<3754> 奈良県のレッドデータブックの花たち(210) ハナヒリノキ(嚏の木) ツツジ科
[別名] クシャミノキ
[学名] Eubotryoides grayana var. grayana
[奈良県のカテゴリー] 希少種
[特徴] 深山、山岳の疎林内や岩場に生える落葉低木で、高さは50~130センチ。よく分枝し、繁る。葉は長さが3~10センチの楕円形または卵状楕円形で、先は尖り、基部はくさび形に近く、縁には内側に曲がった細かな鋸歯が見られる。質はやや厚く、表面は濃緑色で、裏面に浮き立つ脈が目立つ。葉柄はごく短く、互生する。
花期は6~7月で、新枝の先に長さが5~15センチの総状花序を伸ばし、赤味を帯びる淡緑色の花を連ねるようにつける。花冠は直径数ミリの壷形で、先が浅く5裂して裂片は反り、やや下向きに開く。雄しべは10個、葯は褐色。実は蒴果で、直径数ミリ。扁球形で上向きにつき、先に花柱が残り、秋のころ赤褐色に熟し裂開する。
[分布] 北海道、本州の近畿地方以北。国外ではサハリン(?)。
[県内分布] 川上村、上北山村、下北山村、天川村。
[記事] ハナヒリ(嚏)はくしゃみのことで、クシャミノキの異名でも知られる。これは葉の粉が鼻に入るとむず痒くなってくしゃみが出ることによるという。本種はツツジ科に特有の有毒植物で、昔は葉を粉にして蛆虫の駆除、家畜用の駆虫剤に利用された。
大和地方(奈良県域)では標高1200メートル以上の大峰、台高山地で稀に見られ、奈良県のレッドデータブックは「シカの多い地域であるため、食害が懸念される」としている。 写真はハナヒリノキの花(左・花序の基部側から開花している)と果期の姿(右・花は下向きだが、実は上向きになり、裂開する)。
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