10) 1周年
行雄が歌舞伎研究会に入ってから半月ほど経った日曜日、浦和の自宅に森戸敦子の母である敏子が訪ねてきた。 埼玉県・川口市の知人に用があったついでに立ち寄ったものだが、彼女は村上家を久しぶりに訪れたこともあって、行雄の父や母と歓談していった。
敏子は最近の森戸家の写真も持ってきたが、特に娘の敦子のものを見せたかったらしい。同席した行雄が驚いたのは、敦子が大学の先輩とすでに婚約して . . . 本文を読む
<この記事は、2005年12月20日に書いたものですが復刻します。>
1) 12月中旬にイタリアへ妻と一緒に観光ツアーに出かけた。南フランスのニースを経由して、ピサ、フィレンツェ、ローマなどを観光するコースで約70人の日本人が参加していた。 添乗したガイドさんは、ニースに入った時から“スリ”に気を付けてほしいと繰り返し言っていたが、結局、イタリアで複数の人がスリの被害に遭 . . . 本文を読む
1984年のアメリカ映画。 天才作曲家のモーツァルトと、オーストリアの宮廷楽長・サリエリとの葛藤や対立を描いた作品だ。地位も人望もあるサリエリはモーツァルトの出現によって、その名声にだんだん陰りが生じてくる。彼はモーツァルトの天才ぶりを認めながらも、内心では嫉妬や敵意が増幅していく。そして、2人の関係に悲劇的な最後が訪れるのだ。映画のストーリーは別として、全編にモーツァルトの名曲がいくつも流れ、ク . . . 本文を読む
<2007年5月17日に書いた以下の記事を復刻します>
1カ月ほど前、私はインターネットに接続するADSLを解約するという、とんでもないミスを犯してしまった。 発端は迷惑メールが跡を絶たないのでアドレスを変更したのだが、どこがどう“狂った”のか、勢い余ってADSLまで解約してしまったのだ。
機械(メカニズム)に極めて弱い私だが、これは致命的なミスである。 あわてて新 . . . 本文を読む
8)屈辱
それから一週間ほど経っただろうか、春の陽光がまぶしく輝くある日の午後、行雄は文学部の生協食堂で軽食をとった後、たまには演劇博物館でも覗いてみようと本校舎の方へ歩いていった。 学生会館の前を通り過ぎてキャンパスに入ってすぐ、20メートルほど前方から歩いてくる男女3人の姿を見て、彼はハッとして立ちすくんだ。
徳田が中野百合子ともう一人の女子大生と連れ立って、こちらの方へ向ってくるとこ . . . 本文を読む
6)呪い
学生会館で百合子と会ってから、行雄は彼女への想いが“重圧”として感じられてくるようになった。 彼はそういう自分の心境変化を不思議に思うのだが、どうしようもないことなのだ。なぜ重圧なのかと自問自答する。
お前は百合子の肉体に魅惑されているだけではないのか。 オスがメスを欲しがるように、お前は獣のように彼女の肉体を求めているのではないのか。お前が望んでいるのは . . . 本文を読む