tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

lose 11

2017-01-18 12:05:12 | lose
点滴を外すカナタに気づき、目覚めたソウが苦笑いをしていた。
「無事で良かったよな(笑) 起きたら食べれる準備はしてあるからな」
カナタはそう言いながらソウに微笑んだ・・・まだラナは隣で眠っている。

既に体勢を替えたラナは今度は自分の方を向いていた・・・そっと腕枕をして近寄り抱き締めた。
「彼女が疲れるんだぞ・・・(笑)楽に寝かせてやれ」
「 ・・・・兄貴・・・あれはラナに・・・」
「(笑)それでも、ラナはお前と居る・・・ソウを見てる事は忘れるな」

「自信もなくて・・・
持ってかれそうで・・・ヤバい・・・」
「寝ろ(笑)。暫く誰も来ない・・・邪魔しないから頭から全部を休ませるんだ・・・ラナも・・・ソウも・・・」
いいなというカナタに静かに頷くソウは、彼女に寄り添って眠りについた。


「ソウ?」
「 ・・・なんだ?」
「食べに行くから離して・・・」
「(笑)確かに腹は減ったな・・・」
互いに笑むと二人は食事をしようと寝室を出た・・・

少しずつ食べながら会話を楽しむ・・・ゆっくりと食べ互いを話した。
音楽や旅行の話と、ジャンルは広くなり楽しい時間は過ぎた。


身綺麗にして体を温めたからか、睡魔が襲う・・・互いに声をかけて起きろと笑う・・・
ようやくベッドに入り込めた・・・彼女をみやると眠りに入ったようだった・・・・引き入れて隣へ寄せる。

寝心地のよさを無意識に求め始めた彼女・・・スッと自分へ寄り添っていた。
自分の顔の下へ入り込み顔は胸へ添う・・・気づけばソコから深い眠りへ入り込む・・・

彼女は体を横にして眠る・・・
下になった手は反対の肩へもたれ・・・上になった手は自分の身へのせる。

余計に疲れそうでソウは、わざとに腕枕をした・・・角度がかわるから疲れないだろうと思えた。

ふと彼女の手が自分の前に並ぶ・・・重ねた彼女の手は自分の胸に触れた。
「悩み事を今は手放して・・・もっと寝れなくなる・・・」
彼女は何を悩んでいるのか 知っているのかと眺めた。

「寝れてないでしょ・・・」
その手がソウの肌へ触れたままで、優しく上がり首筋から項へと撫でられていった。
彼女の手は温かで、巡った場所は温まり道をつくったように思えた。

少し引いた彼女・・・視線は重なり互いを見つめた。
「貴方は強い(笑)、私のココに残した人を押し出したほどに・・・
私の想いを選んでくれた(笑)、必要な想い・・・いらない想い・・・私の想い(笑)、そして貴方の想い・・・」

ラナは自分の胸へ手をあてて優しく声にした。今度は、そっと彼の胸に触れ笑み返した。

「ソウは私の想いをココへ持っていった。私の中に貴方の想いを置いて」
「俺の想い・・・」
「(笑)最初に私にくれた想い・・・その後の誓い・・・触れた記憶の想い(笑)
貴方が取り戻した私の想い・・・」
「 ・・・」

「(笑)溢れる程の想いがあるから・・・隙間は出来ないの・・・・ソウがずっと 私に くれるから・・・
貴方のココに何で隙間が出来るの?溢れる程の想いを捨ててるの? いつかの準備をする為に?
ずっと流し込んでるのに・・・なら・・・私は、どうすればいい?」

どんな意味だと考えた・・・話の流れから考える・・・
ふと気付けばラナは眠っていた・・・

-誓い・・・・-

その言葉だけの記憶を思い出した・・・ラナは気持ちを手放せず切り離す事もしなかった。
後を追う事に駄目だという言葉を理解していなかった気がする・・・

だから生かした自分の為に生きろと言った・・・事を起こせずに迷う自分が嫌だった・・・背を押せと彼女に助けを願った。

知らない誰かに押されたら出来そうな気がしたのだ・・・出たら引く事は不可能だろうから。

-手離してやる・・・-
-その後は?・・・-
- 自由だ! -

自分で彼女に言った・・・自由にと・・・放すと・・・

少しずつ、自分の気持ちは気づいた・・・彼女を愛していると・・・
その想いが繋がった時・・・切り替えたはずだと思えた。
生きる先は重なったはずだった。

揺らいだ・・・
利用してた自分はラナを愛した事で先を変えた。
だから互いの先を重ねる事を選んだ自分がいたはずだった。

揺るがずに自分の中を安定するように支えていたラナだと知っている、だから一緒に生きてる。

自分は・・・・
彼女を愛しているだけだ・・・受けているだけだ・・・
それだけしか考えられないソウだった。

ラナが狙われていく不安・・・それから囚われそうな自分・・・少しずつ自分の足へ鎖が食い込むような気がした。
それが彼女へ伸びる怖さ・・・それを思う度に鎖の重さは増した。

ダイチなら・・・?・・・

ふと気づく・・・微かに震え泣く彼女がいた・・・
無意識に声に出ていた事に気づかないソウだった事に気づく彼女・・・
手放す・・・そう言ったソウの声は彼女の中で繰り返されていた。

ソウから離れる準備を始めようと、その時・・・彼女の中で芽生えた・・・


「抱いて・・・」
暫く静かにしていた彼女だった・・・自分の戸惑いがバレないように・・・見守るように抱き締めていた。

彼女の囁き・・・優しく包まれていくような柔らかな声音だった。

上手く笑えたか不安なソウだったが、そっと笑み・・・彼女へ唇を寄せた・・・




少しずつ、ラナは部屋で練習だと作り始めた・・・仕上がれば味見をし、残りは来ていたリョウジやシュウに持ち帰って貰った。

変わらず様子見に来るカナタにまで持たせたラナだった。
近場で店を探してきたシュウ・・・試しの持ち込みはリョウジがした。

いつしか正規で働くラナに、回りは驚くが出られた事に笑み優しく見守った。

ラナは店を変えていく・・・腕の良さが好してオーナーに留められるが、伸ばしたいと次への紹介状を頼む事もあった。

手伝いだと職場の同僚と派遣される・・・二種を任され仕上がりに感心された。

新たなアレンジさえ楽しくて、日々の充実さは疲れさえ吹き飛ばした。

触れるソウの手にも目覚めないラナに驚いた・・・疲れた体を労るように抱き寄せる・・・
レンヤは彼女につかせたシュウとリョウジに、日々の彼女の様子を聞いていた。

「(笑)本来のラナさんですよね・・・」
「凄いっすよ(笑)、呼び出されて同僚の方と何処に行かされるのかと思ってたらホテルで・・・(笑)テストとか言われて食後のデザートを作らされてましたよー」

凄いと誉める二人・・・それでもシュウは戸惑うような顔つきになった。
なんだとレンヤは眺めた。
ちょうど来たカナタも気づき一緒に耳を傾けた。

「兄貴と・・・何かあったんですかね・・・
ちゃんと楽しく話もしてるし、兄貴が絡んでも同じラナさんでしたけど・・・
微妙に何か違う気もするんです・・・」

「仕事を始めた事で、ラナの意識が変わったからじゃなくて?」
「んー」
唸りながら上手く表現出来ないシュウが、悩むように考えていた。

「自立・・・というか、兄貴を置いて行くみたいな・・・不安になるような・・・

すみません、良い方の違和感じゃないのが自分でも嫌なんですけど・・・

分かったと二人を戻らせたレンヤ達・・・暫く考えこんだ。

「ダイチさんが絡むか?」
「・・・・レンヤ・・・ソウは無意識に呟くよな・・・考え事さえ・・・」
カナタが呟く言葉に、口を引いて苦笑いをした。

ダイチが近づいた事で、不安感が増した事は知っていた二人だった。
当然、言葉にする二人だったはずで・・・問い掛けて考える二人でもあった。

「最初の誓い・・・あの話は聞いた事はあったか?」
「ない・・・彼女に関しては声にさえしない・・・」
「全部が(笑)態度に出てたからな・・・」

「生かす為の誓いで、それまでは生きろという想像は出来るよな・・・
好きだという自覚は、まだ持ってはいなかったし・・・」
「ラナが言った・・・生かす為に生きる事の我慢は出来そうだと・・・
いつか解放されるまでに耐えるという言葉は消えてると笑っていた。
最初の頃の話だ・・・死んだ彼氏に謝った話をしてたからな・・・

ダイチさんが現れた・・・ソウなら?」

「自分より守れるなら・・・・」
「嫌でも、そう呟きそうだよな・・・手放すかと考えそうだ・・・」
「 ・・・・・それを呟いた? ラナが聞いて理解したのか?
なら、自分で生きていく事にしたラナが仕事を始めたって事か? どうなるか知ってるのに?」

「ソウの為とラナは考えたんだろうな・・・寄りすぎたらソウは自分で立てなくなると・・・
身の置場所を自分で作れないと彼女は気づいてる・・・
だけどラナ自身が生きてないと、ソウの危うさは消えない・・・」

「ラナには辛い選択だよな・・・」
「昔のラナなら生き地獄だ・・・
近い内にソウと話す・・・終わったら連絡するから、それからは絶対に一人にするなよ・・・」
「 ・・・・」
「どう出るか分からない・・・」

昔に戻るのかと思えた・・・・ラナがいて自分を立たせていた・・・自分の自信が増して居場所を作り動かせた。
居なくなれば・・・多少戻れてもソウ自身を終わらせないとも思える気もする。

何ともいえない状態に、レンヤは身動きも出来なくなりそうで怖くなった。




リビングで外を眺めながら考え事をしているラナがいた。
「何してる?」
「(笑)イベント用のを考えてる・・・」
「材料とか?」
「ん(笑)。今の季節の果物を使うなら・・・とか(笑)」
「すげー数だもんな(笑)」

「(笑)そうね・・・貴方は仕事?」
「あー違う(笑)、カナタに呼び出された・・・」
「お昼どうする?」
「どんな話か知らねーから(笑)俺のは大丈夫だ・・・・」
「そ?(笑)家で食べるなら連絡くれる? 家に居ないかもしれないから」

「出掛けんのか?」
「(笑)同僚と相談・・・オーナーにも報告しないと駄目だから・・・」
「そっか・・・・・分かった・・・」
「(笑)行ってらっしゃい」
「 ・・・おう(笑)」

ソウの返事に笑み、ノートへ視線を戻した彼女は何かを書き始めた。
ふと背から抱き締めたソウ・・・笑う彼女は体を返して抱き返した・・・

「何の不安か知らないけど(笑)、ソウなら大丈夫よ・・・
カナタ先生と会うんだから話して来ちゃえば?」
「 ・・・愛してる」
「(笑) ・・・・・私も愛してるわ」

「今、何で悩んだ?」
「(笑)そうじゃなくて、今の貴方の言葉を自分にしまっただけよ・・・
(笑)私のは中にしまってくれた?」

頷く彼に笑み、ラナはそっと押し出した。
笑み返した彼は、迎えに来たレンヤと静かに家を出たのだった。

lose 10

2017-01-18 08:19:42 | lose
あーあと笑うダイチが、静かに部屋へ入った・・・兄に続き興味津々でオミも入る・・・うるさいと嫌な顔をしたオミは、カズマを押し戻してドアを閉めてしまった。
兄は辺りを眺め、静かに見いっていた・・・・

クローゼットらしい場所から、誰かの足だけが見えていた。
激しい物音・・・それが気になりオミはベッドに座り我慢するように耳を抑えた。


ダイチは緊張して足が前に出なかった・・・これだけの物音が響き始めたのに身動きもしないのだ。
静かに息をはき近寄った・・・・

よく見れば、クローゼットの床へ押し込まれた布団があり ソコで彼女は寝ていたのだ。
微かに動く体に、生きているとホッとした・・・

「お前がラナか?」
声をかけても起きない事に、何故だと訝しげ体を揺すった・・・
途端に飛び起きてクローゼットへ張り付くように見返した彼女に驚いた・・・そっと足を引き少しずつ中へと逃げようとしていた。

「ソウの兄・・・(笑)ダイチという・・・初めまして・・・・」
その穏やかな声音に彼女は動きを止めた・・・潤ませても泣かない彼女に驚いた。

「ソウじゃなくて悪い(笑)、少し仲間外れにして俺と弟で君を迎えに来たんだ・・・一緒に出て帰ろう(笑)」
「 ・・・・信じてもいいですか?」
外の激しさに耳を抑え震えながら聞いてきた彼女に優しく微笑んだ・・・

「ついでにカズマとスミレに(笑)お仕置きしにも来てる・・・」
「彼・・・ソウは無事ですか?」
「 ・・・・」
「本当に私がココを出ても、大丈夫ですか?」
そばにある布団を握り締め我慢しているように声を出している事を知った。

彼女が急に驚き自分の後ろを眺めた事に気づいた・・・何だと振り返るとオミが覗きながら笑っていたのだ。

「(笑)弟だよ、一緒に助けに来てたんだ」
「(笑)ほんとに綺麗だねぇ、ソウ君が心配してるだろうし・・・俺は待ちきれないしぃ・・・兄ーさーん」
頼むよと、始めたいと疼きを我慢してると訴えていた。

「分かった(笑)彼女に見せたくないから、さっさと仕置きしてこい」
「(笑)やった!」
直ぐに離れたオミから今度はダイチを見ていたラナに微笑んだ。

「こんな兄弟が居て、怖かったよな・・・・ごめんな・・・」
耳を震えた手で抑え我慢した顔の彼女に呟く・・・

バチっと激しく音がし始めた・・・
身が跳ねるほどの怯えた彼女が体を小さくし・・・そっと抱き込んで耳を塞いでくれた人にも彼女は驚いた。
大丈夫という声は優しく静かに耳元で呟いていた・・・


「上の兄貴がソウを交ぜなかった事で、動けなくなってな(笑)
レンヤとカナタが眠らせたそうだ・・・」
だから来てないと教えてくれたダイチに、彼は大丈夫な場所にいるとホッとした彼女だった。

「無事で良かった・・・」
小さな彼女の囁きに驚いた・・・・何を吹き込まれて脅したのか気になったダイチは彼女を見つめ聞いた。

「 ・・・・彼の仲間ごと潰す計画に協力するって・・・一人ずつ・・・連れ出して殺して・・・・それを見せてから刻んで飾るって・・・
人の数は彼らより多くて強いから簡単だと言ってました・・・
ここにも居たし・・・少し・・・」

「狂ってる?」
そうだと頷く彼女を優しく抱いて背を撫でた。
「下の人達まで同じだから・・・そんな人達が多く集まったら・・・・
目の前で殺されたら・・・彼が壊れてしまう・・・
だから、私が出ないなら・・・」

「カズマが言った? 逃げないなら行かないし協力もしない?
壊れずにすむし、誰かが死ぬ事もないと?」
そうだとまた頷く彼女だった。

「あ・・・リョウジ君・・・あの、一緒にいた子は大丈夫でしたか?
救急車の音はしてたけど、無事に運ばれて・・・行ってますよね?病院・・・・」
「(笑)意識は戻ったと聞いた、大丈夫だった・・・」
「良かった(笑) ・・・・皆無事で・・・
寝かされたなら大丈夫ですね・・・カナタ先生が居たなら・・・」

「(笑)ソウの回りなら全員大丈夫だった」
言い切ったダイチの笑みにホッとしたのか、ゆっくりと力が抜けていく事に気づいた・・・

「ん?ラナ?」
「すみません、力が・・・水・・・ありませんか・・・」
「ん?飲んでない?」
「(笑)寝てないので、睡眠薬入りと持ってくるので吐き気がすると騙して口にしませんでした・・・

ボトルで持っても来てますが・・・開けてあるので怖くて・・・寝た隙に・・・来そうで・・・
あの子も・・・玩具とナイフ・・・をもって夜中に・・・遊びに来るので・・・
すみません・・・歩けます・・・離して・・・も・・・・」

「キスするぞ(笑)だから少し起きてろ」
「 ・・・・まだ・・・危険な・・・中に・・・」
「(笑)んー・・・・」
「助けて頂き・・・感謝します・・・・信じて・・・預け・・・ますけど・・・」

本当に疲れたのだろう・・・既に自分を保つ力さえないのに意識だけで会話をしていると感じた。
それでも自分を守る先手を言った彼女に苦笑いをした。

運び出している音に笑うダイチ・・・・
力尽きたように・・・気を失ったように抜けていく彼女の体を支えた・・・そんな彼女に苦笑いをした。
身を安心して任せる彼女を眺め、笑むと優しく口付けた・・・

自分の行動に苦笑いをした・・・そっと抱き上げたダイチ・・・あまりの軽さに驚いた・・・垂れた頭を自分へ倒し自分へ寄せた・・・


「(笑)帰ろ!」
「ん(笑)、オミ・・・彼女の手を戻せ」
だらけた彼女の手が気になった・・・笑うオミは、恐る恐る彼女の手に触れて優しく彼女の体にのせた。
そっと、その彼女の掌を撫でる仕草に笑むダイチ・・・

「大事だろ(笑)」
「(笑)そうだな・・・」
「そうだ!」
オミが思い出したように呟き、ソッと彼女の手足へ優しく触れて確認しているように見えた。

「触るな・・・」
「だって、傷一つなくって言われたから・・・大丈夫だったか見ないと・・・怒られるよぉ・・・」
しまいには服を捲ろうとしたオミ・・・抱いた彼女を離す・・・

「自分で守って飲み食いしないで頑張ってたんだぞ(笑)ソウが可哀想だから触んなよ・・・」
「そっか(笑)じゃこれで我慢しよ」
そう言った途端に彼女の頬へキスをした事に驚いた。

「頑張ったご褒美(笑)、兄さんもしてあげてね・・・」
笑って言ったオミ・・・・苦笑いで返すと、しないのかと笑い下へ行ってしまった。

そっと抱き込んだ彼女を眺め・・・より自分へと包んだ・・・頬で彼女に触れたダイチもいた・・・。

「駄目ですよ(笑)、早く連れて行きましょう・・・
今なら交代したいですが(笑)その方はソウさんの大事な方と忘れずに」
ヤバいとダイチを眺め釘を指す・・・

「どんぴしゃなんだよな・・・中はすげー強い(笑)ソウはくれねーかな」

「無理でしょ(笑)生かしてますから」
直ぐに言って眺めた・・・今までにない扱い・・・見た事もないダイチの優しい目に、密かに思い悩む彼もいた。

「勿体ねー(笑)」
「それでも(笑)出た瞬間に切り離しを・・・」
フゥと吐く・・・同じようなため息をしながら背を向け彼は前を歩いた・・・

懲りずに口付ける・・・絡ませようとした時に、触れていた顔に手が伸びた・・・
バレたと笑うダイチに笑み彼女の手は優しく頬へ触れ、そっと彼の唇を塞いだ。

するなという笑み・・・ごめんという微かな囁きに彼女は笑み返し目を閉じた・・・

違和感だろう振り返った彼と目があった・・・
「起きたから寝てろと言っただけだ(笑)」
「そういう事にしときます・・・」
笑うダイチに笑みリビングへ下りた・・・あとは任せ素通りするとドアを開けて待つオミがいた。

「残んねーのか?」
「(笑)戻れって、ムカついてババァにしたら怒られた・・・」
残念そうに入るオミに呆れ、ダイチもまた乗り込むと車は走り出した。


そっと頬を撫でるオミの笑み・・・見た事もない笑みにダイチが驚いていた。
「死にたい人を止める大事な人だって(笑)、それって凄い事なんだって・・・・だから凄く大事で(笑)大切にしなきゃなって言ってた・・・」
それは優しく触れる手・・・そっと髪を撫でる・・・

「オミも守れたな(笑)」
「以外と守りの方が大変だね(笑)頭を使うから・・・
兄さん(笑)この人にキスしていい?」
「さっきしてたろ(笑)もう駄目だ」
「えー」

二人の会話を止める助手席の男が睨むように振り向いた。
「いっさい!唇で触れる事は禁止です、カイさんへ報告しますよ!」
「ひぇっ!」

オミが顔を引きつらせ男を眺め、ダイチへ顔を隠した。
分かったのかと睨む顔に苦笑いをして頷くダイチ・・・それでも目は離さない事に笑うしかなかったが・・・

「しないし、させねーよ(笑)ちゃんと返す」
言い切った事で諦めて彼は前を向く・・・それは自分へも言い聞かせたのだと・・・思えたはずだった。

腕の中にいる彼女を見つめ、隣で眠るオミの寝息が聞こえるとダイチは 力のない彼女の手を優しく包んだ。


「病院か?」
「違います(笑)ソウさんの所へ直接お連れします。向こうには医師も待機してますし・・・」
そう言って眺めた人に笑うダイチだった・・・・それは繋いだ手に視線が伸びたからだった。

彼の苦笑いに、静かに笑むだけのダイチ・・・少し黙れと彼女の指先を撫でた。



ソウのマンションへ入った・・・まだ眠るソウの隣へ寝かせるダイチだった。
「ソウはまだ薬で?」
「はい・・・そろそろ目覚めますが(笑)」
そう言いながら彼女へ点滴を始めるカナタを眺めた。

「長い付き合いだそうだな・・・」
「(笑)ですね、それなりに楽しんでも居ますよ」
「この先も頼む・・・」
「はい(笑)、ですが先は医師ではなく親友として付き合います・・・」
頼んだと笑うダイチに笑み返した・・・

「二人は、付き合って長かったか?」
「やく2年ですかね(笑)」
「(笑)代わり始めたのもだな・・・」
「はい(笑)半分以上・・・彼女の言葉で助けられました・・・
遥かに強い(笑)女性特有でもなく」
「元来の強さか(笑)」
そうだと笑うカナタだった。


「あ・・・・」
良かったと呟くソウの目覚めは、目の前にいたラナだけを見つめ・・・彼女を抱き込んだ・・・

「ん?点滴?」
「激しい疲れで、やっと安心して寝てるから離してやれ」
「ホッとけ・・・早く出てけよな」
彼女を見つめたままで話していたのだ・・・
「 ・・・・」
抱き込んで背を向けていたソウ・・・


「ソウ?」
「そうだ(笑)無事で良かった・・・」
「ん・・・・離れて・・・重いから」
「嫌だ・・・離すな」
「しないから今だけ離れて!足もよ。静かーに寝たいの。
物凄く爆睡したいの・・・」

「寝かせて」
「くれなくても寝れる。
助けてくれた・・・ソウのお兄さんと・・・弟・・さん?」
「ん?何かした?」

「ソウじゃあるまいし(笑)・・・お礼したいから何がいいか、代わりに聞いてくれない?」
「 ・・・・いら」
関わりたくないと彼は言った。

「私がしたいの」
「ラナって言われたら?」
「 ・・・言わないわよ」

「今(笑)迷ったろ」
「何がいいか考えただけ。(笑)教えてくれそうになかったし」
「いーや、絶対に考えた(笑)
兄貴・・・・どんな顔してた? 助けに行く弟はオミだと思うが・・・カイ兄貴が行くかな・・・」

「んー弟さんが兄さんって呼んで・・・
あ・・・・ダイチさんって言う人だった・・・」
「えっ・・・・」
「ん?」

振り返ろうとして点滴に気づき、諦めて彼女は体を横にした。
改めて背へ添うように腕を回し直したソウ・・・気配を殺して眺めていた二人は驚いていた。


「(笑)今度は何を考えてるの?」
「キス・・・された?」
「何でそう思うの?」
「そういう兄貴だから・・・(笑)会いたいって言ってたし・・・」
「(笑)取られずにココに居ますけど?」

「んー・・・」
「フレンドリーなダイチさんね(笑)、慕える兄貴がいたのね・・・」
「 ・・・」
「そういえば・・・」
「さ、された?」

「ソウじゃあるまいし(笑)、オミさん・・・弟さんも可愛い声ね・・・お兄さん大好きって声で話してた気がする・・・・」
「 ・・・」

「貴方は(笑)すっごい やきもちね・・・ストーカーしてもいいから、寝かせてくれる?」
「する?」
「しない、本当に眠いの・・・ずっと寝ないように読んでたから」
「何をだ?」

「 ・・・・部屋のクローゼット・・・その扉の裏に・・・誰かが書き残した痕があったの。
子供を残して来た人・・・恋人に裏切られた人・・・親の身代わりの人・・・本当に沢山の人が同じ部屋に居たと知ったわ・・・

頑張る・・・頑張れ・・・自分を励まして、誰かを励まして祈って・・・・諦めた事まで書き込んであった。

その中にいる人達を考えてたら、ソウはどうなったか心配になったわ。
リョウジ君は怪我したし・・・諦めて無理やり薬を飲んで寝てないか気になった。

居なくなったから・・・寝れてないソウが気になった、食べてないんだろうな・・・とかね」

「子供じゃねーぞ(笑)」
「(笑)だね、だけど食べて元気でいてくれないと助けて貰えないじゃない・・・寝てくれないと動けないでしょ?」
「心配だからだろ・・・」
「分かるけど、生きるには必要な事よ・・・飲まれたら置いてかれるじゃない」
回した手が強くなった・・・

「お腹(笑)絞めすぎ・・・逃げないから緩めて・・・」
チッと舌打ちした彼の手を叩いた。
スッと緩めた手に触れ指先を絡めた。

「正直に言うけど、信じてくれる?」
「ん?」
焦る顔で覗いたソウに笑み、戻れと顔を押した・・・

「本当にキスされてたかは・・・覚えてない(笑)だけどソウの所へ戻してくれるなら構わないと思ったかな・・・
体に触れてたら殴っただろうけどねー(笑)」
「(笑)そんな力はないだろ」
「んー(笑)ない・・・食べてないから力も入らなかったし」
「飲まず食わず?」

「だから点滴よ・・・・食べる気もわかないわ・・・

寝かせたくて(笑)丁寧に言うの。
ぐっすり寝れるように睡眠薬を入れましたが味は変わらず美味しいですよ(笑)って。

食べたらお風呂は入れて差し上げますね(笑)ちゃんと抱いてあげますよ・・・・そう言ったわ」

「きもっ!」
「 ・・・・・じゃなくて怖かったけど?
(笑)だから飲み物まで怪しくて手は出せなかった。
口にしたように見せかけて全部窓から捨てて返してたわ」

「よく我慢したな・・・」
「ん?食べて欲しかった?」
「それじゃなくてカズマの方だ・・・」
「 ・・・・善悪の知らない小さな幼い子供だと思った。
回りから教えられた言葉の使い方で生かされてる被害者に見えたわ。

怒鳴れば止めるし怯えるわ・・・怒るなと拗ねるし・・・反省は言葉だけで気にもしないの・・・言わされてた気もする。
そう言えって・・・・だから教えられた言葉を繰り返すの・・・そう言われたからって。
人としての扱いもされてない気がしたわ・・・愛されてない子供のような・・・」

「 ・・・・」
「(笑)愛してるから貴方は人になっててよね・・・普通に」
「その普通はなんだ・・・」

「(笑)素直・・・・楽しむ所は笑う・・・声にしてね・・・。
悲しいとか辛いなら泣く(笑)それも声にする・・・大人だから言葉に返ればいい。
居場所を気にして思いだけで動かない(笑)貴方は特に」

「ん?」
「人前で恥ずかしいと思えって意味も入るわね」
「それが普通?」
「(笑)取り合えず今は・・・」
「もう一回言え(笑)聞きたいから」
「(笑)人前で言わすな?」
「ん? さっき言ったか?」

「ソウ・・・」
「なんだ・・・・」
「その手を止めて後ろを見て」
「ん? あ・・・」
彼女の服から手を出して起き振り向く・・・・床に座っていた二人は、可笑しくて笑いを耐えていた事に驚いた・・・

「悪趣味だぞ・・・構うな・・・」
「あー悪い(笑)出ようとしたら話始めたから出れずだった」
「 ・・・・」
静かになったソウを二人で眺めた・・・

「ありがとうございました・・・・別に、恩は俺が考えた中で返します」
「ん?」
「(笑)ラナはやらねーし、見て触れたんだから十分だろ・・・・それでチャラだが我慢して別にする」
「キス一つでチャラだぞ?」

「それは俺だけのだから無理だ。何か考えるから待ってくれ・・・」
「じゃ顔を触る(笑)ほっぺ」
「俺んだ!ぜってー触んな!」
「んー考えるぞ(笑)、オミは触って良くて何で俺は駄目?」
「ん?オミも触ったのか?」
項垂れたように肩を落とすソウだった。

仕方ないと立ち上がったダイチ・・・何だと見上げるとソウの頭にキスをした・・・
うわっと驚いたソウに笑うダイチ・・・
「弟よ(笑)大好きだぞ、幸せな時間を作れるといいな」
じゃーなと笑うダイチは、素早く寝ている彼女の髪へキスをして部屋から出ていった。

叫ぶ間もなく・・・止める間もない出来事は身を固めただけのソウだった。
静かに出ていくカナタまで笑って出ていった。