ポッポポポポポポ・・・・・・・・・・・・
お月様が丸い。
お月様が丸い時は、良いときである。
「チュー」
仰向けになって、寝ているボロちゃん。
僕とネズミは、ボロちゃんのお腹の上で起きるのを待っている。
ボロちゃんが息をするたびに、上下に揺れる。
「ニャーォ」
いい加減起きるのだ。
バシバシ
シッポで、お腹を叩く。
しかし、さっき暴力人間に叩かれたので、ボロちゃんの服がもっとボロボロになった。
顔の方へと移動してみる。
バシ
ボロちゃんのアゴに、ネコパンチをお見舞いする。
「・・・・・」
動いた。
「・・・・・もう・・・・夜か」
「チュー」
「なんだ、ずっとそこにいたのか」
「ニャー」
お腹すいた。
また、ご飯を探しに行くのだ。
「いたたた・・・・」
ニャ
暴力人間に叩かれた所が、まだ痛むよう。
それはそうである。
あの人間、手加減無しだったのだ。
僕だったら、きっと痛くてゴロゴロするのだ。
「・・・・・たぶん、俺以外にも取ってるやつが居たんだな」
ニャー
運が悪かったのだ。
あんな人間に見つかって。
・・・・ボロちゃんが歩き出した。
・・・・・・しょうがないのだ、男達の所に連れて行こう。
こっそり付いて来たことがバレてしまうけど、いいのだ。
「ニャー」
僕はボロちゃんを呼ぶ。
「・・・・そっち行くのか?」
・・・・付いて来た。
しめしめ。
ホテルに帰ろう。
・・・・・・
・・・・・・・・・・
所で、ここはどこ?
街の方からは、悪臭が漂ってくる。
・・・・しょうがないのだ。
とりあえず、歩こう。
ボロちゃんの手の上に乗って、ネズミも付いてくる。
ネズミめ、楽しすぎである。
ターン ターン
ニャ
遠くから、鉄砲の音が聞こえる。
耳を立てる。
「大丈夫、この辺りじゃないよ」
ボロちゃんが、僕を抜かして先を歩く。
付いて行こ。
「白人さ・・・」
さっきから、ブツブツ何か言ってる。
「あいつらが武器を持ってくるから・・・」
おや、ボロボロの小屋が立ち並ぶ中、少し丈夫そうな小屋がある。
ボロちゃんが、その敷地の中に入って行く。
「もういいや・・・今日は寝よう」
「ニャー」
ボロちゃんの目に、なぜか大きな涙。
小屋の壁にもたれ掛かって、そのまま座った。
「オイ!」
おや、長い鉄砲を持った人間が2人。
警備員の様。
「ニャー」
なんかちょうだい。
僕は、愛くるしい声で鳴いてみた。
・・・・・・・
ボロちゃんが、立ち上がった。
トボトボ・・・・・
トボトボと、外に歩いていく。
ピカ――
ニャ
まぶしい。
ライトの光である。
この辺りは人間の街なのに、暗い。
なので、ビックリしたのだ。
「ちょっと待って・・・・」
おや、さっきとは違う人間。
長い髪を後ろで束ねて、馬のシッポみたいにしてる。
「ニャー」
この様な人間は、食べ物をくれる。
「あなた大丈夫?」
「うん・・・」
ニャ
僕を無視して、ボロちゃんの方へ行った。
「ニャー」
ショックである。
「大丈夫だから、こっちおいで」
シッポ髪の人間に連れられて、ボロちゃんが小屋のほうへ向かった。
さっきの警備員がいる。
「すみません、うちの生徒なんです。喧嘩したみたいで・・・・」
「そう・・・・」
中に入るよう。
「お友達もどうぞ・・・」
「ニャー」
僕を手招きしてる。
僕を無視したわけではなかったのだ。
うれしい。
中に入ると、暗い。
人間は電気を使って魔法を起こすのに、ここにはそれがない。
まあ、僕は暗くても平気。
「・・・・先生?・・・・どうしました」
中に、大きな人間がいる。
この街の人間は、みんな肌が黒い。
でも、この2人は白いのだ。
「すみません・・・手当てをしてあげたいんです」
「・・・・・・彼一人?」
「はい」
大きな人間が、軽くうなずいた。
「チュー」
ネズミが、僕の上に乗っかってきた。
「食べて良いよ」
大きな人間が、バナナをボロちゃんにあげてる。
パクパク食べるボロちゃん。
いいな。
「ネコも食べるのかな・・・・」
僕にも、くれた。
ニャー
親切である。
パク
「ニャー」
おいしい。
「チュー」
ネズミも食べてる。
おや、ボロちゃんがゴクゴクお水を飲んでる。
・・・よく見ると、大きな人間も腰に鉄砲を付けてる。
この部屋は、広い。
どうやら、教室のよう。
だって、黒板のような物があるもの。
「いてっ」
おや、シッポさんがボロちゃんの手当てを始めた。
スースーするのを付けてるのだ。
「ニャァァ」
そんなに痛いの?
さっきから、ボロちゃんがボロボロ涙を流している。
「今夜は、ここで寝ていきなさい」
スルリ――スルリ――
僕はシッポを左右に振って、遊んでみる。
「チュゥゥ」
ネズミがシッポにしがみついて、便乗している。
・・・・遊ぶ時まで、楽しすぎである。
2人の大人は、去った。
そして、ボロちゃんはここで寝るよう。
僕は、しばらく辺りを見張っていよう。
どうもこの街は、油断できないのだ。
そして明日には、きっとホテルにボロちゃんを連れて行くのだ。
タン―― タン――