大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2021年07月31日 | 植物

<3483> 奈良県のレッドデータブックの花たち(89) キリシマミズキ(霧島水木)           マンサク科

                  

[学名] Corylopsis glabrescens

[奈良県のカテゴリー]  希少種・注目種(環境省:準絶滅危惧)

[特徴] 暖温帯上部から冷温帯域の渓谷の岩場や河原などに生える落葉低木で、高さは2~3メートル。樹皮は灰褐色で、新枝には皮目が多い。葉は長さが3~6センチの卵円形で、先はやや尖り、基部は浅い心形。縁には歯牙状の鋸歯が見られる。支脈が目立ち、裏面は白色を帯びる。

  花期は4月。葉の展開前に開花し、花序の長さは3~4センチで、黄色の花が5~9個つき、下向きに咲く。よく知られるトサミズキと違い、花序軸に毛がない。また、コウヤミズキとは成熟した雄しべの葯の色が異なり、暗赤色のコウヤミズキに対し、本種は黄色。蒴果の実は長さが7ミリほどの広倒卵形で、2個の花柱は角状に残る。

[分布] 日本の固有種。本州、四国、九州(霧島山地、四国カルスト、大峰山地、木曽川上流域)。

[県内分布] 五條市、天川村、上北山村、下北山村、十津川村の大峰山地。

[記事] キリシマミズキ(霧島水木)の名はこの種が九州の霧島山地に初見されたからで、中部地方以西で隔離分布し、自生地も個体数も少ないため環境省は準絶滅危惧にあげている。大和地方でも同様で、奈良県は希少種にあげている。県内を見ると、十津川の東の山域、大峰山地でキリシマミズキ、西の山域である野迫川村の奥高野の山地でコウヤミズキが分布し、不思議なことに混生せず、隔離が見られるので注目種にもあげられている。 写真は渓谷の早春を彩るキリシマミズキ(左・天川村)と花のアップ(右)。

      注目されるということは

  興味が抱かれ

  関心が持たれるということ

  果たして それは

  我々の耳目を騒がせる


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2021年07月30日 | 創作

<3482> 作歌ノート  曲折の道程(十三)

              雨の海誰の思ひも煙るごと見えて見えざる沖ぞ見えける

 老子は言う。「為無為、事無事、味無味、大小多少、云々」と。すなわち、「為す無きを為し、事とする無きを事とし、味わい無きを味わい、小なるを大とし、少なきを多しとする」というのである。今わかっていると思っていることも、時が過ぎると、それはそうではなかったというようなことは誰もが経験することであろう。

           

   老子の言葉には人間の能力と意志の問題が言われており、そこのところを読まねばならないような気がする。で、冒頭の歌が生まれた。私たちには見て実は見えないもの、聴いてまた言える。聴こえないものがそこここにある。森に入って森を見ず、人に寄って人を見ずというようなことは多々ある。冒頭の歌の中の海は当然のこと比喩である。そして、海の海たる実体を思う。

 この認識に立ってものを眺める。これは一つの見識に違いない。物事を決めてかかってはいけない。「見えて見えざる沖」を見たと確信しても「見えて見えざる沖」は、やはり「見えて見えざる沖」である。すなわち、「見えて見えざる沖」は、見えて見えざる認識にあって対処しなければならないはずである。

  見んとして見るゆゑ見ゆるされどなほ見えざるもののあるを知るべし

 見ようという意志を持って見るゆえに見えて来るものがある。だから老子が言うところの意志は大切なわけである。が、しかし、私たちの能力(眼力)では、なお見えないものがある。そこのところを私たちは知っていななければならない。そして、なお見ることを躊躇してはならない。見ることにおいて不十分であれば、当然のこと納得出来ざる思いが生じるのは自明である。例えば、その不十分から「傍観者たるものよ言葉を慎め」というような声も発せられることになる。 写真はイメージで、雨の水面。

     沖をゆくのはどこの船

     私しゃ眺めて岸の人

     どこへゆくのかあの船は

     私しゃ眺めてゐるばかり

     私に思ひあるとして

     沖をゆくのは沖の船

     見えて見えざる沖の船


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2021年07月29日 | 植物

<3481> 奈良県のレッドデータブックの花たち(88) キヨスミウツボ(清澄靫)        ハマウツボ科

                      

[学名] Phacellanthus tubiflorus

[奈良県のカテゴリー]  絶滅危惧種

[特徴] 「暖温帯域から冷温帯域の落葉樹を主とした森林の林床や林縁に生育する」(奈良県版レッドデータブック)とされる葉緑素を有しない寄生植物の多年草で、普通叢生する。高さは10センチ前後。茎には多数の鱗片葉がつくものの、光合成を行なう緑色の葉がつかない。花期は6~7月で、茎頂に2センチほどの筒状の花を多いもので10個ほどつける。花冠は咲き始め白色で、その後変色して黄色っぽくなる。

[分布] 全国各地。国外では朝鮮半島から中国東北部、ロシア東部一帯。

[県内分布] 宇陀市、東吉野村、川上村、上北山村、天川村。

[記事] ハマウツボ科の植物はみな寄生植物で、キヨスミウツボは1属1種で知られる。群生することが多く、花というよりはキノコを思わせる。なお、キヨスミウツボ(清澄靫)のキヨスミ(清澄)は初見の千葉県・清澄山に因む。ウツボ(靫)は弓矢の矢を入れる道具で、花の形が靫(うつぼ)に似ることによる。大和地方では自生地も個体数も少ない。

  植物もさまざまあるよ おもしろい

 


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2021年07月28日 | 植物

<3480> 奈良県のレッドデータブックの花たち(87) ギョウジャアザミ(行者薊)             キク科

                                 

[学名] Cirsium gyojanum

[奈良県のカテゴリー]  希少種

[特徴] 深山の草地や岩場に生える多年草で、草丈は50~80センチ。葉は長楕円形で、先が尾状に細長く尖り、羽状に深く裂け、鋭い刺がある。花期は8~10月で、淡紅紫色の小さな頭花を点頭気味につける。花の基部の総苞は狭い筒形で、クモ毛があり、手で触れるとべたつく。また、総苞片には刺があり、刺は長短さまざまで変異が見られる。

[分布] 日本の固有種。本州の紀伊半島(奈良、三重、和歌山の県境の山域)と四国の一部。

[県内分布] 東吉野村、天川村、上北山村、下北山村、十津川村。

[記事] ギョウジャアザミ(行者薊)の名は、修験者(行者)が修行する深山山岳に見られることによるのだろう。アザミ(薊)は刺の多いことを「あざむ」と言い、これがアザミに転じたと一説にある。なお、「ギョウジャ」が冠せられた植物にはほかにユリ科のギョウジャニンニクがある。こちらも深山に生え、行者が食用にしたと言われる。 写真はギョウジャアザミ(大台ケ原山と大峰山脈の標高1600~1700メートル付近)。

   すべては生

   すべては縁

   この世の

   すべては

   生と縁に

   由来して

   自らの身に

   及び関わる


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2021年07月27日 | 創作

<3479> 写俳百句 (70) 盛夏の池

              池一面映る夏空少年期

                       

 冬には渡りのカモが訪れる周囲三〇〇メートルほどの池。春になるとそのカモは去り、代わりに夏の渡り鳥ツバメが飛び交うようになるが、背後に雑木林を抱えた濃い緑の夏草に縁取られたこの池は満々と水を湛え、白い夏雲を配した青空を映し込んで、夏本番の感。雑木林からはシャワーのような勢いのセミの声。この眼前に広がる盛夏の風景に、ふと、遠い少年時代が思われ、立ち止まって写真に収めた次第。 写真は夏空が映り込んだ池面