<1842> 大和の花 (121) ネコノメソウ (猫目草) ユキノシタ科 ネコノメソウ属
今回から大和(奈良県)に見られるネコノメソウ(猫目草)の仲間を紹介したいと思う。まずは、ネコノメソウから。山地の湿ったところに群生する多年草で、高さは20センチほどになり、走出枝を出して繁殖する。広卵形の葉が対生し鈍鋸歯があってヤマネコノメソウに似るが、ヤマネコソウより鋸歯が細かい。苞は黄緑色で、茎葉と同形である。
花期は3月から5月ごろで、花は2ミリほどと極めて小さく、萼片4個は直立し淡黄色を帯びる。雄しべは4個で、雄しべの先の葯は黄色である。蒴果が裂開したところが細くなった昼間の猫の目の瞳孔に似ることによりこの名があるという。北海道と本州に分布する日本の固有種で、大和でもよく見られる。 写真は湿った山肌に群生するネコノメソウと花のアップ。葯が4個ついている。 生きものにして生かされてゐるなどと思ふ木枯らし吹きつけるなか
<1843> 大和の花 (122) ヤマネコノメソウ (山猫目草) ユキノシタ科 ネコノメソウ属
山地の湿り気のある林内に生える多年草で、北海道南西部、本州、四国、九州、沖縄に分布し、朝鮮半島、中国東北部に見られるという。大和(奈良県)では山地でよく見かける。高さは20センチほどになるが、地に貼りつくように生えるものも多い。茎の葉は腎円形で、平たく粗い鋸歯が見分けのポイントになる。
花期は3月から4月ごろで、まだ、雪が残っているようなときに咲き始めるものも見られる。萼裂片は黄緑色で、半開し、花弁はなく、雄しべは通常8個で、ときに4個のものも見られる。葯は黄色。花茎の基部に珠芽が出来るのが今一つの特徴である。天川村の観音平のミズナラ林の林床ではこのヤマネコノメソウの花が春一番に花を見せる。 写真は左からうっすらと雪を被って花を咲かせるヤマネコノメソウ(天川村の観音平)、ヤマネコノメソウの花のアップ、ネコの目を思わせるヤマネコノメソウの裂開した蒴果。 烈風に煽られ冬木立ち尽くす
<1844> 大和の花 (123) ヨゴレネコノメ (汚れ猫目) ユキノシタ科 ネコノメソウ属
ネコノメソウの仲間のイワボタン(岩牡丹・別名ミヤマネコノメソウ)の変種で知られる多年草で、山地の谷筋など湿ったところに小群落をつくり、一箇所に固まって生えることが多い。高さは15センチ前後で、柄のある楕円形から長楕円形の葉は紫褐色で灰色の斑紋が入り、細かい鋸歯がある。この葉がいかにも汚れているように見えるのでこの名がある。
花期は4月ごろで、周辺の木々が芽吹くころ花を咲かせる。上部の苞は淡黄色から淡黄緑色で、母種のイワボタンに似るが、萼裂片は濃紫褐色から淡緑色で、やや直立する。雄しべは4個から8個で、葯は暗紅色、花糸は紅紫色を帯び、イワボタンの黄色いのと相違するので判別出来る。次に紹介するイワボタンの変種のひとつであるキシュウネコノメ(紀州猫目)にもよく似るが、ヨゴレネコノメの方が全体に紫褐色の色合いが濃い感じがある。
本州の関東地方以西、四国、九州に分布する日本の固有種で、大和でもよく見かけられる。 写真は萼裂片が濃紫褐色タイプ(左)と淡緑色タイプ(右)のヨゴレネコノメ。 冬空を渡り行くものかんかんと
<1845> 大和の花 (124) キシュウネコノメ (紀州猫目) ユキノシタ科 ネコノメソウ属
キシュウネコノメ(紀州猫目)もイワボタンの変種のひとつで、その名にあるとおり、紀伊半島に分布する多年草で、日本の固有種である。葉の形も群生する姿もヨゴレネコノメに似るが、全体に淡緑色を其調にした色合いで、紫褐色が濃いヨゴレネコノメとは雰囲気の異なるところがうかがえる。
花期は3月から4月ごろで、辺りの草木に先がけ咲き出し春を告げる。高さは15センチ前後、山地の湿り気のあるところに生え、紀伊山地ではそこここに見られる。葉はヨゴレネコノメに似て、有柄で細かな鋸歯がある長楕円形から楕円形の葉が対生する。
苞や萼裂片は淡黄色で、これはイワボタンに似るが、雄しべの葯が暗紅色で、黄色のイワボタンとは異なる。片や葯が暗紅色はヨゴレネコノメに似るが、前述したようにキシュウネコノメは全体的に淡い印象を受ける。 写真は左から小滝の傍らに咲き出したキシュウネコノメと固まって花を咲かせるキシュウネコノメ(ともに十津川村)。次は大台ヶ原山の標高1600メートル付近の谷筋で見かけたキシュウネコノメの小群落(岩盤に貼りつくように生え、花を咲かせていた)。 お喋りは尽きず楽しげ寒雀
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