ニャ~
――― ァァァァ
―――
目を開く・・・
「ニャ~」
イスの横に黒猫がいる。
座ってこっちを向いていて、鳴いた。
「・・・・」
バスに揺られて眠ってしまった様。
瞬きをした黒猫の頭が、動いてる。
・・・外は暗い。
バスは止まっている。
ト
「今夜はここで泊まることになったよ」
バスの前の方からハットさんが歩いてきた。
「そうですか」
ミャ~
ネコの声。
バスで遊んでいたネコたちを、トレーラーに移動させるために捕まえようとしているみたい。
「・・・」
黒猫は、私の横で座ってる。
まだぼんやりするけど、外に出よう。
荷物はトレーラーにある。
スーパーで買ったものなどが、少し大バスにもある。
だけどそれは置いて行こう。
「・・・・」
雨か。
窓に少し水滴。
外がとても暗く感じたのは、そのせいらしい。
トコ
ト ト
私が立ち上がるのを待っていたらしい黒猫も、来る。
バスの真ん中よりも、少し前のイスに座っていた。
最後尾の辺りでにぎやかだった女性たちはもういなくて、バスの中はネコとハットさんの音が聞こえる。
トコ ・・・
後ろを見ると、イスの背もたれにトラネコがいる。
捕まえようとするハットさんと、遊んでいる様。
カタ
「・・・・」
運転席にはノッポさんがいて、寝てる。
トン
声をかけることはせず、外に出る。
最後に、ハットさんが起こすだろう。
―――――
ァァァァ ン
海の音。
タ
「・・・・」
雨はそれほど強くはなく、傘は必要ない。
ただ空に星はなく、とても暗い。
目的の孤児院のある町には、明日には着くだろう。
この辺りには人の家はないみたい。
道路の近くだとは思うけど、車が走る音もしない。
トレーラーの明かりで、足元は分かる。
ト
「起きたんですね」
クラゲ傘。
エレガントさんがその中にいて、こっちに向かってくる。
手に別の傘を腕にかけているから、バスに運んできてくれたよう。
「ニャ~」
「一緒に行こうと思ったんですけど、ネコさんマロックさんの横から動かなかったんですよ」
少し体をかがめて、黒猫を見てる。
ト
私は歩く。
「俺はいい」
エレガントさんが傘を渡そうとしたけど、断った。
ト
空気が冷たい。
老夫婦の屋敷の街は暖かかったのに。
だいぶ北に来たのもあるけど、もともとこのそういう季節。
トレーラーに行けば、コートもある。
ニャ~
後ろから黒猫の声。
撫でられているのかも。
ブルゾンのポケットを探る。
「・・・・」
腕ライトがない。
荷物の中に入れてしまっているらしい。
少し周りを歩こうかと思ったけど、トレーラーの中に入ろう。
タ
今着ているブルゾンはコットンナイロンなので、多少の雨は弾く。
ポリエステルとナイロンのも持ってきた。
あっちなら、強い雨でも平気。
「・・・・」
寝起きだから、つめたい風が寒い。
ト
後ろを見る。
黒猫が来ない。
エレガントさんはバスの方に向かっているから、どうやら抱えられたみたい。
ジャリ
クラゲ傘から揺れるシッポが確認できたので、前進することにした。
カチャ
ドアを横に動かす。
トレーラーの牽引車も、少しスペースがある。
だけどそっちではなくて、家部分のドア。
ト
「ガゥ」
中に入るとあまり広くはない玄関で、そこにドーベルマンがいた。
廊下部分で横になっていて、くつろいでいる。
チュ
マヒワもいる。
1階の後部は広めの部屋があって、エレガントさんやノロマさんたち女性が、そこを使ってくれる。
2回にも小さな寝室がいくつもあって、私の部屋はそこ。
カタ
スリッパを履いて、廊下に行く。
「チュ♪」
マヒワが床にいるから、足が当たらないように注意して。
パタ
このまままっすぐ行ったキッチンから、にぎやかな声。
食事の準備をしてくれているのだと思う。
キッチンの奥からも2階に行けるけど、玄関側からも行ける。
―――
とりあえず2階に向かう。
トレーラーには排水を処理する装置が備えてある。
発電機もあって、中は快適に過ごせるようになってる。
ブラウ達は自分たちのキャンピングカーで来ているけど、そっちの排水もこのトレーラーの装置で処理できる。
かなり高価な車だけど、老紳士が買い取ってくれた。
私は、木の階段をのぼる・・・・
パタ
――― ォォォォォ
♪ ♪