黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

各「法曹養成課程」の存在意義(2)・要件事実論

2006-04-26 20:56:33 | 司法一般
 この記事は,4月12日に書いた,各「法曹養成課程」の存在意義(1)・旧司法試験とその受験勉強の続編です。

2 司法研修所の民裁修習(要件事実論)
 司法修習は,司法研修所における前期修習,各修習地における実務修習,司法研修所に戻っての後期修習という順序で行われています。
 ただ,期間については,従来全体で2年(前期・後期各4カ月,実務修習1年4カ月)あったのが,平成11年修習開始の53期から1年6カ月(前期・後期各3カ月,実務修習1年)に短縮されています。
 59期からは,さらに前期修習が短縮され,全体で1年4カ月か1年5カ月程度になるそうであり,新司法試験の合格者は実務修習が全体で1年程度になるようですが,今後の話はここでは措きます。
 司法研修所におけるカリキュラムは,民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5つが主要科目になっており,講義等の分量としては5科目とも大して変わらない程度です。
 にもかかわらず,ここで民裁修習だけを独立した項目としてとりあげるのは,それなりの理由があります。その理由が民裁修習で教えられている「要件事実」教育の存在です。

 民裁修習の起案では,訴訟物の説明や事実認定の理由などを書かせる部分もありますが,当事者の主張を要件事実に照らして整理し,かつそのように整理した理由を書かせる部分が最大のメインになっています。要件事実は,文章で説明させる場合もありますが,請求原因,抗弁,再抗弁などの関係を表にまとめた「ブロックダイヤグラム」と呼ばれるものを作ることもあります。
 この「要件事実」というのは,関係者以外の人には分かりづらいと思いますが,要するに当事者の主張のうち,法律的に意味のある部分だけを請求原因,抗弁,再抗弁といった形で整理していくものであり,司法研修所では何が要件事実であるかを正確に理解させるために,要件事実にあたらないものは一切書いてはいけない,というルールが設定されています。
 黒猫は,この要件事実論はもともと好きではなく,また法曹教育としてもあまり有益だとは思えないのですが,その主な理由は以下のとおりです。

(1) 実務上役に立つ場面が非常に限定的である
 この要件事実論というのは,契約に基づく請求のように,何が要件事実であるか法律上はっきりしている類型の事件を想定していますが,不法行為や信義則などの一般的・抽象的な要件が問題になる事件では,数ある事情の中から厳密に要件事実を抽出すること自体が困難であり,また要件事実論における不可欠の前提となっている,「主張責任と立証責任は完全に一致する」という原理が必ずしも当てはまらないため,ほとんど役に立ちません。
 また,契約に基づく請求の事件であっても,わざわざ要件事実論に基づいて争点のブロックダイヤグラムを作る必要のあるような事件は,争点が複雑に入り乱れている請負契約関係の事件くらいであり,大半の訴訟では,きちんと実体法の知識が頭に入っていれば,要件事実論など使わなくても争点が分からなくなることはありません。
 実際,黒猫は弁護士になってから,ブロックダイヤグラムなど一度も書いたことはありません。
 なお,民事訴訟の判決がいわゆる「旧様式」で書かれていた頃は,要件事実論に基づいて請求原因,抗弁,再抗弁といった形で争点を書いて行き,それらの争点について判断をしていくという判決書の書き方をしていましたので,判決書を書くのに必要な知識・技術としての意味があったのですが,最近の判決書は素人にも分かりやすくするための「新様式」に代わっており,新様式では争いのない事実や証拠によって容易に認定できる事実(前提事実)をまず書き,次いで争点とそれに関する当事者の主張を列挙し,各争点について判断していくという方式になっているため,要件事実論は少なくとも直接出てくることはありません。

(2) 前提となる実体法の知識がなければ,何の役にも立たない 
 要件事実論は,前提となる実体法上の法律関係が明確であってはじめて機能するものであり,実体法上の知識があやふやであったり,実体法の解釈自体に争いがあるような場面では,十分に機能しません。
 黒猫が前期修習(54期)をやっていたときのことですが,民裁の起案で債権譲渡の事件に関する問題が出されました。
 その問題は,細かい時系列は忘れましたが,請求原因はAがY(被告)に100万円を貸し,Aが4月18日にその貸金債権をX(原告)へ譲渡した(なお,同月20日にYに対し譲渡の通知をしているが,これは再抗弁になる)というようなもので,これに対しYは同月27日にAへ100万円を弁済したと主張しているというような事案でした。
 この問題について,研修所の講評ではYによる上記弁済の主張を抗弁として扱っていたのですが,これっておかしいと思いませんか?
 まず,債権譲渡後におけるAへの弁済が抗弁として成立するためには,前提として債権譲渡の効力を否認する必要がありますが,そのためには対抗要件の主張だけを抗弁として書けばよく,Aへの弁済の主張は必要ありません。一方,債権譲渡の対抗要件を満たしている場合には,その後に原債権者であるAに弁済したとしても,弁済の法的効力は認められませんから,結局債権譲渡の通知後である4月27日にAに100万円を弁済したというのは,Xとの訴訟の関係では主張自体失当になるはずです。
 黒猫は,講評の後,民裁の教官に上記のような指摘をしましたが,その教官からは何度聞いても「また後でな」という返事しかもらえませんでした。他の修習生や弁護士にこの話をすると,黒猫の意見に賛同してくれるか,自分にはよく分からないと言われるかのどちらかで,正面切って反論してくる人はいませんでした。
 この問題に関する黒猫の意見が正しいかどうかは措いておきますが,少なくとも要件事実論というのは,前提となる実体法上の問題がないという前提でしか機能せず,実体法上の問題を解決するような機能はないということは上記の一事でも分かると思います。

(3) 中途半端に教えると,修習生にあらぬ誤解を与える
 要件事実論は,民裁の科目で使うものであり,また法律上の要件事実だけを厳密に抽出して書くルールになっているため,日本語としては非常におかしい文章になることがあります。一方,民事弁護の科目で(あるいは弁護士として)訴状や答弁書などを起案するときは,もちろん要件事実を押さえた文章になっていることは必要ですが,要件事実そのものを書くのではなく,きちんと日本語として説得力のある文章になっていることが必要です。
 ところが,修習生の中には民事裁判の科目で教わったことと民事弁護でやることが頭の中でごっちゃになってしまう人が結構いるらしく,訴状などの起案で要件事実だけのおかしな文章を書く人が少なくないようです。

 これについては,PINE先生のブログ中「弁護士増員と共通基盤」の記事に,その例えとして格好の話があったので,引用します。ちなみに,引用文中「私」とあるのはPINE先生のことで,「Q」とあるのは以前PINE先生と一緒に仕事をしていた若手のQ弁護士,ということのようです。

 夫に浮気をされた奥さんの離婚訴訟の依頼を受け、一緒に事情の聞き取りを行った。
私「訴状の案を作ってください。」
Q「マニュアルないですか。」
私「内容の出来不出来はいいから、まず自分の頭で考えて作ってみてください。」
 出来上がった訴状。

請求の原因
 1 原告と被告は夫婦である。
 2 被告の不貞行為により婚姻関係は破綻した。
 3 よって、原告は被告に対し、離婚と慰謝料500万円の支払いを求める。

・・・わずか3行・・・。
 確かに、要件事実はあがっているが・・・、通常は裁判官にこちらの主張をいろいろ理解してもらうために、離婚に至った経緯等をある程度詳しく記載する。
私「相談者が、涙浮かべながら、いろいろ話してただろ。」
Q「よく聞いていませんでした。」
 今までは、論証集やマニュアルで対応できたのだろうが、実務では、なかなかそうはいかない。

 民法770条1項1号に基づく裁判上の離婚請求をする場合,請求原因事実は(1)原告と被告が法律上の夫婦であること,(2)被告に不貞の行為があったことの2つですから,たしかに要件事実はあがっています(ただし,(1)については何年何月何日に婚姻の届出をした夫婦であると書くのが通例ですし,(2)についても,不貞行為の具体的内容や証拠関係などを具体的に書く必要がありますし,慰謝料請求もするのであれば,別途不法行為の要件事実(原告の精神的損害の内容など)を書く必要がありますので,要件事実としても決して十分ではありません)。
 仮に,弁護士ではない法律の素人が自分で離婚事件の訴状を書く場合でも,具体的な事情をある程度書くはずであり,上記のようなことだけを書く人はまずいないと思いますが,要件事実論を中途半端にかじると,とにかく要件事実を書けばいいんだということだけが頭に残って,上記のような起案になってしまうわけです。 
 黒猫が教わった民事弁護の教官も,どうやら上記のような類の答案の多さに閉口したらしく,「要件事実論など何の役にも立たない!」と,民事裁判の教官の面前で力説していました。
 もちろん,要件事実論を教える側は,こんな頭の法曹を育てることを目的にしているわけではないと思いますが,大幅な合格者増に伴う修習生の質の低下に加え,今後は修習期間の短縮により十分な教育ができなくなることから,上記のような弊害は今後ますます増大していくと予想されます。

(4)単なる暗記科目と化している
 昔の司法研修所における要件事実論は,あまり解説書なども無かったために,絶対的な正解というものもなく,各事案について修習生が自分の頭で請求原因事実が何か,抗弁事実が何かを考えて起案すればそれほど問題は生じなかったのですが,近年は「紛争類型別の要件事実」をはじめとする要件事実の解説書が司法研修所の教材として修習生に配布されるようになり,その教材に書いてあることが唯一無二の正解であるように取り扱われるようになったため,司法修習で高い評価を得るためには,これらの教材を丸暗記することが必要となり,要件事実論は暗記科目と化してしまっています。
 初めから弁護士志望の人は,修了さえ出来れば研修所内の成績はあまり関係ないのでまだ良いですが,裁判官志望の人はひたすら教材を丸暗記して,その出来によって任官できるかどうかが決まるという,果てしなくくだらない状況になってしまっています(黒猫が裁判官への任官希望を途中で辞めた原因の1つはこれです)。
 これについても例を1つ挙げますが,土地の所有権に基づく明渡請求事件の事案で,問題となる甲土地を平成11年7月17日以前にAという人物が所有していたことは争いが無く,その後の所有権移転が争点となっているとします。
 こうした事案で,黒猫は(1)Aは,もと甲土地を所有していた,(2)Aは,平成11年7月17日,甲土地をBに売った・・・などと起案したところ,講評で教官から「もと」ではだめだ,「(1)Aは,平成11年7月17日,甲土地を所有していた」という風に書けと言われました。
 ところが,その理由の説明は「なぜ『もと』ではいけないのかは良く分からん。しかし,司法研修所の方針には反するで!」というわけの分からないもので,黒猫はこの説明に激怒したのを今でも覚えています。
 なお,後日聞いた話では,上記のような事案では従来「もと」でよいとされていたものの,立証の対象となる所有の時期を特定する必要があるという理由で,上記のように書かせる方針に変わったということのようですが,こんな些末な事項の出来不出来で任官できるかどうかが変わってしまうのであれば,これほど腹の立つことはありません。

 このように,教育のあり方としては問題だらけである(少なくとも黒猫はそのように思っている)要件事実論ですが,さらに頭の痛いことに,従来はほとんど司法研修所の中でしか教えられていなかった「要件事実論」は,近年研修所外でも広まっています。
 法科大学院では,実務に即した法学教育と言われても何をやってよいか分からない場合,司法修習における教育内容のうち学問的なものがこの要件事実論しかない(他の科目は,司法試験で培った法律知識と文章力その他生来の素質に出来不出来が左右されるものであり,ほとんど勉強のしようがない)ので,カリキュラムに要件事実論を取り入れるところが多くなっているようです。
 しかし,上記(1)で書いたように,実務上要件事実論が直接役に立つのはかなり限定的な場面でしかないほか,(2)で書いたように,実体法の十分な知識のあることが要件事実教育の大前提となっているのに,その基礎ができていない法科大学院生に要件事実論を教えて何の意味があるのか,甚だ疑問です。

 そして,最近は弁護士以外の隣接法律職種にも,一定の紛争解決業務を取り扱う門戸が開かれるようになっていますが,その際に行われる研修でも,どうやら他に教えることが思い付かないのでとりあえず要件事実論を教えている,という例があるようです。
 例えば,社会保険労務士は,所定の研修を修了して試験に合格し「特定社会保険労務士」になると,個別労働関係紛争に関するあっせんやADRの手続きについて当事者の代理をすることが認められるようになりますが,弁護士会で主催しているらしいこの研修でも,要件事実論が教えられているようです。
 個別労使関係の紛争というのは,残業手当の不払いなどといった法律論としては単純な紛争を除いては,解雇や雇い止めが違法か,減給や降格,配転命令が違法か,あるいはセクハラを認定できるかなど,事実認定や抽象的要件が問題となるものばかりであり,はっきり言って要件事実論が役に立つことはほとんどないと思われます。
 しかも,労働事件における事実認定は,立証責任を厳格に運用するとどうしても労働者不利になってしまうので,主張立証に対する双方の態度を総合的に考慮して事実認定を行うのが慣行のようになっているのですが,立証責任の厳格な運用を前提とする要件事実論を特定社労士に吹き込んでしまっては,かえって労働者の救済を妨げる結果になってしまうのではないかという懸念もあります。
 しかし,知り合いの社労士の先生の話だと,弁護士会の方ではあくまでも要件事実教育にこだわっていて,こんなカリキュラムは要らないと主張する社労士会と対立が起きているそうです。
 ここまで来ると,要件事実論というのは法曹教育上むしろ有害であり,即刻廃止した方がよいのではないかとすら思えてきます。

13 コメント

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Unknown (PINE)
2006-04-26 21:38:22
引用してくださって、ありがとうございます。

弁護士になったとき、先輩弁護士から、要件事実だけの訴状は「ホネカワスジエモンの訴状」と言うと教えらました。

訴訟代理人としての弁護士の仕事は、依頼者の主張をいかに裁判所に理解してもらうかが重要であり、実体法の知識(要件・効果)さえ押さえていれば、要件事実なんか意識する必要はないというのが実務についた実感です。



修習中のことを思い出すと、ホントに民裁の要件事実は暗記科目のようでしたね。

初めに「ブロックダイヤグラム」なんて言葉を何の説明もなしに使われ、「どれがブロックダイヤグラムなんだ?」と、しばらく分らなかったです。

起案の下段部分なんて論証集のようなものまで出回っていて、「こんな釈迦に説法みたいなことを書かなきゃならんの?」と思いましたが、二回試験にはパスしたかったので(当然か)参考にしてました。
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ブロックダイヤグラム (きゃんた)
2006-04-26 23:22:23
全事件について作成していたりします。暗記するのはアホらしいですが整理のツールとしてそれなりに有用だったりするんですよね。

ホネカワスジエモンの訴状は民裁修習で見ました。

所有権に基づく返還請求訴訟で、「原告は~を所有している。被告は~を占有している。よって原告は被告に対して所有権に基づき~の返還を求める。」という訴状です。

私の教育係の裁判官は、黒猫先生と全く同じこと(要件事実教育の弊害)をいいながら、「君はこんな訴状書くなよ。」と注意しました。

ちなみに、上記訴状を出した事務所に就職活動をしたのは内緒です(あの訴状はなんですかと聞いたら、あれはあれで事情があるねんと答えてましたが。)
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債権譲渡の例について (ある法科大学院生)
2006-04-27 01:09:11
 「正面切って反論してくる人」がいないのも問題ですので、私が正面切って反論してみます。

 その事例で、Yによる債権譲渡の債務者対抗要件の抗弁を受けて、Xが、訴え提起後に、Aに依頼して、Yに対する譲渡の通知をさせたとします。この場合、Aによる譲渡の通知は、Yの抗弁に対する債務者対抗要件具備の再抗弁になります。ここでは、債務者対抗要件具備と弁済との先後関係は問題になりません。なぜなら、債務者対抗要件の抗弁の系列においては当事者の主張上に弁済の事実が現れないからです。

 そこで、弁済の抗弁が意味を持ってくるのです。ちなみに、弁済の抗弁に対しては、(上記事例では主張することができませんが、)弁済に先立つ譲渡通知(債務者対抗要件具備)が再抗弁になります。このように、譲渡通知と弁済との先後関係が問題となるのは、弁済の抗弁の系列においてなのです。

 以上のことは揚げ足取りにすぎませんし、要件事実論を偏重することの弊害に関する黒猫さんの指摘にはおおむね賛成です。
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債権譲渡の対抗要件 (TK)
2006-04-27 06:10:59
債権譲渡の対抗要件欠缺を被告(債務者)の抗弁として主張させることは消極的事実を立証の命題にすることから、相応しくないとし、再抗弁にしたものと思われます。

黒猫さんの感度は、対抗要件の具備を請求原因とし、被告は対抗要件の具備を否認するとの考え方に近いのかと思いますが、それも新方式時代にマッチした考え方かもしれないと感じました。
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Unknown (nov)
2006-04-27 23:56:37
今年、社労士の試験を受けるため、最後の具体例は他人事でなかったりします。

自分自身サラリーマンなので、個別紛争のあっせんには興味がありますが、実際のところ法律のどのあたりを勉強すべきなんでしょう?(もちろん、試験に合格してからの話ですが^^;)
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60期 (Unknown)
2006-04-28 00:36:45
明日も早いので短く。



クロネコ先生のみんさい教官がひどかったような印象を受けます。

また後日感想を書きます。
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なら、何を学ぶべきか (ラッチェバム)
2006-04-29 08:23:41
 身内の認定司法書士が、簡裁弁護のためか、最近認定事実論ばかり勉強しているので、気になりました。さて、凶と出るのでしょうか?認定事実論の前に学ぶべきことがあるとすれば、何なのでしょうか?
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債権譲渡の問題について (黒猫)
2006-04-29 16:10:45
> 「ある法科大学院生」さんへ

本文の事例で弁済が「抗弁」として成り立つためには,対抗要件の権利主張をすることが前提であり,対抗要件の権利主張をすれば,弁済の事実をそれに付け加えなくても抗弁は成立するという,いわゆる「A+B」の関係ではないかというのが黒猫の考えなのですが,法科大学院では,「A+B」の問題は教えられていないですか?

> TKさんへ

債権譲渡の対抗要件具備は請求原因ではなく,債務者による「対抗要件の権利主張」の抗弁(対抗要件欠缺の抗弁ではない)に対する再抗弁であり,黒猫がこれと異なる見解を採っているわけではありません。
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Unknown (別のロー生)
2006-04-29 22:30:18
弁済が「抗弁」たりうるためには、対抗要件の権利主張が前提となるという理解がよくわからないのですが…。



債権の譲受人が債務者に対し対抗できるかという問題(467条)と、

譲渡人に対し弁済した債務者が当該弁済を債権の譲受人に主張しうるか(468条)の問題は理論的には異なるように思うのです。

もちろん、事実としては、同じ弁済に先つ債務者対抗要件の事実が再抗弁になるわけですけれど。

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Unknown (別の60期)
2006-04-29 23:19:07
いつも楽しく読ませていただいています。

弁済ですが、やはり抗弁になるのではないでしょうか。黒猫先生のおっしゃるとおり、対抗要件の抗弁が認められれば、弁済の抗弁は必要なくなりますが、逆は必ずしも真ではないと思います。

 つまり、例えば、通知は到達したがそれは28日であると認定された場合、対抗要件の抗弁は成立しませんが、弁済の抗弁は成立します。弁済の主張をしている被告側としては、27日までに債権譲渡の通知が到達したことは当然争わなければなりませんが、対抗要件の抗弁を全面的に主張(つまり、今の今まで譲渡通知が到達していないと主張)しなければならないということをにはならないのではないかと思います。現実には、内容証明郵便で送っているのでしょうから、到達の日付が争いになることはまずないのでしょうが、理屈の上では成立しうる議論ではないかと思います。
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