大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2017年01月02日 | 植物

<1830> 大和の花 (114) オオミネテンナンショウ (大峰天南星)   サトイモ科 テンナンショウ属

                               

 静岡、山梨、近畿地方南部の大台、大峰山系等に分布を限る深山の林縁や草地に見られる日本固有の多年草で、本州の東北南部から中部地方に分布するユモトマムシグサが母種と言われる。高さは大きいものでも50センチから60センチほどである。葉は2個で、倒卵形乃至は楕円形で粗い鋸歯がある小葉は5個から7個が掌状につくのが基本形。偽茎と葉柄がほぼ同長であるのはヒロハテンナンショウに似る。

 雌雄異株で、花期は5月から6月ごろ。花より葉の展開の方が遅く、そのような個体の姿が見られる。仏炎苞は紫褐色から淡紫褐色で、白い条が入り、舷部は短く、先端部が下向きに筒部の開口部を塞ぐ形になるので、正面から見ると開口部が隠れ気味になる。肉穂花序の付属体は紫褐色の棒状で、全体にこじんまりとした姿をしている。

  大和(奈良県)の大峰(大峯)がその名のもとであろう。大和(奈良県)では紀伊山地に当たる大台ヶ原や大峰山脈の深山(標高1000メートル以上)の草地で見受けられるが、自生地が限られ、減少していることから奈良県では絶滅危惧種にあげられている。 写真は左から深山の草地に見えるオオミネテンナンショウ(大台ヶ原山の標高1600メートル付近)、仏炎苞に続き葉の展開が始まったオオミネテンナンショウ(弥山登山道の標高1650メートル付近)。  咲き出づる我が邂逅の縁なる大峰天南星の花かも

<1831> 大和の花 (115) ホロテンナンショウ (幌天南星)              サトイモ科 テンナンショウ属

               

  深山の林内に生える高さが40センチ前後の多年草で、テンナンショウ属の中では小形である。地中の球茎から地上に立ち上がる偽茎は葉柄とほぼ同長で、花茎は極めて短く、仏炎苞は葉より下に開く。葉は普通1個で、披針形乃至は長楕円形の小葉が鳥趾状に7個から10数個つく。

  花期は4月から5月ごろ。雌雄異株で、仏炎苞は筒部が淡緑色、舷部が濃紫褐色に太い白条が4、5本入り、印象的。舷部の先端は尾状に伸び、アーチ形に曲がる。この舷部と筒部の口辺部が内側に湾曲し幌(母衣)状になるのでこの名がある。肉穂花序の付属体は緑白色の細い棒状であるが見え難い。実は赤塾する。

  分布は紀伊半島(三重県と奈良県)に限られる日本の固有種で、最近の情報では和歌山県にも分布するようであるが、自生地が極めて少なく、大和(奈良県)では絶滅寸前種にあげられている。私は上北山村の大普賢岳登山道、天川村の山上ヶ岳、十津川の源流の一つである弥山川の白川八丁付近の渓谷沿いの三箇所で出会ったことがある。 写真は葉が一個の特徴を持つホロテンナンショウ。仏炎苞の舷部や口辺部が内側に湾曲している(左)とホロテンナンショウの舷部の上側。くっきりとした縞模様がある(右)。

  春の山出会ふ花にも春の色

 

<1832> 大和の花 (116) ユキモチソウ (雪餅草)                       サトイモ科 テンナンショウ属

                   

  山地の林床や林縁などの少し湿気のあるところに生えるテンナンショウ属の多年草で、仏炎苞の開口部から覗く肉穂花序の付属体の先端部が丸く、白い餅のように見えるのでこの名がある。本州の紀伊半島と兵庫県、四国に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では自生するものが極めて少なく、レッドリストの絶滅寸前種にあげられている。

  高さは60センチほど。地中の扁球茎から普通2個の葉が出る。小葉は狹卵形から長楕円形で先端が尖り、2個から5個が鳥趾状につく。雌雄異株で、花期は4月から5月。仏炎苞は表面が紫褐色で、内部は純白、舷部は真っ直ぐ立ち、太い棍棒状の肉穂花序の付属体が露わに見え、先端は前述の通り、白い餅のようで、軟らかく印象的。ユキモチソウ(雪餅草)の仏炎苞は葉よりも上に突き出てつくのでよく目につく。

  この一風変わった仏炎苞の美しい姿によって採取され、野生の減少が著しいと言われる。園芸種は広く行き渡り、道の駅などで鉢植えにしたものが売られたりしている。これは観賞によいが、全体に有毒で、殊に地中の扁球茎は猛毒を含むので要注意とされている。  写真は低木林の下草の中に生えるユキモチソウ(桜井市東部)と白い餅のような付属体が印象的な仏炎苞のアップ(御杖村)。

    穏やかに三が日過ぎさて今年  

 

<1833> 大和の花 (117) ウラシマソウ (浦島草)          サトイモ科 テンナンショウ属

                 

  山野の木陰や湿った草地に生えるテンナンショウ属の多年草で、仏炎苞に包まれた肉穂花序の付属体が長く釣り糸状になって外に伸び出す。この姿に釣り糸を垂れる浦島太郎を連想しこの名が生まれたという。地中の球茎は多数の子球をつくり、繁殖するので、群生することが多い。

  葉は普通一個が根生し、葉柄は暗紫色に紫褐色の斑点がある円柱形で太く、茎のように見える。小葉は狭卵形乃至は長楕円形で、10数個が鳥趾状につく。雌雄異株で、花期は3月から5月ごろであるが、俳句の季語は夏。葉柄は50センチほどと長く、仏炎苞は小葉の下側につくので、破れ傘を差したように見える。仏炎苞は普通紫褐色に白く細い条が入る。有毒植物なので要注意。

  舷部は広卵形で、先端が尾状に伸び、花の経過とともに垂下する。筒部の口辺部はやや開出し、紫褐色の付属体は前述の通り釣り糸状に長く外に伸び出し、立ち上がって先端は垂れる。長いものでは60センチにも及ぶ個体もある。この釣り糸のように伸びる付属体は如何なる理由によるのだろうか。定かではないが、花粉を運んでくれる虫を仏炎苞の中に咲く花へ誘う工夫ではないかと想像される。

 北海道南端部から本州、四国、九州北部に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では珍しくない。 写真は仏炎苞の付属体が長く伸び出したウラシマソウ(奈良市と明日香村)。子球の繁殖によって群生することが多い。  寒の入り温かきもの欲しくなる

 

 

 

 

 


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