ふしょうなブログ

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九つの銅貨

2006年04月06日 22時41分20秒 | 書評のようなもの
 この本の作者Wデ・ラ・メアは二十世紀前半のイギリスを代表する詩人だとかで、どんな作品なんだろうと興味を引かれ読んでみました。
 十七編の短編より構成された「子供たちのための物語集」より五編選び抜いたのが本書とのこと。本のタイトルとなった「九つの銅貨」をはじめ何れの作品も詩人らしいポエジー溢れています。
 あとがきにも書かれているように、「子供たちのため」よりも「子供たちでも楽しめる」不思議感覚溢れる大人の童話です。
 自分的に気に入ったのは身寄りの無い3人の煙突掃除見習小僧の物語「ウォックリシャーの眠り小僧」とお母さん思いながら何をやっても中途半端で魚釣りだけが生きがいのジョンと魚の王様による魔法によって人魚にされてしまったお姫様アルマナーラとの物語「魚の王様」です。
 個人的に以前は魚釣りを趣味としていましたので、「魚の王様」は特に楽しく読めました。アルマナーラを人間に戻したいがために自ら魚に変身したジョンが魚の王様が垂らした釣り針の餌にわざとかかるくだりなど大人気なくも夢中で読んでしまいました。
 残りの3作いずれも不思議感と哀愁感の織り交ざった作品です。つじつまの合わないエンディングにちょっと戸惑いを感じたりもしますが、そこはポエジーの世界なんだなと割り切ってしまえば気にはなりません。
 それから所々に散りばめられている版画の数々も物語のイメージと上手く調和していて良い感じです。



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