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よこさんのページ

文芸 エッセイ 論文  アイデンティティ

春の朝靄

2025-04-04 16:27:41 | 自由詩

甘く暖かい乳色の流れ

うっすらと木立を泳がせる

池に面は溶けて消えぬ

ベンチにひとり思うことなく

自然の醸す美酒に酔いぬ

 

ああ、今はいかなる時ぞ

自然はその身体を溶かし

人はその心を溶かす

なべての幸せや憂いは

何と虚しかったことか

ただ よみがえるのは

遠き春の日の

甘き慄きのみ

 


心のアーカイブス

2025-02-28 08:43:30 | 自由詩

目的もなく図書館に行く

書棚の間を歩む

すると

いろんな本が僕に

語りかけてくる

「興味があるんじゃないの?」

「読んでくれないの?」

ふと僕は立ち止まって

本を手にとる

 

宇宙や生命、山や川

神話や歴史、英雄や城郭

社会や人間、経済や経営

絵画やクラシック音楽

小説や詩歌、短詩形

 

子供の頃から学生時代

社会人から後期高齢者まで

積み重ねた知識は薄れても

そんな心のアーカイブスを

呼び覚ます書棚は

心の散歩道

 

 

 

 

 

 

 


心の遺影

2025-02-10 10:22:43 | 自由詩

突然会えなくなった人の面影は

数多(あまた)なる思い出の

水面に浮かぶ泡沫(うたかた)

虚ろな心に浮かんで

揺れて定まらない

だけど

時の流れは

水面を落ち着かせ

面影は静かに浮かび

やがて写真のように定着する

そして悲しさも寂しさも超えた

心の遺影となる

 

 

 


フェイント

2024-12-20 15:57:22 | 自由詩

獲物を追いかけるネコは

その動きを一瞬止める

後足を舐めたり

前足で首を掻いたりして

敵を油断させ

敵がひるんだとき

襲いかかる算段を

考えているのか

そのフェイントの意味を

獲物は知らない

 

課題に取り組む僕は

ふと、心を遊ばせる

たまに浮かぶアイデア

だがいつもそのフェイントに

課題という獲物は

いつもひるんではくれない

ときに獲物自体が姿を変え

フェイントして

僕を惑わせ

あるいは仲間を呼んで

僕を混乱させ

視界からフェイドアウト

獲物は難題となって

僕はドロップアウト