◎以下の文章は、「石木川まもり隊」から原稿依頼を受け、「滴」（ひとしずくー第41号ー2021年5月Ⅰ日号ー水問題を考える市民の会&石木川まもり隊共同ニュース）に私が書いたものです。原文に1カ所誤りがありました。2回目の訪問日を、「3月22日」と記しましたが「3月26日」の誤りでした。転載にあたって訂正しました。また転載にあたって、同行した仲間の名前をイニシャルにします。
この「滴」は毎号力作揃いです。市民目線で現場に、長崎県に、佐世保市に、裁判所に鋭くチェックを入れています。興味のある方は、ヤマヒデにご連絡下さい（年間購読料1000円）。連絡先をお教えします。
「Ⅰ：石木に何故行ったのか？
「石木に行こう」と言い出したのは辺野古テント村の仲間・Ｙさんです。私は同意しました。積極的な意義を考えたからです。辺野古・大浦湾の新基地建設も「公共事業」と言われています。「沖縄の負担軽減」を掲げながら、「辺野古が唯一」のようです。怪しげな理由です。
一方で、私は辺野古に来る来訪者にあらゆる「公共事業」を疑うように話し続けてきました。規模の大小はともかく各地に「公共事業」があるはずです。これに抵抗する運動はないのかと伺ってきました。やはり遠くにいて思うでは、覚束ません。地元の運動に携わりながら、こちらにも支援して下さるのが正しいと私は考えています。
私は石木に行くのであれば、佐賀空港（陸上自衛隊のオスプレイ配備反対）に行き、諫早湾の埋立現場にも行こうと提案しました。3日間で全部回るのは、大変厳しかったのですが、一連の場所を見て、新たな視点と確信を得ることができました。貴会を初めお世話になった現地の方々に、大変感謝申上げます。
Ⅱ：川棚川、石木川を見ながら考えた
私はこれまで長崎県への旅を何10回か行っておりますが、川棚町周辺も通過しながら見落としていました。昨年12月22日午後、大村湾側から初めて川棚川流域へ入りました。すると直ぐに既視感のある現場を見ることになりました。左手に大きな石灰石の鉱山が広がり、トラックが走っています。「これは沖縄島と同じだわ」。すぐに石木川が右に見え私たちも右折しました。しかしこの先がよくわかりませんでした。どこがダムを造る地形なのかと私は疑いました。無事に到着したのですが、この感慨は今でも変わりません。
その日の夕方、たまたま川棚町議会議員の炭谷猛さんからお話しを聴くことができました。彼は土地収用法の処分を受けた13世帯のお一人です。「私たちはこの地に生きてきたし、これからも生きていきます」（要旨）のひと言に尽きていました。これは郷土愛、人生そのものではないでしょうか。「公共事業」（行政・政治）のどこにこうした生き方を潰す権限があるのでしょうか？
Ⅲ：「公共事業」はウソばかり
長崎県がここにダムを造ると動き出したのはおよそ60年前からだそうです。「治水と利水」を掲げ、自然を守るとさえ主張しています。最大の理由は佐世保市の水需要の確保といいますが、人口減を無視し、予測値を右肩上がりに補正しています。また、石木川は河口から2番目に位置する小さな流れです。これで川棚川下流部の治水効果があるとは思えません。このことを現場を歩き実感しました。治水を期待するならば、川の流れを深く押し広げ、容量を増やすしかありません。この川の緩やかな流れ（高度差）を考えればそれは無理でしょう。
ダムを造れば流域の自然環境は激変します。魚類もホタルもカワセミも潰滅させられるでしょう。棚田という景観・自然環境・暮らしの場が丸ごと失われます。
次に3月26日に伺いました。現場の様相がまるで変わっていました。驚かされました。工事現場が迫り、座り込みを追い出す態勢を強めています。長崎県の現場事務所、業者も来て、威圧的だった。長崎県の焦りを感じました。力尽くでやれば､「建前」はウソだと白状するようなものです。
この時､私たちは利権を間じかに見ました。強く感じました。目の前の鉱山の石をトラックがこちらの現場に搬入していました。どこでも同じですね。「公共事業」はウソばかり。【安全保障】を掲げる沖縄も同じマヤカシに苦しめられています。私たちは、私たちの命の営みを潰しに掛ってくるものと闘い、私たちが生きる道を作り出していきましょう。こうした営みが大切です。これは名護市でも川棚町でも､全国どこでも変わりません。頑張りましょう。（2021年4月29日）
