大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年09月30日 | 植物

<3182> 大和の花 (1118) ホソバヒメミソハギ (細葉姫禊萩)      ミソハギ科 ヒメミソハギ属

                 

 熱帯アメリカ原産の1年草で、世界の熱帯から温帯にかけて広く帰化し、日本には昭和27年(1952年)に見つけられ、今では関東地方以西で野生化。水田や休耕田、池沼の湿地などに生え出し、群生することもある。大和(奈良県)でも池の縁などでときおり見かける。

 4稜の茎は直立して枝を分け、高さ10センチから80センチほどになる。葉は長さが3センチから8センチの披針形で、先が尖り、基部は耳状に張り出し、やや光沢があって、十字対生につく。花期は8月から10月ごろで、紅紫色の小さな4弁花を葉腋に2個から4個束生する。実は蒴果で、熟すと不規則に割ける。全草無毛で、水田雑草として注視されている。

   写真は池の端の水辺に生え出し、花を咲かせるホソバヒメミソハギ(左)と花のアップ(右)。 秋はまづ空に来たれり雲に見ゆ


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年09月29日 | 写詩・写歌・写俳

<3181>  余聞 余話 「ドングリの季節に寄せて」

    団栗が落ちて団栗拾ふ人

 この間まで「暑い暑い」と言っていたが、いつの間にやら涼しくなって暑いという言葉を聞かなくなった。と、思っていたら、すっかり秋になって、サクラやカキノキの落葉が見られるようになった。時が進むというのはこういう変化をもって言うのだろう。そんな感じで、公園のクヌギやアベマキ、コナラの林下には実のドングリが落ち、拾う人の姿が見られるという具合の昨今である。

            

 ドングリはシカの好物で、奈良公園のシカ寄せに用いられるが、レジ袋を手にドングリを拾う御仁に聞いてみたら、奈良公園に赴き、シカに与えるという答えが返って来た。今の時期、このような御仁が結構いるのだろう。ドングリと言えば、童謡や絵本の素材として知られ、子供たちにも人気があり、家族連れで拾う姿も見られる。

   団栗に団栗の意味拾ひゐる

 秋が来て木の実が熟すと、実は旅立ちを見せる。その旅立ちにはいろんなケースが見られ、草木にはそれぞれに知恵が発揮されるが、実はみな未来を目指す旅立ちである。殻斗に包まれて成長を叶え、熟したドングリは地に落ちて旅立ちに向かう。落ちた後は、自然に身を委ね、本位か否かは知らず、或るはシカの糧になったりする。そして、シカの中にお働きとなる。これは一例で、生における定め、或いは宿命と思えたりする。

   団栗に団栗の色旅立つ身

 覚えて置こう。春の花から半年の間。雨に降り込められた日々があり、暑さに辟易した日々もあった。また、枝が折れるほどの風雨に見舞われた日もあった。そんな試練に耐え、殻斗のドングリの実は枝木に抱かれ、十分な時を得て成熟し、旅立つ日を迎えたのである。写真は散り敷くサクラの落葉(左)、地面に落ちたドングリ(中)、ドングリを拾う人たち(右)。

 


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2020年09月28日 | 植物

<3180> 大和の花 (1117) フタバムグラ (双葉葎)                               アカネ科 フタバムグラ属

               

 田んぼの畦などに生える1年草で、細い円柱形の茎が根元で分岐し、斜上または横にも広がり、高さが10センチから30センチほどになる。葉は長さが1センチから4センチほどの線形乃至は広線形で、対生するのでこの名がある。また、葉の基部には膜質で先が数裂する托葉がある。

 花期は8月から9月ごろで、葉腋にごく短い柄を出し、長さが数ミリの先が4裂した紅色を帯びる白い筒状の花を1、2個つける。萼も4裂して開出し、裂片の先は尖る。蒴果の実は直径数ミリの扁球形で、多数の種子を含む。萼は果期にも残る。

 本州、四国、九州、沖縄に分布し、中国から東南アジア、インド方面に見られ、同属種が極めて多く、薬草として利用され、根を染料にするものもあるという。大和(奈良県)では水田の畦などで見かける。 写真は花期のフタバムグラ(左)と葉腋の花(右)。 

   秋雨や我には我のhistory


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2020年09月27日 | 写詩・写歌・写俳

<3179>  余聞 余話 「ジャンボタニシの大量発生」

            異常には危惧が纏はるその危惧の大小多少不安を強ひる

 この間、京都府亀岡市の水田でスクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)が大量発生し、その食害が広がっているというニュースがあった。大和(奈良県)でもこのジャンボタニシの大量発生が起きているところが見られる。大和平野の中央西寄りの広陵町の水田。稲の収穫期を迎え、田から水を抜く時期に差しかかっているが、その水田の水底に大小のジャンボタニシが無数に繁殖し、場所によっては蝟集しているところも見られる。

          

 スクミリンゴガイは南アメリカ原産の淡水に棲む大型の巻貝で、大きいもので直径が五センチに及ぶものもある。日本には昭和五十六年(一九八一年)に養殖用として持ち込まれ、これが逸出して各地に広まったという。寒さに弱く、越冬出来ないとされて来たが、温暖化が進み、暖冬の影響により、冬を越すものが現われ、増えたと言われる。水田では稲の苗を食い荒らす稲作への脅威として知られ、注視されている。

 このタニシは、梅雨明けごろ、水路や溝のコンクリート壁や石などに卵を産みつけ、小さな球形の卵が固まってピンク色の卵塊をつくり、殖える。広陵町の水田では溝の壁面などでこの卵塊も見られる。このタニシには毒性がなく、食べられるが、寄生虫が感染している可能性があり、十分注意が必要という。  写真は水田に湧いたジャンボタニシの群(左)、ジャンボタニシのアップ(中)、溝のコンクリート壁に産みつけられたピンク色の卵が集まった卵塊(右)。 不都合な真実といふ言葉より十年余なほ危惧の先端

 


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2020年09月25日 | 植物

<3177> 大和の花 (1115) コニシキソウ (小錦草)         トウダイグサ科 トウダイグサ属

                

 北アメリカ原産の1年草で、明治時代の中ごろ渡来し、今では全国各地の道端や畑地、庭などに生え出し、普通に見られる帰化植物である。茎は地を這い、長さが10センチから20センチほどに伸び広がる。在来のニシキソウ(錦草)に似るが、外来の本種の方が繁茂し、よく見られる。

 葉は長さが1センチ前後の長楕円形で、表面の中央付近に暗紫色の斑紋が入るものが多い。基部は左右が不揃いになって歪み、ごく短い柄を有し、対生する。花期は6月から9月ごろで、上部の葉腋に小さな濁った淡紅紫色の杯状花序をつける。実は蒴果で、子房に白い伏毛が密生する特徴がある。ほかには、茎が立ち上がるオオニシキソウ、在来のニシキソウ、ハイニシキソウなどがある。 写真は地を這うコニシキソウ(左)、葉腋の花と蒴果(右)。 秋雨や母の温もり少年期

<3178> 大和の花 (1116) オオニシキソウ (大錦草)           トウダイグサ科 トウダイグサ属

                             

 コニシキソウと同じく北アメリカ原産の1年草で、明治時代のはじめに見つかった帰化植物で、全国的に広がり、道端や荒地などで群生するのが見られる。紅色を帯びる茎は直立乃至は斜上し、よく分枝し、高さが20センチから40センチほどになる。葉は長さが1.5センチから3.5センチの長楕円形で、先は尖らず、基部は左右不揃いになって対生する。

 花期は6月から10月ごろで、枝先に杯状花序がまばらにつく。花序には発達した腺体の付属体が白い花弁のように見え、よく目につく。蒴果の実は直径2ミリ弱の小さな卵球形で、無毛。なお、全体に乳液を含み、切ると乳汁が出る。 写真は道端の草叢に生えるオオニシキソウ(左)、花序と実のアップ。(右・白く見えるのは発達した腺体の付属体。花序にはアリが来ていた)。

     秋雨や後姿の行きにけり