ザァァァ ・・・ ン
クォ ーー
ザァァァ ン
街の灯りが消えて行く・・・
船が港から離れている。
もうすぐ太陽が出てくる頃。
昨日はたくさんたべたので、まだ朝ご飯を食べてない。
バレッタさんやフサさんたちは、港まで見送りに来てくれた。
ハットさんやマリオットさんとも別れたけど、フワリさんは船にのった。
家まで向かう方向は同じなので、エレガントさんの部屋に泊まって帰るらしい。
ボォォオオ ―――
暖かい風。
すごい霧が出ていて、あたりは白い。
街の光は、その向こうに消えて行く。
「・・・」
黒猫も、屋上の手すり際に置かれている長イスに乗ってそれをみてる。
エレガントさんたちもいたけど、見送りのバレッタさん達が霧で見えなくなった頃に去った。
シャープさんはどこかにいると思う。
ノッポさんは、バスケットコートに張っている氷を壊しに行った。
ザァァ ―― ン
港には、小さな海氷が浮いてる。
あと1月ほどで、湾は凍結する様。
私たちの乗っている大きな船の前には、タグボートが3隻、氷に体当たりしながら先導している。
「・・・・」
光。
空の低い位置。
霧で霞んでいるけど、太陽が出てきた。
「ニャ~」
黒猫が鳴いた。
太陽が出てくれば、ポカポカする。
赤外線が皮膚の分子をゆらすから。
ザァァ ン
分子の結合には硬さがあって、軽い原子が強く結合していると揺れ方が速い。
そういう分子は、より振動数の高い赤外線で高い振動状態に励起される。
吸収したエネルギーで温度が上がって、その情報が脳に送られるので温かい。
分子の並進運動エネルギーの平均が温度。
だけど分子は並進運動の他に、構成する原子同士の位置がかわる振動をする。
比熱容量は、こうした振動が吸収するエネルギー分という事になる。
原子N 個の分子の場合、直線分子だと3N -5種、非直線分子だと3N -6種の振動をする――基準振動という。
水分子…H2Oは、水素2つと酸素1つが結合して出来ている非直線分子なので、3つの基準振動を持っている。
ひとつは2つの水素が酸素に近づく様な動きで、もうひとつは結合角が変化する動き――それぞれ伸縮振動と変角振動という。
3つ目は一つの水素が酸素から離れて、もう一つの水素が酸素に近づいて酸素も動く――これも伸縮振動。
二酸化炭素…CO2は、炭素1つと酸素2つが結合した直線分子で、4つの基準振動がある。
中心の炭素から、2つの酸素が離れる様に動く伸縮振動と、片方の酸素は炭素に近づくように動く伸縮運動で2つ。
もう2つは、炭素が上に動いて酸素が下に動く変角振動と、炭素が奥に移動して酸素が手前に移動する変角振動。
変角振動は伸縮振動より柔らかい場合が多いので、その振動数は伸縮振動よりも低い。
ベンゼン…C6H6は12個の原子で出来た非直線分子なので、基準振動は30ある。
複雑な構造の分子だと、様々な振動数の赤外線を吸収する――様々な結合を持つので。
ザザァァ ン
クォ ーー
白玉がたべたい。
空はどんどん明るくなる。
「行こう」
「・・・」
トコ ・・・
―― タ
後部の建物を目指す。
そこに、私の祖国の料理を出してくれる有料のレストランがある。
ト
黒猫も来る。
斧さんが、朝から屋上の通路の氷をデッキブラシで破壊してる。
だから歩きやすい。
「クォ」
明るくなった屋上の手すりに、鳥。
「ニャ~」
「クォ」
休んでるのかな・・・・
ザク
ザザァァァ ン
ボオオォォ ・・・・・