すき間

2020年08月24日 09時41分31秒 | 黒猫のひとりごと

                         ポォ

                                   サヮヮヮ  ・・・

      ――   

「・・・・」

バングルさんが外見てる・・・

お日様が帰るのとは反対側の空だから、もう暗い。

いくつも星が見えるから、それを見ているのかも。

部屋のたくさんある建物の3階にいる。

ずいぶん古い建物で、今は長い間掃除もしていなかったみたい。

壁のはがれたところもあって、レンガが見える。

ほこりもたくさんなので、窓をあけてパタパタしている。

すぐ隣にも2階建ての大きな建物があって、そっちはこっちほど古くはない。

          

シッポほうきは使わない。

白くなりそうだから。

                ――  ト

廊下から足音。

「ニャ~」

今日はよく晴れているから、巨大マグロはいないと思うよ。

「・・・そのうち、あいつらが来るわ」

僕の方を見て、バングルさんが何か言った。

「あなたも私の近くにいない方がいいわよ」

       ―――

しゃがんで僕の頭を撫でた。

巨大マグロの気配を感じているらしい、めずらしい人間なのだ。

          

足音が部屋に来た。

「もう暗いから、続きは明日にしましょう」

「・・・ええ」

先生の声。

                  ――  パタン

窓閉めた。

掃除はここまでみたい。

        

2人が廊下に向かうから、僕も追う。

              

木の床は、きれいになってる。

モップで掃除したからである。

                  ――   

掃除を手伝っていた町の人たちも、階段に向かってる。

廊下の両側に部屋がある。

3階は、下の階ほど広くない。

                ――  

下で、ノロマさんたちの声がする。

           

僕は歩くのが遅い先生たちを追い越して、階段を下りる。

廊下の明かりはにぶい光で、点いてないのもある。

あれも古い。

「ニャ~」

人間を追い越すので、鳴いてアピールする。

うっかりシッポを踏んづけられないように。

          ト      ト

                        ―――

            ミャ~ ♪

「出てきて――」

ノロマさんやバレッタさんがいた。

部屋の中。

「ニャ~」

「あ」

バレッタさんが僕に気付いた。

                     ―――

中は白い明かり。

掃除は終わっている部屋みたいで、きれいになってるのだ。

「中から出てこないの」

ノロマさんが僕を見た。

フワフワ持ってる。

「・・・」

壁とテーブルの間に少しスペースがあって、その奥に耳ネコがいるみたい。

「キュ♪」

ポメラニアンはバレッタさんが捕まえている。

シロネコがいないから、捕まえに行けなかったみたい。

       

僕はその間を進む。

「♪」

ここに隠れて遊んでいた様である。

         パク

銜えて、後ろ向きに進む。

               スルリ

「ミャ♪」

「ありがとう」

ノロマさんに渡す。

「白くなったね」

                パタ パタ

バレッタさんが僕をパタパタたたく。

あの間のホコリは、掃除していなかった様である。

「♪」

耳ネコは耳が折れてる。

ノロマさんに撫でられて、目が細くなってる。

いつもごろごろしていたのに、少し動き回るようになったようである。

今なら、僕のネコパンチを見てマネをするかもしれない。

チャンスがあったら、試してみるのだ。

「行こう」

「うん」

           パチ

部屋の明かりが消えた。

外に出るみたい。

     

僕も追う・・・・

                   ――  

                              ――――

         ミャ~


ネコのかげ

2020年08月09日 12時51分17秒 | マーロックの日記

                          ソョョ

                                       ―――――

                 ピピピ ♪

太陽の位置が低い・・・

もうすぐ沈む。

海と空の境目の方を見ると、鳥の影がいくつも動いてる。

魚を探してるのかも。

          

「ニャ~」

黒猫も一緒にそれを見てる。

「戻ろう」

丘の上の灯台の周りは、海がよく見える。

孤児院は、去る人と学校から来た人で混雑していた。

それも、落ち着いている頃だろう。

町に残るのは、私たちを含めて250人くらいになりそうだという。

半分ぐらいの人が、この町から去ったことになる。

孤児院の生徒たちが使うための部屋がたくさんある。

港から大型の発電機を運んだし、その建物も使うことになった。

       

部屋の掃除とかもしてるみたい。

1時間前くらいに、老夫婦の屋敷に電話した。

マッチョさんたちは、今日も出発できなかった。

国連の世界保健機関…WHOが、新型ウイルスによる感染症のパンデミックを宣言したらしい。

広域における感染拡大を意味する。

日用品や食料品を大量に買う人が増加していて、トラックを満載するための量が確保できないみたい。

合衆国の首都では、非常事態と公衆衛生上の緊急事態を宣言したそう。

「・・・・」

もう半日早く知っていれば、この小さな町から去る人にも教えてあげられたんだけど。

         

この感染症は、ほとんどの人は症状がないか軽い風邪の症状で治るらしい。

重症化して肺炎になると、そのまま死んでしまう人もいる。

新型のウイルスなので、免疫記憶の働く人がほぼいないのだろう。

                   

孤児院の方に向かって、坂を下りる。

「・・・」

黒猫も来る。

            ソョョ

                      ピピ

私たちは細菌やウイルスなどの、多種多様な病原体に常に曝されている――腸内細菌など、共生しているものも多い。

そして病原体は、頻繁に変異する。

これらの病原体に対処するため、私たちは免疫という生体防御の能力を備えているーー感染に対する抵抗性を持っている。

病原体から体を守るために働くのは、白血球という細胞。

機能や分布が異なる様々な白血球が協調して働き、自己と非自己を見分けて病原体を排除する――免疫系という。

同じ病原体に対しては、免疫記憶も持つ。

免疫系は、本来自己であったがん細胞にも働く。

免疫系が適切に機能しないと、感染によって死んでしまうことがある。

逆に反応が過剰であったり自己に向かって働くと、アレルギー反応や自己免疫疾患などが起こる――なので通常は、自己成分や食べ物に対しては免疫反応をしめさない。

免疫系には自然免疫と獲得免疫という2つの防御系があり、役割は違うけど相互に連携して働く。

自然免疫系は主に食細胞と補体による働きで、攻撃相手に対する特異性が低く感染直後から働く――これと似た機構は、すべての動物と植物にみられる。

自然免疫に続いて、リンパ球による獲得免疫系が働く――獲得免疫は脊椎動物だけが持っている。

獲得免疫系の中心になるのはT細胞とB細胞で、受容体による対象の識別能力が高いため特異免疫とも呼ばれる――この系が感染に対する個体の適応反応として獲得的に形成されるため、適応免疫系とも呼ばれる。

そしてこの反応は、寿命の長い記憶T細胞や記憶B細胞をつくって免疫記憶を形成し、再感染を予防する。

        ニャ~

白血球には好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球がある。

好中球、好酸球、好塩基球は、細胞内に豊富な顆粒があるので顆粒球と総称される。

そのなかでも好中球の数が最も多い。

このため、一般には顆粒球は好中球と同じ意味で使われている。

好中球の主な機能は生体に侵入した病原性の微生物を貪食、殺菌して排除することで、細菌感染に対する防御で最も重要な働きを果たしている――そのために貪食、脱顆粒、活性酸素の生産、殺菌、消化、接着、遊走など、多くの機能が備わっている。

血清に含まれる補体や免疫グロブリン…immunoglobulin…Igなどが、好中球とともに働く。

好中球は、骨髄、血管内、組織に広く分布している。

血管内の好中球は、流血中にあって全身を循環している循環プールと辺縁部にいる辺縁プールからなる――末梢血液プールという。

辺縁プールは細静脈内に閉じ込められているのと末梢血管の内皮細胞にゆるく接着している好中球からなっていて、循環プールとほぼ同じ大きさで互いに容易に移行する――通常の血液検査では、循環プールが測定される。

末梢血液中の好中球の半減期は6~7時間で、多くは10時間以内に組織の中に入っていく――組織内の好中球は2~3日の寿命。

骨髄の中には、末梢血液プールの10倍くらいの好中球が貯蔵されている――細菌に感染すると、骨髄プールから末梢血液プールに好中球が移動する。

病原体に感染したときに最初に働く自然免疫系は、食細胞による病原体の貪食と破壊が中心になる。

生体に侵入した病原体が最初に出会う食細胞はマクロファージで、これは血液中の単球が組織に移動して成熟した細胞。

マクロファージは寿命の長い食細胞で、あらゆる組織に広く分布して病原体の侵入に備えている。

好中球やマクロファージは膜電荷の差、レクチンや補体、抗体などを介して病原体に結合し、貪食、殺菌を行う。

病原体には、宿主には存在しない構成要素がある――動物細胞には存在しない糖質やリポ多糖など。

そうした非自己成分を病原体関連分子パターンと呼び、これを認識する受容体をパターン認識受容体…PRRとよぶ。

            ソョョ

病原体を貪食したマクロファージは、血管透過性を亢進するサイトカインや好中球を呼ぶケモカインを生産して炎症反応を誘発する――発熱、疼痛、赤化、腫脹が引き起こされ、これを炎症の四徴候という。

サイトカインはシグナルとなる小さなたんぱく質で、いろいろある――ケモカインはインターロイキン-8…IL-8など、白血球を濃度の濃い方に遊走させる走化性サイトカインの総称。

好中球の膜上には接着分子があって、血管内皮細胞に接着することができる。

主にマクロファージが生産するインターロイキン1β…IL-1βや腫瘍壊死因子の作用によって、炎症局所の細静脈血管内皮細胞の膜上に接着分子の発現が強く誘発される。

血管内皮細胞に接着した好中球は、互いの膜上にある糖鎖とゆるく結合し、ころがって移動する。

IL-8などの走化性因子に誘導されて血管外に遊出した好中球は、炎症局所に向けて遊走を始める――走化性因子受容体に走化性因子が結合すると、一連の反応を経て細胞内のカルシウムイオン貯蔵部位からそれを遊離させ、アクチンやミオシンなどの収縮タンパク質を使って遊走する。

補体は30種以上のタンパク質で構成される血漿タンパク質で、ほとんどは不活性型の酵素として生産される。

病原体を認識すると、一連の反応で補体成分の分離と活性化が起きる――一部の補体断片は炎症を引き起こすアナフィラトキシンとして作用する。

補体活性化には3つの経路があるけど、いずれも1つの経路に収束して膜侵襲複合体を形成する。

これは、病原体の細胞膜に穴をあけて殺菌したり、結合してオプソニン化したりする――病原体に免疫グロブリン…主にIgGや補体が結合することをオプソニン化とよぶ。

オプソニン化された粒子は、それぞれの受容体を介して好中球に貪食される――病原体と結合すると、好中球の細胞膜がくびれてその中に病原体を包み込み、くびれた空胞が好中球の細胞膜からちぎれて貪食空胞が形成される。

貪食を始めた好中球は呼吸…酸素消費量が急増する――呼吸の爆発とよばれている。

このとき消費される酸素のほとんどは、細胞膜に局在するNADPHオキシダーゼという酵素で1電子還元されスーパーオキシドになる。

スーパーオキシドは自然にか、好中球の細胞内にあるスーパーオキシドジスムターゼによって過酸化水素になる。

さらにヒドロキシラジカルや一重項酸素なども生産される――これらは一連の反応の中間体。

これらを活性酸素とよび、好中球の殺菌作用の中心となる。

過酸化水素は、細胞内の顆粒に含まれる酵素と共に働いて次亜塩素酸などを生産したりして、強い殺菌作用を発揮する。

顆粒にも殺菌作用のある酵素が含まれていて、これらが貪食空胞に癒合すると空胞内に内容物が放出される――脱顆粒という。

顆粒に含まれる酵素によって、貪食された病原体は消化される。

好中球の寿命は数日で、病原体を貪食して殺菌すると自分も死んで、膿の主要な成分となる。

関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患は、炎症局所に好中球が過剰に集まって組織を傷つけている。

    

好酸球は、アレルギーがあったり寄生虫に感染すると増加する――IgE抗体を介して寄生虫に結合して、それを殺す。

好塩基球は膜上にIgEに対する高親和性の受容体があり、これにIgEが結合するとヒスタミンなどの顆粒内容物が細胞外に放出される――即時型のアレルギー反応の原因となっている。

単球も細菌を貪食することができ、T細胞に抗原を提示したりサイトカインの生産で免疫の制御をしている。

末梢血液中の単球は、10時間ほどで組織の中に入っていく。

それぞれの組織の中で、特異的なマクロファージに分化していく――腹腔マクロファージ、肺胞マクロファージ、クッパ―細胞、樹状細胞、破骨細胞など。

       ピョ

リンパ球には、T細胞、B細胞、NK細胞などがある――すべてのリンパ球はリンパ系幹細胞からつくられ、T細胞は主に胸腺で、BとNK細胞は骨髄で分化する。

自然免疫系が様々なPRRで非自己を認識するのに対し、獲得免疫系で働くT細胞とB細胞は、抗原受容体で非自己を識別する――それぞれT細胞受容体…TCR、B細胞受容体…BCRを用いる。

抗原受容体は、T細胞やB細胞の分化過程で遺伝子の再編成を経ることで、ほぼ無制限に異なる特異性をもつ受容体を作り出すことができる。

個々のT細胞とB細胞は単一の抗原受容体だけを発現し、それぞれごく少数のみ存在している。

病原体に感染すると、それに結合できる受容体を持ったものが、クローン増殖を始める――この増殖には時間がかかり、獲得免疫が働き始めるのは感染後1週間くらいから。

骨髄で造血幹細胞から分化したリンパ系幹細胞はB前駆細胞とTとNKの共通の前駆細胞に分化する。

              

B細胞は骨髄内で増殖分化する――抗原を認識するBCRは、膜結合型の免疫グロブリン…Ig。

分泌型Igを抗体と呼び、これを生産するものを形質細胞という――まだ抗原と出会っていないナイーブB細胞が抗原刺激を受けると、膜型Igを抗体として分泌する。

抗体はY型をしていて、枝分かれしている方をN末端、反対をC末端という。

N末端は重鎖…H鎖と軽鎖…L鎖が結合した構造で、抗体間でアミノ酸配列が大きく異なる可変領域…V領域とよばれ、抗原結合部位となる――V領域に多様性があるので、多様な抗原に対応することができる。

C末端側はH鎖のみで構成され、アミノ酸配列の多様性があまりないので定常領域…C領域とよばれる。

抗体は、C領域のH鎖の種類によって5つのクラスに分類されている――V領域の L鎖は、κ鎖とλ鎖2種のどちらかが用いられる。

IgM、IgG、IgA、IgD、IgEの5つで、免疫の反応で異なる役割を持っている――形質細胞が生産する抗体のうち、IgGが血清に最も多く含まれている。

B細胞が前駆細胞から分化する際、Ig遺伝子の再構成が行われ、膜結合型IgM分子が細胞表面に発現する。

この未熟なB細胞の段階で、自己抗原と反応するものは死んでしまう――遺伝子の再構成はH鎖、L鎖の順で起き、それぞれで選択を受ける。

生き残った未熟B細胞はさらに分化し、IgDも細胞表面に発現して成熟B細胞になる。

抗原と出会っていないナイーブB細胞は、抗原受容体としてIgMとIgDを発現している。

B細胞が抗原刺激を受けると、IgM抗体を生産する形質細胞となる――IgDの生産は微量。

免疫応答が進むと、他のクラスの抗体…IgG、IgA、IgEを生産するようになる――クラススイッチという。

抗体は抗原の結合部位を介して病原体や毒素と結合し、その働きを中和する。

                 

T細胞は胸腺内で、様々な受容体をもつ未熟なT細胞に分化する。

胸腺上皮細胞にある自己の目印である主要組織適合遺伝子複合体…MHCと自己抗原の複合体に強く結合するTCRを発現しているT細胞は、アポトーシスを起こして死んでしまう――アポトーシスは細胞自ら死ぬ反応。

これは負の選択とよび、自己抗原に強く反応するT細胞を排除する役割がある――多くのT細胞が、この選択で死んでしまう。

逆に、MHCに適度に結合するものは生き残る――これは正の選択とよぶ。

この選択を経て、CD4とCD8という補助受容体のどちらかを持ったT細胞に分化する。

B細胞は病原体の抗原をそのまま認識できるけど、T細胞は病原体に由来する短いペプチド断片を抗原として認識する――この抗原ペプチドとMHC分子の複合体を細胞表面にもつものを、T細胞は認識する。

抗原を提示するMHC分子には2種類ある。

MHCクラスⅠ分子はウイルスの様な細胞内病原体に由来する抗原ペプチドを提示し、MHCクラスⅡ分子は細菌の様な細胞外病原体に由来する抗原ペプチドを提示する。

CD8を発現するT細胞はMHCクラスⅠに提示された抗原ペプチドを認識し、CD4を発現するT細胞はMHCクラスⅡに提示された抗原ペプチドを認識する。

MHCクラスⅡ分子を発現する細胞は抗原提示細胞とよばれ、ナイーブT細胞に抗原を提示して活性化できるものをプロフェッショナル抗原提示細胞とよぶ――樹状細胞が、最も強くT細胞を活性化できる。

樹状細胞は、単球系の幹細胞とリンパ系の幹細胞から分化する。

樹状細胞は様々な組織に分布する食細胞で、マクロファージと同様に病原体を捕まえて分解する――病原体を細胞内で消化し、その抗原ペプチドをMHC上に提示する。

病原体を捕食した樹状細胞は可動性の細胞となって、感染局所からリンパ管を通って所属リンパ組織へ移動し、抗原をT細胞に提示して獲得免疫反応を開始させる。

分化系列や形態・機能から、単球系樹状細胞、リンパ系樹状細胞、形質細胞様樹状細胞に分類される――形質細胞様樹状細胞に効率よく分化する前駆細胞は、リンパ系と骨髄系に分化する前の前駆細胞から分化する経路もある。

CD8T細胞は細胞障害性T細胞…キラーT細胞として働き、ウイルスに感染した細胞などの標的細胞を破壊する。

CD4T細胞はヘルパーT細胞…Th細胞として、様々な免疫反応を調節する。

        ・・・

T細胞による免疫はT細胞が直接関与するので細胞性免疫とよび、B細胞による免疫は抗体を介するので液性免疫と呼ばれる。

そのどちらが優位になるかは、Th細胞が生産するサイトカインによって決まる。

Th細胞は、細胞性免疫を促進するインターフェロンγ…IFN-γなどを生産するTh1細胞と液性免疫を促進するインターロイキン4…IL-4などを生産するTh2細胞に分類される――IFN-γはTh2細胞の分化を抑制し、IL-4はTh1細胞の分化を抑制する。

Th細胞が免疫応答を促進させるのに対し、制御性T細胞…Treg細胞は免疫を抑制的に調節する働きがある。

B細胞は抗原を認識すると活性化し増殖を始め、樹状細胞と同様に病原体由来の抗原ペプチドをMHC上に提示する。

Th細胞がこれを認識し、CD40リガンドやIL-4などのサイトカインによりB細胞の増殖をさらに誘導しリンパ濾胞が形成される。

リンパ濾胞内では、増殖するB細胞により胚中心…GCが形成される――二次リンパ組織にできる微小構造。

胚中心ではB細胞の活発な増殖と選択が起こり、Ig遺伝子の突然変異とクラススイッチが高頻度で起こる――これによって抗原親和性の変化したIgGのBCRを発現するB細胞がつくられる。

この中から、親和性の増したB細胞が選択される――この選択は、濾胞樹状細胞と濾胞ヘルパーT細胞…Tfh細胞が関与していると思われる。

濾胞樹状細胞は、抗原を細胞内には入れずにそのまま表面に保持し、B細胞に提示する――T細胞には提示しない。

この増殖中に自己抗原に反応するB細胞もできるはずだけど、負の選択を受けていると思われる――B細胞の成熟は、主に濾胞樹状細胞が存在する領域で行われている。

正の選択を受けた高親和性B細胞はクローン増殖し、形質細胞に分化して高親和性のIgG抗体を生産する――長期生存形質細胞は、主に骨髄に移動して持続的に抗体を生産する。

一部は胚中心で再び反応を受けて、さらに高親和性の記憶B細胞となり再感染に備える。

IgG抗体にはサブクラスがあり、ヒトの場合IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4つある。

IgG2は親和性は高くないけど、4種の中で最も中和活性が高くウイルス感染を阻止することができる。

マウスを使った実験では、Th1細胞を活性化することで生産されるIgG2抗体でウイルス感染を十分に予防できることが分かった。

ワクチンは、Tfh細胞を活性化させて高い親和性を持つ抗体を誘導できるものがよいとされている。

だけどこの研究は、Th1細胞を活性化させることで十分に予防効果のあるワクチンとなりえることを示している。

                   

ナチュラルキラー細胞…NK細胞は細胞内に顆粒を持つ大型のリンパ球で、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を攻撃する細胞障害性細胞。

抗原を識別せずに攻撃するので反応が速い――自己と非自己の判断は、何十種ものセンサーを利用している様。

キラーT細胞の攻撃を逃れた細胞であっても、NK細胞は攻撃できる。

腫瘍やウイルスに感染した細胞の破壊に、特に重要な働きをする。

またNK細胞はIFN-γなどを生産し、免疫応答を制御する役割もある。

      ソョョ

自然免疫は、感染局所で直ちに始まる。

これに対し、獲得免疫はリンパ節やパイエル板などの二次リンパ組織で始まる――胸腺や骨髄が一次リンパ組織。

末梢組織に侵入した病原体や異物を補足した樹状細胞は、輸入リンパ管を経由してリンパ節に運ばれる。

ナイーブT細胞とナイーブB細胞は、血液系とリンパ系を繰り返し循環しながら全身の二次リンパ組織を巡回している。

二次リンパ組織で抗原を認識したエフェクターリンパ球は、輸出リンパ管を経て血液循環に戻り、感染局所に向かう。

エフェクターT細胞は循環に戻ると、皮膚や腸管などの非リンパ組織を主に巡回する。

活性状態によって巡回経路を変換し、末梢組織では感染を常に監視する――このようなパターンはリンパ球に特有で、他の血液細胞にはない。

白血球は互いに役割を分担しながら、相互に機能を制御する――そうして、強力な生体防御系をつくっている。

          ピョ

                          ―― ヮィヮィ

孤児院がにぎやか。

自宅から着替えなどを持ってきた人たちが、今度は個室に移動するのに混みこみしている。

孤児院の建物は、渡り廊下でそれぞれがつながっている。

倉庫に使っている建物よりも東側に、子供たちが生活する建物がある。

南と北にそれぞれ建物があり、現在利用しているのは南側だけの様。

それぞれの部屋には2段ベッドが2つ置かれていて、4人住めるようになっているらしい。

まだ実際に部屋は見てない。

「ニャ~」

黒猫が何かの影にいると、黒いから気づきにくくなる。

40年以上前には、200人近くの子供たちがここで暮らしていた様。

その頃の孤児院で暮らしていたのは、責任者でもある牧師さんだけ。

その後、子供の数が減ってきた頃に、今の先生が孤児としてやってきた。

成人した後もここを出ず、先生として働き始めたらしい。

その数年後に、グリがやってきたそう。

現在利用している南側の建物には、30部屋があるそう。

他にトイレやシャワー室などの共用部分。

今は17人しか孤児院の子供はいなくて、好きな部屋をそれぞれが使っていた様。

小さな子は、年長の子と同じ部屋だったりはするみたい。

1家族が1つの部屋を使うことになったみたいで、ベッドが足りない場合は、スーパーから持ってきたパイプベッドを入れる。

もう日没が近いけど、まだ混みこみしてる。

使っていない北側の建物には、新しい暖房がない。

倉庫の部屋の地下にあった、壊れたヒーターを利用した暖房で温めれる。

ただ、幸い昨日までと違ってまた季節外れの暖かさ。

今夜は大丈夫そう。

部屋の数が足りなければ、孤児院の教室も昨日までと同様に使うことになる。

今の所、大丈夫そうだと言ってた。

先生はのんびりしているし、牧師さんはボーっとしている。

漁師達は町を見に行っているし、リーダーがいなかった。

町長が学校から来たので、今は彼が指示を出している様である。

でも、町長を含めて高齢の人が多く、全体的にのんびりしている。

ニュースが気になる人も多い様で、ラジオを聴いたりしているから余計に遅い。

渡したちが持ってきた衛星端末は5つまで接続できるけど、実際に通信できるのは1台だけ。

電話したい人が多くて、そこも混んでいる。

以前ここで暮らしていたブラウとグリががんばっている様で、ヘテロも手伝っている。

実際に重いものを運ぶ段階になったら、私も手伝う。

          

                                  ザヮヮヮ  ―――

予報だと、また雨が降る。

でも、今はいい天気。

孤児院の教室が空けば、みんなでのんびりする部屋にできる。

でも、今日はまだ寝室になるかも。

「・・・・」

黒猫がどっか行った。

港ネコたちは、あちこちでくつろいでる。

天気がいいからだろう。

東側に歩く。

個室の部屋を見てみよう・・・・

               

                                 ゥゥゥゥ ―――

          ミャ~