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「大放言」 その4 百田尚樹

2017年06月16日 00時06分43秒 | 本の紹介(こんな本がある)
 「大放言」 その4 百田尚樹  新潮新書 2015年

 「言葉狩り」の時代 その2 P-11

「黒人差別をなくす会」に差別的表現を指摘された漫画界の巨匠・手塚治虫氏の名作『ジャングル大帝』は一時、出荷停止に追い込まれた。黒人の唇が厚く描かれていたという理由で、だ。名作絵本『ちびくろサンボ』も、サンボというタイトルが差別語ということで、絶版に追い込まれた。(いずれも表向きは出版社の自主絶版)

 当時は似たような事例がいくつもあった。いずれも作品全体の意図を読み取ることなく、部分的な表現に問題があるというだけで作品そのものを全否定する運動だった。

 その後、言葉狩りの運動は下火になったが、それがきっかけとなり、いつのまにか世の中全体が言葉や表現に敏感になってしまったように思う。

 この流れはいつしか「個人的な発言」にまで及ぶようになった。それらは次第にエスカレートし、昔なら笑って済ませていたような発言もだんだんと許されない風潮になってきた。おおらかな時代なら、不倫交際しているタレントが「もてるんだからしかたがないじゃん」と言ったところで許してもらえただろう。実際、昔は「女は芸の肥やしだ」と、女遊びを公言する芸人はいくらでもいた。芸人とはある意味、破天荒な生き方をする人種で、ファンもまたそうした行動や言動を非難しつつ、一方では面白がって受け入れた。

 しかし現代はそうではなくなった。有名人、タレント、あるいは大会社の取締役などが、ちょっとした一言で、メディアやネットで集中砲火を浴び、社会的に抹殺に近い状況に追い込まれている。