甘く暖かい乳色の流れ
うっすらと木立を泳がせる
池に面は溶けて消えぬ
ベンチにひとり思うことなく
自然の醸す美酒に酔いぬ
ああ、今はいかなる時ぞ
自然はその身体を溶かし
人はその心を溶かす
なべての幸せや憂いは
何と虚しかったことか
ただ よみがえるのは
遠き春の日の
甘き慄きのみ
甘く暖かい乳色の流れ
うっすらと木立を泳がせる
池に面は溶けて消えぬ
ベンチにひとり思うことなく
自然の醸す美酒に酔いぬ
ああ、今はいかなる時ぞ
自然はその身体を溶かし
人はその心を溶かす
なべての幸せや憂いは
何と虚しかったことか
ただ よみがえるのは
遠き春の日の
甘き慄きのみ
目的もなく図書館に行く
書棚の間を歩む
すると
いろんな本が僕に
語りかけてくる
「興味があるんじゃないの?」
「読んでくれないの?」
ふと僕は立ち止まって
本を手にとる
宇宙や生命、山や川
神話や歴史、英雄や城郭
社会や人間、経済や経営
絵画やクラシック音楽
小説や詩歌、短詩形
子供の頃から学生時代
社会人から後期高齢者まで
積み重ねた知識は薄れても
そんな心のアーカイブスを
呼び覚ます書棚は
心の散歩道
友ヶ島が浮いて見える
淡路島の山襞の間に
見たこともない稜線が
うっすらと見える
節分の寒波
季節のせめぎ合いが
新しい景色をつくる
そして
僕の目も新しくする
突然会えなくなった人の面影は
数多(あまた)なる思い出の
水面に浮かぶ泡沫(うたかた)
虚ろな心に浮かんで
揺れて定まらない
だけど
時の流れは
水面を落ち着かせ
面影は静かに浮かび
やがて写真のように定着する
そして悲しさも寂しさも超えた
心の遺影となる
獲物を追いかけるネコは
その動きを一瞬止める
後足を舐めたり
前足で首を掻いたりして
敵を油断させ
敵がひるんだとき
襲いかかる算段を
考えているのか
そのフェイントの意味を
獲物は知らない
課題に取り組む僕は
ふと、心を遊ばせる
たまに浮かぶアイデア
だがいつもそのフェイントに
課題という獲物は
いつもひるんではくれない
ときに獲物自体が姿を変え
フェイントして
僕を惑わせ
あるいは仲間を呼んで
僕を混乱させ
視界からフェイドアウト
獲物は難題となって
僕はドロップアウト