取っている。

アラフィアが製品化し、直接小売業に卸している。

税金や輸送費や通関手数料などは、すべてアラフィアが支払っている。

そして売り上げの最低10%を、地域の発展のプロジェクトに還元している。

女性農家が団結することで、市場関係者への発言力も持つことができる。

訓練を受けていない農家が多いので、訓練セミナーも開かれる――こうした取り組みで、文字を書くことを覚えた人もいる。

タネはばらまかずに一列にまくとか、肥料を使うといった簡単な改善で、生産量は増えている。

ボロちゃんの住んでる国では、携帯電話を貯金通帳に、電話の代理店が銀行支店の機能を果たす、新しいサービスも始まっている。

これによって、農村の貧しい女性たちも、銀行と同じようなサービスを受けられるようになってきている。

インターネットの普及は、さらに女性の地位を向上させる力になると思われる――このための支援も始まっている。

サブサハラアフリカでは、農業者の75%が女性で、その労働力の60~80%、基本的な食事の準備のほぼ100%、運搬の80%、畑の耕耘や除草の90%、収穫と販売の60%を女性が担っている。

なのに長い間、女性はあらゆる機会から排除されてきた。

女性の収入が増えると、子供の栄養状態が改善される。

そして、未来に希望を持てるようになる。

         サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・            ・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・

・・・おや。

パトカーが一台。

農村に来てから、初めて警察官を見つけた。

「あれだけですかね・・・」

「・・・今日もデモが予定されてるからね」

「・・・・」

デモの警備で人手不足なのだろうけど・・・

「これかな」

私は、アンテナらしいのを見つけた。

パトカーのすぐ近く。

木の様な形をした大きなアンテナ。

「木みたい」

「・・・ァゥ」

それと知らなければ、近づくまでアンテナだとは思わないだろうな・・・

警官が私たちに気付いて、こっち見てる。

「ミャ~ゥ」

警官が2人に、私服警官らしい人が1人。

私服の人が、私を見てる。

         サク            サク

こっち来る。

「どうも・・・」

「こんにちは」

「・・・もしかしてマロックさんではないですか?」

「はい・・・」

私の名前を知ってる・・・

    ・・・・・ザヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・            ・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ    ・・・・・・・・・・・・・・・・


アンテナひとつ

2012年11月22日 12時32分57秒 | マーロックの日記

             ピチュン

・・・窓の外に居るらしい小鳥が、鳴いた。

                   ガタ

ケースを閉める。

部屋にあるデジタル時計を見ると、朝の10時がもうすぐ終わる。

ブルーさんを追っていた農村では宿泊施設がなかったので、少し離れた駅のある町のホテル。

ノッポさんとシャープさんとノロマさんが、私と斧さんのケースを持って来てくれた。

3人は、自分のケースも持って来てる。

アパートホテルに戻っているエレガントさんとガードさんとフクロさんも、今日中にこっちに来る予定で、みんなでブルーさんを探す。

シャワーをあびて、着替えた。

ズボンはコットンにエラスチンが3%ほど入ったもので、ストレッチが利いてる。

これで、足の動きが制限されることはない。

動きやすいように、ショート丈のピーコートを羽織った。

歩き回る事になりそうだし、中はカーディガンは着ない。

歩いてれば暑くなるので。

コートのポケットに腕ライトは入るし、カバンはいらないだろう。

でも、夜になるかもしれないのでネックウォーマーと手袋を持っていく。

「行こう」

「ミャ~ゥ」

ベッドで丸くなっていたニャッティラが、来た。

                                          ――    ガチャ

ドアから出ると狭い廊下で、すぐ階段がある。

ノロマさんの話だと、フクロさんは落ち込んでる様子だという。

紐で繋がっていたレトリバーを放したのはフクロさんで、そのことも責任を感じているらしい

ただ、エレガントさんはレトリバーが一緒で良かったと言っている様。

部屋を出る。

朝ごはんを食べたら、農村に行く。

フクロさん達が警察から受けた説明だと、やはりあの農村にひとつだけあるアンテナが、ブルーさんの携帯電話と少しだけ繋がっていたらしい。

そして、盗品を扱うブローカーに捕まっている可能性が高いと思われるという話である。

                         トッ  ――

1階に来た。

「ァゥ」

「おはよう」

「おはようございます」

斧さんとノロマさんがいた。

宿泊するだけのホテルで、レストランとかはない。

ノロマさんは首から小さな布の袋を提げていて、その中にリスがいる。

あの袋も、リスのお気に入り。

ノロマさんも、おそらくストレッチが利いていると思われる細いズボンにスニーカー。

一緒に歩いて探す気らしい・・・

・・・歩くの遅いんだけどな。

コートに手袋もして、防寒がしっかりされてる。

「さむくないんですか」

「うん」

そう答えて、ネックウォーマーと手袋を渡す。

私の意図を察したらしく、ノロマさんは肩から斜めにかけたカバンにそれを入れた。

斧さんのカバンに入れてもらおうかと思ったけど、斧さんもいつもの背中に背負う大きなカバンを持ってない。

私も小カバンしか持って来てないので、置いてきた。

今回の観光では、そんなものは必要だとは思わなかったので。

「・・・・・」

ノロマさんが、私の頭を見上げてる。

壁にあったガラスを見ると、頭のてっぺんにアンテナがひとつ。

                     バサバサ

私は、左手で髪を押さえつける。

「おはようございます」

「おはよう」

「ニャー」

ノッポさんとシャープさんとシャープネコ。

「・・行こう」

私たちは、建物から出る。

朝ごはんを食べたら、もう一度ここに戻る。

その頃には、ハットさんが来るはずだ。

ハットさんはこのホテルには泊まらずに、始発の電車を待って家に戻った。

首都ではなく、私たちがアパートホテルを借りている港街に、住んでる。

荷物を整えて、戻ってくる。

ハットさんもこの国の人ではなく、合衆国の大学の教授。

           ブロロロロロロロロ    ・・・・・・・・・・・・

                                      ・・・・ォォォン

外に出ると、風が少し冷たい。

「・・・・・」

・・・ノロマさんのペースに合わせて歩いたのでは、あまり暖かくならないかもしれないと気づいた。

カーディガンは着ておいた方がいいかな。

一度ホテルに戻るし、その時考えよう・・・

                      キキ   ・・・            ピチュ

    ブロロロン               ブロロロロ     ・・・・・・

                               ヒュルルルルルル   ・・・・・・・・・・・・・・・・・


石かまくら

2012年11月20日 12時27分26秒 | 黒猫のひとりごと

                       ポタン   ―――

・・・水の音。

もう、ずっと足音は聞こえない。

僕らは洞窟の中にあるかまくらみたいなくぼみに隠れて、ジッとしてる。

ランタンは消してあるから、真っ暗。

せっかくご飯の袋を手に入れたのに、ブルーさんはまだくれない。

寒いから、レトリバーを抱えてブルーさんは壁にもたれてる。

「ニャー」

もう、大丈夫だよ。

「・・・・」

ウトウトしていたらしく、ブルーさんは頭を急に動かした。

                               カチ

・・・ランタンが点いた。

灯りを調整して、明るさが減った。

石のかまくらから顔を出して、辺りを見渡した。

                     ト            ト

僕も外で確認するけど、灯りはあまり漏れてない。

・・・石かまくらの中よりも、ひんやりする。

              ガサガサ  ・・・

ニャ――

ご飯袋の音。

僕は、かまくらの中に戻る。

「ニャー」

「クゥン」

「ご飯にしよう」

結構大きな袋で、レトリバーがモジャから奪ってきたのだ。

                     パカ

缶詰が開いた。

「ほら」

僕が先に食べる。

                 パクパク

                            モグモグ

「ニャー」

おいしい。

                コト

                              パク    パクパク

レトリバーも食べだした。

飲み物もあるみたい。

細長いサンドウィッチを、ブルーさんが取り出した。

「結構あるな」

                ガブ

サラダとスモークサーモンが挟まってる。

せこい。

僕もスモークサーモンほしい。

              バシ

でもくれそうにないので、缶詰食べながらネコパンチをお見舞いした。

ご飯を食べ終わったら、移動するのかな。

それとも寝るのかな・・・

                 パク

  モグモグ                                  ポタン   ―――


見つからない

2012年11月18日 15時17分55秒 | マーロックの日記

ザヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

             ・・・・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ・・・・・・・・・・・・

              ホーー

                                   ホーー

・・・もう深夜の2時過ぎ。

ブルーさんが見つからない。

盗品を扱っているというブローカーに捕まっている可能性が高い。

「・・・・ふぅ」

ハットさんは、だいぶ疲れてる・・・

彫像を盗んだ警備員をブルーさんが追い始めた時、ハットさんは捕まえてほしいと声をかけたらしい。

それで責任を感じているようで、何とか見つけようとしてる。

だけど、もう休んだ方がいい。

ニャッティラの耳にも何も届かない様で、あくびしてる。

リスは、小カバンの中で寝てる。

タクシーでブルーさんを追いかけていたけど、それらしい車には出会えなかった。

首都で捕まっていたのかもしれない。

ここまで、タクシーで5時間くらい。

もしブルーさんがタクシーで追いかけていたなら、おそらく料金が払えずに、そこで発見できただろうと思われるので。

警備員から聞いた場所が見当違いだった可能性もあるけど、たぶんそれはなさそうである。

途中でパトカーに追いつかれて、私たちのタクシーは止められた。

警官はブルーさんを探していて、私たちも探していると話したら、警察に任せるように言われた。

その後は、タクシーの運転手さんに頼んでパトカーを追いかけた。

結局、もともとの目的地。

山の中の道の途中で、ここより少し下ると広大な畑が広がっている。

その辺りに他のパトカーも集まっていた。

誘拐の可能性があるため、おそらく警察は携帯電話の位置情報を把握している。

なのでこの辺りにいるか、居たのは間違いないのだろう。

ハットさんがブルーさんに電話しても、電波が届かないか電源が切れてる。

                      ホーー

                                     ホーー

民家がまばらにあるけど、ホテルはなさそう。

隠れる場所は、あまり多くない。

建物の中は、警察に任せるしかない。

私たちは、電波が届かない場所にブルーさんがいることを考えて、森に入ってる。

小カバンに入れておいた腕ライトが、役に立った。

ハットさんもペンライトを持っていたけど、ニャッティラと先頭を歩く斧さんに渡している。

私は後ろ。

「一度戻りましょう・・・」

「・・・そうだね」

「ァゥ」

・・・お腹空いた。

エレガントさん達は、電車で港のアパートホテルに戻っている。

そしてシャープさんとノッポさんが、私と斧さんの着替えを持って、ここに向かっている。

この時間だとタクシーで来ると思うけど、港からなら1時間くらいだというから、そろそろだろう・・・

              ホーー                      ホーー

   ザヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

            ・・・・・・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮワワワヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・


ご飯の袋

2012年11月16日 18時23分37秒 | 黒猫のひとりごと

      サヮサヮサヮサヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・             ・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・・・

洞窟の外が見える・・・

車が一台。

モジャとヒゲが戻ってきたのだ。

そして、他にも2人。

ブルーさんは灯りを消して、洞窟の影に隠れてる。

大きな入り口で、ゴツゴツした石が転がってる。

ブルーさんは寝転がって、様子を見てる。

このままヒゲたちが洞窟の中に入って行けば、僕らはそのまま逃げれる。

僕とレトリバーは、一緒に隠れてる。

車のライトが消えた。

     サヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                   ・・・・・・・・・・・ヮヮヮヮヮヮヮヮヮヮ   ・・・・・・・・・・・・

・・・2人だけこっちに来る。

みんなで洞窟には入らないのかな。

ヒゲとモジャ。

ランタンを持っていて、その灯りで僕らの側のゴツゴツが影を伸ばす。

ブルーさんが、少し上げていた頭を伏せた。

モジャが、買い物袋を持ってる。

ご飯かな・・・

お腹が空いている僕は、でも我慢する。

「寒いな・・・」

「毛布でも持って来れば良かったな」

           ジャリ   ・・・

                                    ジャリ

近づいてくる。

どきどき・・・

                   プルルルルル  ♪

ニャ

「・・・・・・!」

                              プルルルルル  ♪

電話が鳴いてる。

ご飯の接近に、我慢できなかったのだ・・・!

            プルルルルル  ♪

「誰のだ・・・」

                ガタ  ――

ブルーさんが慌ててポケットから電話を出したから、音がした。

「あっ・・・お前」

「・・・・逃げるぞ」

「ワン」

ブルーさんが立ち上がって、洞窟の中に走った――

            ダッ  ――

                         タ           タ      タ

僕とレトリバーも、追いかける。

「まて――」

ヒゲたちの走る足音もする。

せっかくここまで来たのに、また戻るのだ。

            タッ           タッ

僕は走りながら、ブルーさんの手に握られた電話に接近する。

「ニャー」

急に鳴いたらダメなのだ。

注意しておく。

・・・反省しているのか、電話は黙ってる。

             タッ            タッ

ヒゲたちが来たら跳びかかるつもりなのか、レトリバーはブルーさんの後ろを走ってる。

僕は、先に走って先導する。

電話のかすかな明かりだけだったのが、ランタンの灯りが点いて僕の先までぼんやり照らされる。

           ダダッ               ダダッ                  ダダッ

・・・大丈夫そうである。

ヒゲとモジャよりも、ブルーさんの方が速い。

左側のでっぱりに跳び乗った僕は、後ろを見てブルーさんが来るのを待つ。

・・・レトリバーは足音でわかってるはずなのに、何度もヒゲたちの様子を見てる。

「ニャー」

「・・・ワン」

・・・僕まで後ろに回ると、ブルーさんが気にして走る速度が落ちるかもしれないので、僕はそのまま先導することにした。

レトリバーは狙っているのだ。

ご飯の入った袋を・・・

                      ワワン  ワンワン  ――

                                             ―― 何だ

          バサッ

                        ダッ           ダッ            ダッ

・・・僕の耳には届いてる。

レトリバーの足音と共に接近してくる袋の音が。

無事にご飯を奪った様である。

途中に分かれ道はいくつかあったので、どこかに隠れることは出来そうである・・・

             ダダッ             ダダッ

  タッ         タッ           タッ                ポタッ   ―――


ツメを出す

2012年11月14日 12時00分11秒 | 黒猫のひとりごと

         ガリ  ガリ                ガリ   ・・・

・・・                     ガッ                 ポタッ   ――

「クゥン・・・」

ブルーさんが、石でロープを切ってる。

最初は石のでっぱりで切ろうとしてたけど、それを見たレトリバーが手ごろな石を銜えて持ってきた。

ブルーさんは、それに背中側で結ばれたロープをあてて体重を掛けて、切ろうとしてる。

ニャー

たまに、レトリバーが牙でかじって手伝ってる。

僕は・・・

              シュッ

ネコパンチで空を切る。

ブルーさんに見えるように。

頼まれたら、ロープに強力な一撃を加える準備は出来ている。

「・・・・・」

ブルーさんが、少し動きを止めて休憩。

・・・ずいぶんロープが細くなってる。

あれなら、僕のネコパンチで切れるかもしれないのだ。

ふふん。

切れたら、僕のおかげ。

         ト   ・・・              ト    ・・・

僕は近づく。

                  バチン

ニャ

ロープが切れた。

「・・・・よし」

細くなったから、腕力で無理やり千切ったみたい。

レトリバーがシッポ振ってる。

ニャゥ・・・

僕は前足を浮かせて、爪を出して引っ込める。

「待ってろ・・・」

「クゥン」

レトリバーの首輪のロープを、ブルーさんが解く。

・・・逃げるのだ。

                             ポタ   ―――

僕は、耳を澄まして辺りを伺う。

接近する足音はない。

            ダッ       ダッ

ロープが外れたレトリバーが、跳ねてる。

「寒いな・・・」

ブルーさんは、ポケットを探ってる。

「・・・財布は取られたな」

機械を取り出した。

あれは、電話である。

                   カタン

・・・そして、近くにあったランタンを手に取った。

明るい。

「どっちだ・・・」

ブルーさんはキョロキョロしてる。

「ニャー」

「ワン」

僕とレトリバーは、来た道を教えてあげる。

「・・・そっちか」

          カタッ  ・・・              タッ

僕はブルーさんとレトリバーよりも、少し前を歩く。

こっちは、ヒゲとモジャモジャが去った方なので、戻って来るかもしれないから、僕が耳を立てておくのである。

                      タッ                    タッ

「大きな洞窟だな・・・」

「クゥン」

慎重に歩くので遅いブルーさんを見ると、ランタンを高く上げて光を動かしてる。

               カチ  カチ

「これがスイッチか」

灯りの強さが変わる。

・・・暗くなった。

また明るい。

ランタンの操作を覚えてるみたい。

「・・・急ごう」

納得したみたいで、ブルーさんは歩く速度を上げた。

僕は、歩くのを再開する・・・

        タッ  ・・・               タ

   ニャー                  タン  ・・・               タッ

                                             ―――    ポタッ


カンテラ

2012年11月12日 12時03分25秒 | 黒猫のひとりごと

             ――     ポタン

                                       ・・・・・

「それで連れて来た訳ですか・・・」

「ええ」

・・・どこかの洞窟の中。

ランタンがいくつかあって、ぼんやりした明るさ。

天井は高くて、暗いので見えない。

泥棒を追っかけていた僕らは、宝物と思われる小さな箱が2つ、別の人間の手に渡ったのを見た。

それでブルーさんは、盗んだ警備員を追いかけるのを止めて、箱を追いかけた。

そしたら途中で見つかって、捕まった。

車に長い間乗って、運ばれた。

「ワン」

レトリバーも一緒。

「こいつが言うには、この犬は元老院議員の飼い犬らしいです」

ブルーさんは手を背中でくくられて、動けない。

レトリバーも首輪にロープを結ばれて、石に打ち込んだ金具に繋がれてる。

何度もお腹を殴られて、ブルーさんはぐったりしてる・・・

頭は殴られてない。

ここに来るまでの間、目隠しもされてたのだ。

「ニャー」

僕は、ブルーさんの顔を覗き込んで様子を見る。

「・・・だいじょうぶだ」

ニャ

薄ら目を開けて、小声で何か言って少し笑った。

・・・わざと、元気がない振りしてるのだ。

それを察した僕は、離れる。

「・・・その犬は戻しておきなさい」

「はい」

ここには泥棒の仲間が3人いる。

「こいつはどうします?」

「・・・荒立てたくはないですから、彼も帰してあげなさい」

「はい」

「ああ、顔を見られたので・・・」

「・・・善処します」

           トッ        トッ            トッ

                                      ――   ポツン

ボスらしいのが、洞窟の奥に去った・・・

見えない天井から、たまに滴が落ちてくる。

「腹減ったな・・・」

「何か買ってこよう」

「・・・イヌとネコのもいるな」

           タッ             タッ             タッ

ヒゲとモジャモジャ頭は、反対方向に去った・・・

僕とブルーさんとレトリバーは、置きざり。

・・・ヒゲとモジャは、ご飯かな。

僕はお腹空いている。

「ニャー」

「クゥン」

おや。

もう3人がいないから、ブルーさんが目を開けてる。

・・・レトリバーは心配そうに、ブルーさんをクンクンしてる。

「・・・ここどこかな」

僕は、お座りする。

シャープネコとニャッティラがいるので、そのうち男達が来るはずである・・・

                   ポツン

                                          ポタ ――


一本道

2012年11月10日 00時27分09秒 | マーロックの日記

ブロロロロロロロロ   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                   ・・・・・・ロロロロロロロ   ・・・・・・・・・・・・

・・・後ろを見ると、街の灯りが遠ざかっていく。

美術品を盗んだ警備員は、シャープさんとノッポさんが警察に引き渡している頃だろう。

美術品はすでに売られていて、もうない。

盗んだものなどを、買い取ってくれる集団がいるらしい。

泥棒の2人は、同じ学校に通っていた友人で、どちらもブルーさんの様に仕事がなくて生活に困っていた。

今日も日雇いの仕事だったよう。

警備員の仕事で少し収入があるし、昨日の夜、2人でバーで飲んでいたらしい。

そこで、盗品の売買などをする犯罪者にそそのかされた様。

時間がもったいなかったので、それ以上の事は聞いてない。

2人とも盗んだものがどこに運ばれたのか正確には知らないようだけど、会話から大雑把な地域は把握していた。

それを聞いたので、タクシーで向かっている。

ブルーさんの事は2人とも見ていないらしいけど、きっと盗まれた箱が運ばれるのを見て、追いかけたんじゃないかと思う。

シャープさんとノッポさんは、2人を警察に引き渡すために残った。

「キキ」

リスは、小カバンの中に入ってる。

「・・・盗まれたのは何なんですか」

「彫像だよ」

ハットさんは、ブルーさんの携帯電話の番号をフクロさんから聞いているので、さっきから何度か掛けてる。

まだ、つながらない様。

「警察にはかけないんですか・・・」

「そのうち来るだろう」

・・・まあ、それもそうかな。

「パトカーがいない方が見つけやすいかもしれないしね」

「買い戻すんですか・・・」

「奪い返すに決まってるだろう」

・・・まあ、とりあえずブルーさんの安全を確認するのを優先しているのだろう。

2人の泥棒に話を聞く時も、まずブルーさんの事を聞いていた。

運が良ければ、彫像も取り返せるかもしれない。

・・・周りは暗い。

山間の長い1本道。

「・・・あまり無理はしない方がいいですよ」

ハットさんは高齢だから・・・

               ブロロロロロロロロ    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・よくしゃべるのに返事がないから見ると、こっち見てる。

「君に期待してるんだよ」

そして、またスマートフォンで電話を掛けた。

・・・斧さんは反対の窓側に座っていて、外を見てる。

私も左を向いて、窓の外を見る。

近くに木がない様で、夜空が見える。

・・・まだ、電話はつながらない様。

ニャッティラは、足元で丸くなってる・・・

                                  キキ

   ・・・・・・・・・・・・ロロロロロロロロロロロロロロ    ・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・              ・・・・・      ブロロロロロロロロ    ・・・・・・・・・・・・・