yasminn

ナビゲーターは魂だ

三吉 良太郎 雨

2011-11-25 | 

小粒な 空色の草花が 家を とりまいて、

しつとりと 息を ふくみ

柔らかい雨に なよなよと つゝましく 搖れてゐる。



窓を きり開いた 額繪は ほんのりと うすぼけて

遠い 連山の 殘雪と 新芽の 植林が やゝ 色をもち

暗い 常緑林帶の上に 新しい パン菓子のやうに のつてゐる。


お茶の 香りをはさんで 二人

お互に 別な事をし、 お互に 違つた事を 思ひながら

ちらりと 面を盗んでは 同じことを ぽつちりと 語る。


薄すゝけた壁色に 何時か 雨がにぢんでゐる。

寢そべつた 思想の弱さ、 二人ある部屋は 果實のやうだ。

同じ 一頁を操つて 煙草の 輪を流す。


緑の戸を開かせて しつとりとした 風を入れ

ただただ 古い 夢の中に お互 ゆれながら

言葉少ない 晝間は 映像のごとく 對座する。