大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年06月30日 | 植物

<2374> 大和の花 (546) ウツボグサ (靭草)                                    シソ科 ウツボグサ属

           

 日当たりのよい山野の草地などに生える高さが10センチから30センチの多年草で、夏の野の道を歩いているとひと固まりになって花を咲かせるウツボグサに出会うことがある。茎は四角形で全体に粗毛があり、葉は長さが2センチから5センチの長楕円状披針形で、柄を有し、対生する。

 花期は6月から8月ごろで、茎頂に長さが3センチから8センチの花穂をつけ、紫色の唇形花を花穂の周囲に密に咲かせる。花はそれぞれが毛の生えた円形に近い苞の基部につき、花冠は兜状で、下唇が3裂し、中央の裂片が更に細かく裂ける。萼は上下2唇に分かれ、花が終わると、口を閉じ、その中で実が成熟するようになっている。

 ウツボグサ(靭草)の名は、この花穂を矢を入れる靭(うつぼ)に見立てたことによるという。別名のカコソウ(夏枯草)は、夏の盛りに花を終え、枯れて黒っぽくなったまま立っている姿によるという。シソ科には芳香のあるものが多いが、ウツボグサは無臭で、塩化カリウムを多量に含む薬用植物として知られ、漢方では生薬名を夏枯草(かごそう)といい、煎じて利尿、口内炎、扁桃腺炎、暑気払い、結膜炎等に用いるという。

 日本全土に分布し、国外では朝鮮半島、中国、シベリア等に広く見られるという。大和(奈良県)でも野道を歩くと出会う。雑草の中に生え、その花の姿は野趣に富む野の花らしい花の感じがする。 写真はウツボグサ。草の中でひと固まりになって咲く花と花のアップ。チョウやハチの類がよく来ている。  写真は記録の一端 過去が収まる

<2375> 大和の花 (547) イヌゴマ (犬胡麻)                                         シソ科 イヌゴマ属

                             

 湿潤なところに生える高さが40センチから70センチの多年草で、白く長い地下茎によって増える。地上茎には稜があり、稜には下向きの刺が生え、触るとざらつく。葉は長さが4センチから8センチほどの長楕円形で、先は鈍く尖る。表面には皺があり、裏面には中脈に刺があって、対生する。

 花期は7月から8月ごろで、茎頂に花穂を出し、淡紅色の唇形花を数段輪生する。花は花冠の長さが1.5センチほどで、下唇が3裂し、中央の裂片が大きく、花冠の内側には濃い斑紋が見られる。実はゴマに似るが、有毒で食べられないので、役に立たないという意によりこの名がある。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島から中国にも見られるという。大和(奈良県)では生育地が点在し、少なく、個体数も覚束ない状況にあるとしてレッドリストの希少種にあげられている。 写真はイヌゴマ。あまり見映えのする花ではないが、花の周りにはチヨウやカエルなどが見られ、生活圏にしている様子がうかがえる。   思考は言葉によって構築される

<2376> 大和の花 (548) メハジキ (目弾)                                           シソ科 メハジキ属

                          

 野原や道端、川土手などに生える高さが0.5メートルから1.5メートルほどになる二年草で、稜のある茎は直立する。根生葉と茎葉があり、根生葉は早くに枯れて、花どきにその姿はない。茎葉は長さが5センチから10センチほどで、3深裂し、裂片は更に細かく羽状に切れ込む。上部の葉は小さく、線形乃至は披針形のものが見られる。

 花期は7月から9月ごろで、上部の葉腋に淡紅紫色の唇形花を数個ずつ輪生状につける。花冠は長さが1センチ強で、外部に白い毛が密生する。下唇は3裂し、中央の裂片はなお2裂して紅色の濃い条が入る。メハジキ(目弾)の名は、子供が茎を短く切って両瞼に挟み、目を開いて遊んだことによるという。

 本州、四国、九州、沖縄に分布し、朝鮮半島から中国、台湾などに見られるという。大和(奈良県)では各地に点在するが、少なく、レッドリストの希少種にあげられている。日本では古くから知られていたようで、『万葉集』に登場の土針(つちはり)だとされ、万葉植物の1つにあげられている。

  中国の本草書『本草綱目』(1590年・李時珍)には益母草(やくもそう)の名で見え、薬用植物として高い評価を得て薬草図鑑にもその名が見える。全草を煎じて服用すれば、月経不順、産後の止血など産前産後の諸病、例えば、腹痛、めまいなどにも効くとして母の益になるという意により、この名が生薬名に当てられ、メハジキの別名としても知られるようになった。なお、古くには染料にも用いられたという。 写真はメハジキ。花期と果期の姿(宇陀市室生ほか)。 生も死も生きものの宿命 半端はない 

<2377> 大和の花 (549) キセワタ (着綿)                                             シソ科 メハジキ属

                

 山地の草地などに生える多年草で、断面が四角の茎は普通直立し高さが大きいもので1メートルほどになり、下向きの毛がある。葉は長さが6センチから10センチの長卵形で、先は尖り、基部はくさび形。縁に粗い鋸歯が見られ、長い柄を有して対生する。

 花期は8月から9月ごろで、茎の上部葉腋に淡紅色の花を数個ずつつける。花は唇形で、上下2唇からなり、上唇は庇状に突き出し、下唇は3裂する。花冠の外側には白い毛が生え、上唇の上部がその毛によって白く見えることから、キクの霜避けのため花に被せる着せ綿を思わせるところからこの名が生まれたと言われる。

  北海道、本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国にも見られ、大和(奈良県)では極めて自生地が少なく、個体数も覚束ない状態にあり、奈良県のレッドデータブックは絶滅寸前種にあげている。なお、メハジキに似て、産後の腹痛に効く薬用植物としても知られる。 写真はキセワタ(曽爾高原ほか)。   新聞は世を映す鏡 だが 全てを映しているわけではない

<2378> 大和の花 (550) ヒメシロネ (姫白根)                                         シソ科 シロネ属

                 

 山野の湿地に生える多年草で、茎は四角形で直立し、高さは30センチから70センチほどになる。肥厚する地下茎が白いシロネ(白根)の仲間で、コシロネ(小白根)、エゾシロネ(蝦夷白根)などがあり、大きさや葉などに微妙な違いがある。葉はどの種も対生し、その葉腋に唇形の花をつけるが、ヒメシロネの葉は他に比べて細く、長さが4センチから8センチの披針形乃至広披針形で、厚みと光沢があり、縁に鋭い鋸歯が見られる。

 花期はどの種も8月から10月ごろで、群生することが多く、花どきには湿地を埋め尽くして咲く光景に圧倒されることもある。小さな白い唇形花を上下の葉腋に数個ずつ連ね、それぞれに花の役目を果たしている姿が見受けられる。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部に見られるという。大和(奈良県)でも池などの湿地に見られる。曽爾高原のお亀池の湿地では他の植生に影響を及ぼすほどの大群落が発生し、その勢いに驚かされたが、翌年には収まりを見せたことがあった。 写真はヒメシロネ(曽爾高原ほか)。   生には競争の原理が働くようになっている

 

 

 

 


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