蒸気機関車のキットの組み立てで、一番のハードルになるのはロッド類の組み立てではないでしょうか。
鉄道模型はレールの上で走行することが最低条件です。つまり走らない模型は鉄道模型ではない!少なくともTMSコンペの基準はそうであります。まあ、実際、ほとんどの鉄道模型ファンは車両がレイアウト上を走る姿を見て、「欲しい!」「やりたい!」「作ろう!」と思ってこの趣味の世界の泥沼に足を突っ込んでしまったはずです。ご愁傷様です。
で、蒸気機関車は永遠のヒーローで誰でも手にしたいと思うもので、いざキットの製作を始めると、必ずロッドの製作で中断し、難航し、場合によっては放り出してしまうのです。
かくいう私も、初めて製作にかかった珊瑚模型の創立15年記念発売の8620のキットは、ロッドが全く動かなくなり、途中で放り出してしまいました。先にボイラーやキャブなど上回り慣れないハンダ鏝を使って何とか組み上げて、いよいよ下回りということになり、ロッドを組んで取りつけても、動輪が強い力を加えてようやく動くだけで、その動きもぎくしゃくしています。ままよとモーターを取り付けて電流を流しても、なんとピクリとも動きません!!電流を流し続けるとなんとなく臭いが…モーターが過熱し始めていました。あまりのことに茫然として、早々に放り出してしまったのです。それまでNゲージの改造や自作ばかりしていて、動力のことを考える必要がなかったことがあだとなりました。それがきっかけか、15年近く車両模型製作から離れてしまったのです。
今となっては、原因も明らかなのですが、だれかよく知っている人に聞きながら作っていればよかったと後悔しました。その8620は、前に紹介した残骸になっていますが、11形に活用されて成仏したようです。合掌
そういえば、レストアや部品取りのためにオークションで手に入れたジャンクの機関車模型はたいていロッドが引っかかっていましたね。みんな挫折しているのですね。
この9600の台枠も引っかかりが…
閑話休題、ロッドを取り付けるためには、モーションプレートを自作しなければなりません。残念ながら9600や8620と形状が違うからです。そのかわり変な装飾がなく比較的作りやすかったです。写真には切り出したばかりのモーションプレート支えが写っています。
11形のバルブギア(いわゆるロッド類)の基本構造は9600や8620のものと同じです。それに気付いて12ミリの9600のロッド類をつかうことを着想しました。使ったのはサイドロッド、メインロッド、クロスヘッド、コンビネーションレバー、ユニオンリンクで、16番の9600からリターンクランク、エキセントリックロッド、加減リンクを流用しました。足りないのは、ラジアスロッド、釣りリンクでこれは洋白板から自作しました。逆転軸腕は9600用のリターンクランクを流用しました。ネジがすでに切ってあるからです。取り付けた様子をお示しします。
この状態で、全くストレスなく転がってくれればしめたものです。チェックの方法は簡単!フレキシブルレールの上にのせて、レールを傾げて、重力だけで台枠ごとスムーズに走ってくれればオーケーです。手で押して走るのでは全く当てになりません。あくまでも重力によって自然と走りだすようにします。
たとえ走っても、ギクシャクしたり、なんかの拍子に引っかかったら、徹底的に点検し、問題を解決します。問題になりやすいのは動輪をつなぐサイドロッドのネジ穴のバリ、クロスヘッドとスライドバーのすべり、リターンクランクや加減リンクの遊び、そしてピストン棒とシリンダーカバーの穴との摩擦です。とくに最後のポイントは、きついのは問題外ですが、ゆるすぎてもほかのところに影響して引っかかりを作るので、特に慎重にします。うまくできると、レールを傾げただけで飛ぶように突っ走ります。せっかくの模型を落とさないようにご注意を!
なぜここまでするかというと、模型蒸気機関車の宿命ですが、モーターが動輪を動かし、動輪がロッド類を動かすからです。実物はピストンの力でロッドを動かして、それにより動輪を動かします。つまり力の伝わり方が逆なのです。ロッドの構造は実物どおりの作るので、動輪がロッドを動かす場合、強いストレスがロッドにかかってしまうのです。だから、ほとんど摩擦がない状態にしないと、スムーズに動かないのです。
ロッド類がオーケーになって、ストレスなく走ってくれると、楽しくていつまでもレールを傾げて走らせて遊んでしまいます。おいしい”おつまみ”ができた夜はビールの出番です。
かんぱ~い!