黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

61期以降の質は大丈夫か・・・?

2007-02-25 20:47:34 | 法曹養成関係(H25.1まで)
 先日、法科大学院協会に対するヒアリングの感想を簡単に書きましたが、今回はその補足です。

 法科大学院協会関係者の身勝手な言い分はここでは措くとして、今後新司法試験を経て法曹資格を得る人の質を判断するにあたり、よく読んでみると見逃せない発言がいくつかありました。

1 純粋未修者の問題
 以前、ボツネタで取り上げられた記事に、純粋未修者(法学部以外の出身者で、法科大学院の未修者コースに入ってきた人)が既修者のレベルに追いつくのは1年ではとても足りない(下手をすると3年でも足りない?)のが実情である、などと述べられていたものがありましたが、今回のヒアリングでも、「純粋未修者が3年間の学習で対応できる水準かという観点からの問題の評価も必要」という意見が出されています。
 そもそも、法科大学院の制度を定めるにあたり、既修者コースは2年、未修者コースは3年という「枠」が最初に出来上がりましたが、別にこれは具体的な教育プログラムを検討して定めたというようなものではなく、単にフィーリングで決めたに等しいものです。
 具体的に考えてみると、日本の法学部の在学年限は一般的に4年であり、実際に既修者コースに入学するには、その4年間も適当に単位だけ取って後は遊んでいるようではとてもだめで、その間相当真剣に勉強する必要があります。
 未修者コースは、その4年分を1年間で勉強するわけですから、学ぶ側にも相当の覚悟と努力が必要ですし、教える側にも相当な努力と工夫、そして教えるノウハウが必要になるわけですが、もちろん法科大学院は、そのようなノウハウを事前に持ち合わせていたわけではありません。

 そういったノウハウに近いものを持っていた機関を敢えてあげるとすれば、司法試験の受験予備校でしょうが、その受験予備校も、別に受講者全員を1年で実力者に鍛え上げるノウハウを持っているわけではありません。むしろ、受講者の大半は途中で脱落していき、熱心に勉強した一部の優秀な受講者だけが司法試験の短期合格を勝ち取り、その予備校の「広告塔」になっているというのが実情に近いと思われます。
 しかも、法科大学院の設立過程では、敢えて受験予備校の関与を徹底的に排除するということをやった(法科大学院の設立認可申請では、大学教授の論文作成実績に虚偽記載のあるようないい加減な大学でさえ認可したのに、予備校との連携を掲げた大学だけは不認可にした)ために、文字通り法曹教育についてはずぶの素人が法曹教育の中核的役割を担うという恐ろしい制度が出来上がってしまったわけです。
 ちなみに、公認会計士試験制度の改革にあたり、会計大学院という専門職大学院が新たに設けられましたが、こちらでは別に予備校の排除は行われておらず、現にLEC(東京リーガルマインド)という受験予備校による会計大学院の設置も認可されています。この一事をみても、法科大学院制度における予備校排除の論理がいかに理由のないものであるかがよく分かります。

 なお、アメリカのロースクール制度は、もともとアメリカの大学には法学部はありませんから、ロースクールの入学者はいわば全員が「未修者」です(一部、外国の法学部を卒業した人などのために、1年で卒業できるL.L.Mというコースが設けられていますが、その話はここでは割愛します)。
 そういった人たちが、平均合格率7.8割程度といわれる各州の司法試験を合格しただけで(州によっては試験すら無しで)法曹資格を得られるというのですから、そのような制度下での新規合格者の実力は推して知るべしで、日本の法曹資格制度にいきなりそんなやり方を持ち込んだら、急激な質の低下で混乱が起きるのは目に見えていますね。

 話がかなり脱線したので元に戻しますが、このような状況下で、敢えて新司法試験を「純粋未修者が3年勉強しただけで十分合格できるレベルにする」には、もはや合格レベルを大幅に落とす以外には方法はないでしょうね。仮にそうした場合、正直言ってその全員に司法修習を受けさせるのは国費の無駄なので、司法試験とは別に司法修習生採用選考試験を実施して、司法試験合格者のうち司法修習生採用選考試験に合格した者だけを司法修習生にするような制度にするしかないでしょう。

2 1期生の質の割には・・・
 ヒアリングでは、司法試験委員会の委員から、1期生が入ったときには一種の法学部ブームが発生するくらいの人が集まり、その中から優秀な層が選抜されて入学しているという割には、受験者全体としての出来は、意外と振るわなかったという印象も受けているという趣旨の意見が出ています。
 黒猫が今まで耳にした法科大学院生(主に1期生と思われる)の評判をまとめてみると、いろいろ知識はあって口は達者だが、法律文書を起案させてみるとまるでだめ(うちの事務員の○山みたいな奴ですね)とか、知的財産権の話などは熱心にしゃべるくせに、民法の基本論点に関する質問をすると押し黙ってしまうとか、総評するとどうも基礎的な勉強がおろそかになっている人が多いようです。
 そういうことであれば、元々の質が悪いわけではなく、単に法科大学院での教え方が悪かっただけなので、採用してから鍛え直せばそれなりの戦力になるという考え方も可能なわけです(もっとも、弁護士として採用した人を基礎から鍛え直さなければならないとなると、現役の法曹にとっては大変な負担であり、特に中小の法律事務所では採用自体を躊躇しかねないですが)。

 ただ、ここで見方を変えてみると、厳しい競争を経て入学してきた優秀な層であり、しかも既修者のみの1期生(新60期)でさえこのようなレベルなのに、人気が急落し入学志望者が激減した後の2期以降や、到底まともな法曹教育を受けているとは思われない未修者が受験生の大半を占める新61期以降となれば、一体どこまでレベルが下がるのだろうという、恐ろしい想像が浮かんできます。
 しかも、最近法科大学院に入学した人の話で耳にするのは、法科大学院に入っただけでもう弁護士になった気になって周囲に自慢して回っているとか、勉強は適当に済ませてしょっちゅう飲み会を開いているとか、現状認識まるで無し、「おまえらアホか!」と言いたくなるような人の話ばかり。
 そのように考えてみると、新61期以降の修習生については、新司法試験の合格率が概ね30%台にまで下がることを考慮しても、おそらく新60期以上に出来の悪い人ばかりではないかという想像が容易に働くわけで、そうなると現在人手不足の法律事務所では、多少の出来の悪さには目を瞑ってでも旧60期や新60期を多めに採用して穴を埋めた方がまだましではないかという思いが、最近黒猫の脳裏から離れません。

3 新しい司法制度のもとで優秀な人材が来るのか?
 ヒアリングでは、司法試験委員と法科大学院協会の人との間に、以下のようなやりとりがありました。

(委員)
 2010年に3,000人合格というのを早く達成してほしい、ということであったが、そのように枠を大きくすると一つひとつの試験の成績云々とは別に、新しい司法制度の中において世の中の優秀な人材がどんどん来るという実感はお持ちであるか。

(法科大学院協会)
 逆にいうと、そうしないと多くの人が来ない。

(委員)
 世の中にそういう人材がそれほどいるのかという、むしろそういうことを含めた実感をうかがいたいのであるが。

(法科大学院協会)
 それはいると思われる。チャンスがあれば法曹界に転身したいという人はかなりいる。出願は今でもある。ただ、社会人や他学部者の出願が減る傾向が大きい。それでも何とか、設置基準で期待されている30%くらいを維持することは今のところできているが、これが更に低下したときに維持できるかどうか。(以下略)

 この問答自体、委員は「優秀な人材が来るのか」と聞いているのに、法科大学院協会の方は「志望者はいるが、減ってきている」と答えているだけで、はっきり言って問いに対する答えになっていないと思いますね。
 さすがに、あまり優秀な人材が来ないかもしれないなどと答えたら、それこそ法科大学院の存在意義が危うくなってしまうので、一応「それはいると思われる」と答えてはいますが、法曹界に転身したいという人がいても、そのうち実際に法曹界で活躍できるほどの能力や資質を備えた人がどのくらいいるか、またそういった人が仮にいるとして、法科大学院でそういった人をまともな法曹に育てられるのかという根本的な問いには全く答えられておらず、それどころか「純粋未修者枠30%以上」という法科大学院の設置基準を満たせるかどうかという、ある意味しょうもないことに関心を向けざるを得ない実情が浮き彫りになっているように見受けられます。
 仮に社会人の人が弁護士への転身を目指し未修者コースで法科大学院に入ったとして、3年間法科大学院で釘付けになり、その後新司法試験に合格するまで何年かかるか分からず(あるいは三振するかもしれず)、仮に合格できても二回試験に合格できるかどうか分からない、就職先があるかどうかも分からない、実際に弁護士にまでなれるのは平均で入学者のうちせいぜい10人に1人くらいではないかと思われるような状況では、敢えて入学を志望してくるのはよほど損得抜きで法曹になりたいと考える変わり者か、あるいは余程の馬鹿者か・・・?
 仮に司法試験の合格者枠だけを増やしたどころで、最高裁も多くの一般市民も質の低下を容認するはずがなく、法曹界の人材需要も増えるわけではありません(むしろ、新人の弁護士を雇っても使いものにならないと分かれば、逆に減るかもしれません)。
 黒猫としては、法曹界に優秀な人を集めたいのであれば、従来の一発試験型の方がまだよいのではないかと思いますが。 

46 コメント

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異論のない制度 (Unknown)
2007-02-25 22:46:24
従来の試験(1500人~2000人合格)+修習2年貸与制(修習場所としてローの校舎を活用。2回試験に選抜機能を持たせる。落ちればさらに1年修習。)

これに勝る制度はないです。何の問題もないでしょう。多様な、優秀な人材が確保出来ますよ。少なくともロー制度よりは(笑)。
Unknown (Unknown)
2007-02-26 00:07:08
ロー制度が原始的に不能っぽいのは先生もご存知のことと思います。そこで、現実味のある手段で、ロー制度のもとで法曹の質を保ち得る方策を考えていくべきではないでしょうか?

弁護士会として、2回試験を厳しくすることを要求するなどはできないのでしょうか?
Unknown (ロー生は遊んでなんかいない!)
2007-02-26 00:21:31
ロー生が遊んでいるって何の根拠があって言ってるんでしょうか。ロー生はかなり真剣に勉強していますよ。実績値で言えば、飲み会の数なんて1学期に10回くらいしかしてないですし、バイトだって週3回くらいしかしてません。

彼女がいてもデートなんて1週間に1回くらいしかしてない人が多いですし、クラスメイトの誕生会だって学期に10回くらいなもんですよ。
クリスマスだってオールしないで、終電で帰って翌日は勉強してます。

ロー生はかなり本気ですよ。就職した人と比べてほんと遊んでない。かなりマジですよ。
Unknown (勉強だって)
2007-02-26 00:26:34
クラスが終って、夜7時とか8時まで自分の勉強を1日2時間も3時間もみんなちゃんとやってます。こんなに勉強してる大学院生なんてロー生くらいなもんじゃないでしょうか。

新しい法曹養成時代においては、従来の試験秀才を法曹にするのはやめたんです。社交性があって、初対面の人ともすぐ打ち解けられる人間的魅力を持ち、余暇には趣味をたしなみ、そういう人間こそが法曹にふさわしいという判断があって、試験で法曹をとるのは止めようということになったわけです。

事件は現場で起きています。丸暗記するのでは駄目なんです。もう古い試験秀才の時代は終ったんです。話が面白くて、人生経験豊富で、そういう人材になるには勉強はむしろ有害ですらあるわけです。その辺のことをロー生はよくわかってると思いますよ。
Unknown (dedeko)
2007-02-26 01:04:50
 ローの入学定員をここまで多くした文部科学省は無責任。
 それから、確かに今の状況だと、先の読める賢さがあり「何か」を持っている社会人は、純粋未修としてローにはこないでしょう。
 今日も1日部屋に籠って、五月に向けた試験対策をしていました。試験に合格しないと社交性も何も発揮しようがありません。択一がある以上条文を「暗記」しまくっています。「試験秀才」になって第2回新司法試験に合格しないと、新しい法曹養成時代の法曹になれないから・・・
ロー生は意外とまじめ (Unknown)
2007-02-26 02:15:37
>ロー生が遊んでいるって何の根拠があって言ってるんでしょうか。

根拠などないと思いますよ。
実態をあまりご存じないようなので。
(新試験は時間が長くなって余裕があるとおっしゃる御仁ですし)

標準的なロー生は,
授業は,役に立つ物は聞いて,試験と無関係なものは内職。
そういうのを含め,直前期には1日15時間はやってましたけどね。旧試験とかわりませんよ。
むしろやるべき範囲は増大してるから,それでも勉強量は足りませんでした。
ローの授業は邪魔です。要りません。無駄です。
>>ロー生は遊んでなんかいない (Unknown)
2007-02-26 04:44:58
つってるんだよね?

それが遊んでるっていうんです(笑)
Unknown (あきれてます)
2007-02-26 05:25:47
プレテストや一連の模試・新試の結果・法律実務の先生方の評価、どれをとっても『ローの教育内容の酷さは凄い』の一言に尽きる。
あれだけ法律実務の先生方から「ロー卒はいらない」
といわれるような教育実績しか残してなくて、よくもまあ3000人前倒ししろなんていえるものですな。
Unknown (人生幸朗)
2007-02-26 09:37:32
法曹養成は「一発試験(点の選別)からプロセスとしての要請」への謳い文句がこの体たらくなのかい?「責任者出てこい!!」
Unknown (Unknown)
2007-02-26 09:39:09
上から四番目。たった2~3時間しか勉強してないで偉そうな口たたくなよ。いくら社交性があって話が面白い御仁であっても法律の学力が劣るんじゃしょうがないだろ。馬鹿丸出しもいい加減にしろ。