・・・・・ ォォォォォォォォ ・・・・・・
トコ ・・・ トコ ・・・
薄暗い通路を進む・・・
私が通過する辺りだけ、ライトが点く。
午後、私はこっそり船底に侵入した。
船底は3層ある。
場所によっては、吹き抜けの部分もある様。
一番上の層は、クルーたちの部屋が並んでいる。
ただ、多くは上の階に移動しているから、ほとんどは空き部屋だろう。
トコ ・・・ トコ ・・・
階段があったので、下る。
今のところ、誰にも遭遇していない。
チーフさんでも見つけたら、倉庫の場所を聞きたいのだけど。
・・・・ ォォォォォ ・・・・・
ギィィィィ ・・・・
植物とほとんどの動物は、D-グルコースからアスコルビン酸…ビタミンCを合成する――水溶性のビタミン。
私たち霊長類やモルモットは、この過程の途中で必要なL-グロノラクトンオキシターゼという酵素がないので、合成できない。
このため食べないといけない――私たちの祖先が森にすんでいたころ、果物などビタミンCが豊富な食べ物がよく手に入ったなどの理由で、合成できないことが不利ではなくなったのかもしれない。
アスコルビン酸が慢性的に不足すると、壊血病になる――浮腫、皮下出血、貧血、歯や歯肉の変化を起こす病気。
昔、長い航海をする船乗りたちの命を脅かす病気だったけど、新鮮な野菜や果物を食べるとかからない。
これは、アスコルビン酸の不足で結合組織の細胞外マトリックスに含まれるムコ多糖の性質が劣化するため――上皮、筋、神経でない組織を結合組織と呼び、アミノ酸を含むヘテロ多糖…2種以上の単糖でできた多糖のことをムコ多糖という。
アスコルビン酸が生理作用で酸化すると、デヒドロアスコルビン酸になる――これは可逆的な変化で、グルタチオンなどの作用でアスコルビン酸に戻る。
デヒドロアスコルビン酸が加水分解されると、ビタミン活性のないジケトログロン酸になる――これは不可逆的な変化…一方向にしか進まない反応。
コラーゲンはすべての多細胞生物に存在し、脊椎動物では最も多いタンパク――全タンパク重量の30%ほど。
これは細胞外にあって、不溶性で張力に対して強い繊維で、骨、歯、軟骨、腱、靭帯、皮膚、血管の繊維など、結合組織をひずみに強くしている――コラーゲンは、あらゆる組織にある。
哺乳類では、少なくとも46種の遺伝的に異なるコラーゲンペプチド鎖があって、28種のコラーゲンをつくる。
放射性同位体によるラベル実験で、コラーゲンは合成されたのちにヒドロキシ化される――このための酵素はプロリル4-ヒドロキシラーゼ。
プロリル4-ヒドロキシラーゼが働けない条件で合成されたコラーゲンは24℃で変性するけど、天然のコラーゲンは39℃で変性する――変性したコラーゲンは、ゼラチンという。
このプロリル4-ヒドロキシラーゼの活性に、アスコルビン酸が必要になる。
つまりアスコルビン酸が不足した状態では、合成されたコラーゲンが正常な繊維をつくれず、皮膚や血管が脆弱になり、傷が治りにくくなって、最後には死んでしまう。
―――コラーゲンとともに、結合組織にはエラスチンも含まれる――関節や皮膚が異常にのびるエーラース・ダンロス症候群は、ゴムのような性質を与えるエラスチンが多くなり、コラーゲンが欠陥するために起きる。
これらの繊維はゲル状の構造の中に埋まっていて、これを構成するのがムコ多糖…グリコサミノグリカン…GAGで、この溶液は粘性、弾性が大きい。
ヒアルロン酸…ヒアルロナンは、マトリックス、滑液…関節の潤滑液、目の硝子液…硝子体などの、重要なGAG成分――細菌の莢膜にも存在する。
これは、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンが結合した二糖単位が250~25000くらい結合した多糖分子。
ヒアルロン酸は分子量が大きく互いに反発する陰イオン基が多いので、溶液中ではのびて乾燥状態の1000倍の体積を占めるようになる。
ヒアルロン酸の粘度はせん断応力によって変化する――せん断応力は面に平行に働く力。
せん断応力が小さいときは分子はもつれ、溶液は粘性が高まり流れにくくなる。
応力が増すと、硬いヒアルロン酸の分子が流れて並び、抵抗が減る。
この性質が、ヒアルロン酸の衝撃吸収と潤滑に優れた性質をあたえる。
ヒアルロン酸はヒアルロニダーゼという酵素で分解され、これは、多くの組織、細菌、ヘビや昆虫の毒に含まれている――細菌が組織に入り込むのに、役に立っている―――
トコ ・・・ トコ ・・・
ギィィ ・・・
ビタミンA、D、E、Kなどは脂溶性のビタミン。
これらはすべて、イソプレンの誘導体であるイソプレノイド――ある化合物が、酸化、還元、原子や基の置き換えなど変化したものを誘導体という。
水溶性のビタミンと違い、脂溶性のビタミンは体内に貯まる――特に肝臓。
このため、過剰に摂取すると毒性を示す。
ビタミンA類のレチナールは、β-カロテンが2つに切れてできる――体内でビタミンに変わるものをプロビタミンという。
レチナールがアルコールデヒドロゲナーゼでレチノール…ビタミンA1に還元される――カロテンのトランス構造はそのまま残るので、レチナール、レチノールともにトランス型。
植物は、α、β、γ-カロテンやクリプトキサンチンを合成するけど、動物はしない――これらはカロテノイドで、体内でレチノールになる。
レチノールのプロビタミン源としては、緑黄色野菜がすぐれている――カロテンは疎水性で、脂肪を含む部分にも多い。
淡水魚の肝油には、3-デヒドロレチノール…ビタミンA2がある。
レチノールが欠乏すると、上皮細胞がケラチン化し、目でこれが起こると眼球乾燥症…ドライアイになる――ケラチンは機械的耐久性の大きい化学反応しにくいタンパクで、外皮や角質では、細胞タンパクの85%を占める。
人と動物実験では、まず夜盲症がおこる――幼い動物では骨に異常が起き、成長が遅れる。
レチノールを過剰に摂取した場合、動物は余分な分を排泄できず、脂肪組織にたまる。
過剰な状態が長期間続くと、骨がもろくなり、嘔吐、衰弱、皮膚炎などが起きる。
タッ ・・・
・・・・ ォォォォォ ・・・・・・
見つけた・・・
倉庫だ。
カタ
ライトをつける。
そんなに明るくはない。
あった・・・
前の船と同じで、上の方にひとつ窓。
布の袋など、いろいろある。
でも、そこそこ整っている。
これを積みなおして、あの窓から海の中をのぞける様にする。
とりあえず、置いてあるものをみよう・・・
ギィィィィ ・・・・
・・・・ ォォォォォォ ・・・・・・・・