ビルの間

2016年11月30日 13時32分45秒 | 黒猫のひとりごと

                                              ~~  ♪ ♪

                              ブォォン

            ヮィ ヮィ  ♪

にぎやか・・・

夜になってお屋敷から出発した僕らは、大きな街に来たのだ。

駐車場から、手荷物だけ持ってみんなで歩いてる。

ホテルに向かっているんだと思う。

                                          ~~   ♪  ♪

通りには音楽が鳴っていて、僕も歌おうかな。

「ニャ~」

          

すれ違う人が、手を振ってる。

僕はノッポさんの頭に前足をのせているから、いい眺め。

後ろ足は、ノッポさんが背負っているリュックにのせてる。

「ミャ~♪」

ネコカートの透明なカバーは、少しだけ開いてる。

耳ネコが目覚めていて、中から頭だけ出してる。

寒いから、完全には外に出てこないのだ。

チワワやリスは寝てるのだけど、耳ネコは目覚めた。

しまネコも起きてるけど、カバーの内側から外をみてる。

                カララ   ・・・

道で歌ってる人もいる。

「ニャ~」

せっかく起きてるんだし、寝る前にメロンたべたらいいと思う。

「何かみえる?」

ニャ

ノッポさんが同意した。

      ペチ

シッポで肩をたたく。

大きな建物もたくさんある。

「・・・・」

後ろには男が歩いてる。

ミニバスでは眠そうだったけど、今はそうでもない。

ビルを見てる・・・・

                        ブロロン

                                                  ~~  ♪

             ガャガャ  ♪


35度

2016年11月29日 13時26分18秒 | マーロックの日記

                                          ロロロ ロン  ・・・・・

                        

    zzz

「見えて来たね・・・」

「・・・・」

声・・・

「zzz」

私の足とバスの壁の間に、ネコ。

寝てる。

    ゴソ

私も寝ていたらしい。

体を右のバックパックに預けて、フロントガラスの先をみる。

暗闇に光の集団。

「もう着くよ」

「・・・はい」

ハットさんは起きていて、同じ方を見てる。

バックパックに付けている時計を見ると、もう日付が変わってる。

屋敷を出て4時間くらい。

出発してしばらくすると、マッチョさんたちとは連絡で来た。

電話の電波の届かない辺りを走っていただけらしい。

それで、私たちも今日はいろいろあったから無理せず休もうという事になった。

あの街のホテルに泊まる。

砂漠のオアシスにできた大きな街で、カジノがたくさんあるので有名。

ホテルも多い。

「zzz」

横で寝てるのはトラネコ。

私が右に傾いたから、仰向けになってる。

リフと一緒にいたはずだけど。

あいつも寝ているのかもしれない。

暇になったトラネコが、私の所に来たのかもしれない。

ノッポさんがミニバスを運転してる。

ガードさんはトラックを運転していて、女性たちはそっちに乗ってる。

だからミニバスは静か。

メタボネコとチンチラと、トラネコとニャッティラがこっちにいる。

黒猫も。

出発前、勝手にこっちに来た。

「・・・・」

窓の外は暗い。

少し上には、星がたくさん。

「キュキュ」

おや。

足元にチンチラ。

いつもメタボネコと一緒なのに。

メタボネコが寝ているのかもしれない。

「♪」

掴む。

すべての真核生物は、ミトコンドリアを持っている。

でも、チンチラの腸内マイクロバイオータからミトコンドリアのない真核生物が発見された。

ゲノム解析も行われ、ミトコンドリアの遺伝子がなかった。

古細菌に細菌が内部共生したことで、核などの構造が発達したと思われる。

だけど先に複雑な構造が出来ていて、ミトコンドリアの祖先が内部共生したと考える研究者もいる――複雑になりかけたところで内部共生したという、中間の見方をする人もいる。

発見された微生物に、ミトコンドリアの痕跡がまったくないのなら、内部共生前に核の構造などが発達していたという考えを支持するものになる。

かつてミトコンドリアを持っていたけど、それを失った真核生物なら他にもいる。

本当にミトコンドリアの痕跡がないか、もう少し厳密な調査が必要だと思われる。

6年前、私の祖国の南、世界遺産にもなった島々の海域で生物学者が調査をしていた。

10年以上続けていて、その時も熱水噴出孔で暮らしている多毛類を捕獲した。

一緒に見つかった微生物の中に、妙なのがいた。

平均的な細菌の100倍くらいの体積で、その4割くらいの核膜を持っている。

私たち真核生物の核膜は二重膜だけど、発見された生物は一重の核膜で、裂け目がいくつかある――精巧な核膜孔はない。

真核生物のDNAはタンパク質に包まれているけど、その生物のDNAは細菌のように細い繊維。

そして核内にリボソームがある――真核生物では、リボソームは核の外にある。

いくつかの内部共生体もある――ミトコンドリアに由来するヒドロゲノソームのようにもみえるけど、三次元再構成によるとらせん状の細菌のような構造のがある。

真核生物の菌類の様に細胞壁があり、内膜もある。

真核生物に似てはいるけど、細部がまるで違う。

発見した研究チームは、この生物を准核生物と名付けた。

ゲノム解析もリボソームRNAも行われていないので、これ以上の知見が得られていない。

研究チームはこれを電子顕微鏡用の切片にしており、その過程で人為的に構造に変化を与えた可能性もある。

もしかしたら、新たに内部共生を起こして複雑な構造に進化する途上の生物なのかもしれない。

この生物の宿主は、私たち真核生物の古細菌と違い、細菌だと思われる。

核膜の中にリボソームがあるのは、宿主がそもそも細菌なので、内部共生した細菌の可動性イントロンに耐性があるのかもしれない。

それ以降、これに似た生物は発見されていないので詳しいことは分からない。

「キュ♪」

力を緩めると、チンチラは手からすり抜けて去った。

窓を見る。

車内が映るから、顔をガラスに近づける。

「・・・・」

暗い台地と星がたくさんの空の境目がみえる。

老夫婦は、今夜はホテルに泊まるらしい。

街の中にマンションもあるらしいけど、ホテルの方が警備員も多くて安心だという。

母テム達は、お店で寝ると言ってた。

「zzz」

ミニバスは、いい感じにゆれる。

前をみる。

さっきより近づいてる・・・・

               

                                              ロロロロロ  ・・・・・・


90度

2016年11月28日 13時57分41秒 | 黒猫のひとりごと

                                                 ザヮヮヮヮ  ・・・・・・

                                 ポォ

「では、我々はもう行きます」

「はい」

「ごくろうさま」

               ジャリ

みんなでお巡りさんを見送ってる・・・

                       バタタン

たくさん来たパトカーは、あと1台。

                            ブロロロ   ン

走り去る。

                                                 ロロロロ  ・・・・・

「じゃぁ、私たちも行こうか」

「はい」

母テムの車もある。

「お母さん・・・やっぱり僕らも探すの手伝うよ」

「・・・・」

「いいでしょ?」

「そうね」

          トコ

男が来た。

「マロックさん、この子たちも連れて行ってください」

「?」

「皆さんは私たちの命の恩人ですから、何か役に立つなら・・・」

「俺たちも手伝うよ」

「お前らは残れ」

「え」

「また今日みたいな事があるかもしれない・・・お母さんを守る人が必要だろ」

「・・・・」

「・・・うん」

「・・・・」

「私たちなら、だいじょうぶですよ」

「何度もこんなことあったしね」

「うん」

「・・・じゃぁ、気を付けて」

「うん」

「もう、行きますね」

「――マロックさん、僕は一緒に行くよ」

「・・・・」

ずっと黙っていたリフがしゃべった。

「いいんじゃないかね」

「こっちの生活に慣れるまで、一緒にいてあげた方がいいんじゃないかしら」

「学校の方は、こっちで手続しておくからね」

「・・・わかりました」

「・・・・」

「いいな」

「じゃぁ、いきましょう」

「うん」

                カタン

母テムの車に、老夫婦とテムとレウが乗る。

「ニャ~」

じゃあね。

「・・・・」

テムが僕に気付いて、手を振った。

                     ―――

                                             ロロロロ  ・・・・

車は去った。

「さぁ、私たちも行きましょう」

「うん」

「忘れ物はない?」

「だいじょうぶ」

母テムの車を見送っていたノロマさん達が、動き出した。

僕らも出発だと思う・・・・

             ニャ~

         

                                                 ヮヮヮヮ  ・・・・・

                           ポォ


2つ反射

2016年11月28日 02時33分45秒 | マーロックの日記

                                                   ゥゥゥゥ  ・・・・・

                            ゴト

       トコ

これで全部・・・

ミニバスから、トラックの荷台に荷物を移動させた。

テムとレウも手伝ってくれたけど、今は警察官に話をしてる。

屋敷に侵入したやつは、3人だった。

ノッポさんが自転車で敷地の外に出て、警察を呼んでくれていた。

何台もパトカーが来て、他にいないか調べてくれている。

警察が来るまでの間に、髪無し達から少し話が聞けた。

3人はバレッタさんの誘拐を依頼されたらしい。

話を持ってきたのは知っている人だったらしいけど、依頼者は誰かわからない。

メールで連絡を取っていた様である。

今日の昼頃になって、狙うのが老夫婦の屋敷だと伝えて来たらしい。

アンテナを使えなくするというのも、依頼者の指示だった様。

配達業者のふりをして、門を開けさせた。

木材加工に使う道具で、対応した母テムはウッドさんが頼んだのだと思ったらしい。

黒やヘテロたち3人は、多くの密売組織を壊滅させた。

恨みを持っているやつもいるだろう。

・・・こうなると、ヘテロたちに人探しを依頼してきた人も怪しいな。

上手く荒野に連れ出されたかたちになったのかもしれない。

           ニャ~

黒猫がいる。

ノッポさんは、ついでにマッチョさんたちにもこのことを連絡しようとした。

そしたら、電話がつながらない。

4人の電話すべてがエリア外。

何かあったのか、本当に電波の届かないところにいるのかわからない。

遅くなるかもしれないけど、今夜のうちに出発しようという話になった。

ガードさんは仮眠を取ってる。

この状況だから、寝ているかは分からないけど。

                                        ポ      ポ

荷台の中にはライトがある。

暗くはない。

木箱に座る。

少し休憩。

                                           ゥゥゥゥ   ・・・・・

               トン

真核生物は、20~15億年前に原核生物同士の内部共生によって現れたと思われる。

宿主は古細菌で、中に入り込んだものは細菌。

少なくとも私たち真核生物がいるので、食作用を持たない細胞同士が内部共生する可能性はあるという事になる。

一度目はすべての真核生物がもつミトコンドリアの祖先が、二度目は植物などが持つ葉緑体の祖先が内部共生した。

宿主は内部にいる細菌たちに栄養を与え、その代謝物が宿主にとって栄養となったのかもしれない。

この場合、内部共生体が多いほど得られる栄養が増えるので、宿主細胞が大きくなることのメリットが出る。

やがて内部共生したミトコンドリアは、自身の遺伝子をほとんど失った――このため、もうミトコンドリアは単独では生きられない。

ミトコンドリアの遺伝子は細胞の核DNAに移動しており、宿主がその遺伝子で合成するタンパク質をミトコンドリアが使っている。

呼吸鎖に関する酵素は、ミトコンドリアが自分で合成する部分と宿主が合成する部分が合わさって機能を発揮する。

僅かに残ったミトコンドリア自身の遺伝子は、電子伝達の制御のために呼吸鎖のすぐ近くで合成が制御される必要があるのかもしれない――宿主からタンパク質が届くのを待っているのでは間に合わないのかもしれない。

多くの種のミトコンドリアで同じ遺伝子が保存されているので、移動させると問題があるのだろうと思われる――すべて宿主に移動しても問題はないのではないかと考える研究者もいて、それを行うことで老化が防げるのではないかと研究されている。

DNAの複製にはATPが必要で、細胞内の数百から数千のミトコンドリアが可能な限り遺伝子を失うことは、その複製にかかるエネルギーを節約できる――必要な酵素は、核DNAが合成してくれる。

細菌が平均して4000の遺伝子を持つことを考えると、節約できるエネルギーは大きい――真核生物は、細菌に比べてひとつの遺伝子が利用できるエネルギーが1000倍以上ある。

呼吸鎖の連鎖反応で膜間に移動したプロトン…H+が、ATP合成酵素を通るときにADPからATPが合成される。

そのATPがADPに分解されるときのエネルギーで、様々な合成や機械的な仕事を行っている。

ATPの合成能力が高いのにATPの需要が減ってしまうと、ほとんどのADPがATPに合成される。

そのままだと呼吸鎖の反応が止まる。

呼吸鎖の酵素に電子が蓄積し、それが酸素と直接反応して活性酸素種…ROSを発生させてしまう――低酸素時にも発生が増える。

この反応が最も多いのは、最初の酵素で呼吸鎖で最も大きな酵素である複合体I ――最初に電子が跳躍するいくつかは鉄硫黄クラスターで、ここに電子が溜まって還元された状態になると酸素と反応してスーパーオキシドラジカル…O2・-ができる。

O2・-は他の活性分子種の前駆体でもあり、これにH+が付加されるとより強い酸化剤になる――生体で最も反応性の高いROSは、比較的無害な過酸化水素…HOOHからできるヒドロキシラジカル…HO

O2・-の記号の点は不対電子のことで、フリーラジカルを示している。

フリーラジカルは他の分子から電子を奪ってフリーラジカルに変え、連鎖反応を引き起こす――ラジカルによる攻撃はランダムで、反応生成物の特定は難しい。

ほとんどの生体分子は、フリーラジカルの攻撃でダメージを受ける――細胞内の多不飽和脂質が酸化されると、膜が壊れてDNAが攻撃される。

放射線によって水が分解されても、O2・-やHOなどが発生する。

パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病などの神経変性疾患は、ミトコンドリアの酸化的損傷を伴っている――ミトコンドリアDNAに先天性欠陥があると、運動神経の障害や難聴などの老化症状が現れる。

抗酸化物質はROSを壊す――スーパーオキシドジスムターゼ…SODはO2・-を過酸化水素にする触媒で、トコフェロール…ビタミンEとアスコルビン酸…ビタミンCも強力な抗酸化物質である。

ただ、体のダメージを緩和するために抗酸化物質を大量に摂取するのは逆効果になる場合がある。

複合体II は、複合体I とは別ルートで呼吸鎖に電子を入れる。

複合体II ではH+を汲みだすエネルギーが得られないけど、比較的高電位の電子も呼吸鎖に送れる――そして人の複合体II はフリーラジカルの発生を抑える調整をしている様で、この遺伝子変異があると腫瘍生成、神経欠陥、早老などの障害が起こる。

フリーラジカルがあまり多くなるとカルジオリピンという膜脂質を酸化して、複合体III からIV に電子を渡す酵素シトクロムcを膜から放出してしまう――シトクロムcは膜を貫通しておらず、膜の上にかるく結合した状態。

こうなると完全に呼吸鎖は停止し、それがアポトーシスという細胞自ら死ぬ反応のシグナルになる。

アポトーシスが始まると、カスパーゼという酵素の群れがDNAやタンパク質を分解して数時間で跡形もなく細胞を消す――分解されたものは、周囲の細胞の栄養になる。

真核生物が現れた初期にはここまで洗練された仕組みはなかったかもしれないけど、フリーラジカルが宿主の生存を脅かしてはいただろう。

つまりミトコンドリアが余分にATPをつくるのであれば、それを消費しないと宿主である細胞が死ぬ――一部の細菌にはATPを無駄に放出するものもあり、同じ理由によるのかもしれない。

核DNAに移動したミトコンドリアの遺伝子の中には、もうミトコンドリアが必要としないものも多かっただろう――過酷な環境ではなく、宿主の制御された環境で過ごすことができるので。

そうした遺伝子は機能を失うかもしれないし、宿主が新しい何かをつくる材料になったかもしれない。

遺伝子が機能を失えば、その合成に使われていたATPも節約できる。

宿主細胞は、やがてADP-ATP輸送体というタンパク質を進化させる――ミトコンドリアが死なないためでもあるけど、自身のためでもある。

細胞骨格の主成分はアクチンというタンパク質で、こうした構造を合成するのは多くのエネルギーを消費できる。

それ以外にもATPを酸化させるような変化は、何であれ双方の利益になっただろう。

そのうち、現在のような複雑な細胞に進化したと思われる。

                  ・・・

フリーラジカルは、私たちの健康に影響を与えているかもしれない。

あまり濃度が高いとアポトーシスを引き起こす。

ミトコンドリアは常に母親から受け継ぐけど、その生存に必要な遺伝子の大半は核DNAに保存されており、その半分は父親から受け継ぐ。

子供が受け継ぐミトコンドリアは、母親の核DNAとなら上手くやれたミトコンドリアである。

父親の核DNAが半分ある子供の細胞で、上手くやれるかはその相性による。

カイアシ類は体長が数mmの甲殻類で、湿った場所によくいる。

合衆国南西部の島に住むカイアシで、ミトコンドリアDNAと核DNAの相性の研究が行われた。

島の反対側にすむカイアシは、数千年間互いに生殖せずに生活している。

この2つの集団を交配させると、最初の世代はあまり影響がない。

2世代目では雑種のメスが、元の父親の集団のオスと交雑するとひ弱になる――平均してATP合成が4割低下する。

生存率も繁殖率も下がり、成長率も下がる。

3世代目で雑種のオスを、元の母方の集団のメスと交雑させると十分な適応度を取り戻す。

逆に雑種のメスを元の父方の集団のオスと交雑させると、状況はさらにひどくなる。

呼吸鎖に関する酵素は、ミトコンドリアが合成するものと細胞が合成するものが上手く相互作用して働く必要がある。

ミトコンドリアDNAの変異率は核DNAよりも高く、長い間生殖的に隔離されて世代を重ねるとその差も増える。

このため違う集団の父親から受け継いだ遺伝子では、ミトコンドリアとの相性があまりよくない可能性が高くなる。

1世代目の雑種は、核遺伝子の半分は母親由来であり、まだ深刻な影響が出ない。

2世代目で雑種のメスが再び元の父親集団のオスと交配すると、その子は自身のミトコンドリアと上手くやれる核遺伝子が平均して25%になり、ひ弱になる。

3世代目でも同じ交配をすると、今度は平均して12.5%しか相性のいい遺伝子が無くなり、かなりひ弱になる。

逆に雑種のオスと元の母親の集団のメスが交配すれば、平均して62.5%がミトコンドリアと相性のいい核遺伝子となり、健康が戻る。

呼吸鎖の電子の跳躍地点が0.1nm…0.0000001mm広がると、跳躍する確率がおおよそ1/10に低下する――電子の伝達速度が低下する。

逆に0.1nm近ければ跳躍率は1けた上がり、電子伝達の速度は速くなる――トンネル効果によって電子が跳躍しており、1.4nmを超えると跳躍率は極めて低くなり、意味のある電子の流れは得られなくなる。

呼吸鎖の遺伝子の相性が悪いと、酵素の構造が少しゆがんだりして跳躍地点が僅かにずれるのかもしれない。

電子の伝達速度が遅くなれば酵素に電子がたまり、フリーラジカルの発生率が上がる。

それが様々な病気や老化の原因となっている可能性がある。

上手く成長できない子が生まれると、その子が繁殖に成功する率も下がる――結果として、その遺伝子は後の世代に伝わらない。

繁殖に成功した遺伝子だけが伝わっていくので、自然選択はなるべく上手くやれる個体を発生させる仕組みを進化させるだろう――偶然そうした機能を得た遺伝子が増えやすく、集団に広がっていく。

新しい生命を誕生させ育てるのに母親は多くの資源を使う必要があり、子の繁殖率が高まる変異は選択されやすいだろう。

同じ細胞でも、代謝の需要を高めると呼吸鎖の酵素を増やして対応する。

だけどもともと核遺伝子との相性が悪いミトコンドリアだと、需要が高まった時に酵素を増やしても対応しきれないかもしれない――その結果フリーラジカルが増えてアポトーシスをおこす。

胚発生の初期に、こうした検査を行っている可能性がある。

人の場合、妊娠の4割は早期非顕性流産で終わるらしい。

これは妊娠して数週間以内の流産で、おそらくほとんどの女性が妊娠したことに気付いていない――非顕性は臨床的に認知されていないことを示す。

なぜなのかは分からない。

弱った胚にATPを直接注入すると、長生きさせられる――不妊は精神的苦痛が大きく、かなり荒っぽい研究が認められている。

初期の胚に負荷をかけることでATP合成能力を試しているのかもしれない――つまり、ミトコンドリアと核DNAの相性を検査している。

ミトコンドリアの変異が大きいと、マウスやラットでは数世代でそれが排除される――軽い変異はいつまでも残る。

妊娠数週間での流産は女性への負担も少なくてすむ――自然選択は盲目的に効率の良い方法を選択する。

鳥類は非常に持久力が高い。

有酸素運動の能力が高いためで、その力も強い――同じ重さなら、チーターの倍。

筋肉の力は断面積に比例するけど、長時間力を発揮するにはその場でATPを合成し続ける必要がある。

このため筋肉の間にミトコンドリアと栄養を送る血管が必要になる。

有酸素運動をするための筋肉は、1/3が筋原線維で1/3がミトコンドリアで1/3が毛細血管になる。

これは人でもほかの動物でも一緒で、鳥類がその力を発揮するためには、体の軽さに加えてATPの高い合成能力が必要になる。

核DNAとミトコンドリアの相性がとても良い必要があり、このためには発生の段階で厳しい検査を受けることになる――検査をしているとして。

これは生殖能力の低下を意味するけど、相性の悪い遺伝子コードでは発生しても鳥としてうまく生きていけない。

ミトコンドリアの能力もおそらく限定されるため、環境や食事の変化にあまり応用が利かないくなるかもしれない――季節によって気温やエサが変化することに対応するより、長距離を飛んで似たような環境で生活する方がいいのかもしれない。

マウスやラットであれば、鳥類ほどATPの高い合成能は必要ないだろう。

すると発生段階での検査は緩いものでよく、繁殖能力が高まる。

ただしミトコンドリアに由来する病気が増えることになる。

鳥の様に持久力が高いとフリーラジカルの発生が少なく、ミトコンドリアの病気も減る。

ラットとハトは、体重も基礎代謝率もほぼ同じ。

グスタボ・バルハの研究により、鳥類はラットやマウスに比べてフリーラジカルの発生率が最小で1/10だった――組織によって変わる。

ラットは寿命が3~4年だけど、ハトは10年以上、長ければ30年生きる。

ラットの持久力は、回し車で走る能力で調べることができる。

持久力の低いグループで交配すると、寿命が短くなる。

持久力の高いグループ同士で交配すると、寿命が長くなる。

10世代で有酸素能は3.5倍に向上し、寿命は1年のびた――平均的なラットが3~4年の寿命なので、かなり長生きである。

ちなみにp16Ink4aという遺伝子を働かなくすれば、マウスは若さを保つ――ただ、がんになりやすくなる。

                                           ポォ

私たちも、年齢と共にフリーラジカルの発生率が上がる。

こうなると、フリーラジカルの作用を妨げる抗酸化物質をたくさん摂取すれば寿命が長くなるように思えてしまう。

だけど実際にはそうならない――逆効果になる場合もある。

抗酸化物質を摂取して老化を防ぐという考えは、かなり広まっている――商売としては非常に成功している。

だけど専門家たちは、20年以上前からそれが誤りだと知っている。

ビタミンCはコラーゲン合成に必要で、不足すると命を失う。

そして強力な抗酸化物質でもある。

抗酸化物質の摂取が健康に良いという広告があまりに広まっているため、数十年ものあいだに非常に多くの人が臨床試験に参加している様な状況になった。

抗酸化物質をサプリメントで大量に摂取ると、早死にするリスクがある程度ある。

長生きする動物は多くの場合で抗酸化酵素が少なく、寿命の短い動物には多い――フリーラジカルの発生率の差によるのかもしれない。

反対に酸化を促進する物質は、寿命を延ばす可能性がある。

抗酸化物質は、培養細胞ではATP合成を抑制することがある。

アポトーシスに達しないフリーラジカルは、呼吸鎖の酵素を増やしてATP合成能力を高めるシグナルとなっている様なのである――このフリーラジカルは局所的なもので、ミトコンドリアから外に出ることが無い。

抗酸化物質でフリーラジカルを阻害すると、ATPの合成能が下がる。

フリーラジカルの発生でATP合成速度を高めた細胞が、それでもフリーラジカルの発生を抑えられなければアポトーシスで排除されることになる。

したがって抗酸化物質の大量摂取はリスクがあるのだけど、ある程度であればそう問題は起きない。

私たちは培養細胞と違って、防御機能がある。

人の場合、ビタミンCなどを大量に摂取するとほとんど吸収しない――多くの場合で、下痢になる。

血液に入り込んだ場合、尿として排出して血中濃度は安定させる。

そして過剰に摂取するのでなければ、健康にプラスに働くと思われる。

食事が偏っていたりビタミン不足の状態なら、こうしたサプリメントは健康に良い影響を与えると思われる――ミトコンドリア以外でも、フリーラジカルは発生する。

ただ、抗酸化物質と酸化物質のバランスのとれた食事をしているのならそれで十分だろう――極端な大量摂取で無ければ、体の調節機能で守られるので平気である。

私たちが運動すると、酸素の消費量が増える。

ミトコンドリアでは電子の流れが速くなり、ATPの合成速度が上がる。

フリーラジカルの発生率は運動することで増えることはなく、同じ程度か減ることもある。

運動することで、酸化物質と同じ影響を与える。

代謝にストレスを与え、能力の落ちたミトコンドリアや細胞を排除する。

カロリーや、代謝に必要な糖質の摂取をある程度制限することは同じような効果がある。

高脂肪の食事はミトコンドリアに負荷をかけやすいけど、糖質…炭水化物が多い食事は解糖によってある程度のエネルギーを供給できる――解糖は呼吸鎖を使った場合に比べると、ATP合成の効率がとても悪い。

ただし、ミトコンドリア病の人は解糖でのATP供給に頼る率が多い――加齢によって質の落ちたミトコンドリアが増えた人も。

解糖なしでは生きるためのエネルギー供給がまかなえないため、低炭水化物の食事は危険がある――ケトン食療法を行ったミトコンドリア病患者が、昏睡状態になった例がある。

私たち人は、本来は非常に持久力が高い――長時間走ることによく適応している。

気温の高い日なら、長距離であれば馬よりも速い――十分に本来の能力を発揮できる人なら。

平均して、30歳前後がもっとも持久力が高くなる様である――個人差はあるし、いつも走っている場合。

よく走る人は、60代になっても高い持久力を維持できる――平均すると、20歳の頃と変わらないほどに。

土踏まずをサポートしたりクッション性の高い高機能な靴は、筋力を低下させて怪我の原因となるので、機能の低いシンプルな靴で走るのがいい。

                                                 ゥゥゥゥ  ・・・・・

             コン

トラックの荷台は細長くて広く、外の音がよく響く。

たくさんの箱を運べる枠付きの台車もある。

一緒にレンタルしたらしい。

ある程度分けてのせたけど、整理は後でやる。

「・・・・」

侵入してきた3人は、ウッドさんが頼みそうなものを言って門を開けさせた。

それも依頼者の指示だったらしく、母テムがお店を開こうとしていることも知っているかもしれない。

偶然かもしれないけど。

ウッドさんからそんな話は聞いていなかったから、母テムは一応、ウッドさんに連絡したらしい。

彼は何も頼んではおらず、他の職人さんたちにも連絡を入れていたら、途中で電話が使えなくなった。

おかしいと思ったテムとレウが、老夫婦を先に上の階に誘導したのち、玄関に来た髪無しの対応に出た。

反撃の覚悟をしていた2人に、髪無しは蹴りまくられて外で気絶した。

運転席で待機していた一人が銃を持って出て来たので、テムとレウは急いで中に戻ってカギをかけた。

門を開いてから髪無しが玄関に来るまでのざっくりした時間から、あいつらは外から屋敷の中をだいぶ伺っていたらしい。

おかげで、私たちが到着するまでの時間がかせげた。

私たちがスーパーでの買い物を予定通り終わらせていれば、バレッタさんもあの時間には屋敷にいただろう。

もう少し詳しいことは、これから警察に調べられるだろう。

「・・・」

黒猫はさっきからウロウロしてる。

リンゴの箱を探しているのかな。

        コト

私は座っていた木箱から立ち上がり、少しあける。

「!」

枠付きの台車に積まれた箱の上から、黒猫の目が光った。

リンゴはこの中にギッシリある。

       パタ

閉める。

たくさんの箱を積んで運ぶための、枠付きの台車もレンタルしたらしい。

荷台にはいくつかある。

後で整理するのに使おう。

         トコ

テントとかも、もう運んだ。

まだ荷台にはスペースがあるから、荒野で寝ることになったらここで寝れば良さそう。

運転席の後ろのキャンピングカー部分は、女性たちが使う。

移動用にミニバスも一緒だから、そっちでもいいけど。

荷台の方がしっかり伸びて寝れる。

コックさんやチーフさんは、出発までに間に合わない。

少し遅れて、私たちを追ってくる予定。

             カリ カリ

「♪」

黒猫が木箱でカリカリしてる。

目印かな。

「行こう」

「ニャ~」

ついてくる・・・・

                 トコ

                                                  ゥゥゥゥ  ―――

                                 ポォ

          


バルコニー

2016年11月27日 13時57分15秒 | マーロックの日記

                                                  ゥゥゥ  ・・・・

                                 ポポ  ポ

       ダッ

3階・・・

廊下のライトは、私のいるところだけ点いてる。

                ダッ

走る。

この屋敷は部屋の中以外はほとんどセンサーライトがある。

こっそり移動していたら時間がかかるしライトでわかるので、走る。

     ダ       ダ

1階はざっと見たけど、侵入者も老夫婦もいない。

食堂のガラス戸が開いていた。

1階の半分と上の階は、靴を脱ぐ。

だけど土や砂がある。

土足で侵入している。

私も靴は履いたまま。

お掃除ロボットが掃除してくれるだろう。

部屋は多い。

ひとつずつ調べていたら、万が一の場合に間に合わないかもしれない。

だから音だけを頼りに走る。

外から見たときの灯りとは、反対側の廊下に来た。

あのペースで動いていれば、反対側か4階にいるかもしれない。

                    ダッ

「――とまれ!」

銃――

               ――

                           ダァン

右手で銃の腕を押さえ、そのまま左腕で銃を打ち落とした――

「!」

               ドン

そのまま右で胸部を突く――

   

キャップを反対に被った男は、やや後退した。

「ッ――」

むせてる。

「何しに来た」

咄嗟に頭を蹴らなかったのは、そうすると話が聞けないので。

「・・・・」

――別の影。

          ドン

キャップを押し蹴る――

「うごく――」

                 ――    ガタタ

陰から出て来た奴にキャップをぶつかった。

後ろのやつも銃を持ってる――

                                           タァン

バランスを崩したキャップ越しに、上段の前蹴りで後ろのやつを蹴った。

                     ガタァァン

床に倒れた。

「・・・なんだお前」

後ろが倒れて、そのままキャップもしりもちをついた。

「・・・・」

キャップを見ながら、周囲を探る。

                ヒュ  ――

落ちた銃を拾おうとしたので、右足で空を蹴ってけん制する。

周囲に、別の動きはない。

「お前らは何しに来た」

もう一度聞く。

「・・・・」

         ザザ  ・・・

床にお尻をつけたまま、キャップが後ろにずり下がる。

「・・・・」

                         ダァン

頭を蹴る。

             バタ

キャップも倒れた。

・・・2人とも動きは遅かった。

               ゴト

拳銃を拾う。

       ガタ

2つ。

「・・・・」

これで外のやつと合わせて3人。

              カチ

セーフティレバーをロックする。

      ダッ

走る。

屋敷には、テムとレウとテム母と老夫婦がいるはず。

ウッドさんとハネさんがいたかは分からない。

今のやつらの様子だと、まだ捕まってはいない様。

                ギィィ  ・・・・

「!」

後ろ――

         タン

床を蹴って、壁際に跳ねる――

「――マロックさん」

・・・バルコニーに出る扉が開いてる。

「・・・レウ」

さっきの2人の反対側の扉から、レウが顔を出してる。

            

走ってそっちに戻る。

「やっぱりマロックさんだったよ」

レウが後ろに話しかけた。

他にもいる。

    

「そこに隠れてたのか」

「うん」

テムも頭を出した。

「マロックさん」

母テムの声。

「助けに来てくれるのを、待っていたんだよ」

「無事でよかったです」

「ああ・・・よかった」

老夫婦もいた。

息が白い。

「これで全員ですか?」

「うん」

「外のやつはお前らか」

「そうだよ」

「いきなり襲ってきたんだ――」

「彼らが私たちをここまで避難させてくれたんだよ」

「ここなら、廊下の灯りであいつらの動きが分かるだろ」

「そう・・・よくやったな」

「・・・うん」

バルコニーはセンサーライトが無く、動いても灯りは点かない。

廊下の灯りはみえるから、侵入者の接近には備えられる。

レウとテムは、あいつらがバルコニーの扉を開けたら、戦うつもりだったんだろう。

「何人いた?」

「・・・2人かな」

「・・・・」

廊下で倒れた2人を見る。

「あいつらで3人目だ」

「・・・そうなの」

もう、手足が動いてる。

しばらくはまともに動けないだろう。

老婦人たちは、やや震えてる。

コートも着ていなくて、寒かっただろう。

「外に出ましょう」

「うん」

         トコ

先頭はわたしが行く。

「さぁ、行こう」

「はい」

老紳士と母テムが、老婦人を支えて廊下に戻って来た。

「お前らは後ろをしっかり見てろ」

「うん」

老夫婦と母テムが真ん中。

後ろはテムとレウ。

      トコ

「電話が使えないんです」

「アンテナが切られてました」

「やっぱり」

階段は遠くない。

2階から1階への階段は、少し離れてる。

老婦人のペースに合わせて、移動する・・・・

              

                                                  ゥゥゥゥ  ・・・・・・

     トコ


バスの中

2016年11月26日 23時59分55秒 | 黒猫のひとりごと

                                                    ヮヮヮ  ・・・・

                                 ポ   ポ

       ピィ ♪

ポケットから、メジロが頭を出した・・・

「♪」

寒いから隠れているみたい。

          ゴト

「防弾ベストかね」

「はい」

ガードさんが、重そうなチョッキを脱いだ。

コートの中に来ていたのだ。

お屋敷に、誰かが侵入しているみたいなのである。

それで僕らは、ミニバスの中に隠れてる。

スーパーで買った荷物がたくさんイスに積んであるから、その陰。

「もし撃ってきたら、これを盾に守ってくれ」

「・・・・」

チョッキをリフに渡した。

「できるな」

「はい」

「重そうだね」

「・・・うん」

ガードさんは、短い銃を持ってる。

バスのドアで仰向けになってる髪無しから、奪ったものである。

「・・・・」

男に蹴られて、倒れたのだ。

もう目は開いているけど、ぐったりしてる。

「おい・・・聞こえてるか?」

ガードさんが話しかけた。

「・・・・」

返事しない。

レトリバーも近くにいる。

                  ――――

ノッポさんが戻って来た。

お屋敷の前にあった、自転車を持ってきたのだ。

「じゃぁ、行ってくる」

「バッテリーは?}

「・・・・」

ノッポさんがポケットからミニ画面を出した。

「まだある」

「・・・救急車も呼んだ方がいいかもしれない」

「わかった」

                  ―――――

少しガードさんと会話して、ノッポさんは去った。

門の方に。

「ニャ~」

ドアが開きっぱなしで寒いのだ。

「ミィ」

ネコカートの中はシロネコやポメラニアンがギュゥギュゥに集まっていて、温かそう。

「・・・・」

ノロマさんやバレッタさんは、荷物の間にしゃがみこんで動かない。

「・・・」

チワワや耳ネコも様子が違うのに気付いているのか、大人しく丸まってる。

「・・・」

僕は窓の外をみる。

ここからだと、お月様がみえない・・・・

                                     ポォ

                                                  ゥゥゥゥ  ・・・・

            チュ


玄関の前

2016年11月26日 14時56分26秒 | マーロックの日記

                                ブロロロ  ・・・・

            ・・・・  ――

「・・・・」

ライトが青いトラックを照らす・・・

金属の光沢が動いている様。

「・・・何もない?」

みんな運転席の周りに集まって、怪しいものが無いか探してる。

私たちの乗ったミニバスは、屋敷に戻って来た。

予定よりも遅くなった。

夜に出発する予定だったけど、無理せず明日の朝に出ようかと話をしていた。

ウェーブさんたちが何気なく帰りの連絡をしようと屋敷に電話したら、つながらない。

通信エリア外か、電源が切れている。

屋敷は広い森の中なので、中継用の大型アンテナがある。

それが機能していない可能性が高い。

「あの車は?」

「・・・誰か来ているね」

トラックの横を通過すると、屋敷の前に車がある。

荷台のない、普通の車。

老紳士のじゃない。

「・・・・」

3階に灯り。

ネコたちは私たちと一緒だし、人はいる様。

              ブロロン

ガードさんがバスを止めた。

ミニバスの強力なライトで、車内に誰もいないのが分かる。

「・・・あれがアンテナだね」

「はい」

               ガチャン  ・・・

ドアが開いた。

「俺が見てくるよ」

               

私は人の集まった通路を横になって進む。

「私も行きます・・・お嬢様たちは中に残ってください」

「・・・うん」

「ミャ」

「・・・・」

リフの膝の上に、トラネコがいる。

            トン

外に出た。

                                 ポ   ポ

                                                  ヒュルル  ―――

さむい・・・

ここまで戻る途中の外灯は点いていたけど、アンテナの横の外灯だけ消えている。

      カチ

ポケットから腕ライトを出して、点ける。

アンテナは、4階建ての屋敷よりも高く伸びた細長い棒。

下に、制御のための箱がある。

「開いてるね」

「・・・はい」

ハットさんも降りてきた。

              

「・・・・」

ガードさんは辺りを見てる。

                  トコ

「・・・・」

箱の中は簡単なつくりで、電源がオフになってる。

導線も何本か切れてる。

誰かが意図的に切ったんだろう。

「・・・友好的ではないね」

「はい」

                     ――  ・・・・

ウェーブさんたちの声。

バスから降りてる。

「待って――」

エレガントさんは、呼び戻しているみたい。

「バスの中で待っていてください」

「・・・そうしよう」

           

「!」

「誰かいるよ――」

「――」

フワリさんが指した方は、玄関に続く石の道。

                                        ポォ

 

                    ガサ

地面から誰かが起き上がる。

「・・・・」

知らない奴だ。

髪がほぼ無い。

「・・・あのガキども」

頭を手で払いながら、ゆっくり起き上がった。

どうやらあそこで、気絶していた様。

テムとレウか。

「――戻っていてください」

「うん」

      ダッ

あいつの方に走る――

「あんた誰!」

「――戻って」

ガードさんが女性たちの前に出た。

「・・・お前か!」

「?」

「・・・・」

髪無しがバレッタさんを見てる。

                      ―――

腰から引いた髪無しの手に、銃。

「―――」

ライトで照らす――

                       ――――

「!」

こっち見た。

                ダッ 

                                         ――  ドン

左足で髪無しの頭を蹴る――

                            バタァン

「・・・・」

軸足でステップを踏み気味の横蹴りで、髪無しはきれいに仰向けに地面に倒れた。

「・・・・」

「・・・銃?」

「・・・・」

「・・・・」

辺りを見る。

・・・他にはいないみたい。

         カタ

拳銃を拾う。

オートマチックの拳銃で、それほど大きくはない。

                                            ポォ

「俺が中を見てきます・・・みんなはバスに」

                ―――

「・・・わかりました」

ガードさんに銃を渡す。

「大丈夫ですか?」

「鍵かして」

「え・・・うん」

           ―――

エレガントさんが、ポケットからキーケースを出した。

「音がするから、鍵だけでいい」

「うん」

            カタ

ケースから、鍵をひとつ取った。

「はい」

       ――

エレガントさんからそれを受け取る。

「俺も行こうか?」

ノッポさんも降りてきてる。

「いいよ・・・外の方が危ないかもしれないし」

「そう」

髪無しの意識が戻ったら、いろいろ聞かないといけないし。

「マロックさん」

リフも来た。

「戻ってろ」

「・・・うん」

            

軽く駆けて玄関に向かう。

3階のライトはもう消えてる。

あの階は廊下が外側で、天井はセンサーライトになってる。

老紳士たちなのかは分からないけど、誰かはいる。

          

                                                ザヮヮヮヮ  ・・・・

ひとつだけ消えた外灯は、壊れている様子はない。

アンテナの導線とつながっているんだろうか。

        パサ

帽子がある。

髪無しが被っていたものだろう。

あいつは、バレッタさんを見ていた。

彼女を狙っているのかもしれない。

ヘテロたちの件と、関係があるのかも。

      

周囲を見ると、バスに照らされた車がみえた。

あの車だと、多くて5人くらいかな。

               カタ

玄関のの鍵はかかってる。

                              カチ

鍵を回す。

              ギィィィ  ・・・

扉を押す。

センサーライトが点いた。

「・・・・」

誰もいない。

                           ィィィ  ・・・

ドアを閉める・・・・

                                         バタン

                                                       ゥゥゥゥ ・・・・

             トコ


2016年11月25日 14時03分29秒 | 黒猫のひとりごと

                                             ブロロロ  ・・・・・

                              ――

        ミャ ♪

後ろがにぎやか・・・

ウェーブさんやフワリさんが、おしゃべりしているのだ。

僕は窓の外をみている。

もう、お月様がいる。

大きなスーパーでたくさん買い物をして、これからトラックに積むんだと思う。

どこかに移動して、ごちそうを食べるのだ。

「・・・・」

リフが背中を撫でる。

僕の隣に座っているから。

久しぶりに会ったのだ。

大きくなっていたから、最初わからなかったけど。

             ペチ

シッポをさわろうとしたから、シッポで腕をたたく。

「ミャ♪」

トラネコもいる。

「おまえもレースに出るんだってね」

お月様がいる。

もう空は暗い。

お屋敷に戻る道は、人も少ない。

街灯が並んでいるから、道はみえる。

ミニバスの中は、灯りが点いているから明るい。

            ・・・  ――

     

「まだつながらない」

「エリア外なのかね?」

「うん」

僕は耳を左に向ける。

フワリさんが近くに来た。

「ねぇ、電話がまだつながらないよ」

「・・・・」

「変じゃない?」

「アンテナが故障したのかもしれないね」

運転席の所に来て、話してる。

「何かあったんじゃない?」

みんな前に来る。

いつも後ろでおしゃべりしてるのに。

「門だ」

リフが前を見た。

運転席の前の大きなガラスをみると、お屋敷の門がみえる。

あの門を過ぎてからお屋敷まで、まだ森の中を進まないといけない。

「ニャ~」

リフにそれを教えてあげる。

            ブロロロ  ・・・・

ガードさんがリモコンを門に向けた。

                                 ―――――

勝手に門が開くのだ。

「インターホンを押してみるから、降ろして」

「・・・はい」

                  ガチャン ――

ドアが開いた。

                                                   ゥゥゥゥ  ・・・・・

          ―――

                                      ポォ

「・・・・」

つめたい空気が入ってくる。

「ニャ~」

僕らはドアの近くに座っているのだ。

「マロックさん・・・」

「うん」

           トコ

エレガントさんが降りたのを、男が追った。

「・・・・」

門は開いているのに、バスから出て門に向かってる。

「ミャ~」

「さむい?」

トラネコが、リフの膝の上で丸くなった。

「雷でも落ちたのかな」

「門は動いたし、停電じゃないみたいだよ」

ウェーブさんたちがにぎやかなおしゃべりを止めたから、静かになった。

「何かあったのかな・・・」

「・・・・」

ドアが開いたままだから、さむい。

               ―――

エレガントさんと男が戻ってくる。

    

「誰も出ない――」

「・・・・」

「おかしいね」

「火事とかは・・・?」

「・・・停電に備えて、門は開けたままの方がいいかもしれないね」

「はい」

「とにかく戻ってみよう」

「はい」

     

男も中に戻って来た。

                        ガタン  ――

「速度を出します・・・座ってください」

「うん」

           ――  ト

運転席の近くに集まっていた人間たちが戻っていく。

                     ブォォォン  ――

ニャ

バスがゆれる。

進みだした・・・・

                ――   ・・・・

                                             ロロロロ   ・・・・・・


積んである

2016年11月24日 14時05分51秒 | マーロックの日記

「♪」

「・・・・」

リフがポメラニアンを撫でてる・・・

                                    ガャャ   ♪

                                                       ~~  ♪ ♪

広いスーパーに来た。

さっきガードさん達と合流して、ネコカートをあずかった。

「zzz」

耳ネコは寝てる。

「♪」

チワワも横で伸びてる。

ネコカートをあずかる前に、みかんを見つけたから買っておいた。

それも一緒にのせて、ガードさん達は外のミニバスに向かった。

「クゥゥ♪」

「・・・歌ってるの?」

「クゥン♪」

ポメラニアンが鳴いてる。

                                             ~~   ♪  ♪

店内には、音楽が響いてる。

倉庫型の巨大スーパーで、天井が高い。

遠くから響いている様な感じで、ポメラニアンはそれに合わせて鳴いてるみたい。

お米とか小麦はたくさんいるから、ガードさん達は先に買って屋敷のトラックに運んだらしい。

今は2往復目で、日持ちのするレトルト食品とかをケースで買っていた。

ベンチがある休憩できるスペースがあって、そこで私たちはミニバスに移動中のガードさん達に出会った。

なのでみかんケースを渡して、ネコカートをあずかった。

「小さいね」

「♪」

「うん」

ノッポさんは立ってる。

ノロマさん達がここに向かっている。

                           いた ――

「クゥ♪」

来た。

ウェーブさんが来た。

                  ガララ  ・・・

私たちが持ってきた買い物カートが3つ。

野菜とか果物をたくさん買ったみたい。

「あなたがリフ?」

「・・・はい」

リフはずっとブリッジにいたから、ウェーブさんに会うのも初めて。

「あなた達が来た時、大変だったんだからね」

「ご・・・ごめんなさい・・・」

いきなり苦情を言ってる。

「ま、別にいいけどね」

「・・・・」

リフはお腹空いていたみたいだから、さっきハンバーガーとアップルパイを買ってあげた。

おいしかったらしく、すごい速さでたべた。

私も食べたけど。

「こんにちは」

「はじめまして」

「あ・・・こんにちは」

みんな挨拶してる。

初めて会うから。

コックさんとマッチョさんとカールさんは、リフを知ってる。

「着替え買うんでしょ?」

「うん」

「ニャ~」

黒猫が鳴いた。

「あ・・・」

リフも気付いた。

「・・・元気そうだね」

「♪」

リフが手を伸ばすと、黒猫が前足でタッチした。

「友達なの?」

「え・・・はい」

「カート、代わりに押してくれますか?」

「・・・はい」

「それは俺が持つよ」

「うん」

リフのガラガラは、私が引いて行く。

ノロマさんの買い物カートのハンドルに、布の袋が引っ掛けてある。

その中に黒猫は大人しく挟まってる。

「元気だったかい」

「はい」

「来たばっかりだけど、すぐ出発だからね」

「話は聞いてるよ」

「お願いします」

「うん」

「せっかくだから、このまま着替えも買いに行こう」

「そうだね」

「♪」

「クゥ♪」

レトリバーのひもは、ネコカートに繋いである。

店内には、他の犬もいる。

      トコ

私も追う。

衣料品も売ってる。

とりあえず何着か、着替えを買っておけばいい。

私たちはすぐ出発だから、あとは母テムにお願いする。

髪も切った方が良さそう。

靴も買おう。

     カララ  ・・・

ノロマさんがネコカートを押す。

「ミュ♪」

「♪」

「ニャ~」

「♪」

黒猫のいるカートは、リフが押す。

袋からシッポが出ているから、指でつついてる。

カートには、りんごやメロンがのってる。

うれしい。

      

                              ガャャ  ・・・

        ガララ  ・・・

「3人は無事だといいけどね」

「はい」

マッチョさんたちから、昼過ぎに連絡があった。

保安官にも協力を依頼した様。

何か発見出来たら、私たちに連絡を入れてもらえることになった。

マッチョさん達は、もう先に向かった様。

とりあえず、ガスステーションなどで写真を見せて3人の行方を追っている様。

もう1週間経っているし、覚えている人がどのくらいいるか分からないけど。

「・・・・」

棚をみる。

ノッポさんでも手の届かない場所まで、ケースが積んである。

人も多いし、犬と一緒に人も結構いる。

でも通路がすごく広いし、狭くはない・・・・

        カララ  ・・・

                               ガャャ  ♪

                                                     ~~  ♪ ♪


代わり

2016年11月23日 13時10分55秒 | 黒猫のひとりごと

                                               ―― ♪ ♪

                          ガャ ガャャ  ♪

     カララ  ・・・

広い通路・・・

棚にはギッシリ商品が並んでいる。

広いスーパーに買い物に来ているのだ。

      カララ

ノロマさんが押す買い物カートには、ハンドルの間に僕が入れる袋が引っ掛けてある。

「たくさんあるね」

「うん」

カートが左に曲がると、果物や野菜があった。

棚に、りんごがギッシリ並んでる。

「・・・」

ずっと長い棚で、どこまでもりんご。

        カララ  ・・・

色が少し違うリンゴが何種類もある。

でっかいトラックに積んで行くんだと思う。

「ニャ~」

りんごはたくさん買ったらいいと思うよ。

「?」

僕はノロマさんを見て、前足でりんごの棚に注意を向ける。

「りんごいるの?」

「リンゴはまだたくさんあったと思うよ」

「マロックさんと一緒にこっそり食べてるからね」

「♪」

「また?」

「きのう食べてた」

「どうしてこっそりたべるのかな?」

「・・・その方が、おいしいんじゃないかな」

ハットさんが、僕をみた。

「ふぅん」

         ゴト

ニャ

ノロマさんがリンゴをカートに入れる。

「ニャ~♪」

うれしい。

                                          ~~  ♪ ♪

天井の高い倉庫みたいなスーパーである。

お店のでっかいカートを押している人も多くて、ガードさんもそれを押してた。

段ボールでまとめてたくさん買うことができるのだ。

「メロンもあるよ」

ノロマさんが僕の耳の間を指でたたいて、右を差した。

ニャ

メロン。

「ニャ~」

メロンもたくさん買ったら?

僕は前足でアドバイスする。

「欲しいみたいだね」

「はい」

   カララ  ・・・

メロンの棚に行く。

買うのだ。

うれしい・・・・

               カララ  ・・・・

                                                 ♪  ♪

                             ガャャ  ・・・

       ゴト