中山 ヒロ子 無職 福岡県大牟田市 88 朝日新聞 2011年9月29日 手紙
50年ほど前、夫は持病で欠勤が多く、3人の子供が通学する頃は家計が苦しく、やりくりに四苦八苦の日々でした。
そんなある日、中学生の長女が弁当のおかずのことで不平不満を並べ立てました。事実、質素なおかずでしたから、私には返す言葉もありませんでした。一人になって風呂場の隅で、悲しくて涙を流しました。
翌日、小学2年の7歳の三女が私の前掛けのポケットに紙切れを押し込んで、遊びに出かけました。開いてみると、たどたどしい字で「私の大好きな母ちゃんへ。母ちゃんがきのうふろ場でないた時、うちはとてもかなしかったよ。---もうなかんでね。うちはいつも母ちゃんの味方よ。こんな私じゃいやかもしれんが、よかたいね。---この手紙のこといわないでね。おねがいよ。きみ子より」と、私を慰める字が並んでいました。この紙切れを何度見直したでしょう。
手紙をくれた子も先日、59歳になりました。この紙切れのことは、今まで誰に言ったことも、見せたこともありません。おそらく本人も忘れていることでしょう。
今は電話の時代ですが、電話が苦手な私はよく手紙を書きます。私を手紙好きにさせたのは、この紙切れの手紙だと思います。
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あたたかい内容。心が元気になる。
写真はキャベツ
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