ザァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ン
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クォーーーー クォーーーー
・・・・きれいな海が見える。
首都を離れ、半島の南の方に来た私たちは、地中海を見下ろせるホテルに来た。
南北に長い半島だから、南の方は暑い。
今日も、気温は30℃を超えているようである。
湿度も高くて、ホテルにあるプールは結構な人。
ノロマさんたち女性3人は、マッチョさんや斧さんたちを連れて、買い物に行った。
私は朝のシャワーを浴びて、大きなテラスにいる。
カールさんやノッポさんもいて、まだ乾いていない髪の毛を風に当てて、涼んでいる。
お昼ご飯頃には私たちも街に出て、みんなと合流する。
全体的に白っぽい陸地の向こうに、海と空が広がっている。
海がきらきら輝いていて、きれい。
白っぽい鳥たちが、ふわふわ飛び回っている。
クォーーーー クォーーーー
・・・・この国では、先日国民投票が行われて、原子炉の再開が否定された。
この国はエネルギー不足で、周辺の国から電力を買っている。
そのため電気代が高いので、一度やめた原子炉を再開させようと考えていた。
けれど、国民投票では再開反対が優勢であった。
現時点でも、隣の原発大国からエネルギーを買っており、事実上原子炉を利用していることには変わりない。
この国の人も、それはわかっている。
高い電気代が経済の足かせであることも知っているが、それでも反対した。
おそらく、私の祖国での原発事故の影響もあっただろう。
私の祖国でも、原子炉をこれ以上増やすことは難しいだろう。
何万人もの人たちが地域から避難を余儀なくされており、その人生を変えられた。
放射線による健康への影響は、正直言って、それ以外のリスクに比べると相対的にかなり小さいと思われる。
・・・あくまで放射線の影響で、これは避難している人の事で避難しているからだけど、避難生活自体のストレスは健康に良くないだろう。
微量の放射性物質であっても、食物を通じて体内に入れば、どんどん蓄積されていく・・・という不安を持つ人がいるようだけど、人の体を構成する粒子は、1年で脳細胞も含めて98%ほどが入れ替わる――末端の神経細胞や腱、ヘモグロビンの中心の鉄などは、数年かかる。
そもそも体内の粒子がどのくらいで入れ替わるかを調べる際に用いるのも、放射性同位体である。
したがって、短期間に大量の放射性物質が体内に入らなければ、それほど気にする必要はない。
もともと私たちが食べるものや体を構成する粒子には、微量の放射性同位体――主にカリウムや炭素――が含まれており、常に内部被曝に曝されている。
しかし非常時に、家財を奪われて行き場を失う人がこれほど出ることが分かった以上、原子炉に代わるエネルギー源を推進するべきだろう。
これほどの影響を及ぼす可能性のないエネルギーが必要である。
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まず、原子炉ほどの供給安定性を求めるなら、核融合炉が一番いいだろう。
現在開発が行われているDT反応炉やさらに高い制御技術を必要とするDD反応炉なら、海から燃料が得られるので資源をめぐる駆け引きに左右されなくなる。
核と名前がついているから核分裂を用いた原子炉と似たイメージがあるけど、基本的に安全である――放射線やそれによる誘導放射能は出るけど、メルトダウンが起きることがないので、災害時にも安全である。
現在研究中の反応よりも高い技術が必要だけど、ヘリウム3を用いた核融合炉なら、放射線が少ないので理想的である。
保守点検と小型化が容易だとされる、レーザー核融合炉の研究も行われている。
けれど実用化はずっと先の話で、当面は火力発電以外は代替手段はなさそうである。
世界の発電量のおよそ7割ほどが火力発電で、主に石炭が使われる――全体の4割ほどが、石炭火力発電になる。
私の祖国でも石炭への依存度は高く、発電量では原子炉と同じくらいになる。
石炭の採掘現場で事故で死んでしまう人や、大気汚染で死んでしまう人がいる。
この意味で、石炭火力発電は原子炉以上に人を殺す。
温室効果ガスの排出量を抑えようとしている時でもあり、これに代わる発電施設が必要である。
私の祖国の北の大地で研究されているのが、太陽光レーザーを使ったマグネシウムの還元である。
豊富にあるマグネシウムは、だいたい炭酸マグネシウムや塩化マグネシウムとして存在している。
これを、太陽光を鏡で集めたレーザーを用いて純粋なマグネシウムに還元する。
マグネシウムに水をかけると酸化して、熱と水素を出す。
発生した水素は、燃料電池を用いることで発電が可能である。
発生する熱は同体積の石炭の半分ほどで、この熱は直接発電に用いる。
発電の規模は自由なので、発電する場所を選ばない。
ただ、火力発電の代わりにしたいのであれば、溶融炭酸塩形燃料電池・・・MCFCがいい。
これは高温型と呼ばれるタイプの燃料電池で、MCFCの場合650℃近くの高温になる――このため、この熱も発電に使える。
高温なので高価なプラチナの触媒が必要なく、大規模なものなら原子炉と同等の発電量が見込める――1ギガワット。
MCFCで発電すると、二酸化炭素を高濃度で回収できるので、大気中からの回収の試みも始まっている。
反応で酸化したマグネシウムは、また太陽光レーザーで還元する。
この循環を大規模に行うために、静止軌道上に太陽光を集める衛星を置いて、軌道上から地上にレーザーを打ち込む研究も行われている。
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・・・・エネルギーロスを減らすため、超伝導を用いた送電線の研究も行われている。
超伝導とは電気抵抗が0になった状態のことで、今のところ常温で超伝導状態になるものは発見されていない。
-200℃位に冷やす必要があって、研究されている送電線は2重の筒に入っている。
内側の筒には液体ヘリウムを入れて中心の電線を冷やす。
外側の筒は真空状態にして、周囲の熱を遮断する――この外側の筒は、大きいほうが真空にするのが容易になるので、小型化にはコストがかかる。
私の祖国では、交流を高圧で送電している。
高圧にすると送電ロスが減るのだけど、交流の方が変圧が容易なためである。
けれど、超伝導送電では長距離の送電が想定されているため、さらにロスを減らすために直流での送電になる。
そして私の祖国で、超伝導電線を用いた直流送電の実験施設が作られている。
その結果、2万世帯以上の電流を200m送電させて、電気抵抗は0だった。
これを用いれば、遠距離からの送電が可能になる。
サハラ砂漠は、南極をのぞけば世界最大の砂漠である。
ここで、大規模な太陽熱発電の計画が進んでいる。
そして私の祖国では、サハラ砂漠での大規模太陽光発電の研究がおこなわれている。
発電に使う半導体としては、シリコンを用いる。
高価だけど、発電効率が高く寿命が長く信頼性が高い。
でも高価なので、砂漠の砂から作る事が想定されている――このための研究が必要になる。
砂から作ったシリコンを用いた太陽パネルで発電して、そのエネルギーを使ってさらにパネルを生産する。
30年もあれば、原子炉100基分の発電量になる計算らしい。
それを、超伝導送電で私の祖国まで送る。
太陽光発電も、太陽熱発電も、風力発電も、その日の天気によって発電量に差が出る。
このような発電施設は、広範囲に沢山敷設されるほど、安定性が増す。
地球のあらゆる場所が、同時に雨とか、風が凪ぐとかはあまり起きないだろうからである――ある地域が曇っていても、どこかは晴天だろう。
超伝導送電が可能になれば、筒を破壊されるという不安定要素はあるものの、世界中の発電施設をつなぐことができる。
太陽光発電は、大気圏外の方が効率が高いため、静止軌道上に太陽パネルを浮かべて発電することも考えられる。
建設や保守点検が大変だろうから、宇宙エレベータのような施設ができなければ難しいかもしれないけど。
・・・海洋温度差発電や地熱発電なども考えられるけど、いずれも費用が掛かる。
時間もかかる。
経済の規模をある程度維持しなければ、これらのエネルギーに移行するのは難しいだろう。
そのためには、現在ある原子炉は当面利用するのが望ましい。
十分に安全を確認したうえで、再稼働させるのが現実的だろう――高速増殖炉に関しては、推進派は構造上安全だというけれど、基礎的には制御を失うと核爆発を起こす可能性があるため、断念すべきだと思う――
蓄電池を増やして、夜間それに蓄えて昼間放電すれば、電力負荷を平準化できる。
これによって、発電所自体の数を減らすことが可能になる。
私の祖国内だけであっても、ほとんどの家庭が屋根に太陽パネルをつけて、それらをスマートグリッドでつなげば、かなり電力負荷平準化に寄与するだろう。
どれも費用がかかるけど。
・・・・・ クォーーーー クォーーーー
クォーーーー ・・・・・・
先に買い物に出た連中は、身軽に動くためにネコたちをみんな置いて行った。
「ニャー」
テラスには、リスやチンチラがいてくつろいでいる。
ひもを外してある黒猫も、くるくる散歩してる。
・・・・海は、きらきら太陽の光を反射している。
左にあるテーブルを見ると、シャープネコがお座りしている。
どうやら、海を見ているようである。
・・・それとも、鳥かな。
クォーーーー クォーーーー
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