goo blog サービス終了のお知らせ 

矢嶋武弘・Takehiroの部屋

全ては 必然である 神すなわち自然 自然すなわち神

40周年を迎えた「日中平和友好条約」

2018年10月27日 15時41分25秒 | 政治・外交・防衛

(今年は「日中平和友好条約」40周年に当たる。以下の記事は2010年9月21日に書いたものですが、そのまま復刻します。)

今月7日、尖閣諸島の沖合で中国の漁船が海上保安庁の巡視船と衝突し、船長らが公務執行妨害で海保に逮捕されるという事件が起きた。この事件はその後、日中間で大きな問題となり、船長の釈放や裁判などをめぐり両国関係が悪化している。日中両国の交流や経済面にも影響が出ており、いま最も憂慮すべき外交問題の一つと言えるだろう。
 もちろん、尖閣諸島は日本の領土であり、中国にあれこれ言われる筋合いはないが、尖閣諸島と中国の漁船と聞くと、どうしても忘れられない思い出がある。それは32年前の1978年夏のことだった。
 
当時、日本政府(福田赳夫内閣)は6年前の日中国交正常化を踏まえ、中国との間で懸案の「日中平和友好条約」の締結へ向けて最後の交渉に当たっていた。
 時の外務大臣は園田直(すなお)と言うが、北京に外務省の代表団が赴き中国側と連日の折衝を行なっていたのだ。ところが、条約の案文をめぐって日中双方は激しく対立した。
 特に『覇権条項』というのが最大の難関になったのだが、これは中国側が当時のソ連を“覇権国家”と決めつけていたため、その取り扱いをめぐって紛糾したらしい。(外交交渉だから、内容は未だに分からない。いずれ明らかになるだろうが)
 当時の日本は日米同盟が基軸ではあっても、“全方位外交”を推進していたから、ソ連を敵視するような条文には絶対に賛成できない。それで、ソ連敵視の中国と真っ向から対立したようだ。
 交渉は延々と続いたが、中国側も強硬でなかなか折り合いがつかない。当時、私は○○テレビの外務省担当記者をしていたが、7月30日の日記には「覇権問題で日中双方が対立したまま推移している。うまく締結に持っていけるかどうかは微妙な情勢だ。予断を許さない」と書いてある。
 
日中双方とも平和友好条約の締結には賛成しながら、条文の中身では対立する・・・外交交渉ではいくらでもあることだが、何か“にっちもさっちも”行かないような状況になっていたようだ。
 そうした緊迫した情勢の中で、真夏のある日(日付は覚えていない)、中国の何百隻という漁船団が突如、尖閣諸島沖に現われた。われわれは愕然とした。海保の航空写真を見ると、中国の漁船はお粗末とはいえ「銃」を装備しているのだ。まさに示威行動である。あとで分析したが、これは間違いなく鄧小平(当時の党副主席、副首相、人民解放軍総参謀長)の指令によるものだろう。鄧小平が復権して1年ほどのことであった。
 その頃、われわれ記者達は毎朝、東京・世田谷の園田外相宅に“朝駆け”をしていた。当然、中国の大漁船団出現の話が中心になったが、園田氏は苦虫を噛みつぶしたように何も語らない。よほどショックだったのか。
 当時はまだ若くて血気盛んだった私は「冗談じゃない! 海上自衛隊に出てもらって、漁船団を駆逐してもらおうじゃないか」と勇ましいことを言う。すると、朝日新聞の某記者が「ほう~、矢嶋艦隊の出撃ということか」などとまぜ返す。記者が勝手に何を言おうとも、園田氏は(普段は“おしゃべり”だが)一言も語らなかった。
 
いま思うと、大漁船団の出現は鄧小平の“催促”だったのではないか。業を煮やした鄧小平が、日中双方の外交当事者に対して「いい加減に早くしろ!」と発破を掛けたのだと思う。さすが、中国革命を生き抜いてきた“七転八起”の男だ。肝力が据わっている。
 外交交渉は秘密だから内容は分からないが、それから数日して日中双方が歩み寄った。条約締結へ向けて、園田外相は北京へ出立する。もちろん、われわれ記者団も同行した。そして、8月12日、歴史的な「日中平和友好条約」が締結されたのである。
 条約の中身は末尾にリンクしておくが、例の「覇権条項」(第2条)については日本側の主張がだいぶ通ったのではないか。中国側が譲歩したと思う。もとより、当時から尖閣諸島の領有権については“棚上げ”にされた。これを問題にしたら、日中双方が対立して条約締結なんか有り得ない。
 尖閣諸島はもちろん日本の領土だが、何かあると、私は32年前の中国の大漁船団出現を思い出す。(2010年9月21日)
 
「日中平和友好条約」・http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_heiwa.html
 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 拉致問題を本気で解決する気... | トップ | 「10・21国際反戦デー」... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

政治・外交・防衛」カテゴリの最新記事