etceterakoの勝手にエトセトラ

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花組「落陽のパレルモ/ASIAN WINDS!」

2005年12月11日 | 宝塚歌劇
 見たのが遥か昔(11/6でした・・・)なので、ちょっと記憶がアヤシイんですがー・・・。だからといって花組だけ飛ばすのもねぇ?と思いますので、一応、書いてみます。

銀の狼とセットで見てきて、そのときのメモ感想がコレ↓
http://blog.goo.ne.jp/yamakyou_2005/e/e101389e0b9f51507825508a5e2ed82a

 雑感は上記記事とあんまし変わらん内容になるかもしれませんが、物忘れの激しい人間の愚かさとお許しください。花組に愛が無いわけじゃないのよ!

 ネタばれ全開でいきます!
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●落陽のパレルモ

★わたしには判定しがたい!
 えー、植田景子センセとわたしは、たぶん趣味が似ている・・・。いやモチロン、プロのクリエーターである景子センセと中途半端にいろんな趣味に足突っ込んでるわたしとでは、持っている基礎教養がぜんぜん違うとは思うんだけどサ。それでも・・・景子センセの作品を見るたびに、わたしはなんともいえない「ああー、この感覚知ってる知ってる(笑)」感に襲われるのですよ。少女漫画とかバレエ鑑賞とかさー、少女趣味と呼ばれる領域にハンパに強いわたし・・・。(情報量がハンパなんで、エラそうに「趣味です!」といえないのがツライところ。)

 景子センセの作品は、わたしには、わたしの感性にピッタリ沿いすぎてるがゆえに、どうも良否も好悪も判定しにくい部分があるんですよねぇ。理性が鈍るといいますか・・・。

 同じロマンティック路線でも、柴田センセのほうが、わたしにはまだ「新しい刺激」があるのですよ。景子センセの感性の源は、なんとなーくわかる気がしちゃって、そういう意味で(わたしにとっては)面白みはあんまし無いんですねぇ。舞台でも映画でも読書でも、やっぱ創造的なものに求めるのは「新鮮な発見」でしょ。そういうのはなくてねぇ。安心して見られるから、もちろん好きな演出家ではあるんですけど。

 でもこの作品、好みかそうじゃないかと問われれば、ハッキリ「好みだ!」と言えます。

★まずはラスト問題から。
 階級社会を嘆いておきながら、最後にアッサリと階級上昇を受け入れ、ノーテンキにアンリエッタとハッピーエンドになってしまったヴィットリオ(笑) それってどうなの?って話ね(爆笑)

 たぶんこれねぇ、景子センセが最初の段階で、

「階級差のある男女の情熱的な愛を描こう!(ふーちゃんの退団公演だし)オサちゃんとふーちゃんラブラブで!!」

 って企画で、書き出したんじゃないのかなぁー。
 で、階級差を描こうと思ったら、ああいう展開になりますわね(笑) 民衆による権力への抵抗ってのも、いかにもな展開だぁ(笑)
 で、これがフツーの物書き(演出家じゃなくて、小説家か漫画家)だったら、筆のイキオイで自然に悲劇になるワケですが、あいにくと景子センセは宝塚の演出家。オサちゃんとふーちゃんをラブラブにするためには、「ご都合主義」だろうが、ああいうラストにせざるを得なかったワケですなぁ。大変ですねぇー、宝塚の演出も。役者と企画先行、ですからねぇ。

 筋を通すために取るべき道としましては。

 ①オサちゃんとふーちゃんに駆け落ちさせる。
 ②結ばれない悲劇にする。
 ③階級差への疑問、民衆による反政府運動の筋をヤメて、政治色のないラブストーリーにする。(中盤のエピソードと三番手以下のキャラクター総替えですな)

 という3パターンあると思うんだけど。
 まぁ、わたしなら①にするかな・・・。ただ、駆け落ちで終わっては、「ラストがハンパだー!」って批判が出そうだし、やはり「完璧なハッピーエンド」とは言いがたいよね。結ばれても悲劇性を帯びるとゆーか・・・。
 ②だと、ふーちゃんの退団公演にふさわしくなかろう(笑)霧ミラとかぶっちゃうしね。ただでさえ、時代と国が霧ミラとかぶってんだし、そこは景子センセも意識したと思うよ。
 だから、正解?は③でしょうな。
 とむくんとか、みわっちとかにも適当な相手を与え、三角四角の上流階級ラブストーリーにすれば、おさまりましたね。ただ、それをやるには相当なストーリーテリングが必要で、なかなかやろうと思ってできるものじゃないよね。

 やっぱりね、革命とか抵抗運動とか、政治的なうねりってのはある種「特効薬」で、これを使うと簡単に物語が「ドラマティック」になるんだよねー。
 何気ない恋愛の部分だけで一時間半の展開を作るってのは、よほど手練れの作家じゃないと、面白いもんにはならないでせうよ。演出家の場合、作家と違って物語を作ることが第一義ではないから、その辺難しいでしょうしね。(才能をどこではかるか、といいますか・・・)

★歌劇の優先事項
 わたしも昔は「キャラクターの書き込みの不足」とか「エピソードの不足」とかをあーたらこーたら言ってたクチなのですが、実は「霧のミラノ」で価値観が変わっちゃったのですよ。
 青土社「ユリイカ」の2001年5月号に、木村信司センセ、小池センセ、石田センセのインタビューが載りましたよね?(この本については、いずれ別に文章書くつもりではいるんですが、これまたいつになるやら・・・)
 えーと、そのうちの誰だったかなぁ? 誰かが「一時間半で物語を作る難しさ」を語っていたのですよ。先輩演出家に「宝塚は起承転結でなく、起承結でいい」と言われたエピソードも。

 わたしは「霧のミラノ」をたいそう気に入っておるのですが、これを見たときにそのユリイカの記事が頭をよぎったんですねー。
 霧ミラはたしかに、カールハインツとロレンツォが友情を感じるようになる過程を、ホントに最低限しか描いていません。で、削った時間を何に使ってるかといえば、けっこう長い祭りのシーンの歌踊りだったり、ジャンBの濃いラブシーンだったりする(笑)
 ベテラン柴田センセは、たぶん「それでいい」って思って作ったんじゃないでしょうか。
 祭りの踊りやジャンBのラブシーンを削って、心理説明のシーンを増やしたとしたら、霧ミラの面白さはいくばくか失われるんじゃないかな。アレは、歌劇らしい華やかな歌踊りを楽しみ、宝塚らしい上品なラブシーンを楽しみつつ、ストーリーもそこそこ面白いところがイイんじゃないでしょーか。歌踊りを削ったら、もっとアッサリ味になって、複数回見るのツライと思うんだけど。

 その観点でいけば、パレルモもまぁそう大幅に逸脱しているわけじゃないし、オチの瑕疵ぐらいは目をつぶってもいいかな、とわたしは思っておるのですよ。そこを除けば、全体的に華やかな楽しい作品じゃん。

 無論。「オチのせいで作品自体の印象が台無し」ってご意見もわかるのですけれど、じゃあ筋さえ通って、ラストさえ良ければイイの?って考えると、わたしには全体の総合点が高ければ、ラストは目をつぶれちゃうんですよ。もともと、宝塚は「物語」を見に行くところじゃないし。秀逸な物語なら、活字読んだほうが断然いいでしょ。

 要するに優先度ですね。
 最終的には何を優先するか、になるんじゃないですかね。
 景子センセ(柴田センセも)は、「ドラマティック」&「ラブラブ」な宝塚要素を優先した結果、ご都合主義を注入しちゃったんですよ。ほんとはドラマティックでラブラブで、なおかつ筋も通ってれば言うことないけど、なかなか完璧は求められませんよね・・・。

 わたしは、これはこれでイイんじゃないかと思っています。
 
★歌の使い方だけ指摘させて。
 ただひとつだけ、別にあげつらうほどのことではないんだが、気になった点だけ書いときます。

 あのさ、景子センセは柴田センセの「ロマンティック歌劇」の正統な後継者になるワケですよね?? だから、敢えて指摘するけどー・・・。

 柴田センセに較べると、「歌」の使い方がイマイチ!

 ですよねー。
 銀の狼の記事に書いたけど、正塚センセは宝塚歌劇の異端児?といいますか、ハッキリと「演劇」寄りのお方だから、主題歌をテーマソング扱いにしても、歌の要素が少なくても別にイイと思うんだけど・・・。
 景子センセが目指す先が「正統派歌劇」であるなら、もうすこし歌の使い方を工夫していただけると、うれしいなー・・・と。

 霧ミラで言う、バールの歌とか、冒頭でエルコレが歌う説明文調の歌とか、ああいうのはやはり、「柴田センセ、おさすが!」っていう歌劇の醍醐味だよね。ついつい鼻歌で歌いたくなっちゃう、軽快なナンバーね。時代背景や心情説明を、さらっと歌でしているのがミソでしょ。(それでこそ歌劇!)

 景子センセも、ああいうナンバーが増えると、わたしはさらにハマれるのになー。景子センセの作品はキレイで叙情的なんだけど、全体に叙情性に流されすぎなきらいがあると思うんだよねー。歌もついつい叙情的にしっとり・・・って感じで、それはそれで、ロマンチシズムがあってウットリするのだけれど、もうひと味、楽しい軽快なナンバーが加われば、メリハリついてさらにそのロマンチシズムが引き立つと思うんだよねぇー。

 以上、生意気娘のエラっそうな感想でした。(シロウトのくせに・・・)

●ASIAN WINDS!

 ★これが意外と面白い!
 告白しましょう(笑)
 わたしはこれ、つまらんだろーと完全にタカをくくって出かけたのです(笑)
 何を隠そう、このわたくし。大好きなコムちゃんが出ている作品にもかかわらず、「タカラヅカ・グローリー」のビデオ見ていて居眠りコキました…。「テンプテーション」も、再生止めそうになりました…。
 なんと申しますか…アルファ派でも出るのか、あの横ユレ感を目にしていると、得体の知れない睡魔が…ZZZ。

 ロマンチック・レビューって何よ!

 と、かように思っていたワケなんです、わたしは。

 ★「ロマンチック」を考える。
 岡田センセのエッセンスを挙げますればつまり…。

 男役と、寄り添う女役のロマンチック
 花いっぱいのロマンチック
 古き良き「ヲトメ」のロマンチック

 古い!と一刀両断にするのは簡単だけど、これってやっぱり「宝塚歌劇」の歴史に残る、古き良き時代の残り香だと思うんだよね。
 エリザだなんだと言ったって、結局宝塚を構成しているエッセンスは、岡田センセが体現している「ロマンチック」(+海外への憧れをこめた「レビュー」へのプライド)が源泉だったりするワケでしょ。岡田センセの作品を見ると、少女(または女)が「無垢」に描かれていることが多くて、何よりそれにビックリするんですけど(笑)もとはといえば、宝塚歌劇の存在自体、そういう少女への幻想に端を発していると言えなくもない(笑)時代が進んで、少女への幻想なんて一部に変形して残ってるくらいで、そもそも少女自身が「少女趣味」を拒否しているよーな時代でございますが、「清く正しく美しく」とゆー、宝塚ファンタジーの根幹を支える思想自体が、「少女への幻想」引いては「ロマンチック」という単語につながっているように思うのですよ。(わかりにくいよね?未整理な文章でごめん。これ詳しく書いてると1000字はかかるんで、ここで打ち止めにしときます。わかりにくかったら、気にしないで!)

 最たる例は、えーと…名前なんだっけ??サンパギータ??ゆうくんのフィリピンの場面ね。あそこなんか、岡田センセの真髄だよなぁ。(感心)
 男役は凛々しくサワヤカに、少女は無垢に寄り添うんでしょ。
 
 正塚作品や植田理事長作品の女役の使い方みてると、「こら~!すこしは女性のほう向いてくれー!」と思うこと無きにしもあらずですが(笑) 岡田センセの描く男女関係は、もはや骨董!で批評の対象になりませんな。

 ★岡田センセは花組と相性いいよね。
 横ユレばっかでちっとも踊らない「タカラヅカ・グローリー」を見たとき、「こ、こうゆうのは花組でやれーーーーー!」と叫んで、オサちゃんFANのRにイヤな顔された過去のあるわたくし。別に花組を貶めるつもりはまったくなくて、むしろ逆。花組にはまだ、岡田センセが目指す骨董的「ロマンチック」の残り香が、保存されてると思うんだよね。今回のASIAN WINDS!見て、「岡田センセは花組に合いそう」というわたしの予感は、確信に変わりました。他組でやったら、目も当てられなかったかもしれん「レビウ」(「レビュー」じゃなくて、敢えて「レビウ」笑)が、花組のクラシカル正統派パワーで、いい作品になってたなぁーと。花組のスゴさを思い知らされました!

 …って、コレいまさらな話だよねぇ??
 すまんねぇ。ファン歴5年ばかしだもんで、花組+岡田レビウの組み合わせ、はじめて見たのよ。

 ★オサちゃんの歌はすんばらしー!
 あー、でもちょっと星組のパワフルASIAN WINDS!は見てみたいかも!
 とりあえず、雪組には向かんであらう…。だいたい、ダンサートップの雪組に、横ユレ基本の岡田レビウでは双方にとって不幸だと思う。コムちゃんは踊ってナンボでしょ!歌はアレだし!と、タカラヅカ・グローリーを見るたびに思うのですよー。

 ASIAN WINDS!、オサちゃんのお歌にもだいぶ助けられてましたよね??
 バシバシ踊ってキメて、のショーじゃないぶん、歌にかかる比重、めちゃデカイよね。「えいじあんうぃーんず!えいじあんうぃーーーーーんず!あーあーーーーあじあーーーのーーーー」って、何の変哲もないショー主題歌が、オサちゃんの美声で歌われると、問答無用の説得力を持つからフ・シ・ギ。
 オサちゃんがぞろ長い服で朗々と歌い上げるとことか、「イイもの見せてもらいましたっ!」って、それだけで満足度100%!…うーん、(コムちゃんのダンスもだが)一芸って強いっ。

 ★とにもかくにも、面白かった。
 タカラヅカグローリーとかテンプテーションとかWith a song in my lifeとか、どうも演出が平板だなぁって思ってたんだけど、ASIAN WINDS! はメリハリ効いてて、「岡田センセ、冴えてるぅ!」って感じでしたね。これを見て、はじめて岡田レビウの本当のよさがわかったわ。昔はきっと、(テーマがアジアじゃなくても)メリハリ効いてロマンチック全開の良作を、ザクザク作ってたんだろうなぁ…と何となく想像してしまった!
 わたしが文献(というと大げさだが、レビュー・演劇・タカラヅカ関連の書籍)でしか知らない「古き良き時代」を、ASIAN WINDS!は舞台で理解させてくれたような気がします。
 
 わたし、このショー好きだな。


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