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本当に珍しいのですが、私はルイ・ヴィトンを一つも持っていません。
残念なことに貢いでくれる人もいなかったし、自分でも意図的に買わない理由があるのです。それは、20年近く遡るある出来事に由来しています。
当時中学生だった私は、父の仕事の都合でアメリカ・ニューヨークに島流しされていました。東海岸なのでヨーロッパ大陸がまずまず近いという理由から、毎年夏休みの家族旅行はフランスやドイツ、イタリア、オーストリアなどに遊びに行っていました。
初めてのヨーロッパはフランス。パリやその近郊ロアール地方で一週間ほど過ごし、NYへの帰るためパリのド・ゴール空港で搭乗待ちをしていた時、60歳近い見るからにおハイソで上品なおばさまが前に座ったのです。
背が高くて、小顔なそのおばさまの脇には長年使い古したヴィトンのトランクが積みあがっていました。もちろんその荷物は自分で運ぶわけがなく、専用のポーターまで引き連れて。
衝撃でした。
これぞ、ヴィトンにふさわしい人、だと思いました。
そう。当時、日本はバブル経済の真っ只中。
ソバージュ頭にどきついピンクの口紅をした日本人OL達が、ブランド品の紙袋をひっさげてニューヨークの5番街を闊歩していた時代。
ティファニーに行くと、エントランス付近のシルバーコーナーには日本人の人だかり。ショーウィンドウを覗き込みながら「じゃあ、ここからここまで、全部ください」とお土産用にネックレスをごっそりと買い込むおじさん。
ヴィトンでは、白人の店員に無理矢理日本語で「あれ、とって、あれ!」なんぞ叫びまくるおばちゃん。
…そんなんばっかでした。
同じ日本人として、ちょっと恥ずかしい。そう思っていた矢先、ド・ゴール空港であのマダムに出会ったのです。
それ以来、ヴィトンはあのマダムのような持ち方をすべき、とインプットされたがごとく自分にはまだまだヴィトンは早いと思うようになりました。
ブランド品は自分を表現する一つの手段ですが、身の丈に合わないブランド品を持つことで、自分の価値を相対的に低く見せることになるのではないか。私はそう思います。
あなたは自分が持っているブランド品に自分がふさわしいと思いますか?