山人ワールド

山旅近況報告や日々の出来事などが書かれた日記です。

ゴーロ歩きの罠

2010年08月06日 | 沢登り
7月30日~8月1日と2泊3日で南会津 小立岩~安越又川西沢右俣左沢~ミチギノ沢左俣(下降)~奥只見ダムへ行ってきました。

事故は2日目のミチギノ沢左俣(下降)で起こりました。

山人先頭で、その後ろ10mをモコモコさんが歩いている状況。

沢の中間部を下降中、何気ないゴーロ歩き。平らな大きな岩に右足を置いていったん降りて次の一歩を踏み出そうとしたら、ずり落ちて大岩が右足のふくらはぎを挟み込んだ。

不幸中の幸いというか、足元に石があって大岩の荷重を受け止めていた。この石がなかったら骨までやられていたかもしれない。


抜こうと思って足を引いたが痛くて駄目だった。持ち上げようと踏ん張って頑張ったがビクともしなかった。姿勢が片膝をついた状態なので力がうまく伝わらなかった。

これはやばいと慌てて、ザックを外そうとウエストベルトを外して屈みこんだら、チェストベルトが外せなくモコモコさん助けを求め外してもらってやっとザックの重さから解放された。

モコモコさんと二人で声を合わせて動かそうとしたがビクともしない。

よりによってなんて岩を踏んでしまったのだと・・・。

最近、良く読んでいる本の文面が頭に浮かんだ。

サバイバル! 服部文祥 著 ちくま新書

はじめにより
「登山は判断の連続で成り立っている。なのに登山者の目に、判断の正誤が見える形であらわれるのは、致命的に誤っていたときだけだ。正しい判断にご褒美はなく、生存という現状維持が許される。小さな失敗は見えない苦労や苦痛になってかえってくる。そして決定的な失敗をしたときに、登山者は死という代償を受けとることになる。」



そこで、モコモコさんに「棒持ってきて、テコでやって」と指示をだした。モコモコさんはそこら辺に転がっている流木を拾って試したが、岩が重くて何本かは重さに耐えられず折れて使い物にならなかった。

ようやく、まともな棒でテコを試す。テコを入れる場所が悪いせいか、大岩がさらにずり落ちてふくらはぎを挟む。とっても痛いので、声を荒げて指示を出す。

モコモコさんに場所を変えてやってもらう。何回目かに上手くテコの力が働き、ようやく脱出することができた。

足の方は骨には異常なし。打撲のせいで足は腫れているが歩ける。飛んだり跳ねたりは痛みが走るので無理だが歩けるのでその日は、御神楽沢の出合いで泊まった。

次の日は、防虫ネットを被り虻とたたかいながら袖沢林道を5時間かけて奥只見ダムへ逃げ帰りました。

単独行で、こんな状況に陥ったと考えるとても怖い。自分一人の力ではどうにもならない。大岩を持ち上げられられない。人は自然対しては無力ということが、しみじみ大岩を通して実感することができた。

モコモコさんという良きパートナーに恵まれ感謝おります。

 正面より撮影。脱出後。後ろにあるのが問題の大岩。







 右下の大岩に足を挟まれた。写真は脱出した後に現場を撮ったもの。

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2 コメント

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大変でしたね (k0izumi)
2010-08-08 06:47:10
瞬間、瞬間の判断の後に何が待ち構えているか、・・・「正誤」ともちょっと違うような「運命?」の綾みたいなものも感じます。
「失敗」は「失敗」ですが、いつもメッセ~ジを聴くようにしています、私の場合。
「無力」、そうですね、厳としてある「天然(自然)」の堅い意志の前には。
先日は某尾根で足をちょっと踏み外して崖を落ちそうになりかけてしまいました。
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Unknown (山人)
2010-08-08 21:49:39
koizumiさん、こんばんは!
コメントありがとうございます。

沢幅は広かったのでいくらでもほかのルート取りができたはずでした。しかし、運命というのでしょうか?見る目がなかったのか?
 良い経験となりました。


>「失敗」は「失敗」ですが、いつもメッセ~ジを聴くようにしています、私の場合。

アプローチの上での不具合や山での失敗が連続して続くと、黄色信号。私も、そういった直感大切にしてます。

>先日は某尾根で足をちょっと踏み外して崖を落ちそうになりかけてしまいました。

安全登山が一番ですね。
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