ふしょうなブログ

ご不要になった詩は粗大ゴミでお出しください

もうひとつの世界へ

2006年04月14日 06時36分18秒 | 
時には詐欺師が人を欺くように
わたしはあなたを欺きたい
飲めぬ程に苦い毒薬であっても
この世に喩えようも無い甘美さを
死を迎える程耐え難い苦痛であっても
五臓六腑に熱い何かが駆け巡り


ああ そこのあなた
わたしに欺かれるなんて幸せ者よ
男冥利に尽きるわね


ブルータスよお前もか…なんて言わないで
サロメかお前は…なんて言わないで


わたし は わたし
尼寺へなんて行かないわ


詐欺師って人を欺こうなんて思っていない
彼にはもうひとりの彼がいて
もうひとつの世界の真実を語る
だから人は彼の言葉を信じて涙して
自ら進んで身を投げ出し
持てる物総てを差し出すのよ
判るかしら 総ては真実 真実が総て
寄せては返すバルトの涙が塩辛いように
あなたの流す額の汗も塩辛く
その醜い鼻は泥炭に塗れている
そうよ真実にのみ愛が在り
そして愛するが故に真実は存在している
だからこそ人は真実の為に我が身を滅ぼす


ねえ わたしに欺かれる気分は
いかがなものかしら


そろそろ身体が痺れてきて
そろそろ朦朧としてきて
見えてくるでしょ
あなたの望んだ もうひとつの世界
あと少しで辿り着く もうひとつの世界


飽くことを知らぬ潮騒に総ての言葉は掻き消され
バルトの涙に重く立ち込めた雲間より
一筋の光明 もうひとつの世界へ







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弘前のあなた

2006年04月12日 23時54分05秒 | 
わたくしはなりたい あなたに
好きからはじめる花占い
かならず好きで終わるから


弘前のあなた 今年も綺麗に咲くのね


好き
嫌い
好き
嫌い
好き


幾度やっても同じ結果なのに
止められない わたくし が ここにいます


美しい薄桃色の花弁に
見えない想いの成就を託す
ああ 何と言う快感なのでしょう


弘前のあなた 今年も見頃を迎えるのね


染井村で産まれた あなた
名も知れぬひとりの職人の手により
この世に出る


《咲いた桜は ただ 散ればよい


人知れず 無念と散った 
おんなたちの心情を
あなたは きっと 忘れたりはしない


弘前のあなた 白塗り壁の穢れなさ
汚れてしまった わたくしには 眩しすぎて
顔を上げることさえ 叶わぬままに


好き
嫌い
好き
嫌い
好き


ほら やっぱり 愛されている わたくし


立派な石垣伝いに歩いていくと
やがて大きな日時計に出会います
日陰棒に吊るされた わたくしの過去
風に舞うあなたの姿に誘われて


ねえ あのしわがれた歌声 聴こえてきますか






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スピーチ・バルーン(清水哲男)パート1

2006年04月08日 22時25分55秒 | 








 清水哲男の第4詩集となる「スピーチ・バルーン」思潮社1975年刊、アニメのキャラクターをモチーフとした20篇の詩によって構成されていて、出版当時はかなり話題となった詩集です。
 詳細については「詩の電子図書室 別館1」を参照していただくとして、今日から暫く清水哲男の作品について自分なりの観点より徹底的に研究してみたいと思います。

 清水哲男の詩のスタイル(構造)はこの詩集あたりから今日に至るまで大きな変化は見られないと考えています。ふらふらしているYockとは大違いです(汗)

主な特徴としては:
1.話し言葉でつづりながらも意味を巧みにずらしながら
  重層的なメタファーを構成している
2.見栄えに拘らない。(字面、白行等に頼らない)
  それでいて所謂散文詩のスタイルはとらず行分けには
  拘りがあるのと、句読点の打ち方に特徴があります。
3.思想的である

以上3点だと思います。あれかれ書き込むよりも具体的に詩を読んでみたいと思います。


チャーリーブラウン(全文)

後退する。
センター・フライを追って、
少年チャーリー・ブラウンが。
ステンゲル時代の選手と同じかたちで。

これは見なれた光景である。

後退する。
背広姿の僕をみとめて、
90歳の老婆・羽月野かめが。
70歳のときと同じかたちで。

これも見なれた光景である。

スヌーピーを従えて、
チャーリーに死はない、
羽抜鶏を従えて、
老婆に死はない。
あまりにも巨大な日溜りのなかで紙のように、
その影は、はじめから草の根に溶けているから。

そんな古里を訪ねて、
僕は、二十年ぶりに春の水に両手をついた。
水のなかの男よ。それも見なれぬ…
君だけはいったい、
どこでなにをしていたのか。
どんなに君がひざまずいても、
生きようとする影が、草の高さを越えた以上、
チャーリーは言うだろう。
羽月野かめは言うだろう。
ちょっと、そこをどいてくれないか。
われわれの後退に、
折れ曲がった栞をはさみ込まれるのは、
迷惑だから、と。



「チャーリーブラウン」、初出は現代詩手帳1974年2月号と初出一覧にクレジットされています。

明日から、この詩について自分なりに分析したいと思います。(かなり適当かも知れませんので、ふんふん程度でスルーしていただけると気が楽です(^。^))
でも、わたしなら、こう読み取る、解釈するなどのご意見、ご感想は大歓迎ですので、よろしくお願いします♪



Op.17 春の気配は未だ…

2006年04月07日 22時11分16秒 | 
春の気配は未だ切れるような氷の
冷たさでコートの裾にまとわりつき
うつむいたまま
泣きべそかいているのは誰のせい


こんな街の片隅でも確かに芽生える
やるせない泣きべそ顔の奥で
見つけたもの
よわよわしくても確かなもの


木立より高く陽が昇れば
このてのひらの上で芽生えた
柔らかな想いを ふわり感じて


いつからだろう こんなにも
移ろいやすくて
待ち遠しさに心焦がして







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Op.16 ギガバイトのうねりの…

2006年04月05日 07時45分53秒 | 
ギガバイトのうねりのなかで
わたくしの三半規管
忘れない 忘れたくない
あなた の優しい こえこえ


花蜜から花蜜 あまりにも
気まぐれ過ぎる あなた
プラトニック と プラスチック
交錯 するする


生きていること 確めたくて
降下する17インチの画面の中で
うるうるる 淡い夢


あなたを身篭りたい わたくし
差し出した頬を掠め
駆け抜ける あなたの こえこえ







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あなたへ届かぬ手紙の…

2006年03月30日 21時16分25秒 | 
あなたへ届かぬ手紙の行方をたずね
風の舞う街へと旅立つ
 (緑色のインクで書いた
 (お別れの手紙なのに


幾艘もの小舟を乗り継ぐのは
わたくしの至らなさと諦めてみても
何故にあなたのもとへ
届かぬのか 風の舞う街は もう


ギシギシと軋むのは風のせい
グラグラと揺れるのは宿命のせい
 (ああ 時計の螺子を巻いてみたい


それならばそうと言って欲しかった
黙って引き下がっても良かったのに


風の舞う街で わたくしは もう








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Op.14 季節のタブロー(春)

2006年03月28日 20時35分40秒 | 
涸れ果てた喉を潤す故に
あなたは涅槃まで水を引くという

(お空あお過ぎて
(わたくしの心模様もあお過ぎるのかしら


あお空を見上げ続けることは
あまりにもつらくて虚しいから

(もう飽きたと言うべきなのね
(わたくしたちの関係


転寝のとばりに桜散る
ふたり 追い求めてきたはずの
あお空は 今はもう遠い過去になって


名も知らぬ花に惚れてみたい
風に揺れて定まらぬ視線の奥に
そっと抱きかかえてみる





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赤と白のブチ

2006年03月25日 23時38分27秒 | 
君は頭でっかちな赤と白のブチ。ぶくぶくと
揺れるコカナダモに身を委ね、退屈そうな気
配で天を見上げる目玉に映るのはどこまでも
青い空に気まぐれな白い雲のブチ。


         自慢の尾鰭を見せ付ける
ように平を打ち、みずから排出した糞に当り
散らしては息巻き、撒かれた餌を当たり前の
顔で、不味そうに喰らう君は赤と白のブチ。


生きている事への感謝など思い巡らすことも、
誰かを思いやる事の大切さなど知る由も無く
楽しそうに愚痴を吐く。


            君が君の大嫌いな
野良猫なら、赤と白のブチをひと飲みすれば
ゲップのひとつ満足そうに吐く。






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夢の殻

2006年03月24日 22時23分56秒 | 
たかがでは済まされない地平線に
ひとり佇み
夢は夢のままで
あるべきことを求められ


目覚めのときは何時も
偶然を装っては
ありのままの姿を
目の前に突きつけてくる


くるり渇いた鳴声の向こうで
夢の堅い殻を食いやぶり
黄身を啜る 青白いクチバシ


舌先三寸の言い訳で誤魔化そうと
焦る喉元に触れるのは
青白いクチバシの冷たい感触




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三月のオフィーリア

2006年03月23日 07時17分20秒 | 
(割れ落ちた心の軋みより流れ出す)
せせらぎの音に我身を任せ
消え入りそうな意識の果てに
あなたの額より滴る汗の熱さを慕う


さよならってどこまでも悲しいのね

狂おしさは許されぬ愛のみしるし
春菜の香る岸辺を辿り
崩れ行く円環 揺らめく死化粧


嗚呼 絶望の甘いハーモニー
打ちひしがれし肢体は歓喜に震え
胸に抱いた花束は 口ずさむ祈りの歌


運命の過酷さに酔いしれて ひたすらに想う
儚き恋の顛末と流れ行く先に在るのは
二度とは逢えぬ あなたの笑顔




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