yasminn

ナビゲーターは魂だ

木下 杢太郎 もしや草の芽が

2012-02-03 | 
美しい瓶(かめ)なりしかど、 暗い心を盛つて、

まだ少(わか)い時であつた、森の中に 埋めた。


二月の末の 幹の漏れ日に

斑(まばら)な 雪は 輝き、 そして 川の縁に、

黄にまじる 緑の草が やうやうに 頭をあげる。


草は 心は無いけれども――地の底から――

もしや その草の芽が 暗い心を

ひよつとして 人の目に 立てはせぬかと

案じた日があつた――覚えてゐる。



今日となり 同じ憂(うれひ)が

来るものか。 淡雪ふる日。