ホビット

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

にじゅうななのさん

2005-12-15 18:44:52 | 日記・エッセイ・コラム
    「最後に」

 言葉は死ぬ。
 一秒ごとにことばは死んでいく。路地で、屋根裏で、荒野で、そして駅の待合室で、コートの襟を立てたままことばは死んでいく。
 
 僕があなたに何を伝えることができるだろう?電灯のスイッチを倒すように、全ては消える。パチン-OFF。それでおしまいだ。
 僕はこれまでに余りに多くのものを埋めつづけてきた。
 僕は羊を埋め、牛を埋め、冷蔵庫を埋め、スーパー・マーケットを埋め、ことばを埋めた。 
 僕はこれ以上もう何も埋めたくはない。
 しかしそれでも僕は語りつづけねばならない。それがルールだ。

 僕はかつてあの壁に囲まれた街を選び、そして結局はその街を捨てた。それが正しかったかどうか、いまだに僕にはわからない。
 僕は生き残り、こうして今文章を書きつづけている。そして僕を取り囲んだものは、やはりあの腐臭だ。僕は暗い夢とともに眠り、暗い想いとともに目覚める。僕の歩む道は暗く、そして歩むごとにその暗さは増していくようだ。
 何もかもが失われていく。失われつづけていく。かつて僕の心をときめかせた歌も今はなく、かつて僕をやさしく包みこんでくれた風景も今はない。甘いことばの数々も沈黙の闇の中に塗り込められてしまった。