肺がん余命宣告されてからの日々

母が肺がんになり余命を宣告された日からぼちぼちと記して行きたいと思います。

母と二人

2012-01-22 17:48:22 | ホスピス

用事を済ませてから母の所に行きました。
2時半頃に着いたのですがちょうど父とばったり病院の前で会いました。
母の様子を聞くと変わりないよと言われました。
うつらうつらしているけどちょこちょこ目を覚ましパパ~と側に居ても呼ぶそうです。
いつも来てくれる叔母と嫌いだったもう一人の叔母を呼んでくれと言ったそうです。
父もびっくりして嫌いなんでしょ?呼んで良いの?と聞いたら良いと。
2度程呼んでくれと言ったので夜にでも電話すると言っていました。
なにか自分の中で会わなくてはいけないと感じるものがあるのでしょうか。

病室に行くと看護師さんがシーツを替えてくれていました。
うっすらと目を開けていたので来たよと声を掛けました。
ちらっとこちらを見て手を握ろうと手を上げてくれました。
冷たくなった手を握ると柔らかくしっとりした手はしわが増えていました。
そのまま寝てしまいました。

そのまま帰るのは嫌だったのでまた目を覚ましてから帰ろうと思って待っていました。
1時間弱して目を覚まさないのでそっと帰ろうとしたら息子がDSを閉める時にパタンと大きな音を
出してしまい母の目が開きました。
せっかく寝ていたのを起こしてしまい可哀相だったのですがちょうど声を掛ける事が出るので
お腹空いてない?喉乾いてない?苦しく無い?など聞き、また明日来るよと言いました。
すると起こしてと母は言いました。
ベットで起こしたら少したって寝ると言いました。
またベットを寝かします。ずっと手を握っていたのですが目をつむり寝るようでした。
そっと手を離し帰ろうとしたらぱちっとまた目を覚ましました。
帰るねと言うと母は帰ると言いました。
自分が家に帰るといったのでしょうか。母はまた帰ると言いました。
そして私の手を探したので握るとギュッと力を込めて握ってきました。
想像以上の強さでびっくりしました。
まだこんな力が残っていたのだと思いました。

病室に来た時にシーツ交換をしていた時の母は本当に別人のようでした。
自分の意思では体は全く動かないのかもと思うように手首からくるっと曲がって意思を感じませんでした。
足も力が入らないのでぐったりしています。
顔は仰向けでも斜めになっていて見ていたら涙が出てきてしまいました。
癌っていったい何なんだろう。先週は起きて笑いながら一緒にお昼を食べていたのに。
後で寝ている側に寄って母を見ていると何も変わっていません。
綺麗なままです。
なのに目に見えない体の中で何が起こっているのでしょう。

手を握るとまた起きると言いました。
ちょっとしたらまた寝るといいます。
しばらくしたら起きると言いました。
起こしてしばらくしたら看護師さんと言うので呼びました。
看護師さんが来たら起きると言いました。
起きてるよ、足を下ろして座りたいの?と聞くと無言です。
前にご飯食べていた時みたいに座りたいの?と聞くと頷きました。
看護師さんは分かったと言って起こしてくれました。
満足そうな顔をして座った母がいました。
すぐに寝ると言います。
もう一人看護師さんを呼んで寝かします。
看護師さんは座りたかったのね、と言い母をベットに寝かしてくれました。
人の本能の部分で感じるのでしょうか。
寝てばかりだから起きたいと思ったり先日は立ちたいと父に言ったのを思い出しました。
普通に当たり前にやっていた事全てが母にとって今は出来ない事ばかりです。
それが出来て満足したら疲れたのか寝てしまいました。
今度はそっと声を掛けずに帰りました。

今日は何度も何度も手を握ってくれ声を聞けて嬉しかったです。
ぼぅっと遠くを見ていたと思ったら急にぱっと私の顔を見たり起きた時に近くに寄って話しかけたら
分かってくれたみたいでうっすら笑ったように見えました。
手を握って遠くを見ている母は何を考えているのかしらとずっと顔を見ていました。
時折、悲しそうにも見えます。
母の心の中を見たいと思ったりもしますがそれは余りに可哀相すぎますね。

父が母は私に何もしてやれなった、辛い時に力になれなかったなど言ってこれから先の心配を
いっぱいしたり今までを後悔したりしていたそうです。
私はそんな事は無いのに無力だったと思っている母に対して最後にありがとう大好きだと
伝えたいのだけどそれを言うと母が最後のお別れなのだと感じて自分の時間がわずかだと思われたくなくて言えません。
どんな言葉が別れに繋がらず感謝になる言葉があるか今、探しています。

そして母の状態が安定して喜んでいた頃に春に向けて大型の刺繍を作り始めた1月4日。
先日の先生の話にショックで出来上がりに母が間に合わないと止めてしまったのですが私が
諦めてしまったら駄目だと思い昨日からまた始めました。
まだまだ時間が掛かりますがどうか出来上がるまで母が側に居てくれますように。