yasminn

ナビゲーターは魂だ

吉野 弘    雪の日に

2012-02-21 | 

雪が はげしく ふりつづける

雪の白さを こらえながら



欺きやすい 雪の白さ

誰もが信じる 雪の白さ

信じられている雪は せつない



どこに 純白な心などあろう

どこに 汚れぬ雪などあろう



雪が はげしく ふりつづける

うわべの 白さで 輝きながら

うわべの 白さを こらえながら



雪は 汚れぬもの として

いつまでも 白いもの として

空の 高みに 生まれたのだ

その悲しみを どう ふらそう



雪は ひとたび ふりはじめると

あとから あとから ふりつづく

雪の汚れを かくすため



純白を 花びらのように かさねていって

あとから あとから かさねていって

雪の汚れを かくすため



雪が はげしく ふりつづける

雪は おのれを どうしたら

欺かないで 生きられるだろう

それが もはや

みずからの手に 負えなくなってしまったかのように

雪は はげしく ふりつづける



雪の上に 雪が

その 上から 雪が

たとえようのない 重さで

音もなく かさなっていく

かさねられていく

かさなってゆく かさねられてゆく


村野 四郎        小鳥の空

2012-02-18 | 
あなたの 大きな胸のなかで

わたしたちの歌は はしゃぎます

でも 夜が来たとき

あなたは 私を止めはしない

あなたには わたしを泊める枝の寝台がない

わたしは それが悲しい

わたしは地上の 牙と爪の夜に眠ります

乳色の

あなたの胸は あたたかい

でも わたしが射たれた時

あなたは わたしを抱きとめはしない

こんな小さい罪の重みさえ

支える力が あなたにはない

わたしは それが悲しい

わたしは堕(お)ち 凍る地上で腐ります