<2999> 余聞 余話 「タンポポの詩」
たんぽぽのそらみつ大和の花日和
日が差す暖かな草原
タンポポが一面に
咲いている
一斉に開く黄色い花は
みんな それぞれ
日の光の同じ恵みに
触れる歓びを
歌いあげている
草原の広いステージは
雑木林に縁取られ
メジロやシジュウカラや
ときにウグイス
ときにホオジロが
これに加わり
その恵みに呼応して
持ち前の美声をもって
讃歌を歌いあげている
高い空からは
ヒバリの共鳴
ツバメの大演舞
それは まさに
陽春の日差しあふれる
そらみつ大和の
花日和の
うららかな一日
[タンポポ] タンポポ(蒲公英)は春を代表する身近なキク科の草花で、在来種と外来種とが見られ、在来にはカンサイタンポポ(北九州から近畿地方)、トウカイタンポポ(静岡県東部一帯),シナノタンポポ(甲信地方)、カントウタンポポ(関東地方)、エゾタンポポ(東北地方から北海道の低地と関東地方以西の山地)、ミヤマタンポポ(中部地方の高山帯)。これらはみな黄色の頭花を咲かせる。これに花が白いシロバナタンポポ(主に近畿、中国、四国、九州、稀に関東地方)が一般に馴染みのあるタンポポとして知られている。
外来にはセイヨウタンポポとアカミタンポポが知られるところで、大和(奈良県)ではカンサイタンポポとシロバナタンポポに加え、セイヨウタンポポが混生し、カンサイタンポポとセイヨウタンポポとの雑種が近年多くなっていると言われる。
在来のカンサイタンポポは舌状花の数が少なく小振りで、総苞片がめくれていないのに対し、外来のセイヨウタンポポは舌状花の数が多く、花も大きく、総苞片がめくれる特徴を有しているので判別出来る。両者の特徴を合わせ持つものは両タンポポの雑種と見られ、近年増えている。
シロバナタンポポは花が白く、総苞片のめくれるものが多い。近年、セイヨウタンポポの勢いに圧され、在来のカンサイタンポポが数を減らしていると見られていたが、最近の調査では、在来の盛り返しが見られるようである。
タンポポは身近な草花で、誰もが知る親しみのある花であるが、その名は意外と新しく、江戸時代まで知られていなかった。記紀や『万葉集』にその名は見えず、平安時代の『枕草子』や『源氏物語』等にも登場せず、その名は江戸時代の農学書に初めて登場するという。
タンポポの漢名は蒲公英(ほうこうえい)で、平安時代初期の『倭名類聚鈔』に蒲公草(ほうこそう)の名が見え、古名をタナ(多奈)或いはフジナ(布知奈)とあるので、これをタンポポとする説もあるが、これはホウコグサ(ハハコグサ)であるとの見解が強い。よってタンポポの登場は江戸時代に下ると言えそうである。なお、タンポポの名は、鼓の「タン ポンポン」と聞こえる音に因むとする柳田国男説がよく知られる。
根を乾燥したものを蒲公英と称し、煎じて胃痛、消化促進などに用い、若葉を食用にして来た。茎の乳液からはゴムが採れるという。 写真は草原一面に花を咲かせるタンポポ。 大空へたんぽぽの花一斉に