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学者の妻の心得を書いた手紙 多田富雄

2017年10月04日 00時18分18秒 | 雑学知識
 結婚直前、(多田富雄が)学者の妻の心得を書いた手紙

 研究者の生活は、非常につらい生活です。仕事が詰まったとき、あるいは方角を決定するとき、精神的に短期間精神を集中し、肉体を酷使することがしばしばあります。サラリーマンと違って時間は不規則になり、マイホーム主義という生活は絶対にありません。傷んだ神経をいたわって認めてくれるのは家庭だけです。ですからあなたもそのことは覚悟してくれなくてはなりません。ぼくは年をとって(34歳)結婚することになったので、悲しいことにおままごと的な新婚生活というものは、出来ないでしょう。これからぼくは地位も上がるし、重要な段階に入るでしょう。弟子たちにはいつも控えめにして、やさしくやってください。今まであなたはお母さんに依存したところがありましたが、これからはあなた一人で何事も決定して行ってください。僕はあまり頼り甲斐がありませんので、まずあなた一人でものごとを考え、決定するためにはよほど強い意志と自分の好悪の基準と、しっかりした趣味がなければなりません。

 「春楡の木陰で」 多田富雄 集英社文庫 2014年  「解説」 多田 式江(のりえ)

 多田富雄 1934年生まれ。東京大学名誉教授。免疫学者。95年、国際免疫学会連合会長。抑制T細胞を発見。野口英世記念医学賞等内外多数の賞を受賞。2001年、脳梗塞で倒れ声を失い、右半身付随となるが、リハビリを行いながら著作活動を続ける。能楽にも造詣が深く「望恨歌」など新作能の作者としても知られる。08年第7回小林秀雄賞受賞。10年4月没。

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