西武の新監督に、球団OBで今季中日の作戦兼守備コーチを務めた辻発彦氏(57)が就任。35年ぶりの3年連続Bクラスと低迷するチームの再建を託されたが、当初の大本命は、西武黄金期のスター選手で前ソフトバンク監督としても日本一2回の実績を誇る秋山幸二氏(54)だった。なぜ“秋山監督”は消えたのか? 混迷を極めた舞台裏に迫った。 (塚沢健太郎)
「監督という話が自分に来るとは思っていなかった。コーチじゃなくて監督ということですからね。監督ですよ! どうしようって。話が出たときには驚きました」
3日に埼玉県内の球団事務所で就任会見に臨んだ辻新監督は、もっとも愛着のある古巣からの要請とあって興奮を隠せなかった。
契約期間は2年。年俸に関して鈴木葉留彦球団本部長(65)は「そこは控えさせてください」となぜか口をつぐんだ。主砲メヒアの残留発表の際「(来季年俸は)5億円です」と公然と明かしたのとは大違い。実際には、田辺徳雄前監督(50)と同じ5000万円程度とみられる。
辻新監督誕生までの経緯について、鈴木本部長は「候補はいたが、総合的な判断の中で辻さんにお願いした。快く受けてくれた」。複数の候補が存在したことを認めた。
最有力とみられていた秋山氏には、昨季中から球団幹部が何度も接触。田辺前監督の続投が決定する直前まで、就任の噂があった。今オフは満を持して就任するとの見方が専らだった。
秋山氏のソフトバンク監督時代の年俸は、巷間いわれていた1億円よりも高かったようだが、西武の提示額は8000万円程度と抑え気味。契約年数も2年だったとみられる。
背景には、球団が温めている構想がある。近い将来、OBの和田一浩氏(44)=NHK解説者、西口文也氏(44)=球団編成部、高木浩之2軍野手総合兼打撃コーチ(43)の“同級生トリオ”にチームを任せたいというもの。
あるOBは「3人の中で監督の最有力候補は和田さん。10歳上の秋山さんには、5年とか、あまり長くやられては困るのが本音」と解説する。
つまり、球団がほしかったのは2、3年でチームを建て直す“中継ぎ監督”だったのだ。
当初秋山氏は西武監督就任について「タイミングでしょう。自分のタイミングと向こうのタイミングがあるので」と前向きな姿勢をみせていたが、年俸や契約年数などの条件面で折り合わなかった。
親しい関係者によると、最終的には「『よし、やるぞ』という気持ちにはなれない。こんな気持ちで就任したら、西武にも失礼になる」と固辞したという。
そこで急浮上したのが辻新監督。1軍の指揮を執るのは初めてで、実績では日本一2回の秋山氏に及ばないが、指導力は折り紙付きだ。
ソフトバンク・工藤公康監督が2011年オフ、DeNA監督に就任しかけたとき、2軍監督に考えていたのが辻新監督だったという。ふたりはそこまで親しい仲ではないが、純粋に指導力を買ってのものだった。
鈴木本部長は「大前提は勝ってもらう。ドラフトもあるし、投手をどれだけ補強できるか」と1年目から結果を求める。
現役時代は巧打・堅守の二塁手。西武黄金期に秋山、清原らが中軸のチームを、いぶし銀の“名脇役”として支えた。監督としても、大味になり低迷する西武野球に喝を入れ、“次世代”へ送りバントを決めるか。※引用しました!
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